ブラック企業
ブラック企業(ブラックきぎょう)またはブラック会社(ブラックがいしゃ)とは、広義には入社を勧められない企業を指す。
すなわち、労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いたり、関係諸法に抵触する可能性がある営業行為や従業員の健康面を無視した極端な長時間労働(サービス残業)を従業員に強いたりする、もしくはパワーハラスメントという暴力的強制を常套手段としながら本来の業務とは無関係な部分で非合理的負担を与える労働を従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)のことを指す[1]。
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[編集] 概要
元々、ブラック企業という呼び名は暴力団などの反社会的勢力との結びつきが強いフロント企業を指す隠語であったが、近年は従業員に劣悪な環境での労働を強いるなどの企業を指すようになっており、入社を勧められない企業、早期の転職を推奨されるような体質の企業がブラック企業と総称される。
拡大解釈として、事業所の周辺環境や地元地域社会への配慮・貢献、消費者のニーズ・アフターケアに対する考慮が薄い企業などを指して使われることもある。消費者に対するサービスと質が劣悪である場合にも使われることがある。また、この言葉の元々の意味もあり、経営者の怠慢や黒い交際によって反社会的勢力の会社組織への侵入や干渉を許し、組織下層部の従業員に大きな精神的負担を強いている企業をブラック企業の範疇に含めることもある。
言葉の由来には求人広告や、パソコン通信時代のネットワークコミュニティーからなど諸説ある。なお2008年には書籍『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』が出版され、翌2009年に映画化がされている。
ブラック企業には労働集約的な体質の企業が多く、そういう意味ではとにかく多くの人手を必要としているため、正規・非正規雇用のいずれにしても一般的な企業に比べて入社は比較的容易であり内定も早いが、裏を返せば労働集約的な体質の企業において、末端の従業員とは(短期の雇用を前提とした)使い捨ての消耗品も同然の存在でしかなく、常に新人を募集し続けているのが実態である。入社後には厳しいノルマや長時間労働、人のやりたがらない仕事・割に合わない仕事や理不尽な仕打ち、不可解な人事考課、低い給料などが待ち受けており、やがて肉体・精神ともに疲弊し破綻をきたし、最後には企業にとっては用済みの人材として自己都合退職に追い込まれる。平均勤続年数が短い上に短期間での離職率も高く、ハローワークや求人誌・求人サイト・新聞の求人広告の“常連”と化し、広告料による経費の捻出を余儀なくされるなど、人員計画や従業員マネジメントがなおざりにされたいわゆる「人の出入りが激しい」企業体質であることを自ら露呈していることも多い。
従業員に組織の下層で長時間の激務を強いる反面、従業員への教育は十分でなく、専門的な職業スキルや社外でも実用性の高い資格などを身に付ける機会もほとんどない。そのため、国家資格などの客観的な能力の証明以上に職務履歴とその期間の長さを絶対視する傾向にある日本社会においては、ブラック企業は「経歴を荒ませる」「履歴書を汚す」だけの存在であり、特に内情に通じる同一業界での転職活動ではブラック企業に勤務したという事実自体が採用選考で大きなマイナス要素として作用するなど、従業員のその後の再就職活動では総じて不利に働く要因となる。
このようにブラック企業はそれと知らず入ってきた人材の能力・技術・時間・心身を安月給で浪費させて次々と食い潰し、経歴を汚すことによってのみ成り立っている。バブル景気の頃に言われ流行語となった「3K」の概念は主に技能系やブルーカラーの肉体・環境的に厳しい労働を指したものであったが、ホワイトカラーについても消耗品同然に扱うブラック企業はその3Kを超越した、現代の新3K職場とでもいうべきものである。
このようなブラック企業の体質や内情は社会問題・民事訴訟・労災申請・労働基準法違反・事件(侮辱罪・暴行罪・傷害罪・背任罪)などの形で表面化することもあるが、悪質な法令違反で経営者の逮捕などが起きない限り、社名が公に報道されることがない。例えば、合理的理由のないリストラや名ばかり管理職、サービス残業強要、パワーハラスメント、偽装請負、過労死[2]、社会保険の保険料逃れ、派遣切り、不当労働行為、遺族による労災認定訴訟などがある。労働問題以外に企業統治や法令遵守、 企業の社会的責任にまつわる諸問題が取り沙汰される場合もあり、一般的な企業と比べればコンプライアンスについて軽視甚だしいことも多い。
ブラック企業は基本的に日本の企業が慢性的に抱える体質・慣習に根ざした問題であるが、風説・通説に基づいたレッテル貼りという一面も全否定はできず、「会社を退職に追い込まれた、若しくは解雇になった人間が腹いせに流布しているだけに過ぎない」という批判も存在する。しかし、従業員や就職希望者にとってのブラック企業の存在とは単に自身の経歴や履歴書の評価を貶める脅威のみならず、健康や人生設計さえ破壊されかねないリスク要因であり、そのような企業への就職を避けようとインターネットなどでは活発な議論・情報交換が行われており、その中で腹いせや出まかせの情報は完全に淘汰される傾向にある[2]。したがって、「会社を辞めた、若しくは解雇になった人が腹いせに流布している」という批判が対抗言論として成り立っているとは言い難い。
[編集] 特徴
「ブラック企業」体質の具体例としては、以下のような点が挙げられる。これらの実態が分かると誰も入社しないので、後述するように求人誌などで虚偽あるいは意図的に誤解を招くような情報を掲載してでも入社させようとする。
(注:例示されているケースはあくまで一般的に論議されている例であり、実在する会社、固有名詞と一切関係ないことに留意されたい)
[編集] 経営者・上層部に起因する問題
- 責任感の欠如
- 経営者・上層部に「社内で強大な権限を持つ代わりに重い責任も負っている」という根本的な責任の自覚がない。
- 独裁的経営、恐怖政治的経営、ワンマン経営、同族(親族)経営、社会的成功による増長などが要因となり、社長や創業者一族の個人崇拝の強制や、成り行き任せの経営、法制度に対する軽視が蔓延している。
- 部下に対する暴力制裁の横行。殴る側と殴られる側の気持ちの区別が付かない(殴られる側も殴る側と同じ気持ちでいると思い込んでいる)ため、確信犯的にパワーハラスメントを繰り返し、それを指摘されると言いがかりであると主張する。誰しもが自分の意見に同意していることを前提に意見を求めるなど、境界例に通じる場合もある。
- セクシャル・ハラスメント(いわゆる「逆セクハラ」も含む)、暴言や暴力などのパワーハラスメント、職場いじめが起こっても「言われたことができないから」とか「指示に従わないから」と黙認、正当化する。または上司や幹部が職場いじめに加担している。問題化した際には激励・叱責・教育などと主張したり、「そんなことしたつもりはない」と関与や管理責任の全否定に走る。
- 末端従業員の犠牲と大量消費を前提とした経営
- 一時的に大量採用したり、社員を全員名ばかり管理職にするなど、従業員の過剰な負担や、短期の雇用による使い捨てを前提としたビジネスモデルが構築されている。
- 雇われ店長、名ばかり管理職などの一部の現場の責任者がまともな権限を与えず責任だけを負わされる。不祥事や事故が起きても末端社員に刑事責任・社会的責任や国家資格の剥奪などのペナルティを全て負わせ、経営陣には一切の責任が及ばないシステムが巧妙に構築されている。
- 上層部と一般従業員や中間管理職の間には血縁と云った決して越えられない壁がある。
- 周辺人物や交友関係が原因の労働環境の悪化
- 経営者・上層部に暴力団などの反社会的勢力やフロント企業との関係がある。あるいは、それらの構成員が内密ないし公然と経営に関与・干渉している。
- 経営者・上層部にカルト、宗教団体、新興宗教との繋がりがあり、会社組織やその上下関係が教勢拡大に利用されている。
- 会社経営の知識が一切なく、経営的責任を負う立場でもない社外の人物(経営者の親など)や、経営者や会社と特定の利害関係を持つ人物が会社組織に入り込んで我が物顔で跋扈したり、会社や資産を私物化している。従業員の人格や現実性を無視した宗教的、理想主義的な経営に走ったり、反社会的勢力による組織や経営への介入・干渉が引き起こされるなど、労働環境悪化の原因となる。
[編集] 組織の欠陥
- 組織の硬直化
- 合理的かつ合法的に仕事を行う組織やルールを作らない、作ることができない。存在していても、そういった文章があるだけで、職務分掌がまともに機能していない。
- 「はい」以外の返答の禁止、「サービス残業は誇りである」「パワハラは教育」といった異常なポジティブ思考の強制など、上意下達と絶対服従のみが徹底化された組織。下層の従業員は会議にも参加できず、業務上の問題点の指摘もできない。
- 問題行為の横行、上層部の自己保身が容易
- 自分の成績や自己保身のために部下や周囲を次々と食い潰すクラッシャー上司[3]や、同様の行為を部下や同僚に行う正社員・従業員を放置し、また職場の問題として認識・対処するシステムがない。
- 従業員の人格や人権を軽視した洗脳的な教育や研修。具体的には、能力開発、研修、自己啓発と称して人里離れた交通アクセスの不便な場所への泊り込みのセミナー参加を強制し、従業員への洗脳を施し、会社のために命を投げ打つことも厭わなくさせる。
- 自分たちが責任を負うべき指示は口頭で済ませる。レコーダーなどで録音[4]しない限り証拠が残らないので、指示者がミスをしても証拠がない。一方従業員が責任を負うとする念書や誓約書を強要し、書類は自分たちで管理し、従業員にコピーの控えを持たせない。
- 恣意的かつ報復的な業務命令や人事(パワーハラスメント)の横行。客観的・合理的で正当な業績評価や職務評価が行われない結果、適材適所の人材配置ができない。
- 前述のパワーハラスメント、職場いじめにより従業員を屈服させ、経営者や幹部に逆らえないようにさせる。軽微なミスでも多数の面前で声高に罵倒し始末書を書かせたり「日勤教育」に類似した監禁や自主退職強要。
- 監査役が形だけで機能せず、経営陣と共に企業犯罪に加担しているケースもある。名義だけ監査役の人間がいる場合もある。会社の不正や法律違反・問題が起きた場合に取締役会議や経営者側に問題提起をしたり警察、法律機関に通告をしない。
- 従業員への過重な負担
- 強烈なプレッシャーとストレスが掛かり続ける結果、会社組織末端の従業員や下級管理職が鬱病やPTSDなどを発症して次々と倒れてゆく。最悪の場合、自殺者が発生する。
- 仕事とプライベートの区別がない、公私混同の蔓延。「アットホーム」「人のつながりやコミュニケーションを大切にする」などを口実に、社員の休日とプライバシーや私人としての活動に干渉。会社の行事(飲み会などの懇親会や朝野球など)や政治活動(主に経営者が信奉している政治団体や政治家の集会など)にも参加を強制。これらの行事に欠席したら無断欠勤扱いする場合も。同様に、会社主催のボランティア活動(清掃活動など)にも自由参加としていながら、実質は強制参加。表彰されるのは会社と社長だけ。
- 業務を遂行する上で必要ではないが、組織の体面上数が多い方が都合の良い、特許の申請件数、資格の保持者数、科学技術関連の学会加入者数といった、明らかにノルマとして課すのは不向きな事柄を所属部署単位でノルマとして押し付ける。件数がノルマに満たなければ、業務とは全く関係ない事柄からでもいいから探し出し、とにかく数だけ合わせるように、といった軍隊式の員数合わせに酷似した支離滅裂な指導がなされる。特許の場合、その権利は原則従業員個人に帰すべきはずなのに、従業員が自主的に会社へ譲渡したといった体裁を整えた念書の提出を強制し一方的に取り上げる。むろん、資格試験の試験料、学会費の支払いは従業員の個人負担である。
- 従業員の家族までも対象にした社外活動や、それを契機にした「家族会」の活動、社内結婚・お見合いの半強制的な“推奨”、冠婚葬祭への介入などで従業員を家族ごと会社にがんじがらめにする。
- 従業員の対抗への封じ込め
- 労働組合(特に日本共産党系の全国労働組合総連合傘下となる)を作らせないか御用組合に強制加入させる(黄犬契約で違法)。
- 経営陣が従業員の言動を(秘密警察的に)監視する。社内の盗撮や電話の盗聴、監視カメラ、密告の奨励、交友関係の監視やサーバー上に保存されているメール・インターネットのアクセス履歴の盗み見など。目的は従業員同士の団結をさせないこと。
- 行政機関(労働基準監督署・社会保険事務所など)に呼び出され、または職員が訪問してきた際、経営者に不都合な話を聞かせないよう、社員を隔離する。
- 家庭訪問、もしくは別の何かを口実にした家庭訪問に相当する自宅訪問がある。家族構成や自室、所持品をチェックされる他、家族を好印象で抱き込み従業員が家族に職場での不満を漏らしにくくする目的があると思われる。
[編集] 給与・待遇の問題
- 激務で長時間労働・過重な責任
- 常に収益の向上を名目とし、人件費削減を過剰に追求しているため、仕事量と内容に対して人数が絶対的に不足しており、作業量が過重な上に増員や分業もできない。例えば技術的な知識の浅い素人が「セールスエンジニア」「技術営業部」などの肩書きで、「外回り営業」をしながら同時に「自社製品のメンテナンス」を兼任させ、本来は專門技術が必要な「修理作業」も行わせる。
- 残業が当たり前で、定時に終わらせることなど到底無理な仕事量を押し付ける。定時に社員全員のタイムカードを押させるなど工作し勤怠記録を偽造、あるいは勤怠記録を捏造する場合もある。または「定時までに仕事をこなせなかったお前が悪い」「会社の電気代を使ってまで仕事させているからありがたく思え」などと叱責しサービス残業を強制することも。
- 勤務時間外や休日の「接待」(特に「接待ゴルフ」)に付き合わせる。
- 人事考課制度や給与システムの意図的な運用
- 「成績や頑張りに見合う」「努力が報われる」給与制度として成果主義や年俸制を導入。本来の目的は人件費削減。営業部門・技術部門だけでなく定量的な判断が難しい人事・総務部門にすら導入。上層部は難癖をつけて社員の俸給を上げないように意図的に悪い評価を付ける。
- 裁量労働制やフレックスタイム制を悪用して、社員の拘束時間を無制限に延ばし、残業代を出させないために導入しようとする。
- 当直の労働基準監督署への届出をしていないのに、当直と言い張り、時間外の勤務に対して労働対価を支払わない[5]。
- 交代勤務(2交代)の場合、拘束時間が12時間であることを直接記載せず、実働時間が8時間であるように誤認させる。
- 例:「昼勤 9:00〜18:00 / 夜勤 21:00〜6:00」(昼勤の18時〜21時、夜勤の6時〜9時も残業として拘束時間に含まれる)
- 週休一日のみで週40時間の労働を順守できないにもかかわらず、届出に「週40時間」などの虚偽を記載させる(残業時間を除く)。
- 有給休暇を認めない、もしくはセミナーや焼肉大会など強制参加の行事を有給扱いとし消化させる。
- 薄給の上に経費が自腹
- 転勤や備品代などの諸経費を全額または一部を自己負担させる(会社負担がない)。出張に必要な交通費や宿泊費でさえ、自己負担もしくは給与から天引きされる。
- 勤務に必要な制服や道具などを会社が負担・支給せず、逆に従業員に購入させる。購入が入社の条件というケースも見られる。
- ノルマ未達成の苛烈なペナルティ
- ノルマが達成できない場合、所得税や保険料などを控除した手取り額を時給に換算した場合の額が最低賃金以下になる。「罰金」などの名目で控除したり、給与を自主返納させたり、「自爆」(営業社員が自社製品を自分や家族名義で自腹で購入したり契約を結ぶ隠語のこと)行為を強制させて手取りがマイナスになる場合もある。
- あらゆる不可抗力に対しても罰金を取る。
- 例:設備の自然故障や、悪天候・自然災害などによる電車の遅延や運休、刑事事件などに巻き込まれた時でも例外なく罰金を取る。
- 心身の健康を害するほどの身体的・精神的ストレス
- 2交代制の交代勤務や、交代制勤務でなくても終電過ぎまでの勤務や何日も会社に泊り込んでの仕事など、体調を崩したり、鬱病(うつ)などの精神疾患を発症する。さらに過剰なストレスによるPTSDの発症、発作的な自死や過労死など生命を失う事態も。
- 上述の「クラッシャー上司」にまつわる諸問題。「クラッシャー上司」の部下にされた者は過剰なプレッシャーとストレスを掛け続けられ鬱病を発症し、次々と倒れてゆく。
- スキルアップとキャリアアップは皆無
- ブラック企業では従業員は数ヶ月から数年で退職に追い込まれる羽目になる。だが、仮に何年も勤続したところで社外でも通用するだけの業務スキルはほとんど身に付かず、キャリアアップは実質的にない。そのため、退職後の転職活動では勤務した履歴がマイナスにのみ働く。
- 対外的に通用しスキルアップに繋がる資格の取得に対しては、消極的な姿勢を取る。資格取得は資格手当など人件費増加の要因であり、特にブラック企業では企業が必要とする従業員である場合にも対外的に通用する資格の取得完了が退職の契機になるため。さらには受験資格の証明などの必要書類を発行しない、実技試験がある場合でも社内の機械・工具での練習を許可しないなど、受験自体を妨害する。
- 資格取得のノルマ化
- 「社内全体のスキルアップ」などを名目に、社外では通用しない内容の社内資格制度が乱発され、その取得数を部署や営業拠点の単位で競わされ、従業員単位で見れば事実上ノルマ化している(「接客マイスター」「お客様対応エキスパート」など)。
- 社外でも通用する資格の取得を会社が命令することもあるが、この場合、会社と取引関係がある企業の運営する民間資格・ベンダー資格であったり、国家資格・公的資格の場合は合格率の低い難関資格など、会社の都合による資格の取得で、これが絶対ノルマとして課される。
- 忌引制度の有名無実化
- 肉親や配偶者、実子が死亡した場合は認められることもあるが、同じ身内でも祖父母、兄弟姉妹、おじ・おば、甥・姪、従兄弟、孫、配偶者側の親類の場合だと認められない。
- 契約社員や派遣社員、パートになれば、忌引そのものが一切認められない。仮に認められた場合でも、有給として処理されてしまい、査定に響くこともある。
[編集] 退職
- 常識的な円満退職は期待できない
- 従業員側からは短期間かつ単純には辞められない。「どこに行っても通用しない」などと脅迫したり、退職日を勝手に先延ばしする。一方で会社側からは自由に退職(実質的には解雇)させられる。
- 強制的な借金や強制貯金。退職する際に借金返済を迫るなど、会社に縛り付けるために行われる。風俗業や日雇業に見られる。
- 退職の理由欄に「自己都合」などと記入するよう強制する。労働基準監督署へ提出する書類にはセクハラなどで退職する場合でも一切「会社都合」と記載させない。再就職に影響が出ると脅す場合もある。
- 退職者が離職票を請求しても「法律で義務付けられていない」などの口実をつけて渡さない。同様に会社に預ける必要があり、退職時に本人に返却しなければならない国家資格などの資格証明書を自主的に返却しない。
[編集] 外部からの見分け方
一般的な労務体質の企業であるか、あるいは異常なブラック企業であるかを見極める、その最も簡単な方法は離職率・平均勤続年数・および社員の待遇であるが、離職率の高い企業や平均勤続年数の短い企業は、どのような大手・有名企業や老舗であろうともブラック企業と評価され得る。しかし、離職率や退職者数は外部にほとんど公開されず、公開されている数字の信憑性もまた別であり、企業の実態を見抜く、あるいは推し量ることは難しい。
2011年にはあるNPOの主催で就職活動中の学生を対象とした、“ブラックとそうでない企業を見分ける法”のセミナーが開催された[6]が、高校・大学・専門学校などの教育機関では(ブラック企業は存在しない、とする好意的な先入観から)ほとんど実施されず、若者が「入社して内実をその身で痛感して初めて実態を思い知った」ということになったり、さらには生涯一度の新卒就職の機会をブラック企業への就職で棒に振ってしまうなどということが度々発生していることも現実である。
しかし、社内の内実は、就職後だけではなく、就職を目指しての面接で企業・事業所を尋ねた際などにも、注意深く観察していれば目にできることがある。
ブラック企業は労働集約的な企業体質で人材を次々と使い潰してゆくため、求人を出す頻度は高く、その文面には特徴的な要素が存在する。また、平均勤続期間が短い上に離職率も高いことから、概して企業所在地の周辺地域には数多くの若い退職者がおり、彼らから得られる情報や企業に対する彼らの肯定・否定は、その企業を知るための貴重な情報源の1つである。
[編集] 求人広告
- 離職率
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- 「従業員の平均年齢が○歳前後」と、記載が曖昧→大半が平均年齢前後で退職しており、ベテランがあまりいない。
- 「若い仲間が多く…」→ベテランはいるが、若手社員の退職が多く、社員の入れ替わりが激しい。短期の雇用または使い捨て・使い潰しを前提とした大量雇用を行っている疑いあり。
- ノルマ
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- 「若い社員にも重要な仕事を任せる」→ 未経験者同然なのに仕事の指導やアドバイスがほとんどなく、入社と同時にベテランと同等の仕事をこなすことを要求し、その責任が若手社員に転嫁される。若手社員に重量物の運搬や、危険を伴う作業を押し付けたり、名ばかり管理職に就ける場合もある。
- 「ノルマなし」「頑張った分だけ報われる」→実際はノルマ以上の目標を、「従業員が定めた自主目標」として会社側が設定を強要し、年度の変わり目などに「自主目標」を少しずつ高く設定するよう強要する。達成できなければ懲戒解雇などの制裁が待っている。
- 仮にノルマを達成しても、「できて当たり前」という認識しか持たないため、売上や利益が賃金に還元されない(ノルマの達成に対する手当や報酬がない)。
- 長時間労働
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- 「アットホームな雰囲気」→実際は、上司らが休日やプライバシーへ過剰に干渉してくる。サービス残業・付き合い残業が恒常化。休日も会社の行事に強制参加。
- 「残業なし」→残業「代」がないという意味。自己責任の名目の下「無給」で残業させることであり、管理部門に多く見られる状況。
- 「少数精鋭」→仕事量に対する人員配置がきわめて過少な状況で、まともに分業できていない場合が多い。残業や休日出勤も恒常化し、社員のプライバシーが干渉されやすくなる。大規模人員削減を終えた企業の採用などでしばしば聞かれる文言。
- 給与
- イメージの偽装
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- 「明るい雰囲気」→体育会系的な体質の企業(根性論中心の営業職、精神論中心の社風、経営者や上司、先輩社員による理不尽な暴力や暴言が日常茶飯事)
- 求人誌での好々爺風の初老の男性や綺麗目な女性の写真や、社長と社員が笑顔で語らう写真など無害そうなイメージを前面に出す企業→印象操作によりブラック会社であることを逆に隠そうとしていることを疑わせる。
- 求人広告や会社の求人用パンフレットでの「働きやすい」「実力を発揮できる」「私(僕)の人生を変えた」などの体験談→上層部や求人誌の制作会社による「やらせ」。
- 求人サイトにおける「学生に人気のある企業ランキング」の投票でアルバイトを雇ったり社員を動員させたりして「組織票」を入れさせ、あたかも大学生に人気があるかのように擬装する。
- 「明るい明日」、「明るい未来」、など曖昧かつポジティブな将来像を強調する。→現在はその正反対であるということ。
- 業種・職種の偽装
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- 不人気な業種・職種で募集する際、カタカナ語や専門用語、あるいは独自の造語などを用い、意図的に誤認を導く曖昧な表現が多用されている。
- 高給の職種を強調する求人誌の中には、職種が単に「営業」「販売」(悪徳商法・詐欺的な訪問販売や勧誘の可能性あり)「接客」(違法風俗の業種・職種の可能性あり)「データ入力」(迷惑メール業者や出会い系サイトのサクラ役などパソコンやインターネットを使った犯罪を生業とする会社の可能性)などとしか書かれていない企業もあり、業種や職種を明確に記していないのもある。
- 「講師募集」→悪徳教材会社の訪問販売。また、実際の「教室」である場合でも、異業種の会社が手掛けるサイドビジネスであることも珍しいものではなく、全く門外漢の上司に振り回されたり、講師業とはかけ離れた会社の本業を手伝わされることも多い。
- 内勤事務の求人にもかかわらず「要普免」→物品の調達や別棟の事務所での打ち合わせ、会議などで社用車を運転する必要性もあるが、入社後に人手不足や適性欠如などの口実がつけられ、営業職へ強制的に職種転換されるケースも。
- 派遣会社の「営業」や「コーディネーター」→派遣社員の募集。「現場研修」の名目で、取引先(派遣先)企業に単なる派遣労働者として派遣する。
- 募集職種が「幹部候補生」→小売業や飲食業など、接客業に多い。実際はただの店長募集。正社員募集とセットになっていることが多く、店長が「名ばかり管理職」扱いをされる可能性も。
- 文面とは別に、地元地域で出稿しても人材を集められないために、地元企業としての知名度がない、数十km離れた地域にまで求人広告を出稿している場合もある。
[編集] 面接
- 面接が一切ないか、形骸化している。大量に離職するか離職されてもすぐに代替の人材を確保できるため、よほどのことがない限り採用される。
- 面接時に履歴書や職務経歴書を提出しても、内容を精読せず質問する。
- 質問の際、待遇(給与・休日など)に関する質問をすると、曖昧な返答しかせず、言葉を濁そうとする。
- 「学歴不問」「人物本位の選考」→退職者が多いことと、すぐに代替の人材が確保できることから、入社するなら誰でもよいことの一例。
- 派遣先企業での事前面接→顔合わせ・打ち合わせ・面談・職場見学などの名目で行われる。交通費や拘束時間分の賃金は支給されない。違法行為。
- 休業日、あるいは業務とは無関係な場所で面接や説明会・選考試験を行う。「今の時間はたいして忙しくないから」「個人情報を扱っているので」などとの口実を付け、不都合なものを見せないようにするため職場の見学を拒否する。
- 不採用になった場合、応募者の履歴書・職務経歴書などの応募書類を返却してこない。返却するとしても(会社負担とすべきにも関わらず)応募者に送料の負担を求める(返信用の封筒を添付するよう要求する)。
[編集] 職場
- トイレや玄関だけではなく事務所、休憩室、商品保管場所ですら掃除ができておらず、不衛生極まりない環境になっている。
- 人数の多い企業や部署にも関わらず、制服・作業服などに名札・刺繍など従業員の名前・所属を簡単に確認できるものがない。従業員の入れ替わりが激しい状況を窺わせる。
- 事務所の規模が、求人票の従業員数と大きく隔たりがある。派遣や請負で成り立っている会社である可能性があり、会社間で契約書と出勤表を回して中間マージンを搾取をしているだけの企業である可能性が高い。
- 染髪・アロハシャツ・ピアスなど作業に適さない服装や装飾品をつけていたり、暴力団員のような出で立ちをした者が経営陣・管理職の中にいる。フロント企業である可能性もある。
- 管理職以外は20代前後の若手社員しかいない。過酷な環境から社員が数年以内に離職に追い込まれるため。
- 同業種の企業と比較して異様に高齢者が多い。
- 経営者や社員の私物が不必要に散逸している(会社の私物化と受け取られる可能性がある)。
- パートやアルバイト、派遣に対し若い社員ですら横柄かつ高圧的な言動を取ることが常態化しており、ビジネス用語や敬語が使われることはない。
[編集] 採用
- 採用通知を書面で通達しない。採用通知の電話連絡や雇用契約の締結後に雇用条件を口頭で次々と変える。職種の変更などもある。録音しない限り証拠が残らない。
- 個人事業者として採用する。社員でない場合、労災の責任や社会保険の会社負担がない。正社員で採用されたと思っていても、労働契約書の記載が違う場合がある。あるいは正社員で採用したかのように誤認させる。
- 採用した直後に労働契約書を書かせない(労働者に不利な雇用契約を締結させるため)。
- 採用した直後に従業員の給与振込み用の口座を尋ねないか、または従業員に給与のシステム(タイムカード制か歩合制かなど)を一切伝えない。働きが悪ければ、給与未払いまたは減給で解雇しようと目論んでいるため。
- 法人ならば加入義務がある社会保険の制度がない、あるいは入社後一定期間を経なければ加入できない。
- 従順な人間だけを絞り込もうとしている。試用期間中に新人教育と称して暴力行為・しごきを行ったり、過重なノルマを与えたりして絞り込もうとしている。
- 試用期間が長すぎる。解雇されやすく、給与が低く抑えられる。
- 内定通知を出しておきながら、年度が替わる前に研修などを行い、働きがよくなければそこで内定を取り消す。
[編集] 退職者
- 退職者の多くが勤務履歴を隠したり、勤務した事実自体を否定している。
- 退職者の多くが勤務中に発症したうつ病やPTSDなどに、退職後も長期間にわたり苦められている。
- 退職者がその企業が関与する製品やサービスを一切購入しない。知人が購入しようとした場合も制止しようとする。
- 会話において、退職者がその企業自体をそもそも「最初から存在しなかった」という扱いにして、触れない。語ったとしてもネガティブな内容に限定される。
[編集] その他
- オフィスバイオレンス(職場内暴力)であるパワーハラスメント、セクハラや職場いじめ、企業不正や企業犯罪に関する裁判例・報道事例が複数ある。
- 書類や備品の紛失など事務処理や管理がずさんだったり、契約書で責任範囲が明らかにされるのを嫌い、曖昧な口約束のみで済ませたがるなど、適切な労務管理がなされていない。
[編集] 脚注
- ^ 泥のように働かされる「ブラック会社」どう見分けるか? - 特集:会社ウォッチ(ジェイ・キャスト)
- ^ a b 『ブラック企業の闇』
- ^ 部下を追い詰める「クラッシャー上司に気をつけろ! ダイヤモンド・オンライン
- ^ ICレコーダーなどのデジタル機器による録音(MP3などの形式)ではコンピュータで音声を容易に改竄できるため、裁判時の証拠として認められない場合が多い。
- ^ 当直の割増賃金求め提訴 刈谷の女性医師「規定外の分娩、手術」中日新聞2010年9月22日[リンク切れ]
- ^ 「ブラック企業」見分け方学ぼう 就活学生、研究し自衛1/2 2/2 朝日新聞2011年1月14日
- ^ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)に基づく「遊技場」には、パチンコ店や性風俗の他、ゲームセンターやカラオケボックスなども含まれるため、適用範囲が広い。
[編集] 「ブラック企業」を対象とした書籍
- ムネカタスミト『ブラック企業の闇―それでもあなたは働きますか?』 晋遊舎 2008年 ISBN 978-4883807758
- 恵比須半蔵 『就職先はブラック企業―20人のサラリーマン残酷物語』 彩図社 2008年 ISBN 978-4883926718
- 恵比須半蔵 『ブラック企業の真実』 彩図社 2009年 ISBN 978-4883926817
- 蟹沢孝夫 『ブラック企業、世にはばかる』 光文社新書 2010年 ISBN 978-4334035600
- 笹山尚人 『人が壊れてゆく会社』 光文社新書 2008年 ISBN 978-4334034627
- 間宮理沙 『内定取消!終わりがない就職活動日記』 日経BP社 2010年 ISBN 978-4822248017
[編集] 関連項目
- ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない(書籍)
- 恵比須半蔵(ノンフィクション作家)
- クラッシャー上司
- 利益至上主義
- 大企業病
[編集] 外部リンク
- 「声を上げれば大企業の違法正せる」/この一年 サービス残業是正へ大きな前進/労働者、家族が切り開いた成果(しんぶん赤旗 是正勧告を受けた大手企業名が記載されている )
- 是正勧告違反事例 村岡社会保険労務士事務所
- 過労死110番全国ネットワーク
- 日本労働弁護団
- 『【“ブラック企業”従業員の告白】』(ZAKZAKサイト内)
- もう限界かもしれない…“ブラック企業リスト”の実態(Business Media 誠)
- 企業を“目利きする”プロフェッショナル5人に質問「転職してはいけない会社とは?」(@type内)
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