アニマトリックス

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アニマトリックス』(原題:The Animatrix)は、映画『マトリックス』をモチーフに2003年に製作された9つの短編からなるオムニバスアニメーションである。

マトリックス リローデッド』の劇場公開に先立ち、オリジナルビデオとして発売された。

概要[編集]

人類がマトリックスに支配されるまでの過程を描いた作品などが含まれ、マトリックスの世界観をより深く知ることができる。『ENTER THE MATRIX』と同様に、ストーリーの補完的な役割を持った作品群。

部分的にウォシャウスキー兄弟がプロットを書いた。各短編は別々のアニメーション作家によって監督された。日本のアニメ作家が多数参加しているが、これはウォシャウスキー兄弟が『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』などの日本のアニメに多大な影響を受けたことへのリスペクトであると、二人が特典映像で語っている。

当初は、公式ウェブサイトで「セカンド・ルネッサンス パート1」「パート2」「プログラム」「ディテクティブ・ストーリー」を無料でダウンロードできた。現在[いつ?]は「セカンド・ルネッサンス パート1」のみ無料で閲覧可能。

2003年6月にDVD版、2010年4月にBlu-ray版がそれぞれ発売された。特典として各作品の解説を交えたパートや、日本のアニメおよび漫画の歴史をまとめた特集が収録されている。

また、日本では一週間限定[いつ?]で劇場公開も行われた。

アニマトリックス全エピソード製作[編集]

各エピソード詳細[編集]

ファイナル・フライト・オブ・ザ・オシリス Final Flight of the Osiris[編集]

オシリス号のクルーは、センティネルによるザイオン攻略の様子を目撃、情報をザイオンに伝えようとするがセンティネルに気づかれてしまう。そこでクルーたちはオリシス号を防衛しつつ、クルーの一人ジュエが「マトリックス」を介して情報を届ける作戦に出る。

この作品は『マトリックス リローデッド』の序章であり、『ENTER THE MATRIX』の冒頭へ繋がる。『マトリックス』を詳しく知ろうとする者には重要な話の1つにあたる。この作品の特色は、人も含めた全てのオブジェクトが3DCGで製作されている点である。3D描画の質は非常に高く、特に人物に至っては肌の質感や細かさによって実写と見紛うばかりのモデリングがなされている。これは、映画版『ファイナルファンタジー』の技術を活かしたものである。キャラクターの動きなどをよく目を通してみれば、この作品が3DCGであることがよく分かる演出がなされている。

なお、この作品のみ日本では2003年の映画『ドリームキャッチャー』と劇場で同時上映された。同時上映された主な理由は『ドリームキャッチャー』が『マトリックス』シリーズと同じワーナー・ブラザーズの配給であるため、そして『マトリックス リローデッド』の公開が近かったためである[要出典]。ただし、本作は『ドリームキャッチャー』のDVDには付録されていない。当作品にはA4版の宣伝用チラシが少数存在しており、映画『ドリームキャッチャー』と同時上映であった関係から『ドリーム……』のプレスシート宣材内に1枚が収められていた。

セカンド・ルネッサンス パート1・パート2 The Second Renaissance Part I & Part II[編集]

『マトリックス』の時代以前の出来事、つまり『マトリックス』の世界が構成されるまでの出来事を前後編で綴った内容。出だしとしては、ザイオンに存在するデータアーカイブの一つ「第二次ルネッサンス」を参照する形式となっている。

パート1は、西暦2090年に人類に使役されていた機械(ロボット)の一体「B1-66ER」が人間を殺害したことにより、世界各地でロボットたちが人間により大量虐殺され追放される事件が起こる。その2年後の西暦2092年、追放された機械たちが「約束の地」を求め中東に入植し機械達の国「01」(ゼロワン)を創り独立、「01」の商品が人間達のものより優れ経済で有利になっていった結果、国連が「01」を拒絶する経緯までを語る。

パート2は、機械たちを妬み恐れた人類が「01」に対して全面戦争を起こす。そして、その戦争の結末までを描いている。

この作品の大きな特徴は、極端なまでに描き込まれた残虐なシーンの数々。そして、人類が繰り返す愚かな歴史をシニカルに描き出していることである。また、特定の主人公が設けられずにストーリーが進むのもこの作品の特徴である。なお各パートの終始に曼荼羅を用いており、日本語版の語り口調についてもそれに沿ったものになっている。

キッズ・ストーリー Kid's Story[編集]

マトリックスの登場人物キッドが、仮想世界から現実世界にたどり着くまでの出来事である。

キッドは、空中から地上へ、柵を掠めて落ちる夢を見た。キッドは夢の出来事に現実感を抱き、コンピュータネットワークを介して疑問を投げかけ、本当の現実を確かめる方法は、と問う。その問いに対して、現実と虚構が対という謎掛け的な文脈、そして「真実を確かめたければ、命を掛けるしかない」という答えが返ってきた。この返信にキッドは、返信者は誰なのか、そして自身は一人なのかを再度問いかけたが、返信はされなかった。その時から、キッドは日常に奇妙な違和感と孤独感を持ち、世界からの離脱を願った。そして、学校での授業中突然キッドの携帯電話が鳴り出す。講師に一度注意され電源を切るが、何故か再度鳴り出し講師に迫られる中でキッドは電話に応じる。耳に伝わったのは「逃げろ」という声。外からは黒服の男エージェントが迫る。キッドは、声のままに追うものからの逃亡を始めた。

この作品は、ラフ原稿をそのまま動画にしたかのような大胆な表現方法をとっている。キッドの逃亡シーンでは大平晋也が作画を担当し、水彩的な表現を用いスピード感あふれるものに仕上がっている。

プログラム Program[編集]

ススキの生える平野から迫る騎馬隊。降り注ぐ火矢をあしらい騎馬隊を難なく蹴散らした、白い女武者姿のザイオンの戦士シズ。その世界は戦国時代のような設定をされたトレーニングプログラムだった。戦いを終えたシズの元へ、黒き男武者姿の戦士デュオが現れる。戦いを交える二人であったがその最中、デュオからマトリックスへの帰還をシズに持ちかける。

マトリックスのような世界でチャンバラをすればどうなるかをテーマにした作品。また、花札のような強い対比の色遣いが特徴。シズのコスチュームは日本の武士・真田幸村で、デュオは本多忠勝のようなデザインになっている。

本作のストーリーは『マトリックス』に登場したサイファーのくだりをモデルにしている。また9つのストーリーの中でバレットタイムの表現方法を用いているのは本作のみである。

ワールド・レコード World Record[編集]

マトリックスの世界が仮想世界であることを自ら気付ける者は極めて少なく、それは感受性が高く強い猜疑心を持つ者に多い。しかし、まったく別のケースも存在する。8秒99の100メートル競走世界記録の保持者であるダンは、自分の持つ運動能力でマトリックスの限界を超えた現象を経験していた。その時点では、ダンはマトリックスの真実には気付いていない。その世界記録に疑惑をもたれながらも、走ることに生きがいを感じていたダンは、再び世界陸上のスタートラインに立ち、走る。しかし、会場を監視していたエージェントは、ダンからの不安定な信号を察知、修正を試みようとする。

この作品はキャラクターがアメコミ調で描かれており、動画一枚一枚に描かれた筋肉の動きが特徴的、また、アニマトリックスの中ではもっともエージェントの姿(特に服装)の変化が印象強い作品でもある。

ビヨンド Beyond[編集]

舞台は、仮想世界の内の日本、東京を模したエリア。下町の一角に住んでいる陽子は、飼い猫のユキを探し始める。そのさなかに出会った子どもたちが案内した場所は、立ち入り禁止である廃墟のような古びた建物。そこは「お化け屋敷」と呼ばれた場所で、陽子はそこで不思議な光景を目にする。以前から建物の存在を知っていた子どもたちは、超常現象を利用し楽しんでいた。陽子は、そこで子どもたちと一緒に遊び、超常現象が見せる非日常的な風景を楽しんだ。その場所「お化け屋敷」は、マトリックスのバグ(アノマリー)の1つであった。

現実的で平穏な日常とお化け屋敷での非日常感、その混合および対比感を描いた作品であることが大きな特徴。その世界観からファン[誰?]から一定の評価も受けている。

ディテクティブ・ストーリー A Detective Story[編集]

しがない探偵であるアッシュは、ある依頼を受けた。内容は、謎のハッカートリニティを捜すこと。コードネームを手がかりにアッシュは捜査を進めていくが、自分と同じ依頼を受けた別の探偵たちが皆何らかの異常をきたしていたという事実を入手する。そして、ネットワークを介してトリニティとコンタクトを取ることができたアッシュは、得られたヒントを頼りに接触を試みる。辛くもトリニティとの接触を果たすアッシュだが、自分が受けた依頼の本当の意味を知った時、エージェントの魔手が彼らを襲う。

全体的にモノクローム調に着色されており、ハードボイルドな内容が探偵作品の雰囲気を出している。ウォシャウスキー兄弟が『不思議の国のアリス』の影響を受けて『マトリックス』を製作したことに配慮して、劇中に『鏡の国のアリス』を引用している。

マトリキュレーテッド Matriculated[編集]

機械に支配された現実世界。鋼鉄の地面と薄暗い空の世界。そんな世界の一角、海に囲まれた島でマシンと戦う小さな人間たちの砦があった。彼らはマシンを生け捕りにして解析・改造し、寝返らせて、マシンと戦う集団であった。今回もメンバーの一人アレクサがマシンをおびき寄せ、仲間にしたマシンを使い生け捕りに成功する。マシンを人間側に寝返らせるためには、メンバー全員がマシンの意識へダイブし、人間に対する友好の意識を持たせることにある。メンバーは捕らえられたマシンを誘惑し、仲間にすることに成功、マシンはアレクサに好意を持った。しかし、生け捕りの前に発信機を植えつけられていたことに気付かず、基地にセンティネルが侵入、全マシンを起動させて襲撃に望むが苦戦。仲間になったばかりのマシンは、アレクサが自身に助けを求めようとする姿を目撃する。

マトリックス内の機械との関係を逆転させる、人と機械との融合及び相互理解がテーマ。また、1個体のマシン側の視点という本編では見られない構図、それを取り巻くマシンの心情と自己の存在、および現実世界ともマトリックスとも違った空間での特色のあるキャラおよび世界観の描写などが特徴。監督の持つ独特な作風が本作でも見られる。本編ではあまり登場しない動物が、登場キャラの一つとして設定されている。

その他[編集]

『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の監督である押井守は、アメリカでウォシャウスキー兄弟と対談した時、オフレコで「『アニマトリックス』の監督をオファーされた」と語っている。押井本人はその場でオファーを断ったが、「かわりに誰か紹介してやろうか?」と持ちかけ「確か森本晃司の名前を出した気がする」とも語っている[1]

関連項目[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 押井守 『勝つために戦え! 〈監督篇〉』徳間書店、pp.314-315. ISBN 4198629161

外部リンク[編集]