年功序列

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年功序列(ねんこうじょれつ)とは、官公庁、企業などにおいて勤続年数、年齢などに応じて役職や賃金を上昇させる人事制度・慣習のことを指す。終身雇用企業別労働組合と並んで「三種の神器」と呼ばれ[1]、日本型雇用の典型的なシステムである。その他、個人の能力、実績に関わらず年数のみで評価する仕組み一般を年功序列と称することもある。

年功序列制度は、加齢とともに労働者の技術や能力が蓄積され、最終的には企業の成績に反映されるとする考え方に基づいている。結果として、経験豊富な者が管理職などのポストに就く割合が高くなる。

年功序列型賃金制度の背景[編集]

かつては、家族主義的な考え方や、家族の成長による生活費増加の保障など、社会学的な理由が強調されていた。OJTなどによる企業の従業員への投資が転職によって失われないようにするなどと説明されることもあるが、若年者の働く意欲を殺ぎ生産性が失なわれているとの意見もある。

経営学におけるエージェンシー理論の説明では、若いときには賃金は限界生産力を下回り、高齢になると限界生産力を上回る。これは賃金の観点において強制的な社内預金をすることになる。そのため、労働者はその社内預金を回収するまでは、結果的に長期在職したほうが有利となる。このことを遅延報酬deferred compensation[1]とも言う。また、定年制との関係では、企業は高齢の従業員を定年制を設けて強制的に退職させるという説明がされている[2]

日本においてこのような制度が成立した理由としては、組織単位の作業が中心で成果主義を採用しにくかったこと、年少者は年長者に従うべきという儒教的な考え方が古代から強かったことが挙げられる[要出典]。集団で助け合って仕事をする場合は、個々人の成果を明確にすることが難しい場合も多く、組織を円滑に動かすには構成員が納得しやすい上下関係が求められる。職能概念に基づく年功序列制度は、こういったニーズを満たす合理的な方法だったのである。また、リスクの低い確実な選択肢を選ぼうとする国民性がこれに拍車を掛けることとなった。また年功賃金モデルを維持する前提として、経済が右肩上がりであることと労働力人口が増え続けることがある[要出典]。その意味では1960年代の高度経済成長期は経済が拡大を続けた。また石油ショック以降の安定成長時代である1970年代後半から1980年代末期は団塊ジュニア世代学齢期に当たり、数多い若年者の賃金を低く抑え、一方で年配者の賃金を高くすることに経済合理性があったということができる。

年功序列の賃金体系のもとでは、実働部隊たる若年者層は、管理者である年長者層に比べ賃金が抑えられる傾向にある。若年層のモチベーション維持には、若年者もいずれ年功によって管理職に昇進し賃金が上昇する(若い頃には上げた成果に見合う賃金を受けられなくても、年功を積めば損を取り戻せる)という確証をもてる環境が必要であり、終身雇用制度は年功序列制度を補強する制度となっている[3]

年功序列型賃金制度の活用状況[編集]

1990年代以降は成果主義を人事考課に取り入れる企業が増えており、人事上も年少者が上司となるケースも見受けられるようになりつつある。しかし、成果主義における様々な問題等のため、2000年代以降に就職する若者は、年功序列型賃金と終身雇用という安定志向に回帰する傾向にある[要出典]

日本経済団体連合会は2011年、「経営労働政策委員会報告」の中で、定期昇給制度について、国際競争の激化や長引くデフレで「実施を当然視できなくなっている」と明記。「労使の話し合いにより、合理的な範囲で抜本的に見直すことが考えられる」と指摘した[4]

日本国外の例[編集]

欧米でも、賃金プロファイル(横軸に年齢、縦軸に賃金水準をとったグラフ)が右上がりである傾向は特にホワイトカラー労働者について見られるが、ブルーカラー労働者については30歳代以降に賃金が上昇する割合が日本より弱い[1]

年功序列制度の利点と欠点[編集]

利点[編集]

賃金の査定が容易である。
賃金は年齢に応じて定められるため、経営者が従業員の勤務成績を調査したり調査させる必要がない。
インセンティブ効果
終身雇用制のもとでは、同じ会社に継続勤務するほうが転職するよりも高い効用が得られるようになるので、労働者に怠けないインセンティブを与える[1]
企業特有の技能への投資
企業が労働者の企業特有の技能への投資(教育費用の負担)を行う場合、終身雇用制とともに年功序列による賃金制度が合理的である[1]

欠点[編集]

事なかれ主義
大過がなければ昇進していくので、リスクのある行動に積極的でない。また、思い切った施策が出ない。特に官公庁や官営・公営の法人などではそのような傾向が顕著である。
転職者や非正規雇用に不利
同一企業への勤続が重視される事や、賃金が高く付く為に、特に高年齢の転職者が制度的に不利になる。また、長期雇用を前提としない派遣社員は年功序列制度の対象外とされ、賃金を相対的に低く抑えられてしまう。
人材の流出
若年層は職務内容に比して薄給を強いられるため、年齢に係らず能力相応の賃金を得られる企業や国に人材が流出してしまう。若く、能力が高いほど、実際の職務と評価との乖離が大きくなるため、年功序列制度を避ける結果となる。
人員配置が硬直的になる
抜擢人事が行いにくい。また、高賃金の年長者は配置転換したり賃金を下げたりしにくい為、切り捨てられる。
既卒(就職先がないまま卒業した学生)の就職が不利
年齢が上がるほど企業内の年齢による賃金モデルから外れてしまうため、企業は既卒や博士をあまり採用したがらない。従って、不況期に就職活動を始めた世代は、採用の厳選化によって大量の学生が内定を得られなくなる。その後で景気が回復しても、その時の新卒を大量に採る一方で不況期に就職できなかった世代は新卒と同じようには採用しながらないため、世代間による雇用機会の不均衡が生じる。
天下りの発生
年功序列の賃金モデルを維持するために、子会社の幹部ポストに社員を送り込む事が行われる。必然的に子会社の生え抜き社員の出世が見込みづらくなり、賃金の向上が望めない環境が生まれる。公官庁の場合は、庁内のポストに付けなかった人間を国からの補助金のある独立行政法人公益法人に送り込む形で制度を維持しようとする。
スペシャリストの欠如
同一企業内で様々な部署を経験することになるため、従業員に専門性が身に付きにくい。結果として転職を阻害させることに繋がる。

関連文献・記事[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 小田切宏之 『企業経済学』 東洋経済新報社、2010年、387-394頁。ISBN 978-4-492-81301-0 
  2. ^ 三谷直紀『年功賃金・成果主義・賃金構造』
  3. ^ 逆に言えば、終身雇用よりも中途での転職のほうが一般的であれば、賃金は年齢に依存しなくなる(小田切 (2010))。
  4. ^ 日本経済新聞』2011年12月25日付「定昇、見直し議論を」経団連、春季交渉で報告案 役割等級制など提示へ

外部リンク[編集]