正教会

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聖アンドレイ・ルブリョフによるイコン至聖三者』。至聖三者三位一体の神)そのものは描けないが、至聖三者を象徴する三天使を描いたイコンであるとされる[1]。正教会において、教会は「ハリストス(キリスト)の体」として、また至聖三者の像(イメージ)として、両面から理解される[2][3][4]。教会とは何かを考えるのにあたり、正教では至聖三者についての言及は避けられない[5]
アメリカの正教会での聖体礼儀聖体機密はその重要性から機密の中の機密と呼ばれる[6][7][8]
八端十字架スラヴ系の正教会でよく使われる十字。この十字のみならず、ギリシャ十字ラテン十字などの他の十字も正教会で使われる。

正教会(せいきょうかい、ギリシア語: Ορθόδοξη Εκκλησίαロシア語: Православие英語: Orthodox Church)は、ギリシャ正教[9]もしくは東方正教会[10](とうほうせいきょうかい、Eastern Orthodox Church)とも呼ばれる、キリスト教の教会(教派)の一つ。

日本語の「正教」、英語名の"Orthodox"(オーソドックス)は、「正しい讃美」「正しい教え」を意味するギリシャ語のオルソドクシア "ορθοδοξία" に由来する[9]。正教会は使徒継承を自認し、自身の歴史を1世紀初代教会にさかのぼるとしている[11]

なお「東方教会」(とうほうきょうかい)が正教会を指している場合もある[9]

例外はあるものの、正教会の組織は国名もしくは地域名を冠した組織を各地に形成するのが基本である。コンスタンディヌーポリ総主教庁アレクサンドリア総主教庁アンティオキア総主教庁エルサレム総主教庁ロシア正教会セルビア正教会ルーマニア正教会ブルガリア正教会グルジア正教会ギリシャ正教会日本正教会などは個別の組織名であって教会全体の名ではない。いずれの地域別の教会組織も、正教として同じ信仰を有している[12]。教会全体の名はあくまで正教会であり、「ロシア正教に改宗」「ルーマニア正教に改宗」といった表現は誤りである[13]

なお、アルメニア使徒教会シリア正教会コプト正教会エチオピア正教会なども同じく「正教会」を名乗りその正統性を自覚しているが、上に述べたギリシャ正教とも呼ばれる正教会とは別の系統に属する。英語ではこれらの教会は"Oriental Orthodox Church"とも呼ばれる。詳細は非カルケドン派正教会を参照。

概要[編集]

指す対象[編集]

正教会とは、東方教会のうち、七つの全地公会議を承認し、ふつう、古代総主教庁(コンスタンディヌーポリ総主教庁アレクサンドリア総主教庁アンティオキア総主教庁エルサレム総主教庁)とキノニア(コミュニオン)関係にある諸教会をいう[14]

信仰内容の概要[編集]

フレスコ画イコン復活』。現在はカーリエ博物館となっている、ホーラ(コーラ)修道院の聖堂内、湾曲した天井に描かれている。主ハリストス(キリスト)がアダムエヴァの手を取り、地獄から引き上げる情景を描いたもの。このハリストスの地獄降りのイコンが、正教会においては復活のイコンとして定着している[15]

正教会は、イイスス・ハリストス(イエス・キリストの中世ギリシャ語およびロシア語読み)の十字架刑による死と復活の証人とされる使徒達の信仰と、使徒達から始まった教会のあり方を唯一正しく受け継いでいると自認している。正教会は、神の啓示を信仰の基盤とし、連綿と受け継がれてきた神による啓示に基づく信仰と教えを、聖伝と呼び、聖伝を伝えていくにあたっては、聖神゜(聖霊)の導きがあるとする[16]。また正教会においては、キリスト教は復活の福音に他ならないとされる[17]

正教会における聖伝の本質は、教会を形成していく人々の生きた体験の記憶である[18]聖書聖師父の著書・全地公会議の規定・奉神礼祈祷書イコン聖歌なども含む)等は個々別々な現れであり、これらの構成要素を集積しても聖伝全体とはならない。なお正教会において聖書は、聖伝の中核であり、使徒らが残した最も公的な啓示と捉えられている[16][19][注釈 1]

正教会においては、信仰は神の存在を認めることにとどまらず、神の慈愛に自らを委ねることであり、行いを伴う信仰が本来の意味における人間の完成を実現し、周囲を明るく照らすものであるとされる。信仰を自分のものとするかしないかは、その人自身の自覚と努力する意志によるとされる[20][注釈 2]

教会に属する全てのものは機密的で神秘的なものとされる。特に聖体機密は「機密の機密」ないし「教会の機密」と呼ばれ、教会生活の中心と理解される[6][7][8]

正教会が信じている内容を簡単かつ適切な言葉で表していると位置づけられるのが、日本正教会では単に信経(しんけい)と呼ばれるニケヤ・コンスタンチノープル信経である[21]

「正教はハリストスの復活のいのちそのもの」「いのちは言葉では伝わらないこと」から、正教について言葉で説明し尽くすことは出来ないことが強調される[10]

沿革・分布[編集]

国別:正教徒の分布状況
  主要宗教となっている地域 (75%以上が正教徒)
  主要宗教となっている地域 (50% – 75%)
  少数派であるが重要な割合 (20% – 50%)
  少数派であるが重要な割合 (5% – 20%)
  少数派 (1% – 5%)
  1%以下の少数派であるが独立正教会の地位を得ているもの

成立期において地中海の沿岸東半分の地域を主な基盤とし、東ローマ帝国国教として発展したことから「東方正教会」の名もあるが、今日ではギリシャ東欧において優勢であるのみならず、世界の大陸すべてに信徒が分布する[注釈 3]。また、中東にも初代教会から継承される少なくない正教徒のコミュニティが存在する。

教会(教派)との関係については、「正教会と他の諸教会が『分裂』した」のではなく、「正教会から他の諸教会が離れて行った」と正教会は捉えている[10]西方教会には逆の観方ないし別の観方がある[22][注釈 4]

20世紀に、正教会が盛んな地域である東欧に成立した共産主義政権の弾圧を受けて大きな人的・物的・精神的被害を受けたが、共産主義政権の崩壊後に各地の正教会は復興しつつある。

日本には亜使徒の称号で後に列聖されたニコライによりロシア正教会から伝道され、日本正教会が成立している。日本正教会では、イエス・キリストを中世ギリシャ語・ロシア語由来の読み方でイイスス・ハリストスと転写したり、"Άγιο Πνεύμα"(アギオ・プネヴマ、聖霊)を聖神と訳したりするなど、用語上、日本の慣例的な表記と異なる点がある。以下、この記事では日本ハリストス正教会で使われている用語を断りなく用いる場合がある。こうした用語については日本正教会の聖書・祈祷書等にみられる独自の翻訳・用語体系を参照。

教会[編集]

全世界の組織[編集]

基本構成[編集]

正教会は上記4つの古代総主教庁(コンスタンディヌーポリ総主教庁アレクサンドリア総主教庁アンティオキア総主教庁エルサレム総主教庁)のほか、独立正教会自治正教会の数々で構成されている[14]

基本的に総主教達は平等である[23]

独立正教会自治正教会の首座主教(総主教府主教大主教のいずれかがその任にあたる)は「同格者中の第一人者」として、他の主教達に比べて若干の特権を持って居る。しかし首座主教といえども、他の主教達・主教会議の同意が無ければ独断では行動できない(聖使徒規則34条)[24]

独立教会・自治教会[編集]

各独立教会・各自治教会には統括する首座主教が居るが、それぞれの教会組織・首座主教に歴史的な尊敬の度合いの違いはあっても権威の優劣は存在しない。カトリック教会におけるローマ教皇をトップとするような組織構成をとらず、各地域の独立教会・自治教会が、正教信仰と使徒時代以来の教会の姿を分かち合って緩やかに結びつき、正教会としての一致を保っている[10]

各教会が区別されながら一つに一致しているのは、「区別と一致」である至聖三者三位一体の神)の姿が教会に映し出されているものと理解される[25]。こうした教会の現状は、歴史上、教会共同体が拡大するにつれ、母体となる母教会から子教会が生まれ出るというプロセスを経て形成された。「母教会」「子教会」「姉妹教会」という表現が使われる[24]

独立正教会自治正教会の中には、正教会に複数ある総主教庁からの承認が一部のみにとどまっているものがある。たとえばエストニア使徒正教会コンスタンディヌーポリ総主教庁からは自治正教会として承認されているが、モスクワ総主教庁からは自治正教会としては承認を得られていない[注釈 5]。逆に日本正教会モスクワ総主教庁からは自治正教会として承認されているが、コンスタンディヌーポリ総主教庁からは自治正教会としては承認を得られていない[14]。ただしこれらの場合、論点になるのは当該教会の地位についてであって、お互いに正教会としては承認し合い、交流も行われている(例:日本正教会の他正教会との交流)。

また20世紀末から、アンティオキア総主教庁、およびロシア正教会に、自主管理教会という教会組織の種別が設けられている。

これらのほかに、マケドニア正教会ウクライナ正教会・キエフ総主教庁モンテネグロ正教会など、上記の正教会の組織からは承認されていない教会組織がある。これらの教会との交流をどのようにするかについては、それぞれの正教会組織において個別に判断されており、全世界の正教会に共通する統一見解は無い。

全世界の正教会独立正教会自治正教会[1]
独立正教会 古代四総主教庁:コンスタンディヌーポリ総主教庁全地総主教庁)|アレクサンドリア総主教庁アンティオキア総主教庁エルサレム総主教庁
ロシア正教会セルビア正教会ルーマニア正教会ブルガリア正教会グルジア正教会キプロス正教会ギリシャ正教会ポーランド正教会アルバニア正教会チェコ・スロバキア正教会アメリカ正教会a
自治正教会 シナイ山正教会フィンランド正教会エストニア正教会a日本正教会a中国正教会aウクライナ正教会 (モスクワ総主教庁系)b
a.^ 独立正教会位もしくは自治正教会位につき、一部からのみの承認。
b.^ 正規の自治正教会としてではなく「自治正教会の広い権を有する自己管理教会」[2]としてモスクワ総主教庁から承認されているが、コンスタンディヌーポリ総主教庁はこれを認めていない。

総主教[編集]

コンスタンディヌーポリ総主教全地総主教とのタイトルを保持し、「対等な者達(主教達)における第一人者」(First among Equals)と呼ばれ敬意を表されるが[26]総主教達は基本的に全て平等である[23][4]

正教会の総主教達(総主教同士は基本的に対等)

正教を国教とする国家[編集]

正教を国教とする国家としてはギリシャギリシャ正教会)、フィンランドフィンランド正教会)、キプロスキプロス正教会)が挙げられる。ロシア連邦においてはロシア正教会が最大多数を占めるが、国教とは定められていない[27][28]

名称・別称[編集]

東方正教会[編集]

東方正教会という別称は、西方教会(ローマ・カトリック、聖公会、プロテスタントほか)に対置される語である。両者は11世紀頃に分立した。東方教会という名称は多く西方で使われる語であり、正教会自身は、たんに「正教」ないし「正教会」の語を好んで用いる[29]。これは「正教」が「正しい教え」であるため、それ以上の限定を必要としないという発想に基づいているほか、現在は正教会の伝道範囲が東方に限定されていないという現状も反映されている。また自称としては「正教徒」が多く使われる。

ギリシャ正教[編集]

英語ではギリシャで発祥した教会という意味で Greek Orthodox Church ともいい、これにあわせて日本では正教会を指してギリシャ正教と呼ぶことも多い。これはギリシア語圏に正教会の中心があったことから誤用とはいいがたく、日本ハリストス正教会関係者のなかにも、ギリシャ正教の語を用いる者がいる[30]。なおギリシャ正教会と呼ぶこともあるが、これは近代に設置された、ギリシャ共和国を主として管轄するギリシャ正教会(ギリシャ共和国の正教会)(Church of Greece) を指す名称でもある。

その他[編集]

「ロシア正教」が教派名として使われる事がままあるがこれは誤りである。「ロシア正教」は教派名ではなく組織名であり、その教義は他の正教会組織であるグルジア正教会ブルガリア正教会セルビア正教会ギリシャ正教会ルーマニア正教会日本正教会などと完全に同様である。また、グルジア正教会5世紀ブルガリア正教会10世紀セルビア正教会13世紀独立正教会として承認されているが(ただしいずれも後代、一時的に地位喪失の期間があった)、ロシア正教会は独立正教会としての地位を母教会から承認されたのは16世紀に入ってからであり、相対的には新しい組織であるという点を鑑みても、「ロシア正教」は教派の別名として用いるのは適切でない[13]

正教会と頻繁に比較される別教派としてローマ・カトリック教会があるが、「オーソドクス」(正しい讃美)と「カトリック」(普遍)は元来、対立概念ではなく、違う文脈から教会の性質を述べるものである(後述)。正教会もまた信経にある通りに、「一つの聖にして『公なる』(カトリケー)使徒の教会」であることを任じており、教会の普遍性(カトリコス)を深く自覚しているが、自教会の名称としては「オーソドクス」を名乗っている[31]

教会とは何か(教会論・聖職者)[編集]

神品による奉神礼の光景。イコノスタシスの向こう側の至聖所宝座手前で水色の祭服を着用し、宝冠を被って奉事に当たっているのが主教。左手前に大きく写っている濃い緑色の祭服を着用した人物と、至聖所の奥に小さく写っている人物が司祭。白地に金色の刺繍を施された祭服を着ている二人が輔祭である。正教会では祭日ごとに祭服の色を統一して用いるのが一般的であり、このように諸神品が別々の色の祭服を用いるケースはそれほど多くは無い。また、祭服をこのように完装するのは写真撮影などの特別な場合を除いて奉神礼の場面に限られている。

基本[編集]

正教会における教会論(教会とは何か)においては、教会はハリストス(キリスト)の体であり、至聖三者(三位一体の神)の像であると理解され、教会の首(かしら)はハリストスであるとされる[4]

「聖にして公なる使徒の教会」[編集]

正教会は信経において「聖にして公なる使徒の教会」とされる[32]

教会は聖なるハリストスの体であり、至聖三者(三位一体の神)の像であり、聖なる神との交わりの中にあるため、聖であると理解される[32]

「公なる」(カトリックギリシア語: καθολικός カソリコス[注釈 6], 英語: Catholic)については、地理的な広がりといった外的なものとしてのみ理解されるべきではなく(地理的に拡大する以前から教会は「公なる」ものであったと理解される[32])、質的な面からも理解されなければならない[33]。「公なる教会」は正教において、充分であり、完全であり、全てを包括し、欠落が無いことを意味する[32]

「使徒の」については、正教会が自教会を、使徒達の信仰と、使徒達から始まった教会のありかたを、唯一正しく受け継いできた教会であるとすることを意味する[10]。また、「ハリストス(キリスト)の体(聖体血)を中心にした奉神礼共同体」としても自教会を捉え、ビザンティン時代に現在のかたちがほぼ確立した奉神礼(礼拝)には、ハリストスと使徒達によって行われた礼拝のかたちと霊性が保たれているとする[10][24]

聖体礼儀[編集]

パンとブドウ酒をハリストス(キリスト)の体と血として食べる感謝の祭儀(聖体礼儀)は、正教会においてキリスト教の伝統の神髄とされる。教会共同体の中心にはこの感謝の祭儀(聖体礼儀)があるとし[24]、この「聖体血を食べる」ことを通じて、信者がハリストス・神と一つとなり、互いが一つとなり、ハリストスが集めた「新たなる神の民の集い・教会」が確かめられるとする[10]

神品(聖職者)[編集]

正教会における聖職者は神品(しんぴん)という[34]

教会という共同体が拡大するにつれて使徒達が自身に代わるものとして共同体の中心に置いた者は主教であり、現代の正教会にみられる主教はこれの継承者であり、主教達のまとめ役として総主教府主教大主教がいる[24][35]

主教の輔佐役として司祭輔祭がいる。司祭は主教区に属する管轄区において奉神礼を司祷し、説教、相談等の職務にあたる。輔祭は聖体礼儀や教会の他の職務に際し、また他の教会における働きに際し、主教・司祭の輔佐を行う。輔祭、司祭、主教の順に叙聖されていくが、司祭と輔祭は輔祭叙聖前であれば妻帯できる(主教は修道士から選ばれるため独身である)[6]

聖伝[編集]

正教会において、聖伝ギリシア語: Ιερά Παράδοση[36], ロシア語: Священное Предание, ルーマニア語: Sfânta Tradiție[37], 英語: Holy Tradition)とは神の民(すなわち正教会正教徒)の生活そのものである[38][39]聖イウスチン・ポポヴィッチは、聖伝について「ハリストス(キリスト)にあっての生活=至聖三者三位一体の神)にあっての生活、ハリストスにあっての成長=至聖三者にあっての成長」とまとめている[40]

聖伝は継続し[38]、教会が聖神(せいしん、聖霊)の導きを受けて生き続けるゆえに、成長し、発展する[16]セルゲイ・ブルガーコフによれば、「聖伝は今も以前より小さくなることなく恒に続き、私たちは聖伝とその創造の中に生きる」[39]

聖伝の内容には、具体的には聖書聖使徒・衆聖人・致命者聖師父達によるの著述や教え及び行動、奉神礼、初代教会の伝承、全地公会議の確認事項などが挙げられるが[41]、聖伝は全てがこれらの具体的な諸事物に還元できるものではない。聖伝は単なる伝達事項や情報を超えている。聖伝は神について私たちに教え神の知識を教えるが、実際に聖伝の生活に入るとはどのような事なのかを理解するのには、神との交わり(キノニア)の直接的体験が必要であるとされる[42]

聖神(せいしん・聖霊)によって与えられるものは、楽園の更新、天国への上昇、子たる身分の更新、神をあえて自分たちの父と呼ぶこと、ハリストス(キリスト)の恩寵にあずかる者となり、光の子と呼ばれ、永遠の光栄にあずかること、一口に言って、この世においても、また来るべき世においても、ことごとく「満ち溢れる祝福」(ロマ書15:29)の中にあること…

聖大ワシリイ(バシレイオス)、「聖大バシレイオスの『聖霊論』」山村敬訳、p109(南窓社 1996年6月30日発行 ISBN 9784816501951)より、一部を正教会での用語に換えて引用

聖大ワシリイ(バシレイオス)による上記の記述は、教会の聖伝について真の「実存的な」面を示している。正教会において聖伝は、固定された教義でもなければ、画一的な奉神礼の実践でもない。確かに聖伝には教理や奉神礼の定式が含まれるが、それらを超えて教会の日常生活を通して体験される、イイスス・ハリストス(イエス・キリスト)の恩寵と、神父(かみちち・父なる神)の仁愛、聖神(せいしん・聖霊)交親(交わり・キノニア)コリンフ後書13:13)を通しての神の民の変容があるとされる[43]

教会にある全てのものが聖伝とされるわけではない。神の国とは本質的には関係がなく、一部の地域でのみ習慣的に行われているものもある。[16]教会の中にあるものが聖伝かそうでないかは、「使徒時代に遡るものか(聖書に基礎づけられているか)[16][36]」「全ての教会に受け入れられ聖師父によって教えられているか[36]」などによって判断される。なお、全ての聖師父による著述が同等の権威を有するわけではなく、特に重要と判断されるものとそうでないものとがある[44]

注釈[編集]

  1. ^ 正教会においては「聖書は聖伝の中核」と捉える。これに対し、カトリック教会は「聖書と聖伝を同じく尊敬すべき」とする。プロテスタントには、聖書以外の伝承も重視する者もおり一概には言えないが、傾向として基本的には「聖書のみ」の姿勢をとる。
  2. ^ 信仰について、「その人の意志による」とはしない教派もある。たとえば予定説の立場をとる者は「その人の意志による」といった文言・考えを認めない。
  3. ^ 南極大陸にも正教会がある。リラの聖イオアン聖堂を参照。南極圏に範囲を拡大すればキングジョージ島至聖三者聖堂 (南極)がある。
  4. ^ ローマ・カトリックの側に立った見解においては「最も古いローマ・カトリック教会西方教会)から東方正教会が分離した」となる。正教側の見解はこれと異なっている。少なくとも歴史上、ローマ教皇が東方教会に対して西方教会に対するのと同じような権限を行使し得た史実は無い(逆に東方の総主教が西方に対して一方的権限を行使したことも無い)。平等な総主教達の中からローマ総主教(教皇)が東方から分かれて行った、というのが正教会における認識である。このように、東西教会のいずれも、自らこそを正統であると自認している。東西両教会は8世紀から13世紀にかけて長い時間を経て差異を深め分裂に至った。詳細は東西教会の分裂を参照。
  5. ^ コンスタンディヌーポリ総主教庁庇護下の自治正教会であるエストニア使徒正教会の他に、モスクワ総主教庁庇護下に自主管理教会としてのエストニア正教会がある。
  6. ^ καθολικός…「カソリコス」は現代ギリシャ語転写。古典ギリシャ語再建音では「カトリコス」。

参照元[編集]

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  1. ^ 至聖三者(三位一体)のイコン - 大阪ハリストス正教会のページ
  2. ^ エフェス書 1:23を根拠とする。Глава IX. Два аспекта Церкви - Очерк мистического богословия Восточной Церкви - Владимир Лосскийウラジーミル・ロースキイ
  3. ^ 信仰-教会:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
  4. ^ a b c Orthodox Ecclesiology in Outline by Fr. George Dragas
  5. ^ Γ. Η Τριαδολογική βάση της Εκκλησιολογίας (ギリシャ語) C. The Trinitarian basis of Ecclesiology (英語)Σημειώσεις από τις παραδόσεις τού καθηγητού Ι. Δ. Ζηζιούλαより)
  6. ^ a b c トマス・ホプコ著・イオアン小野貞治訳『正教入門シリーズ2 奉神礼』14頁・17頁、西日本主教区(日本正教会)
  7. ^ a b OCA - The Orthodox Faith - Volume II - Worship - The Sacraments - The Sacraments
  8. ^ a b OCA - The Orthodox Faith - Volume II - Worship - The Sacraments - Holy Eucharist
  9. ^ a b c 日本正教会|ハリストス正教会 The Orthodox Church in Japan
  10. ^ a b c d e f g 正教会とは:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
  11. ^ 『正教会の手引き』8頁 - 11頁
  12. ^ OCA - Q&A - Greek Orthodox and Russian Orthodox - Orthodox Church in Americaのページ。(英語)
  13. ^ a b 正教会(ギリシャ正教:東方正教会)・ニコライ堂について よくある質問
  14. ^ a b c "The Blackwell Dictionary of Eastern Christianity" Wiley-Blackwell; New edition (2001/12/5), p169 - p170, ISBN 9780631232032
  15. ^ 府主教ダニイル主代郁夫『2009年 復活大祭』正教時報 2009年4月号、7頁
  16. ^ a b c d e 教え-聖伝:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
  17. ^ ハリストス復活!実に復活!名古屋ハリストス正教会内のページ)
  18. ^ 『正教要理』18頁 - 19頁、日本ハリストス正教会教団 昭和55年12月12日第1刷
  19. ^ Scripture and Tradition | Antiochian Orthodox Christian Archdiocese
  20. ^ 『正教要理』2頁 - 5頁、日本ハリストス正教会教団 昭和55年12月12日第1刷
  21. ^ 『正教要理』20頁、日本ハリストス正教会教団 昭和55年12月12日第1刷
  22. ^ CATHOLIC ENCYCLOPEDIA: Eastern Schism
  23. ^ a b 高橋(1980) p94
  24. ^ a b c d e クレマン(1977) p104
  25. ^ 『正教会の手引き』6頁
  26. ^ First among Equals; Greek Orthodox Archdiocese of America
  27. ^ Bases of the Social Concept of the Russian Orthodox Church
  28. ^ Politics in Orthodox Christianity
  29. ^ 11世紀頃には「神聖にして正統普遍なる使徒の東方教会」と称していたとする説もある(尚樹啓太郎『ビザンツ帝国史』1999年 東海大学出版会 P522より)
  30. ^ 高橋保行『ギリシャ正教』(講談社学術文庫)、1980年。ISBN 4-06-158500-2
  31. ^ 信仰-教会:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
  32. ^ a b c d OCA - The Orthodox Faith - Volume I - Doctrine - The Symbol of Faith - Church
  33. ^ パーヴェル・エフドキーモフ著、古谷 功訳『ロシア思想におけるキリスト』129頁 - 130頁(1983年12月 あかし書房)ISBN 4870138093 においてアレクセイ・ホミャコーフ(1804年 - 1860年)の考察として記述
  34. ^ かたち-聖職者と修道士:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
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  36. ^ a b c Ιερά Παράδοση - OrthodoxWiki
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  38. ^ a b OCA - The Orthodox Faith - Volume I - Doctrine - Sources of Christian Doctrine - Tradition
  39. ^ a b Священное Предание 《Закон Божий》
  40. ^ The Attributes of the Church, by St. Justin Popovich - ArchangelsBooks.com
  41. ^ Introduction: What Is The Greek Orthodox Church? Greek Orthodox Archdiocese of America
  42. ^ Священное Предание (АЗБУКА ВЕРЫ、司祭:オリェグ・ダヴィデニコフ)
  43. ^ Tradition in the Orthodox Church; Greek Orthodox Archdiocese of America
  44. ^ 教え-生神女マリヤ、聖人、聖師父:日本正教会 The Orthodox Church in Japan

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]