傷追い人

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傷追い人』(きずおいびと)は、小池一夫原作・池上遼一作画による漫画劇画)、またそれを原作としたOVA

悪の巨大組織「G・P・X」に恋人と青春を奪われた元アメリカンフットボーラー・茨木圭介の、愛と復讐の戦いを描く。小学館発行の「ビッグコミックスピリッツ」にて1982年1月15日号1986年3月30日号まで連載された[1]

モンテ・クリスト伯を意識して企画された復讐劇[2]。前作の『I・餓男』は主人公が復讐を果たせぬまま未完に終わったが、本作では主人公はその復讐を一応の形で遂げることができた[3]。当時の漫画界は高橋留美子を筆頭にラブコメものに流行が遷っており、劇画の流行にかげりが見られていた。『傷追い人』でも一部コメディが試みられたが、しかし最終的には男たちが単行本1巻分以上をかけて決闘を繰り広げるという、王道の「劇画」にて物語は決着する[4]

登場人物[編集]

主人公と関係者たち[編集]

茨木圭介(声優:堀勝之祐
またの名を、リオ・バラキ、白髪鬼(ホワイト・ヘアード・デビル)、ジョー・ツルギ。
かつては一流のアメリカンフットボール選手だったが、最愛の恋人・夏子とともに、有名人を出演させる闇のポルノフィルム制作組織G・P・X(God Pornographic X-rated Film)に拉致される。圭介と夏子は愛を貫いて出演を拒否し続けるが、彼等の策略の前に夏子は自決、母は殺され、自らは麻薬使用の濡れ衣を着せられる。全てを失ったことによる怒りと復讐心を生きる糧とした代償として短期間で白髪となり、看守を驚愕させたほど。
服役を終えた圭介は、G・P・Xの手が唯一及んでいないブラジルの奥地にてリオ・バラキと名乗りブラジルの奥地でガリンペイロとして金の採掘を続けながら復讐のために再起をかける。
やがてポルトガルの財宝を手に入れた後に夕湖を失いつつも渡米。財宝をもとにアメフトチーム“ニューヨーク・リベンジャーズ”のオーナー兼クォーター・バックの実業家ジョー・ツルギとして社交界で頭角を現し、G・P・Xをおびき寄せることに成功する。
G・P・XのNo.2・カルロ・ザンビーノとの戦いでペギーを失うもカルロのファミリーを取り込み、コーザ・ノストラに加わる事で裏社会の力を手にし、G・P・Xの核心に迫っていく。そして、圭介を狙う刺客だったミスティを伴侶としG・P・Xとの最終決戦に赴く。
日下夕湖(声優:小山茉美
空手有段者にして美人の人気キャスター。日本人ガリンペイロの情報を掴みブラジルに入る。圭介に反発しながらも心惹かれ、行動を共にするようになる。財宝を求めて共に旅を続ける中、夏子への思いを断ち切れなかった圭介の心を溶かしハートを射止める。共にポルトガルの財宝を手に入れるが、マフィアとの戦いで圭介を銃弾から守って命を落とす。
小宮夏子(声優:鶴ひろみ
圭介の婚約者。スケバンとして因縁をつけたことがもとで圭介に一目惚れする。圭介に胸に蜥蜴(リザード)の刺青を入れさせることで、二人の愛は不動のものとなった。G・P・Xの罠に落ち、圭介との愛を貫いて自決する。
ペギー(ダイヤモンド・ペギー)(声優:弥永和子
女の船大工。ブラック・スネークも敵わない怪力を誇る。マフィアの紹介で圭介らと知り合い、ポルトガルの財宝を積んでアメリカへ渡る為の船「タマリスク」を建造する。自らの不注意でマフィアに目をつけられ、夕湖とスネークの死を招いた責任を感じ、圭介の性奴隷も厭わぬ献身ぶりを見せる。渡米後は財宝をもとにG・P・Xをおびき出すため“ダイヤモンド・ペギー”の名でモデルとして社交界に身を投じると同時に圭介の妻ともなるが、G・P・XのNo.2・カルロ・ザンビーノとの戦いで圭介の盾となり命を落とす。
ミスティ(声優:深見梨加
カルロ・ザンビーノの跡目を継いだ圭介に対してG・P・Xが放った刺客。
華奢な美少女だが幼少時より体術や暗殺術を叩き込まれており、マグナムをぶっ放し、ビリヤードも男顔負けの腕を誇る。冷然と殺人をこなしていたが、圭介の愛に心をほぐされる。圭介を愛し、共に最後の戦いに臨む。
ブラック・スネーク
黒人のガリンペイロで、名前の通りニシキヘビの「キング」と行動を共にしている。圭介、夕湖、ペギーに出会い、共にブラジル脱出を図るが、マフィアとの戦いでペギーを庇い、マフィアのボスを道連れにした。
フリッチョフ・パリー
世界一の宝石鑑定士と呼ばれた老人で、資産家への人脈も豊富。圭介とペギーに執事として仕える。
木島
圭介とペギーのボディーガード兼運転手。寡黙なスキンヘッドの大男。
リッキー(声優:難波圭一
マフィアの下っ端。コーザ・ノストラに入ろうとした圭介の前に裏切り者として引き出された。殺される所を圭介に救われ、部下となる。
ニック・ゴレスキー(声優:渡部猛
ニューヨーク市警の警部。腕力も射撃術も抜群だが、血の気が多く出世できなかった所をボディーガードとして圭介に引き抜かれた。非合法組織や麻薬に詳しく、警察にも顔が利く。
ジョルジョ(声優:大滝進矢
自動車のテストドライバーだったが、運転手として圭介に引き抜かれた。自動車のメカニックに詳しく、車の罠を次々と見抜く。同性愛者であるためミスティの誘惑にも動じない。料理にも詳しい。多弁で大口を叩くこともあるが、言うだけのことはある。
スズキ・ゴンベ
ニューヨークの日本人ホームレス。ホワイトとの死闘によって、あまりに強大すぎたG・P・Xの正体が判明してもなお、信念を曲げぬために自らに課した試練に身を置く圭介を、同じ日本人として気に掛け、いろいろと世話を焼く。

G・P・X[編集]

各国の要人や政財界の大物を顧客に、一流のスターやスポーツ選手の男女が出演するポルノフィルムを制作、販売していた謎の組織。
出演者候補に選ばれた者は事前に個人情報や弱みを握られており、脅迫同然に出演させられている。圭介は出演を拒否したため報復を受け、復讐へと身を置く事となる。
なお、G・P・Xは“God Pornographic X-rated film”の略称だが、組織の実態を隠すためのダミー。
その正式名は“Great Person-X”といい、各国の要人や政財界の大物などの最重要人物をリストアップし、これを管理・監視するCIAの一機関だった。
カルロ・ザンビーノ(声優:小林勝彦
フィルム制作部門を統括するG・P・XのNo2。コーザ・ノストラの一員でG・P・Xも関連組織と思われていたが、実際には無関係でカルロ自身も実態は知らされていなかった。彼のファミリーは後に圭介が受け継ぐことになる。
ジジ(声優:高島雅羅
カルロの愛人で数多のフィルムを手がけていたG・P・Xの女監督。圭介とペギーの絡みを撮影中に欲情し圭介に抱かれるも、すべて仕組まれた罠であり、陰部に麻薬を塗りこめられてしまう。
ドク(アニメ版ではティーチャー)(声優:二又一成
組織の上層部が送り込んだ殺し屋。ミスティに暗殺術を教え込んだ張本人。
ホワイト大佐(声優:稲葉実
G・P・Xが送り込んだ最後の刺客であり、ゲリラ戦のエキスパート。戦場の魅力に取りつかれた退役軍人で組織された“クラシック・アーミー”を率いて圭介たちを窮地に追い込むも、計略に嵌った副官のジョーの行為により全兵士を敵に回す事態に陥る。ジョーに対して公開リンチ(ただし互いに申し合わせたもの)を行い事態をおさめるものの、統率が取れなくなったと判断したホワイトは部隊の解散を宣言。その後ジョーとともに圭介たちのもとに乗り込み対決する。その際にG・P・Xの正体を語ったテープを遺しており、圭介は驚愕の真実を知ることになる。
ジョー
ベトナム時代からのホワイトの部下で“クラシック・アーミー”の副官を務める大柄なアメリカインディアン。圭介のアジトを包囲するも、兵士たちの心理を利用した圭介の策略に嵌りヘリを撃墜。全兵士から憎悪を受け、解散を余儀なくされる。その後ホワイトと二人だけで圭介たちの元に乗り込みミスティと対決する。ちなみに、二人とも戦争中にベトコンから受けた拷問により男性器を切り取られている。

脚注[編集]

  1. ^ 大西, p. 144.
  2. ^ 大西, p. 147.
  3. ^ 大西, p. 150.
  4. ^ 大西, pp. 151-153.

参考文献[編集]