健康保険組合

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健康保険組合(けんこうほけんくみあい、略称:健保組合)は、健康保険法に基づき国が行う健康保険事業を代行する公法人である。監督官庁は厚生労働省の地方支部局である地方厚生(支)局。上部組織として健康保険組合連合会がある。また、後述の総合型健康保険組合には、根拠法令なき任意団体としての上部組織として総合健康保険組合協議会もある。

目次

概要 [編集]

「健康保険の保険者は、全国健康保険協会及び健康保険組合とする」と健康保険法で定められ、これに基づき、健康保険組合は、その組合員たる適用事業所の事業主、その適用事業所に使用される被保険者、及び任意継続被保険者で構成される。健康保険組合で行っている健康保険制度を、組合管掌健康保険(通称:組合健保)という。これに対し、現在、全国健康保険協会で行っている健康保険制度は、全国健康保険協会管掌健康保険(通称:協会けんぽ)といいい、2008年9月30日までは国(社会保険庁)が政府管掌健康保険(通称:政管健保)として運営していた。

健康保険組合を企業が単独で設立する場合(単一型健康保険組合)は700人以上、同業種の複数の企業が共同で設立する場合(総合型健康保険組合)は3000人以上の被保険者が必要となるため、主に大手企業やそのグループ企業の社員が加入している。生活習慣病など疾病予防の活動を積極的に行い、従業員等の健康増進とともに医療費や保険料を抑えることができるという、スケール・メリットを生かした活動が期待されている。2007年の厚生労働白書によれば、2006年3月時点で約3000万人が組合健保に加入している。2010年4月1日現在の健保組合数は1462で、年々その数は減少傾向にある。

設立 [編集]

適用事業所の事業主が健康保険組合を設立しようとするときは、適用事業所に使用される被保険者の2分の1以上の同意を得て規約を作り、厚生労働大臣認可を受けなければならない。共同設立の場合は2分の1以上の同意を各事業所について得なければならない。また、厚生労働大臣は、1又は2以上の強制適用事業所について一定数以上の被保険者を使用する事業主に対し健康保険組合の設立を命ずることができる。健康保険組合は、設立の認可を受けたときに成立する。

健康保険組合が設立された適用事業所の事業主及びその事業所に使用される被保険者は、たとえ設立に同意しなかった被保険者であっても当該健康保険組合の組合員になる。事業所に使用されなくなったときでも、任意継続被保険者であるときは、なお当該健康保険組合の組合員となる。なお、日雇特例被保険者は、健康保険組合のある事業所に使用される場合であっても、組合員となることはできない。

健康保険組合の設立には厚生労働省が定める設立認可基準に適合し、将来にわたって安定した事業運営が見込まれることが必要であり、申請を行えば必ず設立できるというものではない。近年は2008年10月に1組合が設立を認可されたが、年間の設立組合は平均1ないし2程度と、その審査は厳格である。

健康保険法に定める設立の申請を行う前に入念な審査が行われ、最終的に認可基準に適合した者のみが認可申請を行うことができる。正確に述べるならば、申請は誰もが行える法定手続きであるが、国の事業を代行する公法人としてふさわしい設立母体か否かといった点について確認すべき事項が多岐に渡るため、申請を受けてすみやかに判断することが現実的に困難となる。また、国が設立を認めない判断を行った場合、市場における当該企業の株価の暴落といった副作用を招く恐れもあるため、事前に確認を行ったうえで、基準を満たしていると判断された者のみが申請を行う手法が慣例となっている。基準を満たさない場合は、申請者側からの事前審査辞退という形で完結することとなり、表沙汰となることはない。このため、セレモニーたる申請が却下された事例は一度もない。

組織 [編集]

健康保険組合には、役員として理事長1名、及び理事、監事が置かれ、理事会が健康保険組合の執行機関となる。

議決機関として組合会が置かれ、理事長は、毎年度1回通常組合会を招集しなければならない。また理事長は組合会議員の定数の3分の1以上の連署により組合会の招集を請求された時は、その請求のあった時から20日以内の組合会を召集しなければならない。なお組合員議員の選定については、半数は設立事業所に使用される者から、もう半数は組合員の互選により選出する。以下の事項については組合会の議決を経なければならない。

  • 規約の変更(軽微な事項を除き、厚生労働大臣の認可が必要)
  • 収入支出の予算
  • 事業報告及び決算
  • 組合の合併・分割、解散(組合会議員の定数の4分の3以上の多数で議決し、厚生労働大臣の認可が必要)
  • その他規約で定める事項

健康保険組合は、毎年度、収入支出の予算を作成し、当該年度の開始前に厚生労働大臣に届出なければならない。また、毎年度終了後6月以内に、事業及び決算に関する報告書を作成し、厚生労働大臣に提出しなければならない。健康保険事業の収支が均衡しない健康保険組合であって、厚生労働大臣の指定を受けたものは、その財政の健全化に関する計画を定め、厚生労働大臣の承認を受けなければならない。当該承認を受けた健康保険組合は、当該承認に係る健全化計画に従い、その事業を行わなければならない。

健康保険組合は、毎事業年度末において、当該事業年度及びその直前の2事業年度内において行った保険給付に要した費用の額の、1事業年度あたりの平均額の12分の3に相当する額を、剰余金のうちから準備金として積み立てなければならない。そして、この準備金は保険給付に要する費用の不足を補う場合を除いては取り崩すことができない

健康保険組合は、共同してその目的を達するため、健康保険組合連合会(健保連)を設立することができる。また、厚生労働大臣は、健康保険組合に対し、組合員である被保険者の共同の福祉を増進するため必要があると認めるときは、健保連に加入することを命ずることができる。健保連は、組合間の財源の不均衡を調整するため、会員たる組合に対し交付金の交付の事業を行う。なお、組合は健保連に対し拠出金を供出し、事業主・被保険者は拠出に要する費用に充てるために調整保険料を負担する。

組合の特則規定 [編集]

健康保険組合は、従業員やその家族である被保険者や被扶養者の利益・福利厚生の充実を図ることを目的に設立するものである。そのため、協会けんぽでは認められていない組合独自のサービスが認められている。

  • 保険料の負担割合は、協会けんぽでは労使折半が原則であるが、組合健保では規約で定めるところにより事業主の負担割合を増加させることができる。
  • 医療機関の窓口で支払う負担金(一部負担金)は、協会けんぽでは原則3割負担であるが、組合直営の病院、組合指定の病院等では規約により一部負担金の減額・不徴収・払い戻しが行える。
  • 健康保険法で定める保険給付に併せて、規約で定めるところにより、付加給付を行うことができる。ただし、災害見舞金、家族付添補給金、栄養補給金、出産の際の産衣の支給等、保険事故と関係がない、あるいは保険給付を補完・拡充するものとはいえない付加給付を行うことは認められない。

諸問題 [編集]

  • 採算性を度外視して、企業や業界の価値を高めるためのツールとして設立を目論むケースが多く、政治献金や組織票と引き換えに族議員(元厚労省幹部等)らを介した不当な圧力・口利きが横行するなど、政治腐敗の温床ともなっている。
  • 近年の急速な高齢化等の影響による高齢者医療制度への拠出金の負担増や、企業の経営合理化等による解雇や給与水準(標準報酬月額)の引き下げに伴う保険料収入の減少等により、経常収支が赤字に陥る健康保険組合がほとんどである。拠出金の増加等により、保険料率が政府管掌健康保険(現・全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ))を上回り、解散に追い込まれる組合が多発することが予想されており、一部の投資家や市場関係者の間では、リスクと捉えて敬遠する動きも見られ、皮肉にも企業にとってマイナス効果を与える要因ともなりつつある。近年の大規模な組合では、セイノーホールディングス傘下の西濃運輸などで構成される西濃運輸健康保険組合(加入者57,000人)が2008年8月1日付けで解散し、政府管掌健康保険に移行した。この西濃運輸健康保険組合は、各地に保有していた保養施設等を売却することなく解散したため、実質的な不良債権を政府管掌健康保険が引き継ぐ事態となった(健康保険法第26条により、解散により消滅した健康保険組合の権利義務は、全国健康保険協会が引き継ぐこととされる)。
  • 決算期に「健康保険組合の何割が赤字」と報道され、健保組合のあり方が議論されている。健康保険組合は、法定給付費等の支出が増加し、現在の保険料率では保険運営できなくなる恐れがある場合、組合の意思決定機関である組合会に保険料率の引き上げを諮って承認を受け、適切な保険料率とすることが公法人として求められる姿である。適正な保険料率を設定できれば、一般的に、経常収支が赤字となることはなく、積立金等を取り崩すことなく健全な保険運営が可能となる。もっとも、保険料率は法令でその上限(120パーミル)が設けられており、また、保険料率が全国健康保険協会を上回ると財政窮迫組合とされ、指定組合として財政健全化計画を厚生労働省に提出し、実質上の管理下におかれることもある。これらの事情を勘案しても運営していくことが困難な場合等に解散することとなる。しかし、全国健康保険協会の保険料率を大きく下回る組合であっても、この問題に含まれているケースが多く、こうした議論を抜きに国全体の医療費適正化論を進めることは適切でない。

関連項目 [編集]

外部リンク [編集]