アカデミックハラスメント

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アカデミックハラスメントとは、大学などの学内で、教授や教職員がその権力を濫用して学生や配下の教員に対して行う、数々の嫌がらせ行為。上下関係を利用した嫌がらせであるためパワーハラスメントの一類型ととらえることができる。略称はアカハラ

概説[編集]

アカデミックハラスメントの例は、大きく二つに分けられる。

学生(特に研究室に配属されている4年生・大学院生)に対するもの[編集]

  • 研究や勉強に関係のない内容での、正当な理由のない人格否定や多数の面前での批判(岐阜大学で院生が教員に「社会のクズ」と言われ、110万円支払命令・産経新聞2009年12月16日)判定基準として、正当な叱責でも大声、多数の面前での非難(こうした状況設定では正当な議論の機会が奪われるため状況的暴力といわれる。周囲にも不快感を与える行為であり、誤解を生む)、人格否定など手段が不適当な場合。小さなミスなのに強く非難するなど均衡を欠いた叱責。感情的な怒りの爆発。叱責の範疇を超えてほかのことまで持ち出す執拗な叱責。業務上の正当な叱責は翌日からの部下の仕事の効率を上げる目的にかなうものである必要がある。教員側は、意見の押しつけにならないよう、学生に反論の機会を与えるなどのフェアな議論の環境を構築する必要がある。人格否定や多数の面前での叱責は、さらなるミスを誘ったり部下を病気に陥れ、狙った効果を発揮しないどころか、人間関係が凍り付いて終わることが多いために、バイオレンス(暴力)であり、いかなる理由があろうと許されない手段とされる。
  • 授業を受けさせない、またはするべき研究指導をしない(ただし、授業中の私語や教員への暴力行為など、授業や指導を妨害し、他の学生の勉学に支障をきたすと判断されることによって、教室や研究室からの退出を命じられるなど、他の学生の教育権を侵害していると判断される事例や、学生側に過失が認められる場合などは除く。受講制限、人数制限、選抜などが課された授業で、不合格や不適切と判断され、授業が受けられないなどの場合も除く)。
  • 専攻の変更を迫る(好き嫌いなどの感情的なことが理由となっている場合や、学生の個性を認めない場合など。ただし、教員が転出する場合や、書類上の問題(資格の上で、指導資格のない教員の指導を希望する)、などの場合は除く)。
  • 学生のプライバシーを暴露する。
  • 不当に多い課題を到底不可能な短期間にこなし提出するよう指示する。(高崎経済大学では2006年に進級を質に取られた学生が自殺している[1])ただし、学生が単にさぼっていて課題が膨大な量になったなどの場合(いわば学生の学習の怠慢による、自業自得の場合)は除く。
  • 正当な理由を説明することなく、学位論文などを受理しない。(東北大学大学院で2009年に、2年連続で博士論文受理を拒否された院生が自殺している[2]
  • 就職活動において不利な扱いをする。(理由無く推薦を拒否するなど)
  • 正当な理由を説明することなく、推薦状をはじめとした、在職(在学)証明書、委嘱状、実績証明書などの、就職などに必要な書くべき書類を書かない。
  • 教員自身が入信する宗教への学生の入信を長期間に渡って強要する。
  • 学生が入信する宗教を誹謗中傷し、学生の棄教を長期間に渡って強要する[3]
  • 教員自身が支持する政党への学生の支持を長期間に渡って強要する。
  • ハラスメントの救済申し立てを半月以上放置する(数多くのハラスメント放置に対する訴訟が起きている)。
  • 執筆中の論文を、担当教授との共著とするよう強要し、拒むと留年させる。(京都大学大学院の元院生から訴訟が起こされた[4])実質的に執筆していない論文のクレジットを要求する。
  • 京都大学の大学院生は建築学の研究を行いたかったにもかかわらず、子どもの行動パターンに関する研究を行うことを強要されたこと、ならびに本来は英語で研究の指導が受けられるということになっていたが英語での指導はほとんど受けられなかったことなどにより大学院生は自殺した[5]
  • 公平、公正な採点・評価をしない。目白大学においては教職課程の採点で偏ったものが多数あり教職の道を閉ざされた学生がいる。

教員間におけるもの[編集]

  • 昇進における差別(昇進の際に点数による客観的評価を行わない、事務系教員が多数派となっている大学では研究面をわざと軽く見る)
  • 研究の妨害
  • 退職勧告(退職は退職金の額などの条件を良くして募るものである。自主退職を迫る行為は違法である。リストラは、それをしなければ大学の運営が立ち行かないところまで経済的に逼迫していなければできない。たとえば、新規採用を控え、管理職の給与を3割カットし、無駄な行事を取りやめ経費節減をするなど経営努力を積んで最後に認められるのがリストラ、会社都合による一方的退職である)
  • パワーハラスメント(多数の面前での非難、バカ・クズなどの人格否定と暴言、短所のみを指摘する、わざと苦手な業務をあてがう、本人が希望しない部署への配置転換、昔の悪いうわさを流す、意見を取り上げない、仲間はずれや無視をする)

学生に対するハラスメントの他に教職員間のハラスメント(パワハラ・オフィスバイオレンス)も存在する。

アカデミックハラスメントは単純な地位の差が原因で、性的な内容に限らないため、男子学生に対しても発生し得る(もっとも、女性教員の男子学生に対するセクハラも発生し得る)。一部に、セクハラとアカハラを混同されることもある。

アカデミックハラスメントとセクシャルハラスメントの社会的認知の差異[編集]

現在でこそ、セクシャルハラスメントは社会的にもその存在が認められてきたが、アカデミックハラスメントは大学の中で隠蔽されやすく埋もれやすい。

また現在、社会で公となっているアカデミックハラスメントの数は氷山の一角にしか過ぎないといわれている。

大抵は、加害者側が、教育や叱責という名目でアカハラが行われるので一見すると見極めが難しい。典型的な口実としては、「本人がミスをしたのだから仕方ない」と加害を正当化する対応があげられる。本人に非がある場合でも、手段を選ばなければアカハラになる。大学側の隠蔽工作、教員の脅し、学生側がそれを当たり前だとして受け止めてしまう人権意識の弱さがあると言われる。

アカデミックハラスメントの原因[編集]

アカデミックハラスメントの原因には、社会を横断して共通のものと、社会ごとのものがある。

社会を超えて広く存在するアカデミックハラスメントの原因[編集]

研究室という閉鎖的な空間では、大学教授や准教授は悪気がなくても、何時しか、学問の自由を大学教員が相手の権利を侵害して、意見を押し付ける権利、アカデミアで支配権をとる権利であると誤解し、特権意識を持ち、専制暴君として、自身に与えられた学生への評価権を乱用し、討論でも学生を下の身分『目下』として卑しみ、その意見に耳を傾けない態度に傾きやすい。また、テニュア制度を取っている国では、テニュア持ちの教授准教授などはテニュアなしの非常勤講師に対して身分保障がされており、職制上もより強い権力を持っているため、優越意識、相手への侮蔑意識を持ち、相手を卑しまれるべき身分『目下』とみなしやすく、議論の際も、権力を乱用し、相手が雇止めされる可能性をほのめかすなど、大学によって自身の経済的権利が保護されていることを利用して、相手を支配する行為に傾きやすい。

すなわち、評価権を持つ教師対基本的には評価される身分の学生、教師間でもテニュア持ち対テニュアなし、という権力の差がアカデミックハラスメントの原因として、社会を超えて広く大学世界に存在する。

日本におけるアカデミックハラスメントの原因[編集]

日本のマジョリティー社会では、年齢や組織に入った順番で人を差別し、年齢の古いものが年齢の新しいものを、組織に入った順番が古いものが順番の新しいものを、蔑んで非丁寧な態度や言葉遣いで接し、年齢の新しいものが年齢の古いものに、組織に入った順番が新しいものが順番が古いものに、跪き丁寧な態度や言葉遣いで接すること、それを人々が『上下関係』『当然の礼儀』『敬意』と称して誇り高いものととらえ、民族の美風ととらえる社会的イデオロギーが強い。そのため、研究室内で、学年が古い博士課程が修士課程に、修士課程が学士課程に、横暴な態度で接して、使い走りを命じても、日本マジョリティー社会の規範的価値観では、『(例外はあれ)年上が(例外はあれ)年下に振るう当然の権利』『先輩として後輩に振るう当然の権利』として見逃されてきたし、今でも公的には非難されず、当然の礼儀として通用している。また、今でこそ公的には糾弾されるものの、少し前まで男性と女性との間にも社会的な慣習として、これが認められていたし、その名残の男尊女卑は今でも残っている。これが、アカデミックハラスメントを問題視する、人間の尊厳は、年齢、性別、組織加入順などにかかわりなく、さらには権力にかかわりなく平等であるべきとする人権思想および、それに基づく礼儀と激突する。

また教師と学生との関係でも、英米圏のように、教師と学生が個人名で呼び合い、youという代名詞を共通に使うことの多い大学社会や、大陸欧州のように、二人称丁寧形と、丁寧呼称+苗字を共通に使うことの多い大学社会と違い、日本の大学社会では、教師は学生に、『あなた』『きみ』『お前』等と、相手を下に見る代名詞を使用し、対して学生は教師に『先生』等と呼びかける義務を有する。また大学教員は、学生にタメ口を使い、下に見る権利をかなり自由に振るえるのに対し、学生はそれを許されず、ほぼ常に敬語を使う義務を有する。このように、日本の大学社会では、英米や大陸欧州より、より露骨に教師が学生を待遇表現上、下に見る権利を持っている。

韓国におけるアカデミックハラスメントの原因[編集]

韓国マジョリティー社会でも、日本同様、年齢、組織加入順で人を差別し、年齢の古いものが新しいものを、組織に入った順番が古いものが順番の新しいものを、蔑んで非丁寧な態度や言葉遣いで接し、対して年齢の新しいものが古いものに、組織に入った順番が新しいものが順番の古いものに、跪き丁寧な態度や言葉遣いで接することを、人々が『上下関係』『当然の礼儀』『敬意』と称して誇り高いものととらえ、民族の美風ととらえる社会的イデオロギーが強い。そのため、日本同様、『年上』『先輩』は、社会によって認められた当然の権利として、『年下』『後輩』を蔑み、横柄にふるまい、使い走りを命じる権利を持っている。また今でこそ公的には糾弾されるものの、少し前までは、日本同様、男性と女性との間にも同じことが社会的に認められていたし、今でもそれが残っている。そのため、日本同様、このイデオロギーが、アカデミックハラスメントを問題視する、人間の尊厳は、年齢、性別、組織加入順などにかかわりなく、さらには権力にかかわりなく平等であるべきとする人権思想と、それに基づく礼儀と激突する。

また、日本同様、韓国でも、大学教員は学生を、『Neo』『Jane』『dangsin』等の蔑んだ代名詞で呼び、パンマルでぞんざいに待遇する権利をかなり自由に使えるのに対して、学生は先生を、『Seonsaengnim』と呼び、敬語を使用する義務を負うなど、待遇表現上大学教員は学生を蔑み、横暴にふるまう権利を、社会通念上、英米や大陸欧州より、強く持っている。

アカデミックハラスメントに対する具体的な処理方法[編集]

アカハラを受けた場合、これを自分だけの問題と捉えない様にすることが重要である。これは、アカハラを行っている教授は他学生にも同様のことを行っている可能性があるからである。

この場合、まずは被害状況を音声やメモに記録し(感情をいれず事実関係のみに絞った記録)、PTSDやうつ病などになってしまったら専門医に診察をしてもらい診断書を得ておくこと、ハラスメントの経過を年表にしておくこと、そのうえで友人、先輩、信頼できる教授などに相談を行うべきだが、これだけでアカハラを解決出来るケースは稀である。

その為、次に大学で自分の所属する学部の学部長や大学に備わっているアカハラの相談所を訪ね相談するのが望ましい。

しかし、この方法は、大学そのものが本来的に保守的であるために学部長などの管理職の人はあまり頼りにならないケースもあり、またアカハラのための相談所を設けている大学は少ない。その為、大学が駄目であるならば、次に殆どの都道府県に存在する弁護士会人権救済申し立てを行うことが望ましい。これは無料で行える。また、文部科学省に今、自分が受けているアカハラと大学側の対応について電話やFAXや郵送等で伝える方法もある。

ここまで行えば、大学側も謝罪等に応じる可能性があるが、人権救済申立にしても1年程度はかかるので、大学は頑として動かない可能性がある。その為、刑事訴訟民事訴訟を起こすのも一つの手段とされている。大学におけるパワーハラスメント、勤務条件や退職奨励の問題に対しては、教職員労働組合や都道府県労働局に相談することになる。リストラ圧力に対して労働調停という手段を用いると迅速かつ無料で手続きをしてもらえる。

参考文献(視聴覚教材含む)[編集]

  • 大学の宗教迫害
  • アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク編、『アカデミック・ハラスメントの実態調査研究-大学および大学教員に対するアンケート調査結果報告書』、2004年5月。
  • アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク編、『なくそう、防ごう、気づこう、アカデミック・ハラスメント』(ビデオ)、2004年11月。
  • アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク編、『アカデミック・ハラスメントをなくすために』2004年4月。
  • アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク編、『アカデミック・ハラスメントに正しく対応するために』(ビデオ)、2007年11月。
  • アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク編、『アカデミック・ハラスメント環境評価基準の策定とそれを用いた点検評価方法の確立』日本学術振興会 平成19~21年度科学研究費補助金(基盤研究C)による研究
  • アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク編、『アカハラといわれないために-コミュニケーション・スキル・アップの実際』(DVD)、2009年11月。
  • アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク編、『アカハラで悩んだとき-あなたならどうする?』(DVD)、2009年11月。
  • 上野千鶴子著、『キャンパス性差別事情―ストップ・ザ・アカハラ』(三省堂)

脚注[編集]

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  1. ^ 「学生自殺 高崎経済大、准教授を懲戒免職」共同通信2007年4月10日
  2. ^ 「東北大大学院生が自殺…博士論文、2年連続受け取り拒否され」読売新聞2009年5月13日
  3. ^ 大学の宗教迫害 P44
  4. ^ 京大教授らのアカハラ、地裁認定 元学生に共著投稿迫る 朝日新聞 2010年6月24日
  5. ^ 『毎日新聞』2009年3月6日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]