私刑

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私刑(しけい)とは、法律に基づくことなく、特定集団(およびそれ自身が定める独自の規則)により決され、執行される私的な制裁リンチとも称される。客観的には「集団暴行」などであるが、加害者側の処罰意図を意識した表現である。

概要[編集]

私刑は、熱狂ヒステリー状態下にあるもの含め、観衆・集団のある程度の支持のもとなされる場合がある。民族紛争の際に民兵集団により行われる非戦闘員への残虐行為も私刑といえる。

中世以前のヨーロッパでは、フェーデアハトのような私刑原理があり合法であった。しかし1400年代になり公権力による刑罰権の回収が行われると私刑は違法になった。ドイツでは1495年マクシミリアン1世による「ラント平和令」の制定によって一切の私刑が禁止された。

西部開拓時代フロンティアの地などでの犯罪者に対し、法の裁きを経ず民衆による私的制裁が加えられており、この行為を、アメリカ独立戦争時、暴力的行為を働くことで知られた チャールズ・リンチ英語版大佐、ウィリアム・リンチ英語版判事に因み、「リンチ」と呼称するようになった[1]

アメリカ南北戦争以前において私刑は治安や秩序維持のために行われるものとされ、素行の悪い奴隷や共同体の規範を逸脱するものに対し、民衆の自警組織によって行われるものであった。その後、白人至上主義KKK団が結成され、アフリカ系アメリカ人を対象に私刑を率先して行う役割を持ち、リンチの持つ意味が秩序統制から異人種憎悪の表現へと変化していった[1][2]

日本では、欧米に比べると民間人が徒党を組んで実力行使する歴史や実例が一揆などを除けば多くはなく[3]、リンチという言葉は、よりドメスティックな集団暴力行為(不良少年同士、暴力団同士、家庭内暴力など)を指して用いられることも多い[要出典]

なお、自力救済を含む私刑は、近代刑法もしくはイスラム法などの刑法に代替する宗教戒律の普及すらも十分とはいえないアフリカ諸国では、2014年現在も決して珍しいものではなく、殺人の現行犯や単なる泥棒、或いは民族紛争時の戦争犯罪人などと認定された者が民衆に袋叩きにされ、石打ちにされる、生きたままガソリンを掛けられて放火される、オートバイ市中引き回しにされる等の過程を経て、最終的には恐らく被疑者の殺害に至っている映像や写真が数多く出回っており、英語圏ではこうした私刑をMob Justice(暴徒による正義)と呼称している。

メディア・リンチ[編集]

犯罪事件などを中心に、主として、ワイドショー週刊誌ニュースショー、パパラッチなどによって、庶民感情の犯罪への憎悪や覗き見趣味を煽る形で事件にまつわる被害者加害者を問わず、人間関係やプライバシーなどがマスメディアによって当事者の意向が無視された状態で一方的に流されてしまうことでプライバシーの侵害や名誉毀損が行われている状況の総称。

日本のマスメディアの犯罪報道は、無罪推定すべき被疑者被告人を犯人視して報道することが多い。日本では、確実な証拠が無いと逮捕しないこと、起訴便宜主義によって有罪に持ち込めると確信できる事件しか起訴しないことなど、捜査機関の判断と裁判所の判断の近接が生じていることが大きいと考えられる。これは日本国外でも同様である。

また、被疑者・被告人のプライバシーを暴き立てることによって視聴者・読者の関心が高まりやすいこと、記者クラブ制度によってマスメディアが捜査機関の一部のように振舞っていること、警察、検察の取調べなどの際に被告人弁護士などの第三者がつかないため、警察発表が一方的に報道される傾向が強いことなども大きいと考えられる。松本サリン事件などはその顕著な例である。本論については人権屋も参照。

犯罪被害者に対する報道[編集]

犯罪被害者に対しては、世間一般的にはマスメディアは同情的に流すものと意識されているが必ずしもそうではない。被害者やその親族・関係者が事件にまつわる取材を忌避する傾向や事件に関する報道を流すことを望まないケースが間々見られるにもかかわらず、マスメディアが当事者の意向を無視して、プライバシーを暴露したり、人間関係や事件に関連するトラブルを一方的に報道することもしばしば見られる。

その他のケースとしてのメディア・リンチ[編集]

著名人、タレント、芸能人やそれにまつわる事件のほか、大規模災害の被災者などへの取材活動に関して、視聴率や発行部数の向上など、マスコミが自身の利益に繋がる期待通りの取材成果や映像が得られない場合、彼らに対して横暴な態度を取ることが見られ、これが一種のメディア・リンチではないかとの指摘がある。特に後者の場合には、取材側が大規模災害を一種の「祭り」として楽しんでいる感覚があり、それにまつわる刺激的な演出を求めているために行われる傾向が見られるために、一方的に行われるのではないかとの指摘である。たとえば、報道番組での発言などについてそうした傾向があるとのものである。

現在ではブログSNS内で同様に不道徳な行為を行ったことを告白する人物や、企業等の不祥事、思想的に異なる見解、単なる趣味嗜好の違いに対してまでも、インターネット掲示板で呼びかけて同様のことを行っており、俗に「炎上」と言われている。

主なリンチ事件[編集]

フィクションによる私刑[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b 『概説アメリカ文化史』(笹田直人、堀真理子、外岡尚美編著)p.107
  2. ^ アメリカにおいて1880年から1930年にかけてリンチの犠牲となった者は、白人723人に対し、黒人3220人であった。
  3. ^ 日本においても、明治初期の解放令反対一揆関東大震災時の朝鮮人虐殺事件など、差別的憎悪に基づいた一般民衆による集団暴行事件は過去にあった。

関連項目[編集]