快楽殺人
快楽殺人(かいらくさつじん)は、何らかの快楽を得る目的で行う殺人のことである。性的快楽を目的とした場合は、セックス殺人と呼ばれることもある。また、世間一般的に多くの殺人は、怨恨や金銭目的であり恨みの対象の人間が死ぬことや金銭を得ることもまた快楽であるが、快楽殺人は、通常の殺人と比較して、常軌を逸しているため、異常殺人と呼ぶ者もいる。
目次 |
[編集] 快楽殺人の起源
- 近代における快楽殺人
- 一般的に世界初の快楽殺人・連続殺人は、19世紀末期のロンドンの貧民街で発生した切り裂きジャック事件(Jack The Ripperと呼ばれる)といわれている[要出典]。その後またイギリスで発生した。第一次世界大戦後の混乱したドイツでは4人もの殺人犯が同時期に発生しており、そのうちの一人、「デュッセルドルフの怪物」と呼ばれるペーター・キュルテン(彼が最初の殺人を犯したのは9歳の時である)が、短編ではあるが手塚治虫の漫画にもなった。
- この他、ハノーファーに住む探偵兼肉屋のフリッツ・ハールマンは安定した肉の供給を得るために、主に若い浮浪者の男性や家出少年を殺し、人肉を豚肉と称して近所の主婦たちに売っていた[要出典]。事件の発覚が遅れたのは、ハイパーインフレの混乱下で警察が充分な人員をそろえられなかったこと、浮浪者や家出少年が行方不明になることは日常茶飯事で、警察もその捜索には不熱心であったことに加え、ハールマン自身がハノーファー警察の有力な情報提供者であり、ハノーファーの暗黒街に精通した情報屋を失うことを恐れたためである。
- ベルリンでホットドッグの屋台を営んでいたゲオルク・グロスマンは、主に若い娼婦を殺して解体し、ホットドッグの具に使ったり、肉屋に売っていた。シュレージエン地方の富豪カール・デンケは、金を使うのがもったいないという理由で浮浪者を殺し、瓶詰にして保存食を作っていた。ハールマンとキュルテンに対しては死刑が執行されたが、グロスマンとデンケは死刑判決後、ともに獄中でサスペンダーを使って首吊り自殺した。しかし、快楽殺人が大量発生したのはベトナム戦争中期以降の先進国、主にアメリカ合衆国であった[要出典]。
- 近代以前における快楽殺人
- しかし、近代以前では全く発生してないかというとそういうわけではなく、有名なところではジャンヌ・ダルクの戦友の一人のジル・ド・レイという男が、国王に匹敵するという自分の財産を湯水の如く使い快楽殺人の限りを尽くした。被害者は主に少年。後に裁判で処刑。被害者は150人から1,500人(正確な数は不明)。大富豪だったため、どうやら利権争いに関係したと思われる。
- 女ではハンガリーの女性貴族バートリ・エルジェーベトが、処女の血を浴びると若返るという幻覚を見て大勢の若い処女が殺された。本人の日記が正しいとするなら、612人殺害したことになる。事実が判明した後に、光が全く届かぬ部屋に監禁され衰弱死した。
- また中国では有名な人物として、南北朝時代の宋の後廃帝も殺人が大好きで、一日に1人は殺人を行わないと気が済まない性格をしていた。被害者数はわかっていないものの、その性格から15歳の時に部下に殺害された。これ以外にも、殷の紂王や呉の孫皓など多数の快楽殺人や拷問好きの君主が存在した。彼らはいずれも権力があり、貴族などの特権階級に多い。
[編集] 快楽殺人者に至る過程
快楽殺人は近代まで発生しなかったが、その原因は殺人者の生い立ち、社会環境、家庭環境(性的、身体的、精神的虐待)、トラウマ、サイコパスなどが関わっているといわれている。ロバート・K・レスラー著『快楽殺人の心理』によれば、或る刑務所被験者の快楽殺人者の全員が男性であり、全被験者36人中33人(90%)が白人であるという。彼ら(回答した27人中20人)のほとんどが「家庭が安定していた」「満足出来る家庭環境にあった」(35人中30人)と回答しているとされている。
- 家族が抱えていた問題
しかし、その中にも家庭の問題が存在しているという。
- 家庭内にドラッグ中毒の病歴を抱えた者がいた - 27人中9人
- 精神疾患者がいた - 30人中16人
- 犯罪歴がある者がいた - 32人中16人
- 性的な問題があった - 26人中12人
- アルコール中毒の者がいた - 29人中20人
と回答していると記されている。
- 家庭内虐待の問題
- 身体的虐待行為があった - 31人中13人
- 心理的虐待行為があった - 31人中23人
- 性的虐待行為があった - 28人中24人
- 幼年期(1~12歳) - 12人
- 少年期(13~18歳) - 9人
- 成人後(19歳以上) - 10人
性的虐待にも多々ある。性的虐待はセックスだけではない。性的な現場を目撃した、親の性交を目撃した、マスターベーションを禁止された。それとは気付かないかもしれないが、母親、若しくは父親と10歳以降も一緒に寝ていた(寝かされていた)などもその一種だという。中には、性行為に因って外傷、性病に罹った、自分の性器を傷付けた、性行為に嫌悪を感じたなどの考えを持つ者もいる。成人後の性的虐待については、刑務所などで行われる場合がある。
- 家族・保護者との関係
- 引っ越しを繰り返した - 34人中23人
- 12歳になる前に父親が家を出て行った - 36人中17人
- 母親が家庭の主導権を握っていた - 32人中17人
- 男性保護者と不仲だった - 36人中26人
- 母親と不仲だった - 36人中16人
- 不公平に扱われていると感じた - 28人中15人
- 手本になる兄や姉がいなかった - 36人中16人
成長過程の子供にとって、両親・保護者を始め、家庭にどのように接していくかというのは、社会に出た際に他者をどのように評価し、どのように接していくか。また、どのような関係を持つのかを決定する上で非常に大きな意味をなす。また、家庭環境や社会環境も大きく関わっているという。
前記したように、快楽殺人は秩序型・無秩序型・混合型に関わらず、犯行の根源は“空想”であり、生活の主な基盤となっている。この空想は、年と共にエスカレートする場合や、幼少の頃から過激な空想を抱く者もいる。それに陶酔していくと、行動に移したくなり「何時かやってみたい」~「やってやる」といった現実化に向けて変化する者が快楽殺人者である。
快楽殺人の特徴として、彼らの犯行は“殺人+性的行為”で構成されているのだという。“殺人=快楽”という快楽殺人者もいないではないが、一般的には“殺人=興奮”だという。性行為はセックスだけとは限らず、秩序型・無秩序型・混合型の殺人者達は性的行為を空想することだという。快楽殺人者だけに限ったことではないが、外部への攻撃は先ず遊びの中に反映される。そして動物虐待が行われる。それが、以降の犯罪手口に反映されるという。
例えば、ある快楽殺人者は、動物との性交中に刺したら刺激が増したので、対象が人間になった際もレイプしながら刺し殺した。
また別の例では、子供の頃に同じ年の子供の言動にカッとなった当時の殺人者は、手斧を持ってその子供を追い回したのだという。彼の犯罪手口は手斧で襲い、レイプして頭を叩き割るというものだった。動物虐待までに至った際、殺害行為は傍目からすると彼らの人格が激変したと思いがちだが、実際は極めて意識的・前意識的に行われている、というのが上記のことにかかってくる。そのプロセスは、快楽殺人者達の人生における暴力と殺人との重要性を更に高めることになる。
[編集] 快楽殺人犯が捕まえられにくい理由
犯罪が続けば普通逮捕率は高くなるが、快楽連続殺人犯は、ほとんどが見ず知らずの人間を襲っているため、殺人事件を解決するのに重要な要素である被害者との接点が極めて薄い。というより、無いことの方が多い。ゆえにどこの国でも解決に至らないケースが非常に多い。アメリカでプロファイリングという捜査方法が誕生した。
殺人事件は死体が無ければ、起訴が非常に難しい。起訴できなくはないが、明確な状況証拠や瑣末であっても決定的な被害者の被害が確定できる証拠がない限り、起訴はできない。よって、被害者がホームレスや家出をした少年少女、街娼などで殺された後に目撃者もおらず、山に埋められてしまうなどの場合、死体が見つからなければ行方不明としか判断できず(死亡の客観的証拠がないため)、捜索届が出ないことから完全犯罪になってしまう可能性が極めて高い。そして次の殺人を別の州(日本では県)で行うと管轄や縄張り争いが発生し(それも殺人の手口を変えられると)、捕まらず殺人が続いてしまう。これを実行したのが、グリーンリバーの殺人鬼ことゲイリー・レオン・リッジウェイ(Gary Leon Ridgway)である。
[編集] 快楽殺人と連続殺人の関係
快楽殺人は連続殺人に非常に結びつきやすい。前述したように動機が生理的嗜好だからである。これらの被害が深刻なアメリカでは、快楽殺人犯が出所できる確率は1%以下である。その1%以下の人間も精力減退の薬を飲むことが義務づけられ、また住む場所を公開しなくてはならないため、モーテルで暮らし続けるなど、まともな暮らしをすることができない(この扱いについては賛否両論ある)。そのため、連続殺人犯が殺人をやめるのはヘビースモーカーにタバコをやめさせるより難しいと語る人もいる。快楽殺人者は殺人の他にも窃盗、恐喝、強盗等の相対的に軽微な犯罪に手を染めている者が多い。
このように快楽殺人は、先進国の現代病とも言える。しかし現代でも旧ソ連のアンドレイ・チカチーロや(特にソ連は『連続殺人者などというモンスターは資本主義にしか発生しない』と思っており、逮捕が大幅に遅れ被害者が拡大した)前述したように貧窮にあえいでいたナチス登場前のドイツのように生活が苦しくとも発生しており、因果関係は少ないという主張もある。
[編集] その他
快楽殺人はよく映画の題材とされる。異常心理としての快楽殺人に関心を持つ者だけでなく、猟奇的な快楽殺人を自分では実行しないものの、それを好む者が現実に多くおり、連続殺人犯がそういう嗜好をもつ者に崇拝されているケースもある。例えば、連続殺人犯の中でも特に常軌を逸した殺人をしたエドワード・ゲインなどがそれにあたる。彼の異常犯罪ぶりは、オカルト映画でも取り上げられることが多い。
日本における快楽殺人としては、1970年代の大久保清による事件や、1989年の女子高生コンクリート詰め殺人事件(拷問殺人でもある)や、東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件、1993年の埼玉愛犬家連続殺人事件、1996年の広島タクシー運転手連続殺人事件、1997年の神戸連続児童殺傷事件、2005年の自殺サイト殺人事件、2006年の大阪姉妹殺害事件等が挙げられる。また江戸時代では辻斬りが挙げられる。しかし、快楽殺人だと思えても、犯人が捕まっておらず、動機が不鮮明である事件(名古屋妊婦切り裂き殺人事件・井の頭公園バラバラ殺人事件など)や、特に動機が無く、純粋に人を殺すことだけが目的の事件(豊川市主婦殺人事件・米沢エヴァンゲリオン殺人事件・会津若松母親殺害事件など)は快楽殺人に分類されないことが多い。昔の捜査手法では、面識の無い人間を殺す犯人を捕まえるのは現行犯でない限り不可能に近かった。それでも滝沢馬琴の『兎園小説』、加藤曳尾庵の『我衣』、実録ものとして有名な『藤岡屋日記』には、1806年、江戸で一人歩きの盲人や乞食が連続して襲われ死者7負傷7を出した事件と、同年から翌年にかけて出刃包丁で計22人が殺傷される事件が取り上げられており、これらはなんとか犯人逮捕にこぎつけている。
[編集] 快楽殺人者たち
[編集] アメリカ合衆国
- ゴードン・スチュアート・ノースコット
- アルバート・フィッシュ
- キングズベリー・ランの屠殺者
- ウィリアム・ハイレンズ
- ハーヴェイ・グラットマン
- エドワード・ゲイン
- アルバート・デサルヴォ
- ジェリー・ブルドス
- フアン・コロナ
- ディーン・コール
- エドマンド・エミール・ケンパー
- ジェラルド・シェイファー
- ポール・ジョン・ノウルズ
- ハーヴェイ・キャリニャン
- ジョン・ウェイン・ゲイシー
- テッド・バンディ
- デビッド・バーコウィッツ
- キャロル・コール
- リチャード・チェイス
- ケネス・ビアンキ&アンジェロ・ブオーノ
- ダグ・クラーク
- モンティ・リセル
- ウィリアム・ボーニン
- ランディ・クラフト
- ヘンリー・リー・ルーカス
- クリストファー・ワイルダー
- チャールズ・ハッチャー
- レナード・レイク&チャールズ・ヌグ
- リチャード・ラミレス
- ティモシー・スペンサー
- ゲイリー・ハイドニック
- アーサー・ショークロス
- スティーヴン・ペネル
- ジェフリー・ダーマー
- アンドリュー・クナナン
- ゲイリー・リッジウェイ
- デニス・レイダー
- ロナルド・J・ドミニク
[編集] カナダ
[編集] イギリス
- 切り裂きジャック
- ジャック・ザ・ストリッパー
- ジョン・ヘイグ
- ジョン・レジナルド・ハリディ・クリスティ
- グレアム・ヤング
- ピーター・サトクリフ
- デニス・ニルセン
- ロバート・ブラック
- フレデリック・ウェスト
- ベヴァリー・アリット
[編集] ドイツ
[編集] フランス
[編集] イタリア
[編集] 旧ソ連・ロシア
[編集] 南米
- ペドロ・ロペス(エクアドル、ボリビア、コロンビアの三カ国で犯行)
- ダニエル・カマルゴ・バルボサ(エクアドル)