とある飛空士への追憶
| とある飛空士への追憶 The Princess and the Pilot |
|
|---|---|
| ジャンル | 戦争・恋愛・ファンタジー |
| 小説 | |
| 著者 | 犬村小六 |
| イラスト | 森沢晴行 |
| 出版社 | 小学館 |
| レーベル | ガガガ文庫 |
| 発売日 | 2008年2月19日 |
| 巻数 | 全1巻 |
| 漫画 | |
| 作者 | 小川麻衣子 |
| 出版社 | 小学館 |
| 掲載誌 | ゲッサン |
| 発表期間 | 2009年9月号 - 2011年3月号 |
| 巻数 | 全4巻 |
| 話数 | 全18話 |
| 小説:とある飛空士への追憶 | |
| 著者 | 犬村小六 |
| 出版社 | 小学館 |
| 発売日 | 2011年8月14日 |
| 巻数 | 単巻 |
| その他 | リメイク版 |
| 映画:とある飛空士への追憶 | |
| 監督 | 宍戸淳 |
| 制作 | トムス・エンタテインメント |
| 封切日 | 2011年10月1日 |
| 上映時間 | 99分 |
| その他 | PG12指定 |
| 関連作品 | |
| ■テンプレート使用方法 ■ノート | |
| ウィキプロジェクト | ライトノベル・漫画・アニメ |
| ポータル | 文学・漫画・アニメ |
『とある飛空士への追憶』(とあるひくうしへのついおく、英題:The Princess and the Pilot)は、犬村小六による日本のライトノベル。イラストは森沢晴行が担当している。ガガガ文庫(小学館)より、2008年(平成20年)2月19日に単発作品として刊行された。
目次 |
[編集] 概要
著者の別作品である『レヴィアタンの恋人』が継続するなか[1]刊行された作品。身分違いの恋と一人の少女を守るための空戦が描かれており、著者によると『ローマの休日』と『天空の城ラピュタ』の切なさと爽やかさを意識しながら[2]執筆された。
口コミを中心に評判が広まり[3]、広範な読者層から大きな反響があった[4]。『このライトノベルがすごい! 2009』の作品総合ランキングでは10位を獲得し[5]、書泉ブックタワーのブック売り上げランキング(2007年(平成19年)10月15日 - 2008年(平成20年)10月12日)では1位を記録している[6]。2009大学読書人大賞2位[7]。
続刊の希望が多くの読者から上がったことから[8]、この作品の世界を舞台にした新たな物語『とある飛空士への恋歌』が2009年(平成21年)2月から2011年(平成23年)1月まで刊行された。またラジオドラマ化もされ、平野綾による朗読で2009年(平成21年)5月7日から7月30日までニッポン放送『宇宙GメンEX』内「アニコボ」で放送された[9][10]。さらにゲッサン創刊号にて小川麻衣子の作画で漫画化することを発表、2009年(平成21年)9月号から2011年(平成23年)3月号まで連載された。漫画版の話数カウントは第●章。
2009年(平成21年)12月、映画化が発表され[11]、2010年(平成22年)4月には、アニメ映画であることが発表された[12]。映画に関する詳細は下記参照。また、映画公開に併せ、加筆訂正を行った新装版が一般文芸として発売された。
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。免責事項もお読みください。
[編集] あらすじ
『とある飛空士への追憶』の世界では中央海と呼ばれる海を挟んで1万2000キロメートル隔たった西方大陸と東方大陸の2つの大陸のみが存在し、西方大陸を支配する神聖レヴァーム皇国と東方大陸を支配する帝政天ツ上の両国が戦争を続けている。
天ツ上領内にありデル・モラル家が実質的に管掌するレヴァーム自治区サン・マルティリアではデル・モラル屋敷が天ツ上空艇兵団の単座戦闘機・真電に襲撃され、統治者である公爵ディエゴ・デル・モラルが殺される。レヴァーム皇国皇子カルロ・レヴァームはディエゴの一人娘で許嫁であるファナ・デル・モラルを奪還するため第八特務艦隊を編成し東方へ派遣するが、動きの遅い飛空艦艇では敵の防禦網を破ることはできず全滅する。
絶望的な状況下、第八特務艦隊の失敗を秘匿しつつ、次期皇妃であるファナをカルロの元に届けるための極秘計画「海猫作戦」が立案される。それは、ファナを複座の水上偵察機サンタ・クルスの後部座席に乗せ、敵が制空権を握る中央海を単機で翔破するというもの。パイロットに選ばれたのは、デル・モラル空艇騎士団のエースである狩乃シャルル。身分が低く被差別人種であるシャルルと、階級の頂点に位置するファナ。かつて1度だけすれ違っただけの、本来ならば決して交わる事の無い2人が再び出会い、心を通わせていく。シャルルとともに空戦を切り抜けるうち、幼い頃から心を閉ざしていたファナは感情を取り戻すとともに、素朴なシャルルに惹かれてゆく。シャルルもファナを連れて逃げたい思いが頭をもたげながらも、任務遂行を目指す。
サイオン島に向かう最後の飛行で、サンタ・クルスは真電編隊に阻まれる。編隊長の千々石はシャルルの技量に驚嘆し、シャルルに一騎打ちを仕掛ける。千々石はシャルルよりも一枚上手であったが、ファナの機転により千々石は撃退され、サンタ・クルスは目的地に終着する。シャルルを共に皇都へ連れて行くことをファナは望むが、迎えにきた将校ヘルマンはそれを許さず、ファナを出迎えの飛空戦艦へ連行する。残されたシャルルはサンタ・クルスの機体を操り、報酬の砂金を撒き散らしながら、艦上のファナに別れの舞いを見せつける。
中央海戦争を休戦に導き、「西海の聖母」と呼ばれる皇妃ファナ・レヴァームのサン・マルティリア脱出劇は長く秘匿されるが、後の時代に一人のノンフィクション作家が海猫作戦の全容を記す1冊の本を書き上げる。本の題名は「とある飛空士への追憶」という。
[編集] 登場人物
- 狩乃 シャルル(かりの)
- デル・モラル空艇騎士団一等飛空士。21歳。サン・マルティリア最高の飛空士と認められる操縦技量を持ち、身分の関係ない自由な空を飛ぶことを好む。武器を持つ飛空機に乗る道を自ら選び、多くの撃墜スコアを誇り、また自らが撃墜されることに凄まじい屈辱を感じる軍人であるが、敵を撃ち殺したくはなく、「空を飛ぶのが好きなだけ」だとも言う。
- 天ツ人の母とレヴァーム人の父を持つ混血児(ベスタド)であり、リオ・デ・エステの貧民窟アマドラ地区出身で住所を持たない流民階級に属する。父は炭坑仕事による肺病で亡くなり、母はデル・モラル家でファナのお世話係として働いていた。しかし、床でファナに天ツ上の歴史物語を聞かせていたことがファナの父親(ディエゴ)に知られ、母は召使を解雇される。その後は酒場で働くものの程なく酔漢により刺殺、シャルルは9歳で孤児となり浮浪者生活に追いやられた。
- 10歳のとき飢えと寒さでいよいよ死にそうになっていたところをアルディスタ正教会の神父に救われる。以降、神父に養育され、やがて教会仕事を通じて飛空士たちと関わるうちに見よう見まねで飛空機の操縦を覚え飛空士となる。幼い日の夏にデル・モラル家で一度だけ会ったファナに励まされた思い出を、辛いときに引き出してきた。
- 釣れたカツオをその場でさばいて帝政天ツ上の料理「刺身」に仕上げる腕はプロ級である。
- 続編の「とある飛空士への恋歌」には、名前が明かされていないが彼と思われるパイロットが登場。「海猫」のエンブレムを持つ戦空機アイレスVを駆り、主人公の危機を何度も救っている。4巻までは空戦シーンで戦空機に乗った状態のみで登場し、5巻で海猫本人が登場する[13]。
- また、本作のスピンオフである「とある飛空士への夜想曲」にも偽名を与えられた状態で登場し、千々石との再戦を果たしている。海猫作戦後の彼の動向については「夜想曲」を参照。
- ファナ・デル・モラル
- サン・マルティリアの統治者ディエゴ・デル・モラルの一人娘である18歳の少女。その容姿は「光芒五里に及ぶ」と評されるほどに美しい。1年前にレヴァーム皇子カルロ・レヴァームと婚約し、次期レヴァーム皇妃となる。
- お転婆だった幼い頃、毎晩天ツ人の召使い(シャルルの母親)に聞かされる天ツ上の歴史物語を楽しみにしていたがその召使いが父の言いつけに背いたため解雇されたことを知る。以来、世界を玻璃の向こうの遠い存在のように感じ感情が剥落するが、海猫作戦の最中、シャルルとの触れ合いを通して次第に感情を取り戻していく。
- 続編である「とある飛空士への恋歌」にも「ファナ・レヴァーム」の名で、4巻までは名前のみ登場。5巻で恋歌の登場人物と対面する場面が存在する[14]。
- 新装版では、カルロに代わって宮廷の実権を握る執政長官となり汚職官僚の罷免、悪習の撤廃、経済の活性化、治安改善、帝政天ツ上との休戦、階級制度の廃止をおこない国民から絶大な支持を受ける。
- 原作及びコミック版と、劇場版では外見が大きく変更されている。
- カルロ・レヴァーム
- レヴァーム人の特質である情熱的行動を体現するレヴァーム皇国皇子。宮廷晩餐会で会ったファナに一目惚れし1年前に婚約して以来、軍事用無線電信を使って押しつけがましい恋文をファナに送り続ける。デル・モラル屋敷が真電に襲撃されたことを知りファナを奪還するための新たな艦隊を編成し、「第八特務艦隊」と名付け東方へ派遣する。その愚行はデル・モラル空艇騎士団員のみならずレヴァーム空軍正規兵からも嘲りを買う。
- 海猫作戦の直前にはファナに対して「偵察機の後席に5日間も閉じ込められる君が心配だ」という内容の電信を送信し、その暗号無線を天ツ上諜報部に解析され極秘である海猫作戦の詳細を漏洩させてしまう。
- 新装版では、後に皇王となるが、理想主義の現実を無視した政治をおこない、国を滅ぼしかけ重臣から見限られ実権を剥奪された。 後世の歴史の教科書では「悪人ではなく、高い理想を抱いていたが、あまりに無能だった」と評されている。
- 千々石 武夫(ちぢわ たけお)
- 天ツ上海軍空艇兵団の予科練出身の飛空中尉[15]スピンオフ作品の「とある飛空士への夜想曲」の主人公であり、下の名前も「夜想曲」で明かされた。その生い立ちや人物像、海猫作戦の後の動向については「夜想曲」を参照。空色のマフラーを首に巻き、搭乗する真電の機首にビーグル犬のイラストが描かれている。海猫作戦の2週間前、シャルルの搭乗するアイレスIIを撃ち落とす。
- 海猫作戦終盤においても、サンタ・クルスの前に立ちふさがり一対一の決戦を行うものの、ファナの射撃を左翼に受け戦闘継続が不可能になり、シャルルと挨拶を交わし帰還した。
- コミック版では、剣道の有段者という描写が追加されている。
- ディエゴ・デル・モラル
- デル・モラル家当主。ファナの父。ファナを「将来は貴族へ嫁ぐ身」として厳格に育て上げた。
- 帝政天ツ上の真電によるデル・モラル家襲撃により死亡する。
- ドミンゴ・ガルシア
- レヴァーム空軍東方派遣大隊長官。階級は大佐。
- シャルルに海猫作戦の命令を下した人物。自分よりも社会階級が下のものを見下しており、やむをえないとは言え階級頂点のファナが、階級最下層のシャルルの助けを借りなければならないことを嘆かわしく思っている。
- アントニオ(ガガガ文庫版)/ラモン・タスク(新装版)
- 海猫作戦を立案した人物。階級は中佐。ドミンゴと共にシャルルへ海猫作戦の内容と命令を伝えた。中肉中背の温厚そうな外見をしている。
- 市民階級出身。神聖レヴァーム皇国の階級制度を内心ではくだらないと感じており、ベスタドであるが故に敏腕にも関わらずレヴァーム正規軍に入隊できないシャルルを哀れんでいる。ラモン・タスクは「とある飛空士への夜想曲」にもバルドー機動艦隊旗艦、空母グラン・イデアルに乗務する将校として登場。
- マルコス・ゲレロ
- 第八特務艦隊旗艦 エル・バステル艦長。
- シャルルから手柄を取り上げるレヴァーム皇家や海猫作戦を内心苦々しく思っている壮年将校。ファナがシャルルとの最後の別れの挨拶をするために甲板に出ることを許可するなど、理解のある寛容な人物。
- シリーズ第二作の「とある飛空士への恋歌」にも、「神聖レヴァーム皇国聖泉方面探索艦隊司令官 旗艦エル・バステル艦長」として登場している[16]。
- ヨアキン
- デル・モラル空艇騎士団所属の飛空士。シャルルの親友。髪は金髪。純粋なレヴァーム人だが、シャルルがベスタドであることは気にしていない。海猫作戦に伴い、サンタ・クルスから天ツ上軍の目をそらすための囮として出撃した。その後の消息は不明。
- 狩乃 チセ (かりの)
- シャルルの母。天ツ人。劇場版で名前が明かされた。
- かつてはデル・モラル屋敷で召使として働いていた。寂しさから眠れない幼少期のファナに、寝室で毎晩天ツ上の歴史物語(新装版ではおとぎ話、劇場版では子守唄)を聞かせていた。そのことがディエゴ・デル・モラルに耳に入り、召使を解雇される。その後は酒場で働いていたが、酔漢に刺されて死亡する[17]。
- 波佐見 真一(はさみ しんいち)
- 「とある飛空士への夜想曲」と新装版で登場する真電編隊長。ガガガ文庫版でも登場しているが、名前が明かされていなかった。劇場版には登場しない。
- サンタ・クルスが大瀑布を航過した直後に大編隊での追尾を行った人物[18]。終戦後も永く生きながらえ、終章ではノンフィクション作家に空戦の様子を語り、その内容は後に出版されたノンフィクション小説「とある飛空士への追憶」に記される。このノンフィクション小説について、劇場版では言及されていない。
- この人物については「とある飛空士への夜想曲」を参照。
[編集] 登場兵器
- サンタ・クルス
- レヴァーム空軍の最新鋭複座式水上偵察機。作中に登場した機体は中央海翔破のため、洋上迷彩が施されている。エンジンは空冷式。複座といっても水偵としてポピュラーなタンデムではなく、前部操縦士席と背中合わせ後ろ向きに据えられた後部座席は実質7.7ミリ(新装版では13ミリ)旋回機銃1挺[19]のための銃座であり、この機銃が唯一の武装でもある。操縦系がアイレスⅡと共通しているため、同機からの機種転換に時間はかからないという。
- 最高飛行速度620km/hという高速を得るため、レヴァームの他の多くの軍用飛空機と同様、空力性能上邪魔になる着水用フロートは胴体への引込式。劇場版では胴体中央と胴体尾部に計3つのフロートを収納するような構造になっている。降着装置はフロートの他に尾輪式の車輪を備えているため、陸上と水面のどちらでも運用可能である。
- 航続距離は3100km。原作、コミック版、劇場版でそれぞれ外見や構造が大きく異なる。原作では3翅のプロペラ、コミック版では4翅二重反転プロペラを採用、劇場版では4翅の単プロペラを採用している。尾翼は原作とコミック版が通常型、劇場版がH字尾翼。フロートは原作とコミック版が胴体と主翼に収納、劇場版は胴体中央と尾部に3つのフロートを収納となっている。
- アイレスⅡ
- 真電とほぼ同時期に開発された単座戦闘機。登場当初はレヴァーム空軍の誇る最新鋭機と謳われたが、直後に登場した真電には全ての性能において凌駕され、一気に旧式化した。3翅のプロペラを装備している。
- 真電
- 20ミリ機銃と7.7ミリ機銃(ガガガ文庫版、及び劇場版での設定。新装版、及び「夜想曲」では30ミリ機銃と13ミリ機銃に変更されている)を備える天ツ上空艇兵団の最新鋭単座戦闘機。あらゆるスペックにおいてレヴァーム空軍最新鋭単座戦闘機アイレスⅡを圧倒する。主翼は逆ガルウィングであり、先尾型、推進式配置のエンジンを特徴とするプロペラ戦闘機。
- 飛行中はデッドウェイトとなるフロート機構を廃しており、それにより大幅な運動性能の向上を実現している。その代償として海面に着水しての燃料補給が不可能となっている。
- プロペラについて、ガガガ文庫版、新装版では特に記述はないが、劇場版では4翅プロペラ×2の計8翅の二重反転プロペラ、コミック版では翅数不明の二重反転プロペラとなっている。また、「夜想曲」では6翅の単プロペラとなっている。
- 全体的な特徴はガガガ文庫版、新装版、コミック版、劇場版、「夜想曲」で全て共通しているが、プロペラや主翼形状、細部の機体形状、細かな設定がそれぞれ異なる。
- エル・バステル
- 神聖レヴァーム皇国海軍の飛空戦艦。本来のエル・バステルは第八特務艦隊に徴用されたため、既に特務艦隊ごと撃沈されている。そのため、作中に登場するのは「エル・バステル」の名を冠せられた同型艦である。海猫作戦の最終段階で、狩乃シャルル(コードネーム:海猫)からファナを引継ぎ、皇都エスメラルダまで護送する。シリーズ第二作の「とある飛空士への恋歌」にも「聖泉方面探索艦隊旗艦」として登場した。
- 燦雲型高速駆逐艦
- 帝政天ツ上海軍の最新鋭型で、全面鉄鋼装甲の飛空駆逐艦。高速駆逐艦という名に違わず、「図体の割には速度が速い」とシャルルに評されている。
- 重巡
- 重巡空艦。帝政天ツ上海軍の飛空艦艇。
- 空母
- 帝政天ツ上の飛空艦艇。正式名は飛空母艦。真電やその他の戦闘機、攻撃機を80機ほど搭載できる。海猫作戦妨害のために天ツ上が保有する7隻のうちの1隻が徴用されている。千々石たちの搭乗する空母である。作中に登場した1隻は「雲鶴」という名であることが「夜想曲」で明かされた。
- 空雷
- 天ツ上海軍の飛空艦艇が使用する、対空ミサイルに類似する対空兵器。尾部に水素電池で駆動するプロペラを備え、敵を追尾して破壊する。追尾方式は、ガガガ文庫版では「水素電池スタックの排熱を探知」、新装版では「DCモーターの磁石が発する磁気を探知」となっている。
[編集] 地名
- 神聖レヴァーム皇国
- 西方大陸を支配するレヴァーム人による建国700年の大国。「産業革命」を経ており「近代国家」と文中記されている。民主主義体制ではなく、その国家体制は王権神授説が未だ健在の絶対王政。皇都エスメラルダのレヴァーム皇家を頂点とした皇民2億1000万人が階層化されている。
- 60年前に帝政天ツ上と戦い大勝を挙げたが、現在の天ツ上との戦争では敵を過小評価し苦戦する。
- 軍用機の国籍マークは「盾に剣」。
- 通貨単位はペセタ。
- 帝政天ツ上
- 東方大陸を支配する天ツ人による大国。建国3000年の歴史を持つ。漢字仮名混じり文の言語を用い、日本のそれと酷似した人名、「サムライ」「刺身」といった文化がある日本的な国である。その歴史や風土については「とある飛空士への夜想曲」を参照。
- 軍用機の国籍マークは「細い上がり藤のような紋章に右三つ巴」、「三日月に右三つ巴」(劇場版)。
- サン・マルティリア
- 天ツ上領内にあるレヴァーム自治区。リオ・デ・エステを拠点とし、デル・モラル家が実質的に管掌する。作中時間60年前の戦争に戦勝したレヴァームが天ツ上から略奪した土地。55年前に天ツ上の言葉で常日野と呼ばれた地域にレヴァーム人が入植し、50年前から皇都・エスメラルダとの大陸間貿易で発展してきた。中央海戦争により孤立し、制空権を巡ってレヴァーム空軍東方派遣師団と天ツ上空艇兵団が激しく争っている。
- 中央海
- 1万2000キロメートル隔たった西方大陸と東方大陸の間にある海。大瀑布により東西に隔てられ高い方が西海、低い方が東海である。
- 大瀑布
- 中央海の東西を隔てる高低差1300メートルの滝。大瀑布付近には天ツ上の哨戒網が張り巡らされている。
- 両端がどうなっているのかは作中では明かされていないが、「世界の構造」を解き明かす探索の旅を描いたシリーズ第二作「とある飛空士への恋歌」で謎が明かされた。
[編集] 用語
- 中央海戦争
- 中央海を主戦場として物語開始時点から約半年前に開戦した二国間戦争。天ツ上が優勢であり、サン・マルティリア陥落も現実味を帯びてきたために第八特務艦隊及び海猫作戦の実現に至った。開戦に至った背景や、戦況の推移、終戦に至るまでの経緯はとある飛空士への夜想曲を参照。
- 第八特務艦隊
- カルロ・レヴァームが、レヴァーム皇家が保有する7つの艦隊から飛空戦艦1、重巡空艦3、駆逐艦7を徴用して編成した「花嫁奪還」のための艦隊。
- 天ツ上の哨戒網を潜り抜け10日でサン・マルティリアに到達、ファナと貴族高官を乗艦させ再び10日で帰還するとされていたが、出発したまま消息不明になった。シャルルを含めた騎士団員達は、大瀑布周辺で天ツ上に捕捉され雷撃機などによる反復攻撃を受けて全滅したと予想している。
- 海猫作戦
- 第八特務艦隊によるファナ・デル・モラルの救出が失敗したことを隠しつつファナをレヴァーム皇家に迎えるために立案された作戦。
- シャルル(コードネーム:海猫)の操縦する複座式水上偵察機サンタ・クルス後席にファナを乗せ、単機で中央海の敵哨戒網を突破、レヴァーム本国付近のサイオン島沖で「第八特務艦隊旗艦 エル・バステル」に偽装された艦艇にファナを引渡し、そのまま「艦隊唯一の生き残り」として凱旋する計画。海猫には口止め代わりに、砂金による破格の報酬が与えられる。
- ベスタド
- 天ツ人とレヴァーム人の混血児のこと。双方が敵対していることもあり、天ツ人・レヴァーム人の両方から迫害されている。
- デル・モラル空艇騎士団
- ディエゴ・デル・モラルの私設軍隊。実態は傭兵の寄せ集めであり、平時は商船の護衛を務める。開戦後はレヴァーム空軍の下部組織に編入され、作戦時には囮として利用され、レヴァーム正規兵から見下されている。粗野の連中の集まりであるが、それ故に互いの出自は気にしないため、シャルルも一員として受け入れられている。
- 聖アルディスタ
- アルディスタという聖人の名前ではなく、神格名。本作では「アルディスタ正教会」という一教会、一教団の名でしか登場しなかったが、『とある飛空士への恋歌』で作品世界の創造神(であると信じられている)のことであることが明かされた。
- 『恋歌』第3巻によると、遥かな古代に天翔ける船に乗り、訪れた島、大陸に自らの血肉と言語、子孫へ語り継ぐべき教えの種子、「聖アルディスタの種子」をばら撒いたと伝えられる。その種子より生まれた人々は同じ知識・言語・道徳により育つため、身体特徴・技術発展・文化・言語体系などが酷似している。
- 水素電池
- 産業革命を経たあと、「第2の産業革命」と呼ばれたほどの発明。レヴァーム皇国、帝政天ツ上、両国のあらゆる飛行機械の動力源であり、「錬金術師」が発明したという。水素電池は海水からいくらでも抽出できる「水素ガス」により蓄電・発電双方が可能な動力源であり、これによって、事実上ほぼ無制限の航続力を得ることが出来る。主役メカである「サンタクルス」もこれを動力源としている。ただ、水素電池が発生させた電気で稼働する発動機はモーターではなく「エンジン」[20]である。第1作の国々と第2作以降の国々は互いに存在すら知らないのだが、水素電池をはじめ、「飛空機」「飛空戦艦」「揚力装置」といった用語、メカニズムも同じものが用いられている。
- オーバーブースト
- 大量の電力と引き換えに一時的に高速で飛行できる操作。残電量が一気に減るため何度も使えるものではない。作中ではシャルルが何度か使用している。
[編集] 既刊一覧
- 『とある飛空士への追憶』 2008年2月19日発売 ISBN 978-4-09-451052-2
- 漫画版 (全4巻)
- 2010年1月12日発売 ISBN 978-4-09-122089-9
- 2010年6月11日発売 ISBN 978-4-09-122360-9
- 2010年12月10日発売 ISBN 978-4-09-122618-1
- 2011年9月12日発売 ISBN 978-4-09-123138-3
[編集] 新装版
ガガガ文庫版に大幅な改編を施したリメイク版。文庫版とは設定やストーリーの順番が微妙に異なるほか、終章でファナのその後の描写が少し追加されている。また、続編である「とある飛空士への恋歌」「とある飛空士への夜想曲」を踏まえた改編も行われている。挿絵は全て削除されており、巻末に神聖レヴァーム皇国と帝政天ツ上の地図が描かれているのみとなっている。
- 『とある飛空士への追憶』 2011年8月14日発売 ISBN 978-4-09-386309-4
[編集] 劇場アニメ
| とある飛空士への追憶 | |
|---|---|
| The Princess and the Pilot | |
| 監督 | 宍戸淳 |
| 脚本 | 奥寺佐渡子 |
| 原作 | 犬村小六 |
| 製作総指揮 | 岡村秀樹 |
| 出演者 | 神木隆之介、他 |
| 音楽 | 浜口史郎 |
| 主題歌 | 新妻聖子「時の翼」 |
| 撮影 | 棚田耕平 |
| 編集 | 木村佳史子 |
| 製作会社 | 「とある飛空士への追憶」製作委員会 トムス・エンタテインメント |
| 配給 | 東京テアトル |
| 公開 | 2011年10月1日 |
| 上映時間 | 99分 |
| 製作国 | |
| 言語 | 日本語 |
| allcinema | |
| キネマ旬報 | |
2011年(平成23年)10月1日より全国ロードショー公開された。キャストは登場人物欄を参照。キャッチコピーは「そこに自由はあるか。」。主演キャストは『サマーウォーズ』等を演じた神木隆之介[21]、グラビアアイドルの竹富聖花と芸人サンドウィッチマンの富澤たけしは声優初挑戦となる[22]。ファナのキャラクターデザインは原作挿絵や漫画版とは大きく異なる。また、原作と比べて世界観や背景の説明、心理描写や戦闘シーン、「終章」などの各シーンの簡略化や変更が多く見られている。
[編集] スタッフ
- 原作 - 犬村小六(小学館・ガガガ文庫刊)
- 監督・絵コンテ - 宍戸淳
- 脚本 - 奥寺佐渡子
- キャラクターデザイン - 松原秀典
- メカニックデザイン・メカ・エフェクト作画監督 - 山田勝哉
- 総作画監督 - 田崎聡
- 作画監督 - 櫻井邦彦、金錦樹、香月邦夫、渡邊和夫、今村大樹、高炅楠
- 演出 - 中川聡
- 美術 - 橋本和幸
- VFXスーパーバイザー - 加藤道哉
- 音楽 - 浜口史郎
- 音響監督 - 清水洋史
- 撮影 - 棚田耕平
- CG監督 - 設楽友久、籔田修平
- 色彩設計 - 小針裕子
- 編集 - 木村佳史子
- プロデューサー - 高橋亮平、宮本秀晃
- アニメーション制作 - マッドハウス
- 制作 - トムス・エンタテインメント
- 製作 - 「とある飛空士への追憶」製作委員会
- 配給 - 東京テアトル
[編集] 声の出演
[編集] 主題歌
[編集] 脚注
- ^ 犬村小六 『レヴィアタンの恋人III』 小学館〈ガガガ文庫〉、2008年1月、243頁。ISBN 978-4-09-451046-1。
- ^ “Amazon.co.jpメッセージ”. Amazon.co.jp. Amazon.com, Inc. 2008年9月7日閲覧。
- ^ 星野武義「ブック批評:「とある飛空士への追憶」 姫を守って敵中突破 切ない恋と空中戦」、『新世紀エンタメ白書2009』、毎日新聞社、2009年1月、 135頁、 ISBN 978-4-620-79330-6、2008年9月7日閲覧。
- ^ “応援してくださる皆さんへ「ありがとう!!」”. ガガガ文庫:ガガガ編集部ログ. 小学館 (2008年8月18日). 2008年9月7日閲覧。
- ^ 『このライトノベルがすごい!』編集部 『このライトノベルがすごい! 2009』 宝島社、2008年12月、18、26頁。ISBN 978-4-7966-6695-4。
- ^ まんたんブロード編集部「2008年売上ベスト3はこれだ!」、『新世紀エンタメ白書2009』、毎日新聞社、2009年1月、 16頁、 ISBN 978-4-620-79330-6。
- ^ “「大学読書人大賞」―大学読書人大賞―大学文芸部イチオシの本”. JPIC 財団法人出版文化産業振興財団. 2009年10月1日閲覧。
- ^ 「ガ報」No.0016、2008年(平成20年)8月19日発売のガガガ文庫折り込み。
- ^ “『とある飛空士への追憶』ラジオドラマ化、決定!”. ガガガ文庫:ガガガ編集部ログ. 小学館 (2009年4月24日). 2009年4月30日閲覧。
- ^ “ラジオドラマ化作品、ついに決定〜〜!!”. 銀河に吠えろ!宇宙GメンTAKUYA. ニッポン放送 (2009年4月23日). 2009年4月30日閲覧。
- ^ ガガガ文庫折込チラシより
- ^ “『とある飛空士への追憶』アニメ映画化決定”. ガガガ文庫:インフォメーション. 小学館 (2010年4月1日). 2010年4月1日閲覧。
- ^ 『とある飛空士への恋歌』第5巻 pp.167-173 2011年1月23日 初版
- ^ 『とある飛空士への恋歌』第5巻 p127 2011年1月23日 初版
- ^ 「とある飛空士への夜想曲」および新装版「追憶」では特務中尉。
- ^ 『とある飛空士への恋歌』第5巻 p128,p211等 2011年1月23日 初版
- ^ ファナに母の近況を聞かれたシャルルは「病気で苦しまずに亡くなった」と嘘をついている。また、劇場版ではそれは嘘ではなく、事実であるとされている。
- ^ ガガガ文庫版では大瀑布手前での話となっているが、文庫版で波佐見は登場していない
- ^ 物語終盤ではいつのまにか「連装」になっており2挺になっている。
- ^ 第1作物語後半、第2作以降は「水素電池スタック」「DCモーター」という名で記されるようになり、「エンジン」という記述はされなくなる。
- ^ 自分のキャラ、こわしていく 「とある飛空士への追憶」 神木隆之介が声優で参加msn産経ニュース 2011年9月26日
- ^ サンドウィッチマン : 富澤が声優初挑戦 伊達は王子様コスプレ アニメ「とある飛行士への追憶」毎日新聞 2011年10月1日