引きこもり

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日本のひきこもり青年(2004)

引きこもり(引き籠もり[1]、ひきこもり)とは、仕事や勉強、人間関係など、日常生活から自発的に退避し、長期間におよぶ自宅、または自室への閉じこもりをもって、社会活動に参加しない状態が続くこと。自宅警備員という俗称がある。

定義と呼称の歴史[編集]

「引きこもり」の意味は時代とともに変化しているが現在の厚生労働省では次のように定義している。

「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態」

時々は買い物などで外出することもあるという場合も「ひきこもり」に含める[2]
- 厚生労働省

また、次のような定義もある。

“Association of Relatives And Friends of the Mentally Ill”

「安心できる場所に退避する状態」
- オーストラリア

もともと「引きこもり」という言葉は、「引きこもる」状態を指す。つまり同じ場所にじっといて出てこない様子のこと。

吉川幸次郎『宋詩概説』には「弾劾されて失脚し、遠く江蘇の蘇州に、別荘を買って『蹌浪亭』と名づけたのにひきこもり」という公職に就いていない、または官職を辞した状態を意味する用例や(岩波文庫版P124、初出1962年)、横山光輝の『三国志』(希望コミックス版24巻、潮出版社、1981年)にも(諸葛亮の台詞として)「これは隆中にひきこもっているころ聞いたのですが」といった用例がある。なお、第2次橋本内閣までは、首相の病気による内閣総理大臣臨時代理の辞令に「内閣総理大臣何某病気引きこもり中内閣法第九条の規定により……」と記載されていた。

前述した厚生労働省が定義しているような「引きこもり」の用法が生まれたのは平成年間以降である。また引きこもりの人を指して「ヒッキー」とも言う。

国立精神・神経センター精神保健研究所によるひきこもり概念の説明[編集]

  • 厚生労働省/国立精神・神経センター精神保健研究所社会復帰部による 「ひきこもり」の概念
    • 「ひきこもり」は、単一の疾患や障害の概念ではない
    • 「ひきこもり」の実態は多彩である
    • 生物学的要因が強く関与している場合もある
    • 明確な疾患や障害の存在が考えられない場合もある
    • 「ひきこもり」の長期化はひとつの特徴である
    • 長期化は、以下のようないくつかの側面から理解することができる
      • 生物学的側面
      • 心理的側面
      • 社会的側面
    • 「ひきこもり」は精神保健福祉の対象である

※調査対象者は次の条件をすべて満たす80例(男66例女14例)。初診時の年齢が12歳から34歳(平均19.8歳)、調査時点で13歳から37歳(平均21.8歳)。

  • 統合失調症躁うつ病、器質性精神病などの基礎疾患がないこと
  • 初診時点で3か月以上の無気力・ひきこもり状態があること
  • 1989年6月の時点で、本人との治療関係が6か月以上続いていること
  • 少なくとも本人が5回以上来院していること(家族のみの相談も多いため)
  • 評価表を記入するための資料が十分にそろっていること

統計的概況[編集]

日本[編集]

NHK福祉ネットワークによると、2005年度の引きこもりは160万人以上。稀に外出する程度のケース(準ひきこもり)まで含めると300万人以上存在する。全国引きこもりKHJ親の会の推計でも同様である。男女比は調査によって区々で、NHKのネットアンケートによると54:46、「社会的ひきこもり」に関する相談・援助状況実態調査報告によると男性が76.4%、殆どの調査報告において男性は6〜8割の割合で女性より多く存在する。
厚生労働省の調査結果では、ひきこもりを経験した者は1.2%、現在20歳代の者では2.4%が一度はひきこもりを経験。男性に約4倍多い。高学歴家庭では、約20人に1人がひきこもりを経験。家庭が経済的に困窮していたかどうかはひきこもりと関係なし

  • 男性に多い
  • 20 - 29歳の者に経験者が多い(40歳代の事例もみられる)
  • 高学歴の両親がいる家庭に多い[2]

引きこもりの高年齢化と長期化[編集]

従来引きこもりは若者の問題であると考えられており、不登校問題と同一視されてきた経緯から、支援対象者は10代から20代を想定した場合がほとんどであった。しかし近年では引きこもりの長期化や、社会に出た後に引きこもりになってしまうケースなどにより、30代、40代の年齢層が増大している。引きこもりの平均年齢は30歳を越え、40代も2割近いという調査結果もある[3][4]。この年齢層では支援の方法も限られてしまい、支援団体でも支援対象者に年齢制限をもうけている場合があり、親も老年期に入っているなどの理由から、行き詰まってしまう場合が多い。また、多くの支援団体では支援内容が若年層を想定したものとなっており、家族が相談に訪れても年齢を理由として支援を拒否されることが少なくない[要出典]行政による引きこもり支援も同様に若年層を想定しており、条例等の名称に若者青少年などを冠していることが多い[要出典]。つまり、行政の対応基準が、実態に沿っていない現状である。

山形県が2013年に引きこもりの実態を調査したところ、15歳以上の県民のうち、引きこもりは1607人だった。そのうち40代以上が717人だった。これはほぼ半数が高齢の引きこもりであるということを示している[5]。こうした現状に鑑み、親が死亡した後のサバイバルプランをあらかじめ考えておくよう提唱する傾向もある[5]

日本以外[編集]

BBC が、日本の引きこもりについての番組を放映した時に、多くのイギリスの視聴者から同様の経験を持つコメントが寄せられた。また、イタリアでも引きこもりが目立ってきており、同国の新聞が特集記事を組んでいる。

同様の現象は、韓国台湾香港アメリカ合衆国オーストラリアイギリスなど多くの国、特に先進国で存在すると見られている。オックスフォード英語辞典には2010年8月、第3版に「hikikomori」の表記で収録された。意味としては“社会との接触を異常なまでに避けること”、“一般的には若い男性に多い”と説明されている。

諸分析・諸見解[編集]

精神分析精神医学から[編集]

ひきこもりと関連の深い精神障害の主なものとしては、広汎性発達障害強迫性障害を含む不安障害身体表現性障害適応障害パーソナリティ障害統合失調症などをあげることができる[6]

厚生労働省の調査研究班が、ひきこもり支援にあたる専門機関の職員などに向けた「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」をとりまとめた。 全国5か所の精神保健福祉センターにおいて、ひきこもりの相談に訪れた当事者184人(16歳~35歳)を対象に精神科診断を行なったもの。 調査結果によると、何らかの精神障害を有していると診断されたのは149人。分類不可とされた1名を除き、
【1】統合失調症などを有し、薬物療法を必要とする群(49人)
【2】広汎性発達障害など、生活・就労支援が必要となる群(48人)
【3】パーソナリティ障害など、心理療法的支援が必要となる群(51人)という、3つに分類された[7]
同じく厚生労働省の調査結果では、56%のひきこもり経験者がこれまでに精神障害を経験していた。しかし精神障害の経験なしの者も44%あった。ひきこもりと同時期の精神障害の発症は多くない。精神障害が合併しやすいが、ひきこもり=精神障害の一症状ではなさそう[2]

生活習慣[編集]

引きこもりというと、まったく外に出られないかというと、そうではない例も挙げられている。程度は人によって異なり、全く自宅から出られない人もいれば、買い物などのために外出する人もいる。自分の趣味に関する用事のときだけ外出する場合が多いとされる(準ひきこもり)。また、近所のコンビニエンスストアなどには出かける人も多いと指摘されている(狭義のひきこもり)[8]

内閣府若者の意識に関する調査(ひきこもりに関する実態調査)」によると、ふだん自宅にいるときによくしていることを聞いたところ、ひきこもり群とひきこもり親和群は、「本を読む」や「インターネット」、「あてはまるものがない」が多く、「家事・育児をする」が少なかった。また、ひきこもり群は、「ラジオを聴く」や「新聞を読む」が多く、「テレビを見る」は比較的少なかった[8]

引きこもりの時期[編集]

引きこもりは、必ずしも学齢期にある者が起こすとは限らず、いったん社会人として自立した者が起こすこともある[9]。また、学齢期に引きこもりを起こした者が、立ち直るきっかけを見出せないまま中年期に達することもある[8]

例えば、東京都が2008年、国がニートと定義する15~34歳の男女に絞って無作為抽出した大規模な調査結果をみても、「自室からほとんど出ない」「自分の趣味に関する用事のときだけ外出する」などの引きこもり状態の人が、都内に少なくとも2万5千人以上いると推計。「引きこもり予備軍」を含めると、その合計は、都内で約20万人に上る計算だ[4]

内閣府が2010年、全国15歳以上39歳以下の者に絞って無作為抽出した3,287人(有効回収数)に対する調査結果をみても、引きこもり群:35~39歳:23.7%、30~34歳:22.0%と引きこもりが高年齢化している[8]

関連項目[編集]

引きこもりを題材とした作品[編集]

詳細はCategory:引きこもりを題材とした作品を参照。

脚注[編集]

  1. ^ 国語辞書-大辞泉「ひき‐こもり【引き籠もり】」
  2. ^ a b c わが国における「ひきこもり」の実態と関連要因:世界精神保健日本調査から(平成22年2月13日)]
  3. ^ 全国引きこもりKHJ親の会の会員331名に対する調査(2008年)
  4. ^ a b 実態調査からみるひきこもる若者のこころ 東京都 2008年
  5. ^ a b “高齢化する引きこもり 親亡き後の「サバイバルプラン」を”. 産経新聞. (2014年3月17日). http://sankei.jp.msn.com/life/news/140317/trd14031707360005-n3.htm 2014年3月17日閲覧。 
  6. ^ ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン厚生労働省
  7. ^ 長期化するひきこもりへの支援~精神保健からのアプローチ~長野県精神保健福祉センター 大沼泰枝 小泉典章
  8. ^ a b c d 若者の意識に関する調査(ひきこもりに関する実態調査)報告書(概要版)平成22年7月 内閣府
  9. ^ ひきこもり開始年齢と期間

外部リンク[編集]