うつ病

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うつ病(うつびょう、鬱病、欝病)とは、精神障害の一種であり、抑うつ気分、意欲・興味・精神活動の低下、焦燥(しょうそう)、食欲低下、不眠などを特徴とする精神疾患である。

双極性障害(躁うつ病)と区別するために「単極性うつ病」と呼ばれることもある。

うつ病
分類及び外部参照情報
ICD-10 F32., F33.
ICD-9 296
OMIM 608516
DiseasesDB 3589
MedlinePlus 003213
eMedicine med/532
プロジェクト:病気Portal:医学と医療
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うつ病のデータ
ICD-10 F32 F33
統計 出典:[1][2]
世界の患者数 約350,000,000
日本の患者数 約1,041,000
学会
日本 日本精神神経学会
世界 世界精神医学会
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目次

定義[編集]

うつ病は他の精神疾患と同様、原因は特定されていないため、原因によってうつ病を分類したり定義したりすることは現時点では困難である。

「うつ病」に相当する英語は"Depression"であるが、"Depression"は疾病全体を指すこともあれば抑うつ気分などの症状、さらには一時的な落ち込みなどを指すこともあり、日本語の「うつ病」と完全に同一ではない。


以前は内因が関与している内因性うつ病心因が強く関与している心因性うつ病(神経症性うつ病)とに分けて論じられることが一般的であった。しかし上述のように原因による分類・定義が困難なため、1980年にアメリカ精神医学会が「精神障害の分類と統計の手引第3版(DSM-III)」を発表してからは、これら操作的診断基準によって分類することが一般的となった(#分類の項も参照)。

「うつ病」という用語は、狭い意味では「精神障害の診断と統計の手引き第4版(DSM-IV)」における、大うつ病性障害英語:major depressive disorder)に相当するものを指しているが、広い意味でのうつ病は、一般的には抑うつ症状が前景にたっている精神医学的障害を含める。そのなかには気分変調性障害をはじめとする様々なカテゴリーが含まれている[1]


操作的診断による「大うつ病性障害」などの概念と、従来診断による「内因性うつ病」などは同じ「うつ病」であっても異なる概念であるが、このことが専門家の間でさえもあまり意識されずに使用されている場合があり、時にはそれを混交して使用しているものも多い。そのため一般社会でも、精神医学会においても、うつ病に対する大きな混乱が生まれており[2]、注意が必要である。

この記事では、主には(DSM-IVおよびそのテキスト改訂版であるDSM-IV-TRに基づく)「大うつ病性障害」について記述しているが、記事内でも様々な定義による「うつ病」の概念が使用されている。

「うつ状態」と「うつ病」[編集]

うつ状態を呈するからといって、うつ病であるとは限らない。うつ状態は、うつ病以外にも、様々な原因によって引き起こされる(#鑑別疾患参照)。

また、うつ状態のうち、大うつ病エピソードとして扱われるのは、DSM-IVの診断基準[注 1]に従って、「薬物依存以外、身体疾患以外、死別反応以外のもので、2週間以上にわたり毎日続き、生活の機能障害を呈している。」というある程度の重症度を呈するものである。DSM-5では「死別反応」もうつ病に該当する様になった。

病態[編集]

うつ病は、単一の疾患ではなく症候群であり、さまざまな病因による亜型を含むと考えられる[3]

いわゆる「典型的」なうつ病(内因性うつ病)の場合、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内の神経伝達物質の働きが悪くなっていると推測されている(#モノアミン仮説)。性格や考え方の問題ではないと考えられている[4]。この場合、通常は抗うつ薬がよく効き、治療しなくても時間が解決する場合もあると言われている[5]。一方、心理的要因が多いと思われるうつ病では、原因となった葛藤の解決や、葛藤状況から離れることなどの原因に対する対応が必要である。

分類[編集]

うつ病などのうつ症状を呈する精神疾患の分類方法は多様である。

操作的診断基準(DSM-IV, ICD-10など)による分類[編集]

1980年にアメリカ精神医学会が「精神障害の分類と統計の手引第3版(DSM-III)」を発表し、「うつ病性障害」を、ある程度症状の重い「大うつ病」と、軽いうつ状態が続く「気分変調症」に二分した。原因による分類・定義が現時点では困難であるため、1994年に発表された「精神障害の診断と統計の手引き第4版(DSM-IV)」「疾病及び関連保健問題の国際統計分類 第10版(ICD-10) 第5章 精神および行動の障害」でも、基本的にはDSM-IIIのうつ病性障害の診断分類の構成が継承されている[1]

古典的分類[編集]

古典的分類(従来診断)では、疾患の成因についての判断が優先され、「心理的誘因が明確でない内因性うつ病」と、「心理的誘因が特定できる心因性うつ病」の二分法が中心となっている(狭義には前者が“うつ病”とされ、心因性のものは「適応障害」などに分類されることも多い)。

操作的診断基準は、診断一致率の高さなどのため研究や統計に有用と考えられ、うつ病に関するほとんどの研究・統計にはDSM-IVやICD-10が使用されている。一方、臨床場面では心理的誘因の評価が治療において重要であり、従来の枠組みによる考え方が有用な場合もある。例えば、“心因性のうつ”では、原因から遠ざかれば一晩で元気になる可能性もあり、治療や環境変化などへのレスポンスが大きく異なっている。

重症度による分類[編集]

DSM-IVにおいては、大うつ病性障害の診断を満たすものについて、さらに、「軽度」(いくつかの愁訴が最低限の基準に該当する)、「中等度」、「重度」(社会的や職業的能力を妨げている)に分類される。 「精神病性の特徴(妄想・幻覚など)を伴うもの」(一般に「精神病性うつ病」とも呼ばれる)は「重度」にランクされる。 症状が改善して診断基準を満たさなくなったものの、一部の症状が残存しているものを「部分寛解」という。

病相の回数による分類[編集]

うつ病相が1回のみの単一エピソードうつ病に対して、うつ病を繰り返すものを反復性うつ病という。

治療反応性による分類[編集]

DSM-IVなどには定義されておらず、基準は曖昧であるが、研究などでは「少なくとも2つ以上の抗うつ薬を十分な量・長期にわたり投与しても症状が改善しないケース」を治療抵抗性うつ病英語版あるいは難治性うつ病ということが多い。

病前性格による分類[編集]

心理学的成因仮説の代表は、病前性格論である。かつてうつ病にかかりやすい患者の病前性格としてメランコリー親和型性格者が多い事が統計的に確認されていたが[6]、現代ではうつ病概念の拡大や社会状況の変化に伴い、うつ病に特異的な病前性格は見いだせなくなっている[6]

  • メランコリー親和型性格は1961年にテレンバッハが提唱したもので、秩序を愛する、几帳面、律儀、生真面目、融通が利かないなどの特徴を持つ。内因性うつ病はこの対応を指す。主として反復性のないうつ病を呈するとされる。
  • 循環性格はエルンスト・クレッチマーが提唱したもので、社交的で親切、温厚だが、その反面優柔不断であるため、決断力が弱く、板挟み状態になりやすいという特徴を持つ。躁うつ病の病前性格の一つであるとされる。
  • 執着性格は1941年下田光造が提唱したもので、仕事熱心、几帳面、責任感が強いなどの特徴を持つ。反復性うつ病ないし躁うつ病の病前性格の1つであるとされる。
  • ディスチミア親和型は2005年に樽味伸が提唱したもので、メランコリー親和型と比してより若年層に見られる。社会的役割への同一化よりも、自己自身への愛着が優先する。また成熟した役割意識から生まれる自責的感覚を持ちにくい。ストレスに対しては他責的・他罰的に対処し、抱えきれない課題に対し、時には自傷や大量服薬を行う。幼い頃から競争原理が働いた社会で成長した世代が多く、現実で思い通りにならない事態に直面した際に個の尊厳は破れ、自己愛は先鋭化する。回避的な傾向が目立つ[7]
ディスチミア親和型うつ病とメランコリー親和型うつ病の対比
ディスチミア親和型 メランコリー親和型
年齢層 青年層 中高年層
関連する気質 スチューデント・アパシー
退却傾向と無気力
執着気質
メランコリー性格
病前性格 「自己自身(役割ぬき)への愛着
規範に対して『ストレス』であると抵抗する
秩序への否定的感情と万能感
もともと仕事熱心ではない
社会的役割・規範への愛着
規範に対して好意的で同一化
秩序を愛し、配慮的で几帳面
基本的に仕事熱心
症候学的特徴 不全感と倦怠
回避と他罰的感情(他者への非難)
衝動的な自傷、一方で「軽やかな」自殺企図
焦燥と抑制
疲弊と罪業感(申し訳なさの表明)
完遂しかねない「熟慮した」自殺企図
薬物への反応 多くは部分的効果に留まる(病み終えない) 多くは良好(病み終える)
認知と行動特性 どこまでが「生き方」でどこからが「症状経過」か不分明 疾病による行動変化が明らか
予後と環境変化 休養と服薬のみではしばしば慢性化する
置かれた場・環境の変化で急速に改善することがある
休養と服薬で全般に軽快しやすい
場・環境の変化は両価的である(時に自責的となる)
樽味伸(2005)[8]

DSM-IV-TRにおけるうつ病(大うつ病性障害)のサブタイプ[編集]

DSM-5で追加されたうつ病(大うつ病性障害)のサブタイプ[編集]

非定型うつ病[編集]

通常のうつ病(メランコリー型うつ)は気分が落ち込む状態が長期にわたって持続して気分が明るくならないが、好きなことをしているときなどには気分が明るくなるようなタイプのうつ病は非定型うつといわれ、うつ病の半分程度は非定型とされる[9]

ただし、非定型うつ病は双極性障害の初期症状と区別しにくいため、とりわけ親族に双極性障害患者がいる場合は、その可能性を考慮する必要がある。

DSM-IV-TR/DSM-5の「非定型」の基準
上記の定義に加えて下記が2つ以上あり、メランコリー型または緊張病性の特徴を満たさない。

  1. 顕著な体重増加または過食
  2. 過眠
  3. 手足や体が鉛の様に重くなる事がある
  4. 対人関係に過敏

女性に2~3倍多い。

高齢者はメランコリー型うつが多く、若年者は非定型うつが多い。

新型うつ病(現代型うつ病)[編集]

従前からの典型的なうつ病とは異なる特徴を持つものの総称で、現代型うつ病とも呼ばれる[10][11]。従来のメランコリー親和型の性格標識を持たない患者を指すことが多い。大うつ病性障害の診断基準を満たし、日本のマスメディアなどで上記の非定型うつ病とほぼ同義に扱われているが、専門用語ではなく、精神医学的に厳密な定義はない[12]

うつ病概念の拡大[編集]

新しいタイプのうつ病を理解するには、日本における精神医学の発展の歴史を知る必要がある。戦前から日本はドイツ精神医学の影響を受けており、うつ病=内因性うつ病(メランコリー親和型うつ病)と捉えられてきた。しかし戦後アメリカ精神医学が主流となり、各国と同様に日本においても操作的診断学が導入されるようになると、あらゆる抑うつ症状が全て「大うつ病性障害」に包含されることとなった。従来の伝統的診断学においては、病前性格論・生活史診断などを組み合わせてうつ病の鑑別診断が行われており、カルテには薬物が奏効する「内因性うつ病」、心理学的問題の解決が求められる「神経症性うつ病」、「境界性パーソナリティ障害に伴う抑うつ症状」などと記されていた。しかし操作的診断基準とともにうつ病圏が拡大されると、成因が問われず様々な精神疾患の抑うつ症状が「大うつ病性障害」へと混入して診断されることとなった[2]。その結果成因が問われないままにうつ病と診断がなされ治療されてきたのが、近年増加した新しいタイプのうつ病である。症候学的には大うつ病性障害の診断基準を満たすため、確かに「うつ病」ではあるが、必ずしも伝統的診断における「うつ病(内因性うつ病)」とは限らないため、抗うつ薬による薬物療法の効果は限局的である。パーソナリティ障害の合併例には薬物療法精神療法の併用が勧められており[13]気分安定薬SSRI、少量の抗精神病薬が症状の軽減に有効であることが報告されている[14]

従来とは対極にある性格標識[編集]

これまで従来のメランコリー親和型の性格標識を持たないうつ病患者が数多く報告されてきた。笠原の退却神経症[15]、阿倍の未熟型うつ病[16]、広瀬の逃避型抑うつ[17]、松浪の現代型うつ病[18]などである。これらは提唱者によって少しずつ特徴の捉え方が異なるが、新しいタイプのうつ病の一部である。樽味はメランコリー親和型と対比させたディスチミア親和型[8]として定義し、市橋は内因性うつ病ではないが、症候学的には大うつ病性障害の操作的診断基準を満たすことから、非うつ病性うつ病[19][20]と定義した。樋口はその構造から、境界性うつ病および自己愛性うつ病と定義した[21]

この種の新しいタイプのうつ病に共通してみられる心性は、役割意識に乏しく、他責的・他罰的で、薬物が奏効せず、遷延化するという点である。それらの多くはパーソナリティ障害(パーソナリティ障害の傾向を持つ者)と考えられており、多分に自己愛的、回避的心性を読み取ることができる[22][8][23][21][24]

なお、諸外国においても同様に成因を問わない操作診断によるうつ病概念の混乱が生じており、Akiskal、Berrios、Donald Klein、Healy ら英米圏を代表する学者13名は連名で、DSMを発行しているアメリカ精神医学会の学会誌である『The American Journal of Psychiatry』において、大うつ病性障害からメランコリアを切り離し、1つの臨床単位として独立させる必要性を提言している[25]

原因[編集]

うつ病の発病メカニズムは未だ不明である。うつ病の原因は単一のメカニズムで説明されるとは限らず、複数の病態からなる症候群である可能性もある。現在までに、うつ病の発病メカニズムを説明するために、複数の、生物学的あるいは心理学的な仮説が提唱されている。

生物学的仮説[編集]

生物学的仮説としては、薬物の有効性から考え出されたモノアミン仮説、死後脳の解剖結果に基づく仮説[26]、低コレステロールがうつおよび自殺のリスクを高めるとの調査結果、MRIなどの画像診断所見に基づく仮説などがあり、2013年現在も活発に研究が行われている。モノアミン仮説のうち、近年はSSRIとよばれるセロトニンの代謝に関係した薬物の売り上げ増加に伴い、セロトニン仮説がよく語られる。また、海馬の神経損傷も論じられている。しかしながら、臨床的治療場面を大きく変えるほどの影響力のある生物学的な基礎研究はなく、決定的な結論は得られていない。

臨床現場では抗うつ薬を投与することでセロトニンノルアドレナリンなどの神経伝達物質の働きを促す治療が行われているが[3]、あくまで対症療法的なものであり、成因の解明は新たな治療薬の開発に役立つことが期待されている。

モノアミン仮説[編集]

1956年、抗結核薬であるイプロニアジド、統合失調症薬として開発中であったイミプラミンが、KlineやKuhnにより抗うつ作用も有することが発見された。発見当初は作用機序は明らかにされておらず、他の治療に使われる薬物の薬効が偶然発見されたものであった。その後イプロニアジドからモノアミン酸化酵素(MAO)阻害作用、イミプラミンにノルアドレナリンセロトニンの再取り込み阻害作用があることが発見された。その後これらの薬物に類似の作用機序を持つ薬物が多く開発され、抗うつ作用を有することが臨床試験の結果明らかなった。よってモノアミン仮説とは、大うつ病性障害などのうつ状態は、モノアミン類、ノルアドレナリンセロトニンなどの神経伝達物質の低下によって起こるとした仮説である。

しかし脳内の病態が明らかにされていない以上、逆の病態が大うつ病性障害の根本原因と結論付けることは出来ず、あくまで仮説にとどまっている。

さらにこの仮説に対する反論としては、シナプス間隙のノルアドレナリンやセロトニンの低下がうつ病の原因であるとすれば、抗うつ薬は即効性があってしかるべきである。うつの改善には最低2週間要することを考えると、この意見は一理あると言える[27]

脳の海馬領域における神経損傷仮説[編集]

  • うつ病の神経損傷仮説:

近年MRIなどの画像診断の進歩に伴い、うつ病において、脳の海馬領域での神経損傷があるのではないかという仮説が唱えられている[28]。そして、このような海馬の神経損傷には、遺伝子レベルでの基礎が存在するとも言われている[29]

また、海馬の神経損傷は幼少期の心的外傷体験を持つ症例に認められるとの研究結果から、神経損傷が幼少期の体験によってもたらされ、それがうつ病発病の基礎となっているとの仮説もある。コルチゾール(cortisol) は副腎皮質ホルモンであり、ストレスによっても発散される。分泌される量によっては、血圧血糖レベルを高め、免疫機能の低下や不妊をもたらす。また、このコルチゾールは、過剰なストレスにより多量に分泌された場合、脳の海馬を萎縮させることが、近年心的外傷後ストレス障害(PTSD)患者の脳のMRIなどを例として観察されている[28]心理的ストレスを長期間受け続けるとコルチゾールの分泌により、海馬の神経細胞が破壊され、海馬が萎縮する。心的外傷後ストレス障害(PTSD)・うつ病の患者にはその萎縮が確認される。

心理学的仮説[編集]

病前性格論[編集]

心理学的仮説としては、フーベルトゥス・テレンバッハの唱えたメランコリー親和型性格が有名である。これは、几帳面・生真面目・小心な性格を示すメランコリー親和型性格を持つ人が、職場での昇進などをきっかけに仕事の範囲が広がると、責任感から無理を重ね、うつ病を発症するという仮説である。しかし、このような生活上の悩みがうつの原因になるとしても、すべての症例がこの仮説によって説明できるわけではない。例えば、家族の一員の死により深刻なうつ症状に陥る人もいれば、短期間で乗り越える人もいる。一方で、特段の理由もなく深刻なうつを発症するケースもある。

うつ病患者にメランコリー親和型性格者が有意に多いという統計学的エビデンスは数多く報告されているが[30]、それらの値は現代に近づくにつれて減少傾向を示しており、現在ではうつ病患者に特徴的な性格傾向はほとんど見られなくなっている[6]

うつ病にかかりやすい病前性格として、日本では主にメランコリー親和型性格、執着性格、循環性格などが提唱されてきた。しかし、近年ではうつ病概念の拡大や社会状況の変化に伴い、これらの性格に該当しないディスチミア親和型と呼ばれる一群の患者が増加しているとされる[8]。ディスチミア親和型はパーソナリティ障害ないし、パーソナリティ障害傾向を持つ人々が多く、自己愛的・回避的な問題を抱えるケースが報告されている[23][19]

なお、現代ではDSMの普及によって大うつ病性障害にはあらゆる抑うつ症状が混合してしまっており、病前性格の評価そのものが困難になってきている。成因を問わない操作診断によって生じた混乱に対し、ハゴップ・アキスカルジャーマン・ベリオスをはじめとした英米圏の学者達は連名でうつ病概念を整理する必要性を説いており、大うつ病性障害からメランコリアを切り離すことについて提言を行っている[25]

その他うつ病の発症・経過に影響する因子[編集]

薬物・アルコールとの関連[編集]

DSM-IVでは、その原因が「物質の直接的な精神的作用」に起因すると判断される場合は、気分障害の診断を下すことはできないとしている。大うつ病に似た症状が物質乱用や薬物有害反応によって起こされていると判断される場合、それは"substance-induced mood disturbance"と定義される。

アルコール依存症または過度のアルコール消費は、大幅に大うつ病の発症リスクを増加させる[31][32][33] [34][35]。また、逆にうつ病が原因となってアルコール依存症になる場合もある[34][36][37]

ベンゾジアゼピン不安障害不眠症の人が服用する薬である。 アルコールと同様に、ベンゾジアゼピンはうつ病発症リスクを増加させる。この種類の薬は不眠不安・筋肉痙攣に広く使用されている[38][39]。 このリスク増加はセロトニンとノルエピネフリンの減少など、薬物の神経化学への効果が一因である可能性がある。ベンゾジアゼピン系の慢性使用も抑うつを悪化させ[40][41]、うつ症状は長期離脱症候群の1つである可能性がある[38][42][43][44]。 ただし、うつ病の合併症として睡眠障害を伴う、不安障害を併発している場合があるため、実際には睡眠導入剤抗不安薬としてベンゾジアゼピン系などが多く処方される[45][46][47][48][49]

社会的要因[編集]

貧困と社会的孤立は、一般的に精神衛生上の問題のリスク増加と関連している。児童虐待(物理的、感情的、性的、またはネグレクト)も、後年になってうつ病を発症するリスクの増加に関連付けられている。

成人では、ストレスの多い生活上の出来事が強く大うつ病エピソードの発症に関連付けられている。
生活上のストレスがうつ病につながる可能性が増加したり、社会的支援の欠如がうつ病につながる可能性がある。
後述する認知行動療法は、考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態をつくっていくものである[50][51]

  • ライフイベントの影響(閉経、財政難、仕事の問題、人間関係のトラブル、近親者との死別による分離等)

疫学・統計[編集]

2004年の100,000人あたりの単極性うつ病の障害調整生命年 (DALY)[52]
  no data
  less than 700
  700-775
  775-850
  850-925
  925-1000
  1000-1075
  1075-1150
  1150-1225
  1225-1300
  1300-1375
  1375-1450
  more than 1450

厚生労働省によれば、うつ病の12カ月有病率(過去12カ月に経験した者の割合)は世界では1〜8%、日本では12カ月有病率が1〜2%である[5]

また、生涯のうちにうつ病にかかる可能性については、川上によれば3〜16%である[5]。 日本では、水野らによれば12ヶ月有病率は3.1パーセント[53]、川上[54]によれば生涯有病率6.7パーセントとされている[55]

これらの研究結果から、ある時点ではだいたい50人から35人に1人、生涯の間には15人から7人に1人がうつ病にかかると考えられている。

性差[編集]

男性より女性のほうが2倍ほどうつ病になりやすいとされている[56]

閉経や子どもの自立による喪失体験、PMSによるストレス、男性より寿命が長いことによる配偶者との死別などによる部分も少なくはないと思われ、社会生活によるストレスが多い男性にも普通に見られる。

女性の発症率の高さについては、妊娠・出産期・閉経期・月経前(PMSPMDDセロトニンの減少)の女性ホルモン、セロトニンの激減がマタニティブルーや産後うつに関与している可能性がある。産後うつは乳児の育児時の睡眠不足もある[57]。日本ではうつ病が増加傾向にあるが、女性の高齢化による自然増もある[3]

患者数とその推移[編集]

日本の患者数の少なさについては、受診率の低さが原因としてあげられる。[58][59]

日本の患者数の年度ごとの増加傾向には、高齢化やうつ病についての啓発活動による受診率の増加が原因としてあげられる[60]

うつ病の患者数が20世紀になって増加していることについて、SSRIの導入後6年間で2倍に増えるという経験則があり、製薬会社のキャンペーンが影響している、とした説もある[61]

子どものうつ病[編集]

子どもでもうつになる場合があり、子どもの大うつ病の時点有病率は児童期で0.1から2.6パーセント、青年期で0.7から4.7パーセントとされている[62]。 いじめ等の自殺行為は、重度に発展したうつ病による可能性もある。
うつ気分が、イライラする、怒りっぽくなる、落ち着きがなくなるなどの形で表現されることも多い。[58]

自殺企図者とうつ病の統計[編集]

重大な自殺を図った者の75%に精神疾患があり、その46%はうつ病である。[3]

喫煙との関連[編集]

製薬会社のファイザー2009年6月に10年以上の喫煙歴がある40 - 90歳の男女計600人を対象にインターネットで行った調査によると、ニコチン依存症の人の16.8パーセントにはうつ病やうつ状態の疑いがあり、ニコチン依存症でない人でのその割合は6.3パーセントのため、ニコチン依存症の人ほど、うつ病・うつ状態の可能性が高いと報告している[63]。また、典型的な抗うつ薬であるイミプラミンについて、喫煙者は効果が半減するとの指摘がなされている[64]

ただし、喫煙者であって重症のうつ病の間の禁煙は医師との相談が必要である[65][66][67]。ニコチン離脱時にうつ病が再燃しやすいのである[68]

うつ病によりリスクの高まる身体疾患[編集]

  • 2型糖尿病[55]
  • 糖尿病患者の死亡率[55]
  • 動脈硬化[55]
  • 冠動脈虚血性疾患[55]
  • 心筋梗塞発症後1年間の心血管死,心筋梗塞再発など[55]
  • 脳梗塞[55]
  • 乳がん患者のがん死亡率[55]

国別データ[編集]


症状[編集]

あまり生活に支障をきたさないような軽症例から、自殺企図など生命に関わるような症状を呈するものまである。

DSM-IVにおける大うつ病性障害の診断基準では、「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」2つの主要症状が基本となる。また、精神症状と共に身体的な症状を生じる。身体的な症状は、診断に先立って訴えられることもある。(#診断も参照)

精神症状
ボーっとすることが多くなり、口数が少なくなる。学校・会社・部活動では、休みがちになったり、不登校になる。集中力、気力、意欲がなくなり、運動神経や記憶力が低下し、勉強ができなくなる。人の話を聞けなくなる。「どうせ自分なんか価値の無い存在だ」と考えるようになるなど、自尊心が低下する。「抑うつ気分」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどである。「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態である。この2つの主要症状のいずれかが、うつ病を診断するために必須の症状であるとされている。これら主要症状に加えて、「抑うつ気分」と類似した症状として、「自分には何の価値もないと感じる無価値感」、「罪悪感」、「自殺念慮・希死念慮」などがあり、その結果として自殺に至る例もある。
身体的症状
頭が割れるような頭痛。不眠症などの睡眠障害。吐き気。少しの動作で疲れるようになってしまう。消化器系の疾患で急性胃炎、慢性胃炎、胃潰瘍摂食障害に伴い、食欲不振と体重の減少あるいは過食による体重増加。全身の様々な部位の痛み(腰痛、頭痛など)訴えとしては「食欲がなく体重も減り、眠れなくて、いらいらしてじっとしていられない」もしくは「変に食欲が出て食べ過ぎになり、いつも眠たく寝てばかりいて、体を動かせない」というものである。睡眠状態と食欲状態はうつ病の問診項目である。
うつ病の約8割に不眠が、1割に過眠が見られる[70]
その他
人付き合いを避けるようになるなど、対人関係が悪化し、さらに病気を悪化させるという悪循環が起きやすい。
不眠症の放置により、生活リズムが乱れやすい。
疾患にともなう作業能力の低下、失職、学業不振、退学等、生活適応面に及ぼす影響も甚大である。[3]

診断[編集]

DSM-IV-TRとICD-10の診断基準[編集]

抑うつについて最も広く用いられる診断基準は、アメリカ精神医学会による精神障害の診断と統計の手引き改訂4版(DSM-IV-TR)と、世界保健機関疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD-10)である。前者は米国および非ヨーロッパ諸国で多く用いられ、後者はヨーロッパで多く用いられる[71]。双方の製作はお互いに反映し合いながら行われている[72]

ICD-10では「大うつ病」という用語を使用していないが、(軽度・中等度・重度)うつ病エピソードの診断のために、DSM-IVの大うつ病に非常に類似した症状のリストが使用される。複数のうつ病エピソードが存在し、躁病のないものにはrecurrent depressive disorder(再発性うつ病性障害)という名称が用いられる[73]

双方のガイドラインでは典型的な抑うつ徴症を示している。ICD-10では3つの抑うつ徴症(depressed mood, anhedonia, and reduced energy)を示し、そのうち2つはうつ病の診断確定に必須である[74]。 DSM-IV-TRでは2つの主な抑うつ徴症(depressed mood, anhedonia)を示し、少なくともひとつが大うつ病の診断確定に必須である[75]

DSM-IV-TRでは大うつ病は気分障害に分類される[76]。 診断は単発または繰り返される大うつ病エピソードに基づく[77]。追加の情報はその他の障害と区別するために用いられている。

特定不能うつ病性障害(en:Depressive Disorder Not Otherwise Specified)は、抑うつエピソードが大うつ病エピソードを満たしていない場合に診断される。

大うつ病エピソード(DSM-IV-TR)[編集]

大うつ病エピソードとは、少なくとも2週間以上の深刻な抑うつ気分の愁訴によって特徴付けられる[77]

もし患者が躁病や軽躁病のエピソードを持っていれば、診断は代わりに双極性障害となる[78]

DSM-IV-TRでは症状が死別によるものである場合は除外しているが、しかしその気分が長期化し大うつ病エピソードの特徴付けられる要素がある場合は、死別を原因として抑うつエピソードに入る可能性があるとしている[79]。DSM-5では死別もうつ病の原因になった。

DSM-IV診断基準に対する批判[編集]

抑うつを引き起こした個人の他側面と社会的な状況を考慮していないという点について、批判の対象となっている[80]

加えて、いくつかの研究ではDSM-IVのカットオフ基準について感情的サポートが乏いことにより、様々な長期間の抑うつについて様々な重症度と期間の面から診断基準を示している[81]

DSM-IV-TRの"major depressive disorder"の major が日本語で「大」と訳されているが、本来これは「主要な」あるいは「中心的な」という意味で用いられているものであり、誤訳である(中うつ病と小うつ病がない)[82]

DSM-IVにおける関連疾患[編集]

関連する診断に、気分変調症(慢性的だが軽度の気分変調)[83]、再発性軽度うつ病(en:recurrent brief depression, 軽いうつ病エピソード)[84][85]、マイナー抑うつ病(en:minor depressive disorder, 大うつ病の軽いエピソードの幾つかのみが存在)[86]適応障害を伴う抑うつ(特定のイベントやストレッサーにより起こされる精神的結果、落ち込み)[87]があり、これらを診断で除外する必要がある。

臨床評価[編集]

大うつ病の診断を行う前に、一般的に医師によって医学的検査と幾つかの調査が他の症状を除外するために行われる。血液の甲状腺刺激ホルモン(TSH)とチロキシン測定によっての甲状腺機能低下症除外、基礎電解質と血中カルシウム測定で代謝障害の除外、全血球算定(赤血球沈降速度ESRを含む)により全身性疾患や慢性疾患の除外など[88]。 薬物の副作用やアルコール乱用も同様に除外される。男性の抑うつの場合、テストステロンのレベル測定によって性腺機能低下症も除外される[89]

客観的認知についての問題が老人の抑うつに現れることがあるが、それはアルツハイマー病などの痴呆性疾患の可能性がある[90][91]。 認知テストと脳画像イメージによって認知症とうつ病を区別する助けとなる[92]。 CTスキャンは精神病患者の脳病理を除外することができ、また異常兆候を迅速に判断できる[93]。生物的テストでは大うつ病の診断を行う方法はない[94]。一般的に、医学的な問題がない限りその後検査を繰り返す必要はない。

パーソナリティ障害不安障害不眠症の合併の有無を確認する[13]

鑑別疾患[編集]

本当のうつ病に該当するもの以外にも、うつ状態を呈するものとして、次のような原因によって引き起こされる。

また、器質的疾患からうつ状態となることもある(器質性気分障害)。

双極性障害との鑑別[編集]

うつ病の診断においては、軽躁と鬱を繰り返す双極II型障害を単極性・反復性と誤診するなど、双極性障害と見分けがつきにくいケースが多い。患者側も、睡眠時間が短くてもすんでしまうなど現代の過酷な社会環境にむしろ適応的であり、ばりばりと働けたなどの充実感などのため、軽躁状態を異常と認識せず、主治医に申告しないこともある。

そのため、大うつ病性障害など「うつ病として」受診に来た患者を診断する場合、初診で躁病エピソードの既往症(軽躁エピソードは特に)を確認し、双極性障害でないかどうか明確に鑑別しておくことが何よりも重要であるとの指摘がある。これは、大うつ病性障害などの単極性の気分障害と双極性障害は、治療法が根本的に異なるためである[95][96]

また、長期経過の中で、うつ状態に加えて躁状態も生じる場合にも、双極性障害(いわゆる躁うつ病)の可能性がある。そのため、躁状態に転じることを常に注意し、素早く対応することが必要であるとも指摘されている[97]

若年者は、双極性障害のうつ病相や統合失調症の好発年齢であり、安易に「非定型うつ病」と決めつけることは“誤診”につながる[12]

うつ病を繰り返し生じる場合には、反復性うつ病と呼ばれており、これも、遺伝研究などによって、躁うつ病と根本的には同一の疾患であるとされている。

一方、再発のないうつ病は、単一エピソードうつ病と呼ばれ、躁うつ病とは異なった疾患であると考えられている。

近年、最先端医療の分野で光トポグラフィーを用いた科学的な診断方法が注目を浴びているが、ごく一部の医療機関でしか行われていない。うつ病、統合失調症、双極性障害の判断区別を行う事も可能とされる。先進医療であり保険は未承認。データの蓄積が少なく、研究途上という性格が強く、現在では検査入院などの専門家による精査とセットでないと実際の診断には難しいというのが実情である[98][99]。2012年現在の日本では、「鑑別診断補助」の位置づけである。検査結果は、診断や治療の参考になるよう紹介精神科医へフィードバックされる[100]

器質性気分障害[編集]

下記のような器質的疾患からうつ状態となることがあり、診察時には注意を要する。

治療[編集]

1950年代に抗うつ薬が登場するまでは、電気けいれん療法1938年創始)、ロボトミー1935年創始)しか効果の証明された治療法が無かったが、その後抗うつ薬が登場し薬物治療が発達した。

現在、うつ病治療としては(1)休養 (2)薬物療法 (3)精神療法 (4)環境調整 (5)特殊療法(ECTなど)などが組み合わせて行われる。

中でも薬物療法と休養が原則とされる[101][102][4]

基本的に現在はまずうつが病気であることを本人・家族が納得し、「無理をせず、養生して、(原則として)薬を飲んで、回復を待つ」ことである[102][4][101]

自殺の危険性が高い症例では、入院治療が必要となる[102][103]。特に、「死にたい」とか「消えてしまいたい」「自分は居ない方がいい」などの希死念慮や自己否定的な内容を口にする場合には、自殺の危険性があり、すみやかな受診が必要である。

休養[編集]

  • 休養がうつ病の特に病初期(急性期)には重要であり、日常生活に著しい障害が生じている場合には、仕事を休んだり、主婦であれば家事を誰かに手伝ってもらうなど、社会的役割を免除してもらい、休養する必要がある[102][4]。そのため、自殺の危険は少ない場合でも、入院の適応となる場合がある。
  • 日常生活における障害が軽い軽症例では、これまで通りの生活を続けながら、薬物治療などを行うこともある。
  • 休養、薬物療法精神療法は治療の3本柱であり、身体疾患と基本的に同じである[104]

心理教育(うつ病の対応の原則)[編集]

病初期(急性期)の心理教育の原則として「笠原の小精神療法」が有名である。 1)うつ病は病気であり、単に怠けではないことを認識してもらう 2)できる限り休養をとることが必要 3)抗うつ薬を十分量、十分な期間投与し、欠かさず服用するよう指導する 4)治療にはおよそ 3 ヶ月かかることを告げる 5)一進一退があることを納得してもらう 6)自殺しないように誓約してもらう 7)治療が終了するまで重大な決定は延期する

  • 内因性うつ病の症状は、“気の持ちよう” “努力”などで変えられるものではない。変えられないものを、変えようと無理をすれば、症状を悪化させる。むしろ、変えようとせず、憂うつな気分に逆らわず、十分な休養を取りながら、回復を待つべきである[102][4]
  • うつ病の症状の一つに、将来を悲観してしまうことがある。病気のため、もう治らないとしか考えられなくなることも多い。しかし、うつ病はいかに重症でもいつかは改善するものである。いつかは良くなるという希望を持つことが重要である[105]
  • またあせって人生の決断を下さない方がよい。例えば転職・退職、離婚などの重要な決断はなるべく後回しにする。一般にうつ病のため判断能力は低下していることが多く、適切な判断が下せないことが多い[102]
  • 治療の前提として、治療の基本的原則について、しっかりと医師が説明を行い、患者が納得して治療に取り組むことが必要である。また、投薬についても、医師がしっかりと説明する必要がある。患者も、分からないことは質問していくことが必要である。こうした医師と患者のコミュニケーションが治療の成功には不可欠である。
  • また、うつ病の一人一人の患者においては、信頼できる主治医をもち、自分に合ったアドバイスを主治医にもらうことが最も重要である[5]

家族の対応[編集]

  • 家族など周囲の人たちも、長い目でうつ病患者を見守ることが求められる。「頑張れ」や「さぼるな」という言葉は、患者自身の力ではどうしようもない今の状態を、今すぐに自分の力で変えるようにと、無理を求めるものとなる。そして、このような言葉は、患者を追いつめ、最悪の場合、自殺の誘因とならないとも限らない。患者のみならず、周囲の人々も、患者がうつ病であり、患者自身の力では今の状態から抜け出せないことを受け入れ、長い目で回復を信じ、あせらないことが必要である[102]
  • 「気の持ちようではないか」「旅行にでも行って気分転換してはどうか」といった言葉も、適切ではない。うつ病でなくとも、嫌なことが起きれば、嫌な気分になるし、そういった一過性の軽い抑うつ気分は多くの人が経験する。これらの言葉は、うつ病もそれと同じように対処すれば良いものと見ている。しかし、長期間に及ぶような酷いうつ状態(つまりうつ病)の場合には、適切な治療なしには気の持ちようを正すこともできず、旅行に行く気力も出ないため、これらの言葉はかえって患者を苦しめる。患者がこれらのアドバイスを受け入れられるほど回復したかどうかの見極めが大切である。

環境調整[編集]

とくに心因が強く影響していると考えられるうつ病の場合、環境のストレスが大きい場合は調整可能かどうかを検討し、対応する[5]

心理的葛藤に起因すると思われるうつ病では、原因となった葛藤の解決や、葛藤状況から離れることなどの原因に対する対応が必要である。

またうつ病の回復期・リハビリ期においては、段階的復職などの配慮が必要である。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、リワーク支援を実施している。ストレスへの対処法(認知行動療法の一部)、リハビリ出勤、会社との調整など実施している[106]

薬物療法[編集]

2012年の日本うつ病学会の大うつ病の治療ガイドラインによれば、軽症うつ病の場合、安易な薬物療法は避けるべきであり、中程度以上の大うつ病では薬物療法は軽症に比べてより積極的に行う[13]

希死念慮の強い急性期、重症患者には薬物療法精神療法、とりわけ薬物療法が重要である。薬物療法では効果がない場合、mECTを検討する[107]

抗うつ薬による治療[編集]

抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系抗うつ薬あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・尿閉などの抗コリン作用や眠気などの抗ヒスタミン作用といった副作用が比較的多い。これに対して近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI、NaSSA等は副作用は比較的少ないとされるが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされる。

抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1週間ないし3週間の継続的服用が必要である。

なお、非定型うつ病については、欧米ではモノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害剤)が第一選択として活用されているが、その激しい副作用と厳しい食事制限のため、2012年現在日本で認可されているものはない。

抗うつ薬の有効性および安全性については議論がある。うつ病は、治療を行わなくても長期的には自然回復することが多く、数ヶ月以内の自然回復率が50%を越えるため、各種治療法の有効性の判断は難しい。NIMHの専門家たちは、抗うつ薬が回復までの時間短縮に役立つ可能性はあっても、長期回復率の上昇には役立たないと考えている[108][109][110][111]SSRIプラセボ程度の効果しかないとの見解もある[112]

  • 日本うつ病学会のガイドラインによれば、1種類の抗うつ薬の使用を基本とし、十分な量の抗うつ薬を十分な期間に渡って投与すべきである。寛解維持期には十分な継続・維持療法を行い、抗うつ薬の投与の終結を急ぐべきではないとしている[13]
  • 英国国立医療技術評価機構(NICE)の2009年のガイドラインは、危険性/利益の比率が悪いために軽症以下のうつ病に抗うつ薬を使用してはいけない(Do not use antidepressants)としている[113]

2013年、日本うつ病学会野村総一郎事務局長によれば、軽症の場合、心理療法を優先とする。うつ病の重症度が高くなると、薬物療法の有効性があらゆるデータから明確に示されている。抗うつ薬を服用した重症度の高い患者のうち、効果が見られる患者の割合は70%程度である[114][115]

その他の薬物療法[編集]

抗うつ薬の治療反応に乏しい場合、別の種類の抗うつ薬への変薬や追加(併用)のほか、炭酸リチウム甲状腺ホルモン抗てんかん薬非定型抗精神病薬の追加(増強療法)、(米国などでは)アンフェタミンメチルフェニデートなどが試みられる。米国や日本ではアリピプラゾールも既存治療で十分な効果が認められない場合に限って認可されている[116]。また電気けいれん療法(ECT)、経頭蓋磁気刺激法(TMS)の適用を検討することもある。

非定型うつ病に対しては、抗うつ薬(SSRIなど)の他、気分安定薬抗精神病薬が使用される[117]

不安障害を併発している場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することも多い。抗不安薬・睡眠導入剤としてベンゾジアゼピン系がしばしば用いられるが、これらはベンゾジアゼピン依存症ベンゾジアゼピン離脱症候群をまねき、うつ病を悪化させる。各国政府はベンゾジアゼピンの処方を最大でも数週間に限るよう勧告しており、NICEではベンゾジアゼピン系の投与は患者と討議の上で短期間のみに限定され、慢性不安症への投与禁止、薬物依存を起こすため2週間以上の投与禁止と定められている[118]。うつ病の予防・治療日本委員会(JCPTD)によると、薬物治療急性期には抗うつ効果発現までのベンゾジアゼピン系薬物処方は有用であるが、依存性のため長期投与は推奨していない[58]

薬物療法と自殺[編集]

抗うつ薬による治療開始直後には、年齢に関わりなく自殺企図の危険が増加する危険性があるとアメリカ食品医薬品局 (FDA) から警告が発せられ[119]、日本でもすべてのSSRIおよびSNRIの抗うつ薬の添付文書に自殺企図のリスク増加に関する注意書きが追加された[120]

FDAは、子供・青年・18-24歳の若年者に対しては、SSRI治療は自殺願望と自殺的行動について高いリスクが存在すると報告している[121][122][123][124][125] 成人についてはSSRIと自殺リスクの関係は明確ではない[125]。あるレビューでは関係性が認められておらず[126]、別のレビューではリスクが増加すると報告され[127]、第三のレビューでは25-65歳ではリスクはなく65歳以上では低リスクと報告している[128]。 疾病データ上では、新しいSSRI時代の抗うつ剤の普及により伝統的に自殺リスクの高い国で自殺率の大幅な低下をもたらしていると分かった[129]が、因果関係は確定されていない[130]

米国では2007年に、SSRIとその他の抗うつ薬について24歳以下の若年者では自殺リスクを増加させる可能性があるというブラックボックス警告がなされた[131]。同様の警告は日本の厚生労働省からもされている[120]。米国ではFDAの警告以降に若年者の自殺死者数が増加している。FDA警告の結果、若年者の抗うつ薬治療が少なくなり、結果として自殺者が増えたとすれば問題である[132]

  • APAガイドラインでは、抗うつ薬は自殺リスクを減らすエビデンスは小さい、しかしうつ症状の軽減に必要だとしている[注 3]
  • NICEガイドラインによると、2005年4月にヨーロッパ医薬品評価委員会はSSRIとSNRIについて、子供と青年には処方すべきではない(承認適応症を除くがこれは通常の抑うつは含まない)としている[133]
  • 英国モーズレイ処方ガイドラインでは、希死念慮および自殺企図を防ぐ最も効果的な方法はうつ病を治療する事であり、抗うつ薬による治療が現在用いる事ができる最も効果的な方法であるとしている[107]

精神療法(心理療法)[編集]

貧困、失業、大切な人との離別などがうつを引き起こすこともあるが、これらの社会的、状況的原因は薬によって変えることはできないが、薬で心理状況の改善はできる。これらの社会的、状況的原因は変えることはできないが、これらの場合、心理療法の認知行動療法(CBT)や読書療法などが有効である[134]。また、心理療法は薬物療法に比べてうつが再発する可能性が低い[135][136]

1998年、世界精神医学会英語版の「WPA/PTD うつ病性障害教育プログラム[注 4]」は、高齢者への精神療法の適用について、「精神療法のみ」「精神療法と抗うつ薬の併用」の二つを挙げている。また、「多様な治療法がある」「再発を予防するために、投薬は継続しなければならない。治療の成功は社会心理的支援がかかせない」としている[139][138]

2009年、プラセボ効果を研究するハル大学アービング・カーシュ博士は「心理療法のみの場合と、心理療法と抗うつ薬を併用する場合の効果の大きさは同じなのだから、なぜ、わざわざ抗うつ薬を持ち込む必要があるのだろうか」と述べている。心理療法と薬物療法を併用すれば、抗うつ薬だけを服用するより効果があるが、心理療法を単独で行う以上の効果はない。英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインは心理療法の重要性を認めており、6〜8回の認知行動療法Cognitive behavioral therapy、CBT)または他の心理療法を推奨している。具体的には、軽度〜中程度はカウンセリング、再発した場合はCBT、重度の場合はCBTと抗うつ薬との併用を勧めている。英国政府は臨床試験で効果が証明された認知行動療法をはじめとする心理療法の拡充を開始し、薬物療法に代わる治療法として成果を上げている[140]

2012年、DSM-IVアレン・フランセス英語版編纂委員長は「精神科の軽度、中程度の症状には、精神療法が少なくとも薬物療法と同じくらい効果があり、精神療法のほうが持続効果は長く、副作用は少ないのです。非常に多くの人が必要のない薬物療法を受け、回復に大きく役立つであろう精神療法を受けていないというのは、理不尽であり、経済的動機がそうさせているのだと思います」と述べている[136]

重症の場合、心理療法単独では十分でない。高齢者の場合、再発防止のため薬物療法の併用が有効である[141]

カウンセリング
認知行動療法
外界の認識の仕方で、感情や気分をコントロールしようという治療法。抑うつの背後にある認知のゆがみを自覚させ、合理的で自己擁護的な認知へと導くことを目的とする。対人関係療法も認知行動療法の要素を持つ。
考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態をつくっていく[50][51]
認知行動療法は魔法ではない。うつ病においても、薬物だけで治療した場合に比べ、認知行動療法を併用した方が、症状の改善と再発予防に効果的であると認められている[142]
現在認知行動療法(CBT)は、子供と青年の抑うつに対して最も研究エビデンスが多く存在する。CBTと対人関係療法(IPT)は思春期の抑うつに対して勧められる。英国国立医療技術評価機構(NICE)では、18歳以下の人について薬物治療を行う場合はCBT・ICT・家庭セラピーなどといった心理療法を併用しなければならないとしている[143]
アメリカ精神医学会のガイドラインでは、認知行動療法等の心理療法は患者の初期治療の選択肢として推奨されている[144]
日本うつ病学会では、認知療法は薬物療法と同時並行的に行われる精神科治療の基本であり、薬物療法に代わる治療法という見方は明らかに間違っていると強調しているが、同時に、認知療法の優位性を示す研究データがあることも暗に認めている[145]。うつ病の予防・治療日本委員会(JCPTD)では慢性化していない例では抗うつ薬より推奨している[146]
認知行動療法は、心理職が国家資格化されている国々では、精神科精神科医、薬物療法中心)、心理療法科(サイコロジスト、心理療法中心)に分かれることがあり、薬物療法と同時並行的に行われるとは限らない[147]
認知行動療法は12回〜13回程度で終了するので、3ヶ月程度の短期治療では意味があるが、うつ病が3ヶ月を超えて長期化した場合は、薬物療法等の別の治療法を模索する必要がある。
うつ病患者の8割に伴う不眠症であるが、認知の歪みが原因では無いので、認知行動療法の効果は小さい。不眠症に対しては、別途精神科から睡眠導入剤を処方してもらう必要がある。
読書療法
プラセボ効果を研究するハル大学アービング・カーシュ博士は、認知行動療法(CBT)を受けなくても、そのメリットの多くを得ることができる方法として読書療法を薦めており、臨床試験で良い結果が得られたものの中から2冊を紹介している。『うつのセルフ・コントロール』(熊谷久代訳、創元社、1993年)、『いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法』(デビッド・D・バーンズ、星和書店、2004年)はいずれも認知行動テクニックに関する本である[148]。『いやな気分よ、さようなら』の臨床試験では、短期的には、標準的なCBTを実際に受けた人のほうが改善の度合いが高かったが、3ヶ月後には同等になった。3年間の追跡調査から効果が持続的であることも示唆されている。注意点は、読書療法の臨床試験は中程度のうつ病のみを対象として行われたことである。軽度〜中程度のうつ病であれば、代替法として妥当だが、重度のうつ病にはどのような効果を発揮するのか分かっていない[149]

運動療法[編集]

貧困、失業、大切な人との離別などがうつを引き起こすこともあるが、これらの社会的、状況的原因は薬によって変えることはできないが、薬で心理状況の改善はできる。これらの社会的、状況的原因は変えることはできないが、この場合、運動などが有効である[134]。また、運動療法は薬物療法に比べてうつが再発する可能性が低い[150][151]

1800年代初め、アメリカ合衆国で広く利用されたスコットランドの医師ウィリアム・バカン(William Buchan)の医学書『Domestic Medicine』は、憂うつの治療について、「患者はできるだけたくさん戸外で運動すべきである…こうした計画に食生活の厳格な節制を加えるなら、ただ患者を家の中に閉じ込めて薬漬けにするよりも、治療法としてはるかに理にかなっている[注 5]」と述べている[152]

2004年、英国国立医療技術評価機構(NICE)は「抗うつ薬はリスク便益比の観点から、軽度のうつの初期治療には推奨できない[注 6]」としている。寧ろ、医師は薬物以外の代替法を試し、「軽度のうつ病患者には年齢を問わず、構造化された指導付き運動プログラムのメリット[注 7]」を推奨すべきだとしている[153]

2007年、NICEのガイドライン(現在は失効)によれば、フィジカルトレーニングは軽度の抑うつ治療に推奨されるとされたが[154]、2009年に改定されたガイドラインCG90からは削除されている[155]

2009年、イギリス総合診療医(GP)の20%以上(2004年の4倍)が抑うつ症状の患者にしばしば運動療法を「処方」している。短期的には、6週間以内に著しい改善があり、効果は大きく、抑うつのある患者の70%が運動プログラムに反応したという研究報告がある。長期的にも多くの副効果があり、心臓血管機能や筋力を高め、血圧を下げ、認知機能を向上させる。熟睡できるようになり、性的機能も向上し、社会との関わりも深まる傾向がある[156]

2009年、プラセボ効果を研究するハル大学アービング・カーシュ博士は、運動にも心理療法抗うつ薬と同等の効果があると紹介している。薬物療法や心理療法ほど多面的な研究はなされていないが、効果を評価する臨床試験は沢山行われている。主に中程度〜重度の症状に効果があり、定期的に続ける限り持続し、時間が経過すると効果が大きくなる。さらに、疫学的研究から予防効果も示唆されている。運動の種類は「ウォーキング有酸素運動)」「ウェイトトレーニング無酸素運動)」など何でも良く、20分の運動を週3日行えば十分効果がある。ただし、運動と抗うつ薬を併用するより、運動のみのほうが効果が高い。臨床試験の欠陥を理由に運動の効果が否定されることがあるが、抗うつ薬の臨床試験にも欠陥が存在している[157]

重度のうつ病には運動や読書でさえもおっくうで不可能な場合がある。

2012年、日本うつ病学会のガイドラインは「本来軽症に限った治療法ではない」と断った上で、軽症のうつ病への適用について、「運動を行うことが可能な患者の場合、うつ病の運動療法に精通した担当者のもとで、実施マニュアルに基づいた運動療法が用いられることがある。一方で運動の効果については否定的な報告もあり、まだ確立された治療法とは言えない」と述べている[13]

2013年、コクラン・ライブラリによれば、運動の効果は心理療法や薬物療法と同程度である[158]

なお、精神科に入院している患者は統合失調症統合失調症型障害及び妄想性障害が多く、うつ病は少ない[159][160]

その他の治療法[編集]

その他、限定的に行われる特殊な治療法や、実験的段階にあるものとして以下のようなものが挙げられる。

電気けいれん療法 (ECT)
頭皮の上から電流を通電し、人工的にけいれんを起こすことで治療を行う。薬物療法が無効な場合や自殺の危険が切迫している場合などに行う。最近は全身麻酔を使用した苦痛のない方法がとられることがほとんどである(そのため入院も可能な大病院でしかできない)[161]。安全管理も慎重に行われるようになった[162]。前述の場合に有効性が高い治療法であると考える臨床家も多く[163]、保険診療でも認められている。その一方で、薬物療法など他の方法が功を奏さない場合に限るとするなど[164]慎重な適用を求めるものもいるほか、この治療そのものを勧めない精神科医もいる(電気けいれん療法#勧めない精神科医もいる参照)。
経頭蓋磁気刺激法 (TMS)
頭の外側から磁気パルスを当て、脳内に局所的な電流を生じさせることで脳機能の活性化を図るもの。日本では[165]保険は未承認。6週間治療での寛解率は27%程度、続く24週間治療での寛解率は50-60%程度。副作用としては、刺激部位の痛みや不快感、頭痛など[165]
断眠療法
うつ病患者が夜間眠らないことでうつ症状が急速に改善するという治療法である。薬物治療への効果が乏しく、うつ状態が長く続いているような場合に施行される。
効果が持続しにくく、その場合、薬物療法光療法を併用する[166]
光療法
強い光(太陽光あるいは人工光)を浴びる治療法。過食や過眠のあることが多い、冬型の「季節性うつ病」(高緯度地方に多い冬季にうつになるタイプ)に効果が認められている。冬季うつ病の第一義的な治療法は光療法とされ、抗うつ剤よりも有効性が高いことが確認されている[167]
また、光療法が非季節性のうつ病の治療に有効であることが実証された[168]。光療法がうつ病に効果があるかどうかは古くから検討されてきたものの、有効、無効の両方の報告があり、有効であることの決定的な証拠はなかったが、最新の研究成果によりその有効性が実証されるに至っている。
季節性うつ病の場合は双極性障害の可能性を念頭に置かねばならない[13]
ハーブの利用
ハーブとして利用されているセント・ジョーンズ・ワートは、ドイツをはじめいくつかの国では軽度のうつに対して従来の抗うつ薬より広く処方されている[169]。日本ではサプリメントとして市販されている。副作用があり、日本での治療エビデンスは希薄である[13]。臨床研究の結果は成否さまざまで、軽度から中程度のうつに対して有効でかつ従来の抗うつ薬よりも副作用が少ないとする研究がある一方で、プラセボ以上の効果は見られないとする研究もある。コクランレビューによる2008年の報告[170]によると、これまでのエビデンスからプラセボ群より優れた効果を示し、標準的な抗うつ薬と同等に効果があるが副作用は小さいことが示唆されるという。ただし重度の抑うつには効果が弱いとされるほか、同時に服用した他の薬の効果に干渉することがあるため注意が必要とされる[171]
セント・ジョーンズ・ワートにおいてもセロトニン症候群の可能性があるので、注意が必要である[172]

日本におけるうつ病治療の現状[編集]

日本における現在のうつ病治療の中心は、薬物療法である[4]

日本うつ病学会では、厚生労働省からの依頼により、抗うつ薬副作用をはじめとする薬物療法に関する諸問題を専門家の立場から検討し、適正な抗うつ薬使用法を提言するため、学会内に「抗うつ薬の適正使用に関する委員会」を2009年に設立している[173]

比較的最近、欧米を中心に気分障害に対する精神療法(認知行動療法対人関係療法、問題解決療法等)や家族心理介入の有効性についてのエビデンスが次々と発表されるようになっており、日本でもデータの蓄積と薬物療法の限界が強調される傾向とがあいまって、必要性が見直されており、2010年の日本うつ病学会の提言では「薬物療法などの生物学的治療法と、精神療法などの心理学的治療法は車の両輪であり、両者がそろって初めて最適な治療となることは論を俟たない」と述べられている[3]

また、2012年の日本うつ病学会のガイドラインでも「認知行動療法あるいは対人関係療法薬物療法を併用した場合は薬物療法単独に比べて再発予防効果が高いことが立証されている」と述べている。また、不安障害パーソナリティ障害の合併例では薬物療法に加えて精神療法の併用が勧められる[13]

上記提言によると、日本で心理療法が十分に行われていない理由としては、

  1. 認知行動療法ができる心理専門職の不足
  2. 患者数の著しい増加により、一人の患者に十分な時間がかけにくい
  3. 薬物療法が進歩した結果、患者・医師双方にとって複雑、時に難解で時間のかかる精神療法を行わなくても、薬の服用のみで十分という風潮が生じている
  4. 薬物療法に比べて、精神療法の有効性についてのデータが相対的に少なく、積極的な精神療法への動機付けが乏しい

などが挙げられ、その対策として、人材不足の解消、心理職の国家資格化、保険診療化などを提唱している[3]

予後[編集]

大うつ病は、治療の有無に関わらず時間が解決することが多い。うつの外来患者リストの10 - 15パーセントは数ヶ月以内に減少し、約20パーセントはもはやうつ病基準を完全には満たさない[174]。エピソードの中央値は23週と推定されており、最初の3ヶ月間で回復する率が最も高い[175]

日本での研究では、6か月程度の治療で回復する症例が、50パーセント程度であるとされ[176]、多くの症例が、比較的短い治療期間で回復する。しかし、一方では20パーセント程度の症例では、1年以上うつ状態が続くとも言われ、必ずしもすべての症例で、簡単に治療が成功するわけではない。また、一旦回復した後にも、再発しない症例がある一方、うつ病を繰り返す症例もある。

うつ病では海外諸国におけるうつ病の自殺率は、最近の報告では59/100,000と極めて低く推測されている。[58]

再発率[編集]

研究では、初めて大うつ病を経験した人の80%が一生で1回以上の再発を経験し[177]、その平均は4回であった[178]。 他の一般的な調査では、約半数が治療を行ったかどうかに関わらず回復しているが、残りの半数は最低1回は再発し、およそ15%は慢性的な再発を繰り返す[179]

再発率は、うつを繰り返すたびに高くなる傾向にあり、初発の場合の次回再発率は50パーセント、2回目の場合75パーセント、3回目の場合は90パーセントにものぼる[58]

診療科・医療機関[編集]

うつ病は早期発見が重要なファクターだが、「心の変調」に自分(または周囲)が気づいた場合でも、どの医療機関を受診すれば良いのか分からず、近所の内科などにかかることも少なくなく、症状を進行させてしまう場合がある[180]。うつ病を適切に診断・治療する診療科は精神科神経科心療内科である。なお、神経内科は神経専門の診療科なのでうつ病は扱わない。[180]ただし、近年は「精神科」と聞いて抵抗感を持つ患者や家族も少なくなく、そのため医院の屋号にこれらの診療科の名前を出さなかったり、「メンタルクリニック」「こころクリニック」の名前を使う医院も多い。[180]

各自治体の保健所精神保健福祉センターでは、無料かつ匿名で「心の変調」やメンタルヘルスの相談に応じ、医療機関も紹介してもらえる。[180]学生の場合は、児童相談所スクールカウンセラー、保健センターなどでも良い。意外に思われるかもしれないが、保健所の業務の6割は精神保健に関するものである。[180]

社会におけるうつ病[編集]

米国では、うつ病による経済損失は5兆円におよぶと試算されており、その内訳は生産性低下53%、医療費28%、自殺17%である。[3]

うつ病は現在では一般に広く知れ渡っているが、以前は「怠け病」などと呼ばれていた。 現在でも、特に軽度のうつ病の場合、怠けているだけと思われることが多い。

誰でもかかる可能性がある」「罹患し易い」ことを表した『うつ病は心の風邪』という言葉が、一部における「うつ病は放っておいても簡単に治る」という誤解に繋がっている。

最近のうつ病のトピックス[編集]

2011年には、山形県鶴岡市にあるヒューマン・メタボローム・テクノロジーズおよび東京小平市の国立精神・神経医療研究センターが血液中のエタノールアミンリン酸で大うつ病を診断できると発表した。同年、広島大学などの研究グループは、血液中のBDNF遺伝子のメチル化を調べることで大うつ病を診断できる可能性があると発表[181]したが、臨床応用できる段階ではない。

今後、研究レベルでは、うつ病等の精神疾患を客観的に診断できるマーカーを探索するために、健常者および患者の血液を用いて、プロテオミクスあるいはメタボロミクスが積極的に行なわれると考えられる。社会的に普及するかどうかは医療保険適応か先進医療か等の費用の程度が大きな問題である。100%やそれに近い精度では診断できないため、慎重な運用が求められる[182]

また、現在のうつ病性障害関連の研究は、大うつ病のみが対象であることがほとんどである。

脚注[編集]

  1. ^ DSM-IV・DSM-IV-TRでは、主要症状1つを含む5つ以上の症状が2週間以上持続することが、大うつ病性障害の診断条件となっている。
  2. ^ 「Solving the Puzzle of Mystert Syndromes」によると、181人のうつ病患者(含自殺願望の患者)の口中から水銀アマルガムの詰め物を取り除いた結果、全員が完治または改善を報告している。
  3. ^ "Surprisingly, there is limited evidence that antidepressants reduce suicide risk. Because depression is one of the most significant risk factors for suicide, however, antidepressants may be essential in the treatment of suicidal patients for depressive-symptom reduction." (アメリカ精神医学会 2004, pp. 378-379)
  4. ^ 原題: “WPA/PTD Educational Program on Depressive Disorders” [137][138]
  5. ^ 原文: “The patient ought to take as much exercise in the open air as he can bear ...A plan of this kind, which astrict attention to diet, is a much more rational method of cure, than confining the patient within doors, and plying him with medicines.” [152]
  6. ^ 原文: “antidepressants are not recommended for the initial treatment of mild depression, because the risk-benefits ratio is poor.” [153]
  7. ^ 原文: “patients of all ages with mild depression of the benefits of following a structured and supervised exercise programme.” [153]

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参考文献[編集]

診療ガイドライン[編集]

その他[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]