ニート

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ニート:Not in Education, Employment or Training, NEET)とは、就学就労職業訓練のいずれも行っていない状態を指した用語である[1]。ただし、この訳は日本におけるニートの定義・用法とは若干異なる。以下では特に断り書きの無い限り、日本で定義されている15〜34歳までの若年無業者について解説をする。

起源[編集]

元は、1999年イギリス政府機関社会的排除防止局が作成した調査報告書『BRIDGING THE GAP』の中にある一文「Bridging the Gap:New Opportunities for 16-18 years olds not in education, employment or training」(日本語訳「ギャップを埋める:教育、雇用、職業訓練に参加していない 16〜18歳の若者に対する新しい機会」)の「not in education, employment or training」という部分の頭文字を取り、「NEET」と略したものが始まりである。そのためイギリスにおける「NEET」とは、教育、雇用、職業訓練のいずれにも参加していない、義務教育修了後の16〜18歳(ないし19歳)までの者と定義されている[2][3][4][5]

日本政府の定義[編集]

日本における若年無業者(ニート)の算出方法は、厚生労働省『特定調査票集計』の中の「詳細集計」(総務省労働力調査)に基づいており、そのうち、15〜34歳の非労働力人口[6]の中から学生専業主婦を除き、求職活動に至っていない者と定義している。なお、いわゆる「家事手伝い」は、現在の同省の定義ではニートに含まれていない(下記[7][8]

フリーターや失業者との区別[編集]

厚労省の定義では、失業者労働力人口の「失業者数」に分類されており、そのうち正社員及び派遣社員での就労を希望する者であれば、たとえ無業者であっても、具体的な求職活動に至っていない場合でも「ニート」には分類しないこととしている。その一方で、アルバイト及びパートタイマーなど一部非正規雇用での就労希望者の場合には扱いが少々異なる。これらの雇用形態で就労を希望する無業者のうち、求職活動に至っていない者であれば「ニート」、具体的な求職活動に至っている者であれば「フリーター」に分類している[7]。この差異の理由については明らかではない。

引きこもりとの重複[編集]

厚労省の調査では、別途の調査で統計されたいわゆる「引きこもり」の状態にある者(20〜49歳)をニートの「就業希望を有しない者」に含めている。この調査における引きこもりは全国でおよそ32万世帯いると推定され、同省では実質的に引きこもりを「ニート」として扱っている[7]。一方で、内閣府は2010年に初の引きこもり全国実態調査(15〜39歳対象)を実施しており、引きこもりに該当する者は69.6万人いると推計されることを発表した[9]。これは同省統計のニートに含まれている引きこもりの数を大きく上回っているものだが、厚労省研究班班長として引きこもり新ガイドラインを作成した齊藤万比古は、この数値に異論を唱えている[10]。この重複や二重調査に関して、東京大学社会科学研究所助教授(当時)の本田由紀は、引きこもりとニートを別個に扱うことで後述の「ニート利権」を拡大させるためだと見ている。

厚労省と内閣府による二重基準問題[編集]

かつて採用されていた内閣府による定義では、1956年から総務省(1956年当時は自治庁)がほぼ3年毎、1982年以降は5年毎に実施している『就業構造基本調査』を根拠にしており、2005年に内閣府が実施した『青少年の就労に関する研究調査』においては、「各種学校(高等学校大学専門学校の他、予備校も含まれる)に通学しておらず、独身であり、ふだん収入になる仕事をしていない、15歳以上35歳未満の個人」と定義していた。この点は前述した厚労省のそれと差異は無いが、決定的に違うのは“家事手伝いの女性”を含めていた点である[8]。これは、同研究調査の企画分析委員長にして東京大学社会科学研究所助教授(いずれも当時の肩書き)の玄田有史によるもので、「女性の若年無業者が家庭外での社会参加活動をしていない場合、自らの現状を表す言葉に窮し、『家の手伝いをしている』と回答する者が多く見受けられたため」だとしている[11]

内閣府の定義による類型[編集]

内閣府は、前述の就業構造基本調査を基に以下の類型を設けていた。

求職型
無業者(通学、有配偶者を除く)のうち、就業希望(収入になる仕事をしたいと思っている)を表明し、その仕事を探したり開業の準備をしている個人。
非求職型
無業者のうち、就業希望を表明しながら、求職活動や開業の準備をしていない個人。
非希望型
無業者のうち、就業希望を表明していない個人。

見直しへ[編集]

なお、フリーターについても内閣府による二重統計がなされていたが、2006年3月22日の参議院経済産業委員会において、民主党山根隆治参議院議員(当時)から、「ニートとフリーターの数について、政府で統一をして頂きたい」との要望がなされ、当時の厚労省職業安定局次長が「この政策(フリーターやニート)に私どもが責任を持っており、政府全体の基本的見解としては私ども厚労省の試算値を政府内で取っているというふうに理解をし、また政府全体でもそのように取り扱っている」と答弁した。[12]。これを受けて、内閣府によるフリーター及びニートの推計調査は、2005年に行った『若年無業者に関する調査』を最後に実施されなくなった[8]が、前述のように引きこもりに関する全国実態調査は実施している。

実態に関する調査[編集]

推移[編集]

厚生労働省の定義による若年無業者(ニート)の総数(単位:万人)
1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
総数 40 42 45 40 42 46 48 44 49 64 64 64 64 62 62 64 63 60 61 63
年齢別(5歳階級、単位:万人)
年齢
15〜19歳 20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳
2002 12 17 18 17
2003 11 16 18 18
2004 10 18 19 18
2005 9 16 20 19
2006 10 17 18 18
2007 9 16 18 18
2008 9 16 18 19
2009 10 16 18 18
2010 9 15 17 17
2011 9 15 18 19
2012 9 17 18 18
  • 資料出所:総務省統計局「労働力調査(基本集計)」
  • 資料出所:2010年12月3日付・厚生労働省 職業能力開発局 キャリア形成支援室「勤労青少年を取り巻く現状について」[7]
  • 資料出所:2013年3月25日付・厚生労働省 職業能力開発局 キャリア形成支援室「勤労青少年を取り巻く現状について」[13]

「総数」の表を見ると、若年無業者人口は2002年に前年の49万人から64万人へと急増している。これは、2005年以降の労働経済白書でニートの定義に「家事を行わない既婚者」やいわゆる不登校の状態にある学生を新たに加え、過去の数値についても訂正したからである。従って、2002年以前の数値にはこれらの者が含まれていない。

内閣府は「若年無業者に関する調査[中間報告]」で、「家事手伝い」「病気・ケガで療養中の人」などを含めて、ニートは約80万人となったと公表している[14]

最終学歴[編集]

年齢別(5歳階級、単位:人/100人)
年齢(歳) 学歴
中学卒 高校卒 大学卒
15〜19 16 9.3 -
20〜24 10.5 4.5 1.9
25〜29 9 3.3 1.3
30〜34 8.6 2.4 1.1
35〜39 8.7 2 0.8
40〜44 10.4 1.8 0.9
  • 資料出所:「平成19年版就業構造基本調査」労働政策研修・研究機構による再集計
  • 資料出所:2010年12月3日付・厚生労働省 職業能力開発局 キャリア形成支援室「勤労青少年を取り巻く現状について」[7]


最終学歴は高校の中退を含めた中学校卒(中卒)が最も多い。特に学歴が中卒の場合、職業の選択肢が狭まるだけでなく、専門学校や教習所職業訓練施設などへの入学も制限されることと、中卒でも取得可能な免許資格(ただし普通自動車免許などは所定の年齢に達すれば中卒でも取得できる)も制限されるため、無業者に陥る割合が高くなる様子が窺える。

求職活動をしない(できない)理由[編集]

理由別(単位:人/100人)
理由 学歴・就業経験
合計 中学卒 高校卒 大学卒 就業経験あり 就業経験なし
探したが見つからなかった 7.8 6.9 7.8 6.6 8.4 6.9
希望する仕事がありそうにない 7.2 8.6 6.5 7.2 6.9 7.7
知識・能力に自信がない 11.1 11.5 12.4 9.1 10.9 11.5
病気・けがのため 28.7 26.1 29.1 29.7 32.3 22.8
育児や通学のため 0.6 0.3 0.9 0.4 0.8 0.3
家族の介護・看護のため 0.8 0.1 1.2 0.8 1.1 0.3
急いで仕事に就く必要がない 6.1 5.1 6.5 6.2 7.1 4.5
進学や資格取得などの勉強中 12.3 5.6 9.2 20.4 11.7 13.3
その他 25.3 33.2 26 19.6 20.8 32.7
  • 資料出所:労働政策研究・研修機構「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状-平成19年版「就業構造基本調査」特別集計-」
  • 資料出所:2010年12月3日付・厚生労働省 職業能力開発局 キャリア形成支援室「勤労青少年を取り巻く現状について」[7]

全階級を通じて、病気や怪我など健康上の理由や親の介護などで就労に向けての各種活動を行えないと回答する者が3割前後を占めている。学歴別だと、「探したが見つからなかった」「希望する求人がありそうにない」が中卒で最も多く、「知識・能力に自信がない」も高卒に次いで2番目に多い。一方大卒では、「知識・能力に自信がない」とする理由が最も少ない半面、キャリアアップに向けて「進学や資格取得などの勉強をしている」とする者が他の学歴と比して突出している。

就労意欲[編集]

2008年4月に横浜市の「こども青少年局」が市内在住のニートや引きこもり状態にある15〜34歳までの若年無業者およそ750人を対象に実態調査したところ、8割を超す者が就労を希望すると回答した。内訳は、「正社員としてある」との回答が46.6%、「パート・アルバイト・派遣社員などとしてある」が1.7%、「あるが不安が残る」が34.5%で、合計すると8割を超えた。一方、「あるが今は休みたい」が1.7%、「ない」も1.7%で、現状で就労意欲の無いのはごく僅かであることが分かった[15]

生活状況[編集]

2007年に厚生労働省委託により実施された調査『ニートの状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究』 によると、出身家庭の経済状況について、3.3%が「余裕がある」、10.8%が「やや余裕がある」、47.1%が「ふつう」、28%が「やや苦しい」、8.9%が「非常に苦しい」と回答。就業経験については、過去に連続1か月以上就労した経験がある者は79%で、就労回数は平均2.6回となっている。就職活動については、75.8%がハローワークに通ったことがあり、68.2%が面接を受けるため企業に問い合わせた経験がある他、64.8%が実際に面接を受けている。メンタル面では、49.5%が現時点で引きこもりで、49.5%が精神科または心療内科を受診した経験があるという[16]

対策・支援[編集]

詳細はリンク先を参照。

厚生労働省
経済産業省
文部科学省・民間(企業NPO法人など)
内閣官房

課題・問題点[編集]

「ニート利権」問題[編集]

本田由紀は、ニートの支援に関連する諸々の対策が利権の温床となっており、上に挙げたような各省庁地方自治体、支援に携わるNPO法人等の民間団体や企業までもが「ニートの自立支援」を名目とした予算の争奪戦を繰り広げている現状があると指摘している。本田は、「これまで引きこもりへの支援を細々と行っていたような団体が、ニートへの支援を謳い始めた途端にお金が降りて来るというような現象が起きている」と指摘、これらの者が従来行っていた“引きこもり対策”を“ニート対策”にシフトさせて利権を拡大させたと分析している[17]。実際に、経産省所管の就業支援事業「ジョブカフェ」において、同省からの孫請けで事業を行っていたリクルート東京リーガルマインド日本マンパワーの3社が、スタッフ1日当たりの人件費としてプロジェクトマネジャーが120,000円、コーディネーターが90,000円、キャリアカウンセラーが75,000円、事務スタッフが50,000円という極めて高額な賃金を計上していることが、2007年に発覚している[18][19][20]。この問題は、同年12月25日の厚生労働委員会においても答弁がなされ、社民党福島瑞穂参議院議員が厳しく追及した[21]

一方、「ニート」という用語を日本に持ち込んだ玄田有史は、早くから引きこもりの問題に取り組んできた精神科医斎藤環との対談の中で、「『産業の育成』という名目でもいいのではないか。実際、『ニート支援産業』は将来的にビジネスとして成り立つと思う。元ニートがニートを支援するということが出来たら、一番いい」と主張し、こうした支援のビジネス化に前向きな姿勢を見せていた[22]

高額な料金負担[編集]

2009年度まで実施されていた、厚労省委託の自立支援事業「若者自立塾」では常に利用者数が募集枠を大幅に下回り、その後の利用実績も伸びなかったが、その大きな要因として「利用料金の高さ」が挙げられていた。団体によって異なっていたが、補助金から支給される運営費は要支援者1人につきおよそ300,000円(3か月分)、これとは別に施設側が設定した「食費」や「宿泊費」の費用160,000〜300,000円(3か月分)を塾生側が負担しなければならなかった。これを受けて同省は2008年5月以降、生活保護受給世帯の若者が入塾する際、費用の大半を負担する制度を導入したが、一方で“生活保護を受けていない低所得世帯”の若者はこの恩恵に与れなかった。原因として、支援者がニートに対して「親に甘やかされて育った」「働かなくても食べてゆける家庭の若者」といった偏見を抱いていることが根底にあるとの指摘がある[23][24][25]

現在厚労省委託によって実施されている「地域若者サポートステーション」などでも、委託先の企業及び団体は依然として利用料金を高額に設定しているが[26][27]、サポートステーション運営母体の1つである『「育て上げ」ネット』の担当者はその理由として、「サポートプログラムや職業訓練等にはある程度お金が掛かるので、出来れば(親の)定年前の金銭的余裕があるうちに、(ニートを)支援に参加させた方がよい」などと述べている[28]

実力行使による家庭からの排除[編集]

2010年4月17日に、愛知県豊川市でニートにより身内の5人が殺傷される事件が起きている[29]
2011年2月14日にライブドアのQ&Aサイト「お悩みパンチ」に、1日の大半をネット閲覧やテレビゲームに費やし、求職活動を全く行わない25歳の無職の息子を持つ父親が手切れ金10万円を息子に渡し、強制的に実家から屋外へと放り出したとする書き込みが寄せられた[30]
2012年1月23日に、74歳父親が48歳長男の首を絞め殺害した事件が起きている[31]

「ニート」のイメージ[編集]

ニートという用語が使用されるようになって以降、各方面でニートは批判や差別の対象となっており、とりわけ公人や文化人などからは辛辣な批判が加えられている(#ニートに関する発言・見解)。

一方で、放送倫理・番組向上機構(BPO)などには、そうした批判に対して懐疑的な見方をするテレビ視聴者の意見も寄せられている。寄せられた指摘の中には、「たとえ自らの意志で就労を拒否したとしても、それを他人が攻撃する資格も権利もない」という意見もあった[32]。また、いわゆる「やらせ」の疑義も持たれている[33][34]

本田由紀や評論家後藤和智らは、「ニート」という用語が大きな誤解を招いたことで偏見や差別が助長され、それによりニートの状態にある者の社会参加が困難になったと主張する。前述の玄田有史によってアルファベットの"NEET"が“ニート”と言い換えられただけではなく、玄田が対象となる年齢層を15〜34歳まで拡げて定義したことや、玄田以外の学識経験者や教育関係者らの持論(「働く意欲のない若者が増えている」など)に基づいたマスメディアの報道などが寄与したと指摘し、「ニートという用語を使用すべきではない」と強く訴えている[35][36]

企業の採用姿勢[編集]

2008年4月に横浜市が市内の企業(約1,000社中、316社が回答)に対して実施したアンケートによると、雇用する意向のある企業は14.2%に止まった一方、83.3%の企業が「就労困難な若年無業者を雇用する意向はない」と回答、ニートの社会参加が厳しい現実を表す結果となった[15]。無職の期間が長期化しているニートは新卒者と比べ年齢が高く、同年齢層の社会人と比較しても職歴が無いため、労働市場における価値は著しく劣っていると見なされている。

呼称変更の取り組み[編集]

大阪府では複数のNPO法人が中心となり、働く意思を持っていて就職活動に至っていないニートの若者を「レイブル」(レイトブルーマーの略で遅咲き、大器晩成の意)と言い換える取り組みが2011年に開始した[37][38]が、Yahoo!ニュースが「この呼称変更策は効果があると思うか?」という意識調査を実施したところ、「効果はある」「ある程度の効果はある」との回答が6%に止まり、「まったく効果はない」だけでも72.7%、「あまり効果はない」も18.2%に上った。「効果はない」と回答した者からは、「名前を変える以外にやることがあると思う」「働く意思のある奴はどんな呼称だろうと動く」「むしろ、もっと恥ずかしいネーミングが良い」「呼び方を変えるだけで効果が上がるなら、こんな簡単な話はない」などの冷ややかなコメントが寄せられた[39][40]

ニートに関する発言・見解[編集]

直接的批判[編集]

  • 衆議院議員の小沢一郎は、「本人たちは『誰の迷惑にもなっていない』と言うかもしれないが、親の稼ぎで食わせて貰って、公的なサービスも享受している。病気でもないのに他人に寄生して生きているなど、とんでもない話だ」と不快感を示し、続けて「彼ら自身も問題だが、何よりも厳しくせずにただ甘やかしている親たちが問題だ。親鳥はヒナが大きくなるまでは一生懸命に世話をするが、一定の時期が来ると冷たく突き放して巣立ちさせる。それが出来ないニートの親は動物にも劣るといっても過言ではない」などの持論を展開した。また、当時政府与党が準備していた対策などについても、「政府は今後ニートの就職支援に本腰を入れるそうだが、僕に言わせれば対策は簡単だ。一定の猶予を与えて、親が子供を家から追い出せばいい。追い詰められれば、彼らも必死に考えて行動するはずだ。それでも働きたくないというなら、親には一切頼らず、他人に迷惑もかけず、公的なサービスも受けないことだ。無人島で生活すればいい」などと切り捨てた[41]
  • 東京都知事で衆議院議員の石原慎太郎は、「ニートの問題というのは、国家の緊張感の問題に関係があると思う。例えば、韓国には徴兵制度がある。途上国には貧困や食糧の問題がある。そうした色々な問題が緊張感を生んでいるから、恐らくニートが非常に多いのは日本とアメリカだろう」との持論を述べた[42]。続けて、「結局、これは私たち大人の責任で、社会全体が子供たちを甘やかしすぎた。(動物行動学者の)コンラッド・ローレンツは、子供の時に(虐待ではない)肉体的な苦痛を味わわなかった子供は、大人になって非常に不幸な人間になると言っている。我慢するといった作業の中でこらえ性が身に付くのだ。日本の子供はこらえ性がないから結局ニートになってしまう。ニートなんて格好いいように聞こえるけど、みっともない。無気力・無能力な人間のことだ」などと批判した[43]
  • 登山家野口健は、「僕が登山のために訪れたチベットには貧しい人が沢山いる。仕事をしなければ食べていけない。僕の仲間が『(チベットの)彼らには“ニート”という発想が無いだろう』と言っていたが、その通りだと思う。日本は親がニートにご飯を食べさせているから、そういう意味ではもっと厳しくていい」などと批判した[43]

擁護[編集]

  • 経済学者田中秀臣は「日本では、ニートはその原因を本人のやる気のなさに求める風潮にあるが、本質は不況による失業問題なのである[44]」「ニートが急速に増えたという1997年以降は、ちょうど不況が深刻化した時期である。つまり、ニートの増加は景気に大きく左右されていると考えられる[45]」と指摘している。また田中は「内閣府の『若年無業者に関する調査』中間報告のニート数約80万人は『数字操作』であり、この拡張版『ニート』は求職意欲喪失者といわれる層を大きく含んで定義している」と指摘している[46]
  • 経済学者の大竹文雄は「日本のバブル崩壊以降の長期不況によって、若年層の就職が困難な時期が続いた。この経済環境が、若年層を中心に勤勉に対する価値観を崩壊させた可能性がある」と指摘している[47]
  • 経済学者の飯田泰之は「高齢者はニート・フリーターに対して、自分は戦争でこんなに大変だったなど、反論しにくい自己正当化の言葉を投げてしまう」と指摘している[48]

提言[編集]

  • 元衆議院議員の武部勤は、フリーターやニートの状態に置かれている若者に対して、「1度自衛隊にでも入って(イラクの)サマワみたいなところに行って、緊張感を持って活動してみるといい。そうすれば、3か月ぐらいで瞬く間に変わるのではないかと思う」となどと語った[49]
  • 衆議院議員の稲田朋美は、「ニート問題を解決するためには“徴農制度”を実施すべき。若者に農業に就かせる徴農を実施すれば、ニート問題は解決する」などと持論を述べた[50]
  • 写真家ジャーナリスト宮嶋茂樹は、「税金も払わない上に、三十路になっても親がせっせと部屋に“エサ”を運び続け、パソコンに向かってしか他人と会話できん奴をニートと呼ぶそだが、そんな穀潰しが何十万も生きているのは世界広しと言えども日本だけである」となどと批判し、続けて「お隣の半島南半分ではサッカー選手から、大統領まで男は全員2年以上の徴兵される。日本でも8ヶ月ぐらいでいい。ニートに対して規律、勇気、自己犠牲国防意識という美徳を自衛隊で徹底的に教育し直すべきである」と述べ、ニート対策として徴兵制度の導入を唱えている[51]
  • 田中秀臣は「ニート対策に効果があるのは、教育・雇用のミスマッチ解消ではなく、景気対策である」と指摘している[52]。田中は「ニート対策として公営・民間の就職相談所の活用、ニート層への課税によって労働・教育を受けるインセンティブを促すといった政策が提唱されているが、求職意欲喪失者への対策は景気対策が必要なのであり、税金を課したり、公営の説教を垂れることでは解決しない。このような政策はいたずらに社会的なコストを増やしかねない」と指摘している[53]。田中は「構造改革主義者は、ニートが働かないという経済的な非効率性のみに注目している。ニートについて、ミクロ(個人)の問題を効率性一辺倒で捉えるのではなく、マクロの視点に立って社会全体への関心として解消をはかるべきである」と指摘している[54]

世界各国の状況[編集]

OECD諸国の15〜29歳人口に占めるニートの割合(上位10か国)[55]
2010年の割合%
トルコの旗 トルコ 37
イスラエルの旗 イスラエル 27
スペインの旗 スペイン 24
メキシコの旗 メキシコ 24
イタリアの旗 イタリア 23
アイルランドの旗 アイルランド 21
ブラジルの旗 ブラジル 20
エストニアの旗 エストニア 19
韓国の旗 韓国 19
ハンガリーの旗 ハンガリー 19
スロバキアの旗 スロバキア 19
フランスの旗 フランス 19
OECD各国平均 16
日本の旗 日本 10

欧米[編集]

欧米においても「教育、労働、職業訓練のいずれにも参加していない者」は存在するが、日本語でいうような「ニート」あるいは類する語での分類・定義付けはされておらず、その概念も普及していない。その原因の一つは「ニート」という分類が1999年当時社会問題となっていた「社会参加困難者」(被社会的排除者)の一部にすぎないものであることが挙げられる。欧米における社会参加困難者は人種宗教言語による差別格差問題の色が濃く、日本での若年無業者問題と同列に扱うことは困難である。英国の「NEET」の定義付けは将来的な社会参加困難者を予測する分析としての意義はあったが、総合的な社会的排除対策が行われる中で「NEET」という分類自体は重要視されなかった。

韓国[編集]

2007年にOECDは、韓国の青年(15〜29歳)の6人に1人が「NEET」で、割合はOECD加盟国の平均を大きく上回っていると指摘した[56]。同国では前政権下、雇用安定を目的として法的に解雇が大きく制限された。このことによって、企業が若者の新規採用を手控えるという意図せぬ結果を生み出してしまったとされる。

韓国とOECD加盟国の比較[56]
比較項目 母集団
韓国 OECD加盟国
「15〜24歳」の失業率 10.0%(2006年
6.3%(1996年
14.7%
就業率(2006年) 27.2% 43.0%
「15〜24歳」のニート占有率 11.7% 12.0%
「15〜29歳」のニート占有率 17.0% 12.0%

OECDは韓国に無業者が多い理由について、「兵役で就職が遅れ、大学卒業後にも就職しない若者が多いため」と報告した[56]が、徴兵制は若者を強制的に社会参加に強いる制度でもあるため、青少年期の引きこもり状態からそのまま全く社会経験を経ずに家に閉じこもったまま「NEET」に移行していくパターンは、日本より少ない。

中国[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 若者雇用関連データ”. 厚生労働省. 2013年9月21日閲覧。
  2. ^ Paul Attewell; Katherine S. Newman (5 November 2010). Growing Gaps:Educational Inequality around the World: Educational Inequality around the World. Oxford University Press, USA. pp. 181-. ISBN 978-0-19-973218-0. http://books.google.com/books?id=QNwgeC_OqycC&pg=PT181+ 2013年2月3日閲覧。. 
  3. ^ Katrin Kraus (30 December 2008). Work, Education and Employability. Peter Lang. pp. 188-. ISBN 978-3-03911-294-4. http://books.google.com/books?id=wG8rNpJR1PIC&pg=PA188+ 2013年2月3日閲覧。. 
  4. ^ "Bridging the gap: New opportunities for 16-18 year olds not in education, employment or training" (PDF, 2.53 MB) . Social Exclusion Unit. July 1999. Accessed 25 August 2011. Archived 25 August 2011.
  5. ^ Furlong, Andy. "Not a very NEET solution representing problematic labour market transitions among early school-leavers" (要購読契約). Work, Employment & Society 20 (3): 553–569. September 2006.
  6. ^ 統計データ>労働力調査”. 総務省統計局. 2011年2月17日閲覧。
  7. ^ a b c d e f 勤労青少年を取り巻く現状について (PDF)”. 厚生労働省 職業能力開発局 キャリア形成支援室 (2010年12月3日). 2011年2月17日閲覧。
  8. ^ a b c フリーター数・ニート数の推移”. 社会実情データ図録 (2010年8月3日). 2011年2月17日閲覧。
  9. ^ 若者の意識に関する調査(ひきこもり調査)骨子 (PDF)”. 内閣府 (2010年7月26日). 2011年5月24日閲覧。
  10. ^ 内閣府推計70万人、厚労省推計25万5000人?引きこもり実態調査の謎”. ダイヤモンド・オンライン. 2012年3月26日閲覧。
  11. ^ 就業構造基本調査 第1章 若年無業者の実情(玄田 有史) (PDF)”. 内閣府政策統括官(共生社会政策担当) (2005年7月). 2011年2月17日閲覧。
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関連項目[編集]

外部リンク[編集]