労働組合

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

労働組合(ろうどうくみあい、英語trade unionlabour union)とは、労働者の連帯組織であり、誠実な契約交渉の維持・賃上げ・雇用人数の増加・労働環境の向上などの共通目標達成を目的とする集団である。その最も一般的な目的は、「組合員の雇用を維持し改善すること」である[1]。略称は、労組(ろうそ)、ユニオン、単に組合と呼ぶことが多い。

歴史[編集]

労働組合(以下、単に「組合」と略することがある)の歴史は18世紀にさかのぼり、産業革命によって女性・児童・農民労働者・移民労働者が多数労働市場に参加するようになった時代である。こういった非熟練労働者の集団が自主的に組織を編成したことが起源であり[1]、後の労働組合として重要な役割を果たした。

カトリック教会などの承認を受けた労働組合は19世紀の終わりに登場した。ローマ教皇レオ13世マグナ・カルタの中でレールム・ノヴァールムを公布し、労働者酷使問題について取り組み、労働者が妥当な権利と保護規制を受けられるようにすべきだと要請した[2]

ショップ制[編集]

労働組合と使用者との労使関係には、様々な形態がある。ここで言う「ショップ」とは、労使間で様々な約束事や取り決め事を交わす「協定」の意である。

日本では、その事業所で組織される労働組合が同事業所の労働者総数の過半数を代表する場合において、その組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することができる(労働組合法第7条第1号但書)。

英国ではEU指令が出される以前に、1980年代のサッチャー政権によってクローズドショップ制とユニオンショップ制が規制された。

オープンショップ制[編集]

使用者が労働者を雇い入れるに際し、特に組合員であることを雇用条件としていないものである。基本的に組合員とそうでない者との労働条件等の処遇の違いは無い。

日本では、国家公務員地方公務員の「職員団体」(民間企業の労働組合に相当)については、オープンショップでなければならないとされている(国家公務員法第108条の5第2項、地方公務員法第55条第2項)。

クローズドショップ制[編集]

使用者が労働者を雇い入れるに際し、組合員から雇用しなければならないとする制度である。労働者が組合員である資格を失った時は使用者はその労働者を解雇しなければならない。この制度は産業別労働組合が存在する国々に見られるが、日本では見られない。

アメリカ合衆国では、タフト・ハートレー法によってクローズドショップ制を禁止している。

ユニオンショップ制[編集]

使用者が労働者を雇い入れるに際しては、組合員であってもそうでなくても構わないが、労働者は入社後、組合規約で定めた期間内に組合員にならなければならないとする制度である。期間内に組合員にならなかったり、あるいは後に組合員たる資格を失った時は使用者はその労働者を解雇しなければならない。日本の大手企業に存在する主な組合に見られる。通常は当該組合を労働者の唯一の交渉代表として承認する「唯一交渉団体条項」と一緒に締結されることが多い(これにより、当該組合は使用者によって、全労働者が当然に加入する当該企業で唯一の組合としての地位を認められる)[3]。但し、実際はいわゆる「尻抜けユニオン」という体制が敷かれていることが多く、組合員である資格を失っても雇用については別途労使間で協議し、決定することが多い。従って、組合を脱退したからと言って必ずしも退職しなければならないことはない。

日本においては、過去の判例で、ユニオンショップ協定下において組合から脱退した場合において、労働者の組合選択の自由及び他の組合の団結権を侵害する場合には、使用者の解雇義務は公序良俗に反し無効とされ、他の組合に加入した労働者は解雇されない[4]。また、過去に組合を辞めない旨を特に合意していた場合でも「組合員は脱退の自由を有する」とされている[5]。したがって組合の内部抗争において執行部派が解雇をちらつかせて反執行部派を抑え込むことは、事実上できなくなっている。

アメリカ合衆国では、州によっては労働権利法(Right-to-work law)を適用し、ユニオンショップ制を禁止している。

エイジェンシーショップ制[編集]

労働組合への加入は労働者の意志によるが、組合員でない者でも、団体交渉にかかる経費と苦情処理にかかる経費を会費として支払わなければならない。ただし、組合員でない者はそれ以外の経費(ロビー活動にかかる経費や、組合員のみに与えられる特権の経費など)を支払う必要はない。

日本における労働組合[編集]

  • 本項で労働組合法について以下では条数のみを挙げる

日本における労働組合の特色[編集]

日本における労働組合は、一企業及びそのグループ企業の従業員だけで職種の区別なく構成する企業別労働組合を主とし、産業、地域、職種等によって組織される欧州諸国の労働組合とは異なる特色を有している。そのうえで、企業別組合は産業別に連合体(単産)を結成し、通常各産業の主力企業の組合が単産の主導権を握っている。おもな単産として自治労自動車総連電機連合UAゼンセンなどがある。一方、大手銀行や商社などの企業別組合はこうした上部組織のいずれにも加盟せず、企業内の組合にとどまっているものが多い。所属企業や職種、職業のいかんを問わず個人単位でも加入できる労働組合(一般労働組合合同労働組合。このような労働組合は「ユニオン」と呼ばれることもある)もあり、企業別組合のない会社に勤務する労働者、企業別組合に加入できない非正規雇用の者(首都圏青年ユニオンフリーター全般労働組合など)、管理職[6]などを主な対象としている。

労働組合は、職業別労働組合から出発し、一般組合を経て産業別労働組合へと発展していくのが、多くの先進工業国でみられた展開過程であったが、日本においては、職能別労働組合から企業別労働組合へという過程が特徴的である。

日本最初の労働組合は、アメリカ合衆国で近代的な労働組合運動を経験した高野房太郎片山潜らによって1897年に結成された職工義友会を母体に、同年7月5日に創立された労働組合期成会である。現在のような企業別組合が発達したのは、第二次世界大戦以降である。

日本の労働組合連合組織[編集]

日本の労働組合連合組織(ナショナルセンター)は、大きく3つに分けられる。

定義[編集]

「労働組合」とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう(第2条)。構成員の主要部分が労働者なら、労働者とされない者(主婦や学生など)が加入していても法的には問題ない。但し、以下のいずれかに該当するものは労働組合法上の労働組合とは認められない。

  1. 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接に抵触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの
  2. 団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの。但し、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、且つ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
  3. 共済事業その他福利事業のみを目的とするもの
  4. 主として政治運動又は社会運動を目的とするもの

他方、「労働者」とは、労働基準法第9条で「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で賃金を支払われるものをいう」とされ、契約上において、請負委任とされている者についても、実態として雇用契約が締結されていると認められること、つまり実質的な「使用従属関係の有無」で判断されるが[7]労働組合法第3条では「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義されており、労働基準法とは異なり「使用される者」という要件が課されていない。したがって失業者も含まれるものとされ、また勤務時間の管理を受けず時間的・内容的に自由に業務遂行を行う者も含まれうる。

労働組合の組織[編集]

労働組合を組織する権利(団結権)および組合活動をする権利(団体交渉権)は、日本国憲法第28条で「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」として認められている。2人以上の労働者が組合結成に合意することにより労働組合を結成でき、いかなる届出も認証も許可も必要ではない。これは日本も批准しているILO87号条約で定められた、労働組合の基本的原則である。

ただし、労働組合法上の保護を受けるためには、都道府県労働委員会に規約その他必要書類を提出し、労働組合法上の要件を満たしていることを立証しなければならない(資格審査、第5条)。もっとも第5条の規定は、不当労働行為に際し、個々の労働者に対する保護を否定する趣旨に解釈されるべきではない(第5条第1項但書)。労働委員会の証明を受けた組合は、その主たる事務所の所在地において登記することにより法人格を得る(第11条)。

使用者は労働組合を組織することや加入すること、労働組合を通じて労働運動をすることを理由に不当な待遇をしたり、解雇するなどをすると不当労働行為となる(第7条)。ストライキなどの争議行動は、本来刑事上では騒乱罪刑法第106条)、民事上では債務不履行民法第415条)や不法行為(民法第709条)などに相当するが、日本国憲法上で保障される労働運動の権利を守る観点から、正当な争議行為に対しては刑法第35条(「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」)が適用され(第1条第2項、但し、いかなる場合においても暴力の行使は労働組合の正当な行為と解釈されてはならない)、またストライキその他の争議行為によって発生した損害について労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない(民事免責、第8条)。

解散は、規約で定めた解散事由の発生、組合員または構成団体の4分の3以上の議決による(第10条)。

労働組合は、組合員に対する統制権の保持を法律上認められ、組合員はこれに服し、組合の決定した活動に加わり、組合費を納付するなどの義務を免れない立場に置かれるものであるが、それは組合からの脱退の自由を前提として初めて容認されることである。したがって組合から脱退する権利をおよそ行使しないことを組合員に義務付けて脱退の効力そのものを生じさせないとすることは、脱退の自由という重要な権利を奪い、組合の統制への永続的な服従を強いるものであるから、公序良俗に反して無効となる(民法第90条)[8]

労働組合の大会決議において組合の推薦する特定候補以外の立候補者を支持する組合員の政治活動(選挙運動)を一般的・包括的に制限禁止し、これに違反する行動を行なった組合員は、統制違反として処分されるべき旨を決議することは、組合の統制権の限界を超えるものとして無効と解される[9]

団体交渉[編集]

労働組合はそのリーダーシップにより、組合員らの委任を受け、使用者又はその団体と労働協約その他労働条件等様々な事項について交渉を行う(第6条、日本国憲法第28条)。使用者は労働組合の正当な団体交渉には必ず応じなければならない義務を負い、これに反すると不当労働行為となる(第7条)。一の事業場に複数の労働組合がある場合や、事業場の外部を拠点とする労働組合であっても、使用者はその全てと団体交渉に応じなければならない。

労働協約[編集]

組合による団体交渉や労使協議により労使双方が労働条件その他に関する事項について書面で合意した場合、この合意には就業規則や個々の労働契約に優越する効力が認められる(第14条~第18条)。

労働者の代表[編集]

一の労働組合がその事業場の労働者の過半数を組織している場合、その組合には労働者の代表として以下の権限などが認められ、その効力は他の組合員や組合員でない者に対しても及ぶ。

便宜供与[編集]

通常、企業別労働組合は従業員の代表機関としての地位に伴い、様々な便宜供与が行われる。代表的なものとして、組合事務所の貸与がある。便宜供与は法的には使用者の義務ではなく、交渉により任意に定める事項であるが、第2条に抵触しない最小限度の供与であれば、労使関係を円滑にする基盤となる。

任意とはいっても、併存組合の一方にのみ貸与して他方には貸与しないことは、不当労働行為とされることがある[11]。また正当事由があれば使用者は明渡しを請求できるが、事前の説明や代替事務所などの交渉手続きを踏まなければ、支配介入としてやはり不当労働行為とされることがある。

個人事業主の労働組合[編集]

税制上は個人事業主に定義されていても、芸能事務所と契約を結んだり、アニメ制作会社で集団作業をしたりするなど、(労働基準法上の労働者としては認められなくても)実態は労働者に近い職業もある。判例や実務上、労働組合法の労働者と認められた例としては、一人親方たる大工[12]、、家内労働者たるサンダルの賃加工者[13]、自由出演契約の下にある放送会社の管弦楽団員[14]、プロ野球選手などがある。

労働組合法上の労働者にも団体交渉の保護を及ぼす必要性と適切性が認められ、労働組合が存在する。代表的な労働組合として、日本プロ野球選手会日本音楽家ユニオン日本俳優連合等が挙げられる。

アメリカ合衆国においてもフリーランスの事業者団体はさまざまな分野に存在する。

日本プロ野球選手会[編集]

1985年(昭和60年)11月14日、東京都地方労働委員会は、日本プロ野球選手会に労働組合としての資格を認定した。プロ野球選手の労働者性を根拠づける事実として、以下の点があげられる。

  • 選手契約は毎年更新されていること。
  • 練習・試合の日程・場所は球団側で一切決定し選手には決定権がないこと。
  • 労働力の利用・配置について球団が監督を通して指揮命令を行使していること。
  • 選手の報酬は野球のプレーという労務に対する対価であり、その待遇については団体交渉の保護を及ぼすことが必要かつ適切であること(最低年俸、年金、傷害補償、トレード制等)。

日本プロ野球選手会は労働組合であるために、団体交渉権を有し、組合員の労働条件に係る部分は義務的団体交渉事項に該当する[15]

2000年代における日本の労働組合[編集]

2013年(平成25年)年6月30日現在における単一労働組合の労働組合数は25,532組合、労働組合員数は987万5千人で、前年に比べて労働組合数は243組合の減(0.9%減)、労働組合員数は17,000人の減(0.2%減)となっている。また、推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は、17.7%となっている[16]。一方、パートタイム労働者の全労働者組合員数に占める割合は9.3%となっていて上昇傾向にある。

組織率の低下[編集]

第二次世界大戦の直後は全労働者中に占める推定組織率も60%以上に達していたものの、昭和50年以降低下傾向にあり、2007年(平成19年)6月30日現在の推定組織率は18.1%となり20%を切っている。また、従業員1000人以上の大企業においては推定組織率は50%近くであるが、100人未満の小企業においては1%程度である[17]

組織率が低下した要因としては、まず企業別組合の組織からはみ出した非正規雇用の比率の増加が大きいとされる[18]。日本の労働組合は正社員のみで組織されてきた歴史的経緯から、リストラパートタイマーアルバイト派遣社員の増加などによる雇用の不安定化といった、2000年代における多くの労働者が実際に直面している問題への取り組みが大きく遅れることになった。現在一部労働組合はパート・アルバイトの組織化を進めていて、非正規雇用の権利を主張する組合も現れている。また非正規労働者だけで企業内に労働組合を結成する例もある。2007年の春闘では、連合が非正規労働者の労働条件改善を要求として掲げ、同年、非正規雇用労働者の処遇改善、ネットワークづくりをすすめる「非正規労働センター」を開設した。こうした流れもあり、平成20年以降の組織率は低下傾向に歯止めがかかっていてほぼ横ばいとなっている。

一方で新興企業や業績が好調な企業は組合がなくてもよい程度の賃金と労働条件が既に与えられていることも挙げられる。「カリスマ」的経営指導者の下、近年急激な成長を遂げた企業(ソフトバンク[19]楽天[20]サイバーエージェントなど)では、労働組合の組織すら見当たらない。また、多くの人材派遣業の会社には労働組合が無い。企業にとって万一の事態が起きた場合、その企業に組合が存在していると「迅速な」リストラ策が取りづらくなってしまう、という点が嫌気されて、投資家からは労働組合の存在について「株価にマイナス」と見る向きが多い。しかし同時に、健全な組合がないがゆえのリスクの側面をも見る必要がある。すなわち、「カリスマ」的経営指導者の行き過ぎを戒め、ブレーキをかけるものが実質的に不在になることで、経営危機へ追いやる可能性も高めるのである(カリスマ創業者が労働組合に厳しい態度を取ってきたため労働組合が求めてきた違法・脱法行為の是正や労働環境の改善が果たされず、結果として経営危機に陥ったコムスンゼンショーなどがこの事例である)。

また使用者側の法令違反が常態化したいわゆるブラック企業とされる会社では、労働組合の組織を試みた者に解雇や左遷などの報復を行うケースや、入社時に組合活動をしない旨を求められる(これは不当労働行為にあたる)ケースもある。

ほかにも、政府・地方公共団体などの社会保障制度が組合に取って代わってきたこと、組合活動に時間を割くことが避けられるようになったこと、2000年代以前からの不況などにより企業の再構築が進められ、会社・部門の統廃合・人員整理などが進んで労働組合が解散していったこと、春闘などで組合が十分な成果を挙げられないため組合の存在意義を感じにくくなったこと、等が挙げられる。

かつては労働運動が盛んに行われ、高度成長期時代の日本における賃上げ闘争などはまさにその事例のひとつである。労働者の生活レベルが現在よりもはるかに貧しかった時代には、日本人の生活水準向上(ひいては日本経済の拡大)に大いに貢献したといえる。1960年の三井三池争議までは大争議が多かったが、やがて労使交渉の合意達成の手段を労使とも学習していき、1980年代に入ると労使交渉を労働委員会に頼らず労使自治のもと自主解決を目指す民間労使関係へと転換した。こうして労使交渉をストライキなしで解決する仕組みと慣行が確立した結果、2012年の労働委員会へのあっせん等の申請件数はピーク時の10分の1以下である209件となっている[21]

バブル崩壊以降、正社員の解雇に対しては、当然労働組合は反対の立場・抵抗の意思を見せるが、ストライキはほとんどなく、結果として団塊世代などの雇用を守る分、新卒採用を絞ることになり、若者の就職率悪化の要因の一つを作った、という意見がある。逆に、経営合理化に協力して、正規労働者の非正規労働者への置き換えに抵抗しなかったとして批判される場合もある。しかし雇用形態の多様化は経済団体(使用者側)の主導で行われており、労働組合に主要な原因があるかのような言説は、労働者側への責任転嫁の側面がある。

労使コミュニケーション[編集]

労働組合における使用者側との労使関係についての認識は、「安定的に維持されている」50.2%、「おおむね安定的に維持されている」36.6%、「どちらともいえない」7.2%、「やや不安定である」3.3%、「不安定である」1.8%となっている[22]

労使コミュニケーションを「重要である」と考える事業所の割合は、全体では87.5%であるが、労働組合のある事業所は「重要である」と考えている割合が95.3%なのに対し、労働組合のない事業所は「重要である」と考えている割合は84.0%にとどまる[23]

使用者と労働者とのコミュニケーションを円滑にする仕組みとして労使協議機関職場懇談会が設けられることがあるが、労働組合のある事業所はない事業所よりもこれらを設置している割合が高い。全体では労使協議機関が「あり」とする事業所割合は39.6%、職場懇談会が「あり」とする事業所割合は52.8%となっているが、労働組合のある事業所においては、労使協議機関が「あり」とする事業所割合は83.3%、職場懇談会が「あり」とする事業所割合は66.3%なのに対し、労働組合のない事業所においては、労使協議機関が「あり」とする事業所割合は19.9%、職場懇談会が「あり」とする事業所割合は46.7%である。さらに、労使協議機関の「成果があった」と回答した事業所は、労働組合のある事業所では66.5%なのに対し、労働組合のない事業所は39.8%にとどまる。また労働者に対する調査では、全体では事業所に労使協議機関が「あり」と答えた労働者の割合は43.5%、「なし」28.6%、「わからない」26.2%となっているが、「あり」と回答した事業所は、労働組合のある事業所が75.3%なのに対し、ない事業所は22.6%にとどまる[23]

ネガティブなイメージ[編集]

日本の企業の経営者は、労働者の出世レースのゴールであることが多く(経営者と労働者の未分離)、それが過度の癒着、または対立を生む背景の一つであった。現在の日本では、労働組合活動自体があまり知られているとは言えない現状であり、労働組合というだけで「抵抗勢力」や「何にでも反対する」というレッテルを貼られがちであり、さらには先入観から労働運動自体に眉をひそめる人もいて、労働組合の果たしている労使協議等の多面的な機能が労働者に十分評価されていない。近年ではストックオプション制の導入など、労働者を経営側に取り込む動きも見られている。

一部の労組では、新左翼の影響の下に政治的な要求や現実離れした要求を振りかざし、他の組合との抗争に明け暮れるだけで、本来の役割である労働条件の向上はなおざりにしてしまった組合や、日本航空に見られるように、非妥協・対決路線に走り会社の現状を省みない組合となってしまったものもある(日本エアシステムとの合併がこの問題をさらに複雑にしている)。また、かつての国鉄労働組合国鉄動力車労働組合は旧国鉄時代、国鉄職員の日頃の勤務態度が芳しくない一方、利用者を省みない遵法闘争を繰り返して待遇改善を要求し、これが結果的に国民の国鉄離れや分割民営化を後押しする風潮を作り上げた。このため、経営側の視点からは、「労働組合が会社を潰す」という見方が広がってしまった。のみならず、公共交通機関における労働争議はその利用者から敵視され、暴動に発展するケースがあった[24]

一方「労使協調」を掲げた組合(産経新聞社日本航空(→日本航空の労働組合)など)では、形こそ労働組合として存在するものの、本来の機能を見失って形骸化し、会社側の言いなりとなって組合幹部が取締役会の末席に就くなど、「御用組合」「第二人事部」などと言われるに至る事例もある。場合によっては、そのような組合の存在自体が労働者に不利益となっていることもある。かつての日産自動車のように「労使協調」が労使間の癒着に発展した末に労働組合が経営や人事に介入するなど、社会的にも非難される行動に出る組合もあった[25]。また、「週刊現代」がJR総連に加盟している組合を告発する記事を掲載したときに、その記事の内容について争いがあったとはいえ、JR総連と労使協調関係にあるJR東日本グループの売店などで「週刊現代」を販売しないという手段を取った事例がある[26]

最近では岐阜県庁裏金問題に関して、全日本自治団体労働組合に加盟している岐阜県職員組合が組合の金庫に裏金を保管するなど、公金横領に深く関わり、雇用者である岐阜県庁との癒着が指摘された。これに対して自治労は、「県当局と緊張関係を持ち、一定のチェック機能を果たすべき職員組合が、県当局中枢が関与した組織ぐるみの隠蔽工作に与してしまったことは、岐阜県民はもとより国民に対する背信的行為であると断じざるを得ず、その信頼を失ったことは、慙愧の念に耐えず、構成組織の立場からお詫び申し上げたい」との談話を発表し謝罪した。

また、公務員の労働組合が行う「ヤミ専従」も問題視されていた(詳細はヤミ専従#問題となった例を参照)。

組合員および組合のシンパに対しては、経営者にとって不都合な場合が多いため「共産主義者」「アカ」などのレッテル貼りがおこなわれ、時折職場でのイジメが問題となる場合がある。実際には資本主義経済のなかで自身の労働に対する取り分を主張しているだけであり、サラリーマンを中心とした労働者は給与賃金に対する主張を行うためにも労働組合を利用すべきである、という意見もみられる。これらの例から新左翼のイメージが付きまとい、一般に労働組合=社会党(現・社民党及び民主党左派)や共産党の支持母体と看做されがちであるが、実際には政治的に保守的な思想を占め、自由民主党労働族と結びついた「自民党系労組」も旧くから存在している[要出典]

また、最近はごく一部であるが、労働争議権を濫用し、争議権の範囲を越える街頭宣伝活動などをおこなう労働組合もみられる。たとえば、個人単位でも加盟できる東京・中部地域労働者組合は、最高裁判所で解雇が正当であると認められたにもかかわらず解雇不当を訴えるなどの街宣活動を強行したため、解雇した企業とその代表者が裁判に訴え、東京地裁は「会社の名誉・信用を棄損し、平穏に営業活動を営む権利を侵害した」「虚偽の内容を含んだビラや執拗(しつよう)な街宣活動は表現の自由を逸脱し、平穏な営業活動を侵害する違法行為」と認定し、同組合に対して、対象企業近辺での街宣活動の禁止と200万円の損害賠償の支払いを命じた[要出典]

偽装請負の黙認[編集]

近年蔓延してきた偽装請負については、これまで大労組が事実上「黙認」しているといわれても仕方がない状態であった。連合会長・高木剛もこの事を認めている[27]。理由としては、いわゆる御用組合化の進行により経営側の方針に労働組合側が反発しづらくなっていることと、偽装請負を解消する場合、経営側がそのコストを、組合員である正社員の賃金を削減することにより捻出しようとするおそれがあるため、組合員の不利益になることを指摘できないためである(これは、同様に問題化している「下請いじめ」についても同様なことがいえる)。

東日本大震災労働者対策本部[編集]

2011年3月14日、全労連・MIC・純中立労組懇は、東日本大震災労働者対策本部を設置し、復興にむけ支援物資やボランティアの協力を呼びかけ、被災者を支援している。4月14日、東日本大震災労働者対策本部と東京春闘共闘は日、東京・霞が関を中心に緊急要請行動を実施し、各省庁や東京電力への申し入れ、国会議員要請やデモ行進などを行った[28]

アメリカ合衆国における労働組合[編集]

米国では、組織率は1983年に20.1%の割合を占めて以降、徐々に低下しており、2012年の時点で11.3%となっている。組織率低下の要因として、国際競争が激しくなった結果、特に鉄鋼や自動車産業の工業部門において、かつては組合員によって行われていた仕事が人件費の安い海外で行われるようになったこと、生産の自動化によって、製造ラインで一部の労働者が必要無くなったこと、更に組合の力が強い州に所在する多くの企業が、労働権法が制定されていて組合がほとんど存在しない州に工場を移転したことなどが指摘されている。

米国における1980年代の違法闘争.[29]

公共部門と民間企業を比較した場合、公共部門の労働組合の組合員数は民間企業の5倍以上に達する。なお、日本とは異なり、警察消防にも労働組合は存在する。

労働組合は、内部労働者の利益(職の維持)のために、そのコストを外部労働者・財やサービスの消費者・企業の株主に押しつけていると非難されている。公教育の分野においては、教師組合は、若い教師を辞めさせるよう仕向けることで、学校関係者に支持される老年教師ばかりになり、そのために優秀な教師が減ってきているといると非難されている[30]

アメリカのマクロ経済学ミルトン・フリードマンは「労働組合は不要である」として「労働組合が組合員に対して獲得する賃上げは、主として組合の外にいる他の労働者の犠牲においてである[31][32]という言葉を残している。ある職種・産業において労働組合が賃上げに成功すると、その分野での雇用は減ることになり、結果としてその分の雇用が市場に放出されることで、他の産業・労働者の賃金が押し下げられる。結果として高賃金労働者の賃金は上昇し低賃金労働者の賃金は下落することで、賃金格差を拡大させるという[33]

中華人民共和国における労働組合[編集]

中国においては、「工会」(中文:工会)と呼ばれており、「共産党の指導を受ける」ことが基本とされている。中国国内の企業(外商投資企業を含む)、事業単位、機関及びその他の社会組織の主に賃金収入により生活する労働者は、民族、人種、性別、職業、信条、教育程度を問わず、中国工会全国代表大会が定めた「中国工会規約」を承認すれば、全て「工会」に加入し、組合員となることができる。したがって従業員だけでなく、経営者も労働組合に加入することが可能となっている。

国際労働組合連合組織[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b Webb, Sidney; Webb, Beatrice (1920). History of Trade Unionism. Longmans and Co. London.  ch. I
  2. ^ Rerum Novarum: Encyclical of Pope Leo XIII on Capital and Labor”. Libreria Editrice Vaticana. 2011年7月27日閲覧。
  3. ^ ただし、「唯一交渉団体条項」には法的効力はないので、別組合ができた場合、条項を盾にその別組合との団体交渉を拒否することはできない。
  4. ^ 「三井倉庫港運事件」最高裁判所第1小法廷1989年12月14日判決 労働判例552号6頁
  5. ^ 「東芝労働組合小向支部事件」 最高裁判所第2小法廷2007年2月2日判決 労働判例933号5頁
  6. ^ 東京管理職ユニオン
  7. ^ 「新宿労基署長事件」東京高裁平成14年7月11日判決
  8. ^ 「東芝労働組合小向支部事件」 最高裁判所第2小法廷2007年2月2日判決 労働判例933号5頁
  9. ^ 最高裁判所第2小法廷1969年5月2日判決 集民第95号257頁
  10. ^ [1]
  11. ^ 「日産自動車事件」 最高裁判所第2小法廷1987年5月8日判決 労働判例496号6頁
  12. ^ 昭和21年6月1日労発325号、昭和25年5月8日労発153号
  13. ^ 「東京ヘップサンダル工組合事件」中労委1960年8月1日労委年報15号30頁
  14. ^ 「CBC管弦楽団労組事件」 最高裁判所第1小法廷1976年5月6日判決 民集30巻4号437頁
  15. ^ 東京高裁2004年9月8日決定 労判879号90頁
  16. ^ 平成25年労働組合基礎調査の概況 厚生労働省
  17. ^ 厚生労働省「平成22年度労働組合基礎調査」
  18. ^ 都留康「現代日本の労働組合と組合員の組合離れ」猪木武徳・樋口美雄編『日本の雇用システムと労働市場』p194、日本経済新聞社、1995年
  19. ^ 100%子会社のソフトバンクテレコムには、前身時代からの労働組合が存在している。また福岡ソフトバンクホークスの日本人選手は日本プロ野球選手会に加入している。
  20. ^ [2]
  21. ^ 平成24年労働争議統計調査の概況 厚生労働省
  22. ^ 厚生労働省「平成23年労働協約等実態調査」
  23. ^ a b 厚生労働省「平成21年労使コミュニケーション調査結果」
  24. ^ 上尾事件首都圏国電暴動など。
  25. ^ 日産自動車における労組の専横は高杉良の小説『破滅への疾走』(『覇権への疾走』とも)、『労働貴族』のモデルとなった。一方、日本航空の一部労組の反会社強硬路線には、職場実態を無視した会社側の態度も一因との指摘がある。
  26. ^ なお、記事の掲載終了後はJR東日本グループでも「週刊現代」が発売されている
  27. ^ 連合、偽装請負で経団連に是正要請へ(朝日新聞)
  28. ^ 雇用を復興を 宮城・岩手・福島の労働者と共同行動 全労連など対策要求 2011年4月15日(金)「しんぶん赤旗」
  29. ^ Bernstein, Aaron (1994年5月23日). “Why America Needs Unions But Not the Kind It Has Now”. BusinessWeek. http://www.businessweek.com/archives/1994/b337360.arc.htm 
  30. ^ Card David, Krueger Alan. (1995). Myth and measurement: The new economics of the minimum wage. Princeton, NJ. Princeton University Press.
  31. ^ Friedman, Milton (2007). Price theory ([New ed.], 3rd printing ed.). New Brunswick, NJ: Transaction Publishers. ISBN 978-0-202-30969-9. http://books.google.com/books?id=EhcI5-D9wREC&pg=PA164. 
  32. ^ 給料はなぜ上がらない−−6つの仮説を読み解く【下】」、『東洋経済』2008年3月30日
  33. ^ ミルトン・フリードマン 『資本主義と自由』 日経BP社〈Nikkei BP classics〉、2008年、234-235頁。ISBN 9784822246419 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]