労働者災害補償保険

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労働者災害補償保険(ろうどうしゃさいがいほしょうほけん、 Arbeiterunfallversicherung)は、労働者災害補償保険法に基づき、業務災害及び通勤災害にあった労働者又はその遺族に、保険給付を支給する政府管掌の保険制度である。単に労災保険ともいわれ、雇用保険とあわせて労働保険と呼ばれる。申請は、労働基準監督署に行う。

目次

[編集] 目的

労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

[編集] 適用事業・対象

労災保険は事業所単位で適用される。原則として労働者を一人でも使用する事業は強制適用事業とされる。ただし、農林水産業の一部については、暫定的に任意適用事業とされている。また、国の直営事業・官公署の事業(国家公務員災害補償法地方公務員災害補償法の適用となる)については、適用されない。なお、船員保険の被保険者については船員保険法の適用となっていたが、2010(平成22)年1月1日に失業部門(雇用保険相当)と共に船員保険法から分離され、労災保険法及び雇用保険法にそれぞれ統合されたため、本法の適用事業(「船舶所有者の事業」に分類)である。

適用事業に使用され賃金を支払われていれば、適用労働者とされる。雇用保険厚生年金の対象とならない小規模な個人事業に雇われている労働者や、パートやアルバイトなども適用労働者となる。 労働基準法における労働者に該当しない者には適用されないが、一定の要件のもとに特別加入制度が設けられている。

[編集] 財源

使用者(雇用者・雇い主)のみが負担する労働保険料により運営される。

  • 保険料=賃金総額×保険料率
※保険料率 事業の種類により0.3%~10.3%。但し、事業所での事故率により保険料率が増減する、「メリット制」がある。なお、原則として3年に1度改定される制度となっており、現在の保険料率は2009(平成21)年4月1日改定のものである。

保険料率の高いものには、次のような事業が挙げられる。

労働災害発生の可能性が高いとされる、いわゆる「3K」(きつい・危険・汚い)業種の保険料率が高くなっている。

[編集] 事業

労働者災害補償保険の主な事業として業務災害・通勤災害における保険給付と、社会復帰促進等事業がある。保険給付に付加して社会復帰促進等事業としての特別支給金等が支給される場合がある。

[編集] 保険給付

大きく3つに分けられ、

  1. 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付
  2. 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付
  3. 二次健康診断等給付

がある。 そして、業務災害に関する保険給付として

  1. 療養補償給付
  2. 休業補償給付
  3. 障害補償給付
  4. 遺族補償給付
  5. 葬祭料
  6. 傷病補償年金
  7. 介護補償給付

があり、

それとパラレルに通勤災害に関する保険給付として

  1. 療養給付
  2. 休業給付
  3. 障害給付
  4. 遺族給付
  5. 葬祭給付
  6. 傷病年金
  7. 介護給付

がある。通勤による災害は、直接には使用者側に補償責任はないため、業務災害の各給付(年金)名から補償という文字をはずした名称を用いる。

二次健康診断等給付は、労働安全衛生法に基づく健康診断の結果、過労死等の原因となる脳血管疾患等及び心臓疾患に関連する血圧、血中脂質、血糖、肥満度の4つの検査すべてに異常の所見が認められた労働者に対し、二次健康診断及び特定保健指導の費用を支給するものである。なお、中小事業主等の特別加入者は、労働安全衛生法でいう労働者ではないため、二次健康診断等給付は受けることができない。また、二次健康診断等給付はその性質上、脳血管疾患等及び心臓疾患を予防するための給付であるため、すでに脳血管疾患等及び心臓疾患である労働者は給付を受けることはできない

  • 二次健康診断:脳血管および心臓の状態を把握するために必要な検査のこと(一次健康診断の検査は除く)で、厚労省令で定めるのもを行う医師による健康診断
  • 特定保健指導:二次健康診断の結果に基づき、当該の予防を図るために、面接により行われる医師等の保健指導

[編集] 療養補償給付・療養給付

労災病院・労災指定医療機関において、業務災害・通勤災害により療養を必要とする場合、必要な療養(医療)の給付を無料で受けることができる(現物給付)。労災指定医療機関以外の医療機関にかかった場合は必要な療養費の全額をあとで支給される。療養給付は200円まで自己負担がある。

なお、労災の対象になる場合は、健康保険等の対象外である。

上記の無料という点について、労災となるかどうかは、労働基準監督署の裁量により決定される。ただ、後日に「業務起因性がない」として、「初回から労災として認めない」との決定を受ける場合がある。この場合、初回分から改めて健康保険等での受診として計算し直す必要が生じるため、患者は医療機関に自己負担金を支払う必要が生じる。この決定が、数年後という場合もあるため、自己負担金が高額となり、患者の経済的な負担や、医療機関の未収金などの問題となる場合もある。

[編集] 休業補償給付・休業給付

業務災害又は通勤災害による傷病の療養のため労働することができず、賃金を受けられないとき、休業の4日目から給付基礎日額の60%が支給される。

なお、社会復帰促進等事業としての休業特別支給金としてさらに20%加算されるので、実際には休業の4日目から給付基礎日額の80%が支給される。

また、業務災害のうち最初の3日分は事業主が労働基準法に基づき、給付基礎日額(平均賃金)の60%は支給する義務を負う(保険対象外)。

[編集] 障害補償給付・障害給付

業務災害又は通勤災害による傷病が治った後(症状が固定化した)ときに、一定の基準により障害等級に基づき、年金または一時金が支給される。

その他、社会復帰促進等事業としての障害特別支給金、障害特別年金(一時金)がある。

[編集] 遺族補償給付・遺族給付

業務災害又は通勤災害により労働者が死亡した場合、遺族に年金、遺族年金の支給対象となる遺族がいない場合は一時金が支給される。

その他、社会復帰促進等事業としての遺族特別支給金、遺族特別年金(一時金)がある。

[編集] 葬祭料・葬祭給付

業務災害又は通勤災害により死亡した方の葬祭を行なうときに支給される。

[編集] 傷病補償年金・傷病年金

業務災害又は通勤災害による傷病が療養開始後1年6ヶ月を経過しても治らない(固定化しない)場合に、傷病等級に応じ支給される。なお、傷病(補償)年金を受給した場合は、休業(補償)給付は受給できない。

その他、社会復帰促進等事業としての傷病特別支給金、傷病特別年金がある。

[編集] 介護補償給付・介護給付

障害補償年金又は傷病補償年金を受ける権利を有する労働者が、その受ける権利を有する障害補償年金又は傷病補償年金の支給事由となる障害であって1級の方は全て、2級の方は精神神経、胸腹部臓器の障害を有している方に限り、常時又は随時介護を要する状態にあり、かつ、常時又は随時介護を受けているときに、当該介護を受けている間支給される。ただし、入院中や障害者自立支援法により施設において生活介護を受けている場合は対象外となる。

[編集] 社会復帰促進等事業

  • 特別支給金(保険給付に付加して支給される・特別支給金は特別加入者は除く)
    • 傷病特別支給金
    • 傷病特別年金
    • 障害特別支給金
    • 障害特別年金
    • 遺族特別支給金
    • 遺族特別年金 など
  • 労災就学等援護費・労災就労保育援護費
  • 社会復帰事業
  • 被災労働者とその遺族の生活援護事業
  • 労働者の安全衛生の確保のために必要な事業
  • 適正な労働条件の確保を図るための事業 など

[編集] 保険給付を受ける者の保護

保険給付を受ける権利は、実際に労働災害が起こった会社を退職しても消滅することはない。また譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえをすることもできない。 さらに租税その他の公課についても保険給付として支給を受けた金品を標準として課すことができない

[編集] 保険給付制限

  • 労働者が故意に事故を生じさせた場合は保険給付は行われない
  • 故意の犯罪行為もしくは重大な過失による場合は給付額の30%(休業・傷病・障害給付)
  • 正当な理由なくて療養に指示に従わず悪化、または回復を妨げた場合は休業給付の場合は10日分、傷病年金の場合は10/365の相当額

[編集] 費用徴収

労災保険への加入は前述の通り、労働者を1人でも雇用した時点で行わなければならないものであるが、実際には、事業主による手続忘れや故意による未加入というものも多く、そのための制裁として費用徴収の制度が設けられている。

  • 加入手続について都道府県労働局及び労働基準監督署などの行政機関からの指導等を受けたにも関わらず、事業主がその手続を行わない間に労災事故が発生した場合 → 保険給付額の100%を事業主から徴収
  • 加入手続について都道府県労働局及び労働基準監督署などの行政機関からの指導等を受けていないが、事業主が事業開始から1年経過してもその手続を行わない間に労災事故が発生した場合 → 保険給付額の40%を事業主から徴収

「都道府県労働局及び労働基準監督署などの行政機関からの指導等」については、当該行政機関が事業の存在を把握したものについて順次行われる。

特に、事業の開始に際し、行政機関等への登録、届出、許認可等が要件となっている事業については、それらの行為に基づいて事業の存在が把握されるため、原則として指導等の対象となるものと考えてよい。

なお、行政機関は事業の存在を把握しているに過ぎず、労災保険の適用・非適用までは把握していないので、労災保険の非適用事業であっても指導等の対象となる。(ただし、この場合は非適用事業である旨を確認して指導等が終了する)

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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