人事

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人事(じんじ)とは、以下のような意味がある。

  1. (自然に対して)人間に関することがら、出来事
  2. 人間としてなし得るまたはなすべきことがら(例:人事を尽くして天命を待つ。)
  3. 企業その他の団体・組織における職員の処遇などの決定に関する業務(本項において解説)
  4. 人事異動の略
  5. 意識(例:人事不省)
  6. 法律用語として、人の身分能力、住所など、そのうち特に身分に関すること(例:人事法人事訴訟

企業そのたの団体・組織における業務としての人事には、それぞれの団体・組織によって、多少の範疇の違いがあるが、一般的には次のようなものを指す。

  • 要員管理
  • 人事制度
    • 評価制度(人事考課)
    • 等級制度
    • 賃金制度
  • 福利厚生制度
  • 教育訓練制度

本項では意味合い毎に逐次記述していく。

要員管理[編集]

人事の果たす役割の1つに、採用・退職・異動・出向・転籍などの要員の管理があげられる。要員の管理は短期的から中長期的なスパンでの人員計画を行い推進していくことが求められる。また、正社員・契約社員・パートタイマー・派遣社員など雇用形態の違いも考慮していかなければならない。

採用[編集]

新卒採用
新卒採用とは、正社員等としての職務経験や社会経験が無い、教育機関を卒業したばかりの人を採用することである。したがって学生を対象に採用活動が行われることになる。 (「就職活動」も参照可)
経験者採用(中途採用)
経験者採用とは新卒採用の対義語として、一定の職務経験や社会経験がある人を採用することである。(経験者採用の意味で「中途採用」という言葉が使われることも多いが、「中途採用」は定期採用の対義語として、定期採用以外の時期に採用される場合を指すこともある。)

採用の手法

  • 新卒採用の場合は、公募学校推薦の2種類が挙げられる。公募は「リクナビ」や「マイナビ」などの就職情報会社のWebサイトや大学のWebサイトに求人情報を掲載するWeb媒体と、就職情報会社や大学が開催する合同会社説明会に出展する方法がある。尚、中卒についてはハローワークを通じての求人となる。
  • 経験者採用の場合は、人材紹介業やアウトプレースメントなどを行っている会社に登録されている人を紹介してもらう方法がある。また、特定個人や特定スキルを持つ人材に直接交渉し転職をさせるヘッドハンティング型の人材紹介もある。あるいは「en社会人の就職情報」や「リクナビNEXT」などの就職情報会社のWebサイトに求人情報を掲載し募集する方法がある。
  • 非正規社員(契約社員、パートタイマー)の採用の場合は、ハローワークに求人を出したり、フリーペーパーや新聞折り込み広告などに求人情報を出したりして募集することが多いが、人材紹介会社からの紹介やWebサイトを使うこともある。

退職[編集]

退職については、退職を参照のこと。尚、定年退職については、現在高年齢者雇用安定法により下限を60歳と定められているが、少子化の問題などにより若手の労働市場が減少することが見込まれていることから、60歳超の定年を設ける企業や、定年自体の定めを撤廃する企業も見られるようになってきた。また今後、厚生年金の支給開始時期が段階を追って65歳に引き上げられることなどから、国の政策により60歳で定年を迎えた従業員について本人の希望があれば、原則として再雇用しなければならないことが義務付けられている。

異動[編集]

人事異動ともいい、従業員の担当業務や勤務地の変更を指す。

出向・転籍[編集]

出向とは、別の会社に異動となることを指す。出向には広義の意味では「在籍出向」と「転籍出向」があり、狭義の意味では「在籍出向」を指す。

出向(在籍出向)
出向とは、一時的ないしは定年まで別の会社や団体に異動(配置転換)を行う形態である。
出向元との労働契約を結んだまま出向先との間にも労働契約関係が成立し、出向先の指揮命令を受けて労働に従事する。民法625条に基づく使用者の権利の譲渡と解されており、労働者の同意が必要とされているが具体的な同意の形についてはたびたび争いがある。労働契約法14条は使用者が出向を命ずる権利がある場合であっても濫用である場合には無効とする規程をおいている。
出向の目的は次のとおり挙げることができる。
  • 自社が加入している業界団体や研究機関に出向する場合など。
  • 自社にない技術などを習得するため、他社や親会社に出向する場合など。
  • 上記とは反対に、自社が持っている技術などを伝えるため、子会社などに出向する場合など。
  • グループ会社内の人材交流のため。
  • 余剰人員の削減のため。
  • 人員の一時的な融通のため。
※ごく稀に軽度の不祥事や損失に関与した人物を再教育の名目として関係会社に出向させて閑職に追いやられる例もある。
転籍(転籍出向)
転籍とは、従業員を別の会社に異動させ、且つ、籍まで移すことである。出向者が定年間近であったり子会社の資本関係変更などのケースでは、出向者がそのまま出向先に転籍するケースも珍しくない。

歴史[編集]

高度成長期を経てバブル期までの日本においては、終身雇用を前提として要員の確保がなされていた。即ち新卒で採用された企業に定年まで勤めることによって、企業は優秀な人材を確保し、従業員は安定した雇用を保障されることによりバランスを保ってきた。しかし、バブル崩壊とともに多くの企業が雇用調整を図ったため、失業率の上昇・学生の就職率の低下などの社会現象を生み出すとともに、終身雇用制度の崩壊が叫ばれるようになった。 終身雇用制度崩壊後においては従前の大量採用から、必要なときに必要な人数だけを調達する考えが強くなり、また、人件費の高い正社員の採用を控え、人件費の安い非正規社員(契約社員・派遣社員)による充当が図られてきた。 2005年~2006年ころは、景気の向上に伴う求人意欲の上昇、少子化による新卒者の減少、2007年問題などにより、人材の調達が難しくなってきているといわれ、一部の企業ではリテンションストラテジー(優秀な人材を活かす・残す)の観点から人事制度の構築をし、要員管理を行っているともされた。その後2008年には世界規模の不況が人事にも影響を与え、様々なことが議論されている。

人事制度[編集]

人事制度とは、従業員の処遇などについての体系を整備してルール化することにより、企業と従業員との円滑な関係を築き、事務管理の効率化を図るものである。また、従業員のモチベーションアップやスキルアップを図る制度も人事制度の重要な役割である。一口に人事制度といってもその範疇は多岐にわたり、直接的に従業員の処遇にかかわる部分のほか、教育訓練制度・福利厚生制度なども人事制度に内包される。

伝統的な日本の人事制度は、1.終身雇用 2.年功序列 の形態である。この制度のもと、安定した雇用と経年とともに賃金が上昇するシステムは、かつては日本経済の高度成長を支えた。しかし、全国的に一定の生活水準が確保されたことでは、バブル崩壊後の成長も見込まれなくなり、人件費の高騰が大きな足枷となった。やがて成果主義への転換を図る企業が増えていき、また、需要と供給バランスに伴う雇用調整による労働市場の流動化にもつながっていった。

総務省公務員課においては、次のようなテーマを取り上げて研修している[1]

  • 人事制度改革の必要性
  • 人事制度改革の効果
  • 現状の打破
  • 人事部門の役割
  • 人が働く理由
  • 個人と組織のあり方
  • キャリアの形成
  • 管理職員の意識改革
  • 人事のオープン化
  • 人材育成の観点
  • 職員参加型の制度設計
  • 制度構築のための情報収集
  • 職務の把握と分類
  • キャリア選択の仕組み
  • 評価の試行・見直し
  • 納得性を高める方法
  • 評価者・被評価者の訓練
  • 能力評価のあり方
  • 機能する目標管理制度
  • 評価結果の活用
  • フィードバックの必要性

評価制度(人事考課)[編集]

参照 Performance appraisal

評価制度とは、一定期間(1年間もしくは半年・四半期など)の従業員の労働に対する評価を行い、給与の昇給額や賞与の額に反映させて(従業員間に差をつけ)、昇進・昇格に反映させることである。主な評価制度においては、次の項目から制度設計をされていることが多い。

  • 情意考課 - 仕事への取り組みに対する評価。規律性・責任性・協調性などの項目からなる
  • 成績考課 - 会社や上司が要求した仕事レベルの結果。要求した仕事レベルとは職務基準ともいい、この基準が低いと成果が出やすくなる。
  • 能力考課 - 会社が定めた各等級(資格)における標準的な能力を定めた職能要件書に対しての能力レベル。

しかし、これらの評価項目は抽象的で、考課者(評価する人)の考課能力によっては結果に差がでやすいという側面があった。成果主義を取り入れる企業が増えてくれるにつれ、評価制度の透明性や公平性の必要が求められるようになった。その表れとして、具体的な行動をもとに評価し、コンピテンシーや目標管理制度を導入する企業が増えてきている。

コンピテンシー
コンピテンシーについては、「コンピテンシー」を参照のこと。
目標管理
目標管理とは、期首に半期もしくは通期の業務目標を設定し、その達成度合いで評価するものである。しかしながら、目標設定にバラつきがあると効果が低くなる側面がある。

エラー考課[2] 人事考課の誤差(エラー)は、

  1. 意図的なエラー考課
  2. 無意識的なエラー考課

に分類される。

無意識的なエラー考課
  • ハロー効果
  • 寛大化傾向(Illusory superiority
  • 中心化(中央化)・極端化(分散化)傾向(Central tendency
  • 論理誤差
  • 対比誤差
  • 近接誤差
  • 期末考課
  • 近時点効果エラー
  • 先入観エラー
  • 親近感エラー
  • 帰属要因エラー
  • 厳格化傾向
  • 第一印象効果

等級制度[編集]

等級制度とは、従業員を7~13程度の等級に区分し処遇の差をつける制度である。一般的に、職責(職務)や能力の差で階差をつけ、上位等級ほど賃金が高くなるようになっている。等級を職責(職務)で階差をつける制度を職務等級制度といい、その代表的な例が職階制度という。これに対して、能力で階差をつける制度を能力等級制度といい、その代表的な例が職能資格制度である。

等級制度において、上位等級に上がることを昇格(昇級)といい、例えば4級だった従業員が5級に上がるといったことである。尚、役職が上がることを昇進といい、例えば課長だった従業員が部長になるといったことである。

職階制度
職階制度とは、主に公務員などに取り入れられている制度で、役職と等級が一致させる制度である。この制度のメリットとしては、仕事の役割(役職)と賃金がマッチするので、納得感を得やすいことであろう。その反面として、賃金と業務との相関関係が解析されることはなく、また上位ポストが空いていないと本人にどれだけ能力があっても昇進(昇格)ができないため、モチベーションが下がってしまうことがある。
職能資格制度
職能資格制度とは、等級(賃金などの処遇)を職務レベルから切り離し、能力レベルで位置づける制度である。一般的に、職能要件書などと呼ばれる等級ごとの能力の定義を行い、従業員の能力をもとに等級の位置づけを行うものである。昇格の基準には、卒業方式と入学方式があり、前者は、現在の等級に求められる能力に満たしたときに、上位等級に昇格させるもので、後者は、上位等級に求められる能力に満たしたときに、その等級に昇格させるものである。

賃金制度[編集]

賃金制度とは、従業員の賃金をどのように決定するかを定める制度で、時給制・日給制・日給月給制・月給制・年俸制などがあるが、一般に、正社員では日給月給制~年俸制をとることが多い。また、その額をどのように決めるかでは、次の3つが大きな要素となる。

  • 生活(生計)保障 - 年齢や勤務場所、扶養家族数などの要素で決定されるもの。年齢給・通勤手当・特地勤務手当・扶養手当などがあてはまる。
  • 業務(能力)対価 - 能力の高さや業務の困難さによって決定されるもの。職能給や役職手当などのほか、夜間・休日給、超過勤務(いわゆる残業)手当、特殊勤務手当などがあてはまる。なお、公務員及び議員等の賃金においては、税収総額に応じた業務対価の性質への転換が強く求められている。
  • 労働市場での価値 - 一般的に、転職することによって仕事や処遇のレベルアップを図るアメリカにおいて取られる方法で、「この仕事をできる人を採用するのには、どのくらいの賃金が必要か」「このポジションの人を引き止めるのにはどのくらいの賃金が必要か」などといった、労働市場での価値に基づき賃金を決定する。

福利厚生制度[編集]

福利厚生制度とは、賃金とは別に従業員の労働意欲向上のための諸政策であり、大別すると二つに区分できる。

  • 法定福利 - 法律で実施を定められた1.健康保険 2.厚生年金 3.雇用保険 4.労災保険 5.健康診断 のことをいう。
  • 法定外福利 - 企業の任意で定めるもので、1.住宅補助 2.慶弔見舞 3.レクリエーションなど 4.食事補助 5.財形貯蓄 など

法定福利に関して、保険料は、健康保険厚生年金雇用保険はそれぞれ労使の折半、労災保険健康診断は会社側が全額負担することになっている。

法定外福利に関しては、一般に、(勤続の長期により給付レベルに差はあるものの)従業員に一律に設定されるものであり、その福利厚生制度を利用できる人とそうでない人が発生し、不公平感が発生することがある(例えば、借上社宅制度において、一定額の賃貸料を補助する場合において、持ち家の人や、親元から通勤する人には、このメリットを享受できないなどといったこと)点や、保養所などの施設の建設や維持管理の費用が負担となる点などの問題がある。

また、企業規模の大小が、法定外福利の充実度に直結している。

近年は後述するカフェテリアプランを採用したり、福祉を削減する代わりに一部を賃金に上乗せする制度を導入するなどの改革も見られる。

カフェテリアプラン[編集]

カフェテリアプランとは、選択型福利厚生とも言い、カフェテリア式の食堂のように好きな(食べたい)ものを自分で選ぶのに似ているところから名前が付いた福利厚生制度で、福利厚生メニューの内、自分のポイント(付与金額)の範囲で、自分に必要なメニューを選択できるものである。

アメリカで生まれ、発展したといわれている。日本においては、ベネッセコーポレーションが1995年に導入したのが最初の事例とされる。

具体的には、従業員各自にポイント(職階や勤続年数に応じて多寡がある場合もある)が一定期間ごとに付与される。会社側は、「1ポイント=1000円」というようにレートを設定し、資格取得費用補助、住宅費補助、レクリエーション施設利用というように利用可能サービスを提示する。そして、従業員が利用したサービスの費用を、付与されたポイントを消費する形で会社側が費用補助を行う。

カフェテリアプランは、上述のような従来制度の問題点が解決でき、福利厚生の効率化(福利厚生費総額の管理がしやすい)や従業員のモラルを高められると考えられる。

しかし、サービスの内容によって課税されるもの、非課税のものが混在しており、導入や運用が複雑であったり、税務当局との対立の火種になる可能性があるなどの問題点もある。

参考: 黒田兼一・関口定一 他『現代の人事労務管理』 (八千代出版 2003年)ISBN 4842912049

教育訓練制度[編集]

年功序列制度を取る企業が多い日本において、未経験の新卒社員を一定のレベルに育てる必要性があり、教育訓練制度を取り入れる企業が多い。

OJT[編集]

OJT(on the job training)とは、職場内研修とも訳され、職場の先輩・上司から後輩・部下に対し、業務を通じて教育を施す制度である。但し、指導者を誰にするか、達成目標をどのレベルに設定するかを明確にしないと、OJTという名のもとに放置させてしまう危険性がある。

Off・JT[編集]

Off・JT(off the job training)とは、職場(業務)外に行う教育訓練制度で、教育訓練制度の狭義の意味では、Off・JTを指す。

階層別教育
階層別教育とは、職種を問わず、同じ経験や企業内の位置づけにある社員を集めて行う教育訓練制度のことである。新入社員研修や新任管理職教育などがこれにあてはまる。
職能別研修
職能別研修とは、似たような職種の社員を集めて行う教育訓練制度のことである。

自己啓発[編集]

自己啓発とは、社員自らの意思により取り組む教育訓練のことである。資格検定取得なども該当する。それに対し、企業が一定の補助をすることがある。

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]