ネットいじめ

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ネットいじめサイバーいじめ: Cyber-bullying)は、インターネット上におけるいじめ(bullying)および嫌がらせ(harassment)である。一定の人間関係のある者から、パソコンや携帯電話などのネット端末を経由して、一方的に継続的な物理的・精神的苦痛が加えられ、被害者が深刻な苦痛を感じていることである。

ウェブサイトオンライン、あるいは電子メール携帯電話などの場で行われる。過激かつ陰湿なものはサイバー・リンチネットリンチとも呼ばれる。近年[いつ?]、世界中で発生して問題になっており、インターネットの法規制・フィルタリング規制に発展する国・地方自治体も出てきている。

英語圏ではネットいじめに対して、従来のいじめTraditional bullying(伝統的ないじめ)ともいう[1]

特徴[編集]

ネットいじめはインターネットというネットワークを通し匿名性があるため、通常のいじめのように相手との物理的な力関係が軽視され、低い罪悪感でおもしろ半分に加勢しエンターテイメント化する特徴を持つ[2](ネット炎上というものもある)。また、ネットは監視に欠け、いじめが横行しやすい。直接的な対面がないため、相手の気持ちが通常のいじめ以上にわかりにくいという特性を持つ。悪質なケースでは、標的を誹謗中傷するだけでなく、標的を特定して個人情報をネット上のあちらこちらにばら撒くなど嫌がらせをする[3]

学校や職場における通常のいじめならば、登校拒否をしたり転職したりすることによって直接的な被害から逃れることができる。しかし、ネットいじめの場合はインターネットがこの世に存在し続ける限り、そのような退避手段がないどころか、エスカレートしやすい[要出典]。ネットいじめは一度広まると、リアルの交友範囲から離れた他学校の生徒などにも広がる傾向があり、問題を深刻化させている[4]

ネットいじめは中傷等が目に見える形でネット上に記録されてしまうため、いじめ被害者が癒されずに苦しみ続けるという性質を持つ[5]。特にウィキペディアなどのウィキを使用しているサイトや2ちゃんねるのような掲示板サイトなどは記録を半永久に保存し続けるというシステムを採用しており、管理者が削除しない限り中傷などの記録(ログ)がいつまでも残り続けてしまうため、ネットいじめの温床になっている[6]

分類[編集]

田代光輝は、ネット経由のいじめ・いやがらせの例として

  • 無断で相手の個人情報をさらすこと
  • 裏サイトなどでの誹謗中傷
  • 自己紹介サイトやメール経由でのいやがらせ
  • なりすまし投稿

などを挙げているとしている。顔見知り同士のいやがらせを「ネットいじめ」、不特定多数から特定個人へのいやがらせを炎上としている。[7]

評論家の荻上チキは、インターネット上におけるいじめ的な書き込みを「反映(オフラインでの関係が書き込まれている度合い)」「影響(その書き込みがオフラインでの人間関係とどの程度因果関係を持つか)」という2つの軸から次の4つに分類している[8]

ガス抜き型
日常生活でのストレス解消の一環として行われる否定的な書き込み。反映度も影響度も低い。
陰口型
オフライン上でも行われるような陰口を、こっそりとネット上で行っているもの。反映度は高いが影響度は低い。
なだれ型
偶発的に始まった特定の対象をからかう書き込みが、場の空気・雰囲気に押されてオフラインでの人間関係に影響しうるまで加速するケース。反映度は低いが影響度は高い。
いじめ利用型
個人情報の暴露などによって被害を与えたり、いじめの計画を練るためにサイトを利用するといったケース。反映度も影響度も高い。社会学者内藤朝雄によるいじめの定義「実効的に遂行された嗜虐的関与」に基づけば、4つのうちこのケースだけが「いじめ」に該当することになる。


日本[編集]

いじめの調査法の制度が変更となり実質上の初の調査となった2006年度は4883件のネットいじめが確認されている。しかし、この件数は氷山の一角に過ぎないという指摘がある[9]


ネットいじめの手口[編集]

学校裏サイト匿名掲示板で被害者の所属する会社や学校のスレッドで誹謗中傷を行うというのが従来のパターンであった。滝川高校いじめ自殺事件(2007年)では学校裏サイトでいじめが行われていた。

だが、ネットの発展と共に最近ではより巧妙な方法を取るケースが散見され、多様化が進んでいる。全国webカウンセリング協議会によれば、2005年あたりから相談が増え出し、2007年頃は「なりすましメール」が最も増えた[10]。2014年度の文部科学省のいじめの調査では金品を要求されたり仲間はずれにされるなどのいじめは減ったがパソコンや携帯電話を使った誹謗中傷のいじめは増え、2006年度に比べ倍近く増えているという[11]。文部科学省児童生徒課はスマートフォンの無料通話アプリLINEを使ったいじめなど形態が変わってきて大人が把握するのが難しくなっているのが課題だと話す。

英国[編集]

2013年4月、「Ask.fm」の利用者であった15歳のジョッシュ・アンワースが他利用者からの誹謗中傷により自殺、さらに同年8月には、14歳のハンナ・スミスが同じく自殺した。そしてハンナの父親であるデービッドまでにも、悪質な投稿をされるなど大きな問題になっている[12]イギリス(英国)の政府が実施した調査によると、英国の12歳から15歳の34%は、何らかのネットいじめを経験したことがあると回答した。その実態に対処するため、「ネットいじめ」防止キャンペーンを英政府が立ち上げた[13]

イタリア[編集]

イタリアでは、障害のある子供が同級生にいじめられている様子を写したビデオがイタリア語版Googleサイトにアップロードされた。この問題に関連して、イタリア当局はGoogle幹部4人を訴追する準備を進めている。なお、いじめていた少年達は、すでに刑事訴追されている[14]

米国[編集]

アメリカ合衆国(米国)では、若年層(10 - 17歳)がネットいじめを受けるケースが急増しているという調査結果を疾病対策センター (CDC) が発表した[15]

バーモント州では2003年に13歳の少年が、校内とオンラインの両方で数か月に渡りゲイと嘲られ自殺した事件がきっかけとなり、州内で取り組みが盛んとなった。自殺した少年の父親は息子の自殺後、ネットいじめの撲滅を訴える運動を始めた[16]

また、ミズーリ州では2006年10月、人気SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でいじめられ、13歳の少女が自殺した。この事件が切っ掛けとなり、ミズーリ州ではネットいじめ禁止の州法が成立した[17]

2008年10月2日カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授達が、アメリカの12 - 17歳の4人に3人が、過去12か月間で少なくとも1度はネットでのいじめを体験しているが、親や教師などにその事実を相談しているのはわずか10人中1人だけという調査結果を発表した。アメリカの学校で、ネットいじめが蔓延している実態が明らかとなった[18]

カナダ[編集]

カナダでもネットいじめは深刻で、2012年10月10日にはアマンダ・トッド事件英語版があった。アマンダは、裸の写真をインターネットサイトのフェイスブックにばらまかれ、転校を繰り返しても、決して消えないインターネット上の画像が原因となって転校先でもいじめを受け続けたため、YouTubeでいじめの事実を告白したあと自殺した。この事件は、カナダで衝撃を与え、いじめに関する国民的議論を呼び起こす事となった[19][20]

2013年4月には、4人の男子生徒らに集団強姦され、その時の写真をメールでばらまかれ、それが原因でいじめを受けていた17歳の少女が自殺した[21][22]。友人や見知らぬ者からインターネットの交流サイトや携帯電話へのメールで「ふしだらな女」と暴言を送りつけられ、少女は3回転校し、警察にも訴えたが「携帯電話やネット上で写真をばらまく行為については取り締まれない」として捜査はされず、幼馴染親友にも裏切られ、絶望して自殺したとされる。少女の友人は誰一人、少女の味方にはならなかったとされる[22]。ハーパー首相は会見で「被害は、『いじめ』という言葉ですませられるものではありません。これは犯罪です。われわれは若者による犯罪行為に直面している」と述べた[22]

韓国[編集]

韓国ではネットいじめはサイバー暴力とも呼ばれている[23]。2005年、ソウル地下鉄で飼い犬の糞を始末せずに下車した女性の行為を撮影したとされる動画がネット上に公開され、弾劾され、インターネット実名制が導入されるべきだとされた[24]。2007年には歌手ユニが自殺したことの背景にネットでの美容整形手術に関する書き込みが取りざたされた[25]

2008年5月の初め頃から行われているろうそく集会李明博政権の米国産牛肉輸入再開に対する抗議行動)にはインターネット・携帯メールを使う中高生が初期の主役となり、BSE(牛海綿状脳症)にまつわる根拠のない噂も広がっていた。噂の流布、政権に理解を示す三大紙に広告を載せる企業に対する圧力などを捜査当局が「サイバー暴力」と位置付け激しい論争を招いている。

一方、ネットは権力を監視する強い武器でもあり、各地で起こるデモ隊の鎮圧場面は瞬時に世界中に流され、また当局から反体制とされた人物が検閲の目をかいくぐって発信する場にも使われる。韓国は1997年のアジア通貨危機以来、政府の主導でネット普及に力を入れてきたが、盧武鉉大統領のようにネットによる草の根募金(ノサモによる運動)が功を奏し当選に至ったケースもある。

意識改善の試みもあり、悪質な書き込み「アクプル(悪と英語のリプライを合わせた造語)」の被害を訴え「ソン(善)プル」を増やそうという運動が国民的俳優アン・ソンギなどの連名で若者を中心にモラル向上を呼びかけている。[要出典]

対策[編集]

日本[編集]

ネットいじめに対する対策としては、刑事上・民事上の責任追及が考えられる。インターネットに書き込まれた時点で、公然性があり、例えば、刑法230条の名誉毀損罪の要件をみたす。名誉棄損罪は名誉の保護と言論の自由の保障の調和の観点より、原則真実を公表しても名誉毀損罪が成立し、230条の2で公共の利益のために真実摘示の必要性を認めたものであるが、政治家等は別として一般人が書き込まれたのであれば230条の2はまず問題とならない。名誉毀損罪は危険犯であり成立しやすいが、親告罪であるため書き込まれた本人の告訴が必要となる。告訴する際の証拠として、書き込まれたファイルを保存し、プリントアウトし日付順に並べて、書き込まれた内容・回数・サイト名が具体的にわかるようにするのも一つの方法である。他に侮辱罪・信用毀損罪・業務妨害罪・脅迫罪・迷惑防止条例などに該当することが考えられるが、この中には親告罪でないものもあるので、書き込まれた本人の告訴がなくても摘発可能なものもある。民事上の責任追及としては、民法710条に基づく損害賠償請求等がある。インターネットに書き込んだ方も起訴されれば、(弁護士・税理士等は登録できないなど)職を失うリスクを負っている。最近では、摘発される事例も増えてきている。[要出典]警視庁の電話相談窓口「ヤングテレホンコーナー」には、近年ネットによるいじめ相談が多くなっている。石川県では2007年1月22日にWEB巡視隊が発足した。

子供の間で起きているネットいじめに関しては、ほとんどのケースで携帯電話が使用されているため、保護者が安易に携帯電話を子供に買い与える状況に対して警鐘を鳴らす識者たちもいる[26]パソコン家族の前に置くという対策もあるがこれは対症療法に過ぎず、根本的な解決にはならない。インターネットを実名にするという考えもあるが、オークション詐欺の問題と同じようにネットでは簡単に偽名を名乗ることができるため、これもまた抜本的な解決策にはならない。

いじめている人間がその延長上でインターネットを使っていじめている相手を書き込むという行為がほとんどであるが、近年では警察も捜査を行うことが多くなり、逮捕補導される人間も多くなってきている。2007年4月27日には、実名を挙げた中傷を放置し続け、被害者の削除要請も無視し続けていたサイト管理者が名誉毀損幇助容疑大阪府警南署によって書類送検されており、ネットいじめを野放しにする管理者については法的責任を追及する動きが生まれている。

カナダ[編集]

2013年の女子生徒自殺事件以降、カナダ政府、ノバスコシア州政府は調査を開始し、権限を持った調査班を設立させた[27]。またケベック州の学校では、生徒が校内で写真や動画の撮影をすることを禁止し、違反した場合停学や退学処分も行うとした[27]


出典・脚注[編集]

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  1. ^ Josh Alston (2012年3月13日). “Students say no to bullying” (英語). The Australian. http://www.theaustralian.com.au/news/students-say-no-to-bullying/story-e6frg6n6-1226297951918 2014年3月21日閲覧。 
  2. ^ 『ネットいじめ (現代のエスプリ no. 526)』ぎょうせい(2011) ISBN 978-4-324-09026-8
  3. ^ 犯罪“加害者” 家族たちの告白 - NHK「クローズアップ現代」第2872回
  4. ^ 記者の目:神戸・いじめ自殺を取材して - 毎日新聞、2007年10月31日
  5. ^ 岡山・中3女子自殺 ネットいじめ 娘の「叫び」追い続ける母 - 山陽新聞、2007年12月28日(2007年12月29日時点のアーカイブ)。ただし全文はWeb上からは参照不可。
  6. ^ 「あなたの個人情報、Wikiに書かれていませんか?」OhmyNews 2008年2月26日[リンク切れ]
  7. ^ 田代光輝・服部哲 『情報倫理 ―ネットの炎上予防と対策―』 共立出版、2013年11月22日。ISBN 4320123387
  8. ^ 荻上チキ 『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』 PHP研究所、2008年、143-145頁。ISBN 978-4-569-70114-1
  9. ^ 衆院青少年問題に関する特別委員会議録 第4号 2007年12月11日 - 石井郁子衆議院議員(2008年5月15日時点のアーカイブ
  10. ^ 「誰でも加害者に」 ネットいじめで専門家に聞く - 産経新聞、2007年10月16日(2007年11月17日時点のアーカイブ
  11. ^ いじめ18万件余 PCや携帯使用が増加 - NHKWEB、2014年10月16日
  12. ^ 少年少女が利用する質問交流サイト「Ask.fm」で自殺事件  -バッシングで広告主撤退も YahooJapanニュース 2013年8月9日
  13. ^ 「ネットいじめ」防止キャンペーン、英政府が立ち上げ - ITmedia、2007年9月22日
  14. ^ ネットのいじめビデオめぐり、伊当局がGoogle幹部訴追へ - ITmedia、2008年7月25日(2008年7月31日時点のアーカイブ
  15. ^ 「ネットいじめが急増=法整備に遅れ - 米」 - 時事通信、2007年12月5日付配信。
  16. ^ "Death by cyber-bully"(英語) 2005年8月17日。
  17. ^ ネットいじめ禁止の州法成立、少女の自殺きっかけに - CNN、2008年7月2日(2008年7月2日時点のアーカイブ
  18. ^ ネットいじめが日常化する米国のティーンエージャー――UCLA調査”. ITmedia. 2008年10月7日閲覧。
  19. ^ “動画でネットいじめ告白し自殺、15歳少女めぐり国民的議論 カナダ”. AFPBB News. (2012年10月19日). http://www.afpbb.com/articles/-/2907905 2014年3月8日閲覧。 
  20. ^ “カナダ人少女がユーチューブでいじめ告白、自殺”. CNN. (2012年10月13日). http://www.cnn.co.jp/world/35023021.html 2014年3月8日閲覧。 
  21. ^ “カナダ 深刻化するネットいじめ”. NHK. (2013年12月12日). http://www.nhk.or.jp/worldwave/marugoto/2013/12/1210.html 2014年3月8日閲覧。  [リンク切れ]
  22. ^ a b c “ネットいじめで自殺 17歳の少女に何が”. NHK海外ネットワーク. (2013年11月17日). http://www.nhk.or.jp/worldnet/archives/year/detail20131117_402.html 2014年4月6日閲覧。 
  23. ^ 週刊アジア、電脳社会(4) - 朝日新聞 2008年7月1日
  24. ^ "「インターネット実名制」導入の可否で揺れる韓国、サイバー暴力への対応案" - マイコミジャーナル、2005年6月27日。
  25. ^ [1]2007年01月22日10時25分 中央日報
  26. ^ 新教育の森 : 日常化する「ネットいじめ」 匿名の闇に泣く子ども - 毎日新聞、2007年9月3日(2008年5月21日時点のアーカイブ
  27. ^ a b “ネットいじめ対策 カナダで本格化”. NHK海外ネットワーク. (2013年11月17日). http://www.nhk.or.jp/worldnet/archives/year/detail20131117_403.html 2014年8月26日閲覧。 

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]