シンガポール

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シンガポール共和国
Republic of Singapore(英語)
Republik Singapura(マレー語)
新加坡共和国(中国語)
சிங்கப்பூர் குடியரசு(タミル語)
シンガポールの国旗 シンガポールの国章
国旗 国章
国の標語:Majulah Singapura
マジュラ・シンガプーラ(マレー語: 進めシンガポール)
国歌進めシンガポール
シンガポールの地図
シンガポールの位置
公用語 英語マレー語標準中国語(北京語)タミル語
首都 シンガポール
最大の都市 シンガポール
政府
大統領 トニー・タン
首相 リー・シェンロン
面積
総計 707.1km2???位
水面積率 1.5%
人口
総計(2012年 5,410,000人(113位
人口密度 7,612.68人/km2
GDP(自国通貨表示)
合計(2008年 2,574億[1]シンガポールドル (S$)
GDP(MER
合計(2008年 1,819億[1]ドル(44位
GDP(PPP
合計(2008年 2,387億[1]ドル(43位
1人あたり 51,142[1]ドル
独立
 - 日付
マレーシアより
1965年8月9日
通貨 シンガポールドル (S$)(SGD
時間帯 UTC (+8)(DST:なし)
ISO 3166-1 SG / SGP
ccTLD .sg
国際電話番号 65

シンガポール共和国(シンガポールきょうわこく)、通称シンガポールは、東南アジアマレーシアに隣接するシンガポール島と周辺の島嶼領土とする共和制国家。シンガポール市を中心とし、後背地を持たない都市国家かつ、イギリス連邦加盟国である。

国名[編集]

国名はサンスクリット語で「獅子」を意味する「シンハ(simha)」に由来する。

通称はSingapore (英語)[※ 1][※ 2]新加坡星加坡(中国語、旧称:星洲、南洋)、Singapura (マレー語)、சிங்கப்பூர் (タミル語)。漢字表記は新加坡だが、略称ではとなる。新だとニュージーランドと同じになり紛らわしいのと、以前、音訳で「星港」と表記されていたころの名残である。
第二次世界大戦で交戦国イギリスの領土であったシンガポールを占領した日本は「昭南(島)」と命名し、“昭”と略す場合もあった。他には星加坡、新嘉坡、星港などとも書かれる。

尚、公用語が4言語あるので正式名称も各言語ある。

  • Republic of Singapore英語:リブリック・オブ・スィンガポア[※ 1][※ 2]
  • 新加坡共和国中国語:シンジァーポー・ゴンホーグォ)
  • Republik Singapuraマレー語:リプブリク・スィンガプラ)
  • சிங்கப்பூர் குடியரசタミル語:スィンガップール・クディヤラク)

マレー語の「スィンガプラ(Singapura)」を直訳すると「ライオンの町」となる。また、シンガポール原産のネコの種類名、“シンガプーラ”はマレー語の発音が由来である。

歴史[編集]

地理[編集]

東南アジアのほぼ中心、赤道直下の北緯1度17分、東経103度51分に位置する。北のマレー半島マレーシア)とはジョホール海峡で隔てられており、マレーシアとは経済交流も盛んである。シンガポール・チャンギ国際空港は島の東端に位置する。シンガポール島の南に隣接するセントーサ島は、リゾート地としての開発が進んでいる。

63の島からなり、もっとも大きな島はシンガポール島(東西42km、南北23km)である。国土の最高地点はシンガポール島にあるブキッ・ティマ(163m)。シンガポール島には沖積平野が広がる。他の島はいずれも小さく、44の島は面積が1平方kmを下回る。国土面積は世界175位で、東京23区とほぼ同じ広さである。人口密度は世界第2位である(第1位はモナコ公国)。

以前はシンガポール川沿いには放棄された倉庫が立ち並び、貿易港として栄えた時代の名残となっていたが、現在はレストラン街に改装されており、観光客だけではなく、地元民も多く立ち寄る地域となっている。 シンガポールにはと呼べる高さの山はないため、川の流れは非常に緩やかで、人々が川でを採る光景をみかけることもあるが、流れが緩やかなこともあり、水質はあまりよくない。

気候[編集]

赤道直下に位置するため、一年を通じて高温かつ多湿である。モンスーン地帯に含まれるが、雨季乾季の区別ははっきりしないものの、北東モンスーンの影響により、11月から3月にかけて降水量が多い。5月から9月は南西モンスーンのために、1回当たりの雨量が増え、強風に見舞われる。この南西モンスーンに乗って、隣国インドネシアスマトラ島焼畑農業山火事の煙が流れ込み、ヘイズと呼ばれる煙霧になることがある。インドネシアの乾期にあたる4月~10月ごろになると大気汚染が特に酷くなり、健康への被害が懸念されるレベルとなっている[2]

ケッペン気候区分によると、乾季のない熱帯雨林気候 (Af) に分類される。首都シンガポールは標高5mであり、年平均気温は27.4度、1月の気温は26.4度、7月は27.9度である。11月から1月にかけては比較的すずしい。年平均降水量は2087.1mm。

シンガポールの気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平均最高気温 °C (°F) 30.1
(86.2)
31.1
(88)
31.6
(88.9)
31.7
(89.1)
31.6
(88.9)
31.3
(88.3)
30.9
(87.6)
30.9
(87.6)
30.9
(87.6)
31.1
(88)
30.6
(87.1)
29.9
(85.8)
31.0
(87.8)
平均最低気温 °C (°F) 23.3
(73.9)
23.6
(74.5)
23.9
(75)
24.4
(75.9)
24.8
(76.6)
24.7
(76.5)
24.5
(76.1)
24.4
(75.9)
24.2
(75.6)
24.0
(75.2)
23.7
(74.7)
23.4
(74.1)
24.1
(75.4)
雨量 mm (inch) 242.5
(9.547)
162.0
(6.378)
184.8
(7.276)
178.8
(7.039)
171.8
(6.764)
161.2
(6.346)
158.3
(6.232)
176.2
(6.937)
169.7
(6.681)
193.9
(7.634)
255.7
(10.067)
288.2
(11.346)
2,343.1
(92.247)
平均降雨日数 15 11 14 15 14 13 13 14 14 16 19 19 177
 % 湿度 84.7 82.9 83.8 84.8 84.4 83.0 82.8 83.0 83.5 84.1 86.4 86.9 84.2
平均月間日照時間 173.6 183.6 192.2 174.0 179.8 177.0 189.1 179.8 156.0 155.0 129.0 133.3 2,022.4
出典 1: National Environment Agency (Temp 1929-1941 and 1948-2009, Rainfall 1869-2009, Humidity 1929-1941 and 1948-2010, Rain days 1891-2009) [3]
出典 2: Hong Kong Observatory (sun only, 1982—2008) [4]

水資源[編集]

シンガポール側から見るジョホール海峡を渡るコーズウェイ。コーズウェイ脇には3本の水道管が並設されている。

高低差の少ない狭い国土では水源に乏しいため、国内の多数の貯水池と隣国マレーシアからの輸入した原水で水の需要に応じてきた。水道水は国内の貯水池だけでは到底賄い切れないため、隣国マレーシアよりジョホール海峡を渡るパイプラインで原水を購入している(パイプライン3本中2本がマレーシアからの原水で、1本が浄水後マレーシアへ供給される水道水)。

必ずしも良好な関係とはいえない隣国のマレーシアが、1998年には「シンガポールへの水の供給を停止する」という威嚇的な発言で圧力をかけてきたことや、21世紀に入ってからは「水の価格を100倍へ上げる」との要求に対応を迫られるなど、マレーシアからの水輸入の契約期限である2061年に向け、水問題はシンガポールの大きなアキレス腱となっている。

政府はこうした問題への根本的な解決策として、2003年から日本の逆浸透膜を使った高度濾過技術を導入して国内の下水を再生処理し、飲用水にも利用可能とする「ニューウォーター」(NEWater)計画を開始しており、2011年には国内の水需要の30%をこの再生水で賄うとしている。NEWaterの工場はMRTチャンギ車両基地に隣接しており、見学ツアーも設けられている。マリーナ湾の湾口をせき止めて淡水化し、将来飲用に供するための可動堰ダム・「マリーナ・バレッジ」も完成した。この貯水池ではシンガポールの水需要の1割を賄うことを目標にしている。

政治[編集]

1957年に「シンガポール市民権法」が成立し、18歳以上に選挙権が与えられる。投票は義務制。1959年には初の普通選挙が行われ、この年の総選挙から無理由の棄権には罰金が科された。義務制は現在(2000年代)も継続している。1959年から1984年総選挙まで小選挙区制であったが、1988年から小選挙区制に並列してグループ選挙区制度が導入された[5]

民族暴動を機にマレーシアから追い出されるように独立した経緯から国内民族問題に敏感であり、民族対立を煽るような言論・表現は煽動法英語版宗教調和維持法英語版などによって厳しく取り締まられる。

煽動法では人種憎悪にとどまらず政府への不満表明も刑事規制対象とされ、5年以下の懲役または5000ドル以下の罰金、出版差し止めが科される。

一党優位[編集]

建国以来、一貫して人民行動党が議会議席の大多数を占めており一党優位である。このため、シンガポールは開発独裁国家であるといわれ、典型的な国家資本主義体制であるともいわれる。労働者党などの野党の存在は認められているが、その言論は大きく制限され、国政への影響力は少ない。21歳以上の全国民が選挙権被選挙権を持つ普通選挙制だが、野党候補を当選させた選挙区民は、徴税面、公団住宅の改装が後回しにされるなどの報復的な措置を受けることがある。このように一党支配である一方、経済的に豊かで表向きには華やかなことから、朝日新聞に「明るい北朝鮮」と評されている[6]

政府による選挙干渉やゲリマンダーは日常化しており、選挙は外国からの批判をかわすための形式的な制度という色合いが濃い。一般市民の政治への関心は低いが、経済的・政治的安定を享受しているため不満は少ないとされている[7]

民主主義指数によると、シンガポールは民主制専制の中間にある「ハイブリッド」と評される。一方、腐敗認識指数によると、公職における汚職の少なさでは世界トップクラスであり、欧米以外では最も政治腐敗の少ない国とされる。フリーダム・ハウス英語版は、自由度について「部分的に自由」、報道の自由については「自由でない」とし、民主選挙は行われていないとしている。

国会[編集]

国会一院制。任期5年。解散あり。定数は選挙区選出83、非選挙区選出0-6、任命9。非選挙区選出は野党懐柔のために設けられた枠で、選挙区選出枠以外は、憲法改正案、予算案の議決権を持たない。

選挙区は当初は単純小選挙区制であったが、現在は小選挙区9、定数5-6の集団選挙区14(75議席)となっている。集団選挙区中選挙区制の一種だが、各政党は定数一杯の候補を立てる必要があり、少数民族を候補者に含める必要がある。有権者は政党に投票するため、無所属での立候補はできない。さらに、最多得票を獲得した政党が議席を総取りする勝者総取り方式で、人民行動党にとって有利な制度となっている。

選挙[編集]

1968年から1981年までの13年間は、国会の全議席を人民行動党が占めていた。その後の総選挙でも1984年定数79で人民行動党77・野党2、1988年定数81・人民行動党80・野党1、1991年定数81・人民行動党77・野党4であった[8]

1997年総選挙ではチェンサン選挙区(定数5)で野党が45.2%の得票を集めたが、政府はすかさずゲリマンダーを行い、選挙区割りを変更、野党の得票を分散させた。集団選挙区は野党が定数一杯の候補者を揃えられずに擁立を見送る選挙区が多い。少数民族を候補に含めることは、表向きは少数民族の保護だが、少数民族の候補を確保しにくい、野党の擁立を妨害する作用もある[9]。そのため、2001年総選挙では人民行動党が過半数の55議席で無投票当選を決めている。選挙のたびに小選挙区は削られ、集団選挙区の割合が増えている。集団選挙区の定数も3から4、そして現行の5-6と増やされている。

供託金は候補者1人当たり13000シンガポールドルで、供託金没収点は有効得票÷定数の8分の1である。

2001年総選挙[編集]

2001年総選挙は9月28日には選挙人名簿の縦覧を開始。10月18日に議会の解散が行われ、10月25日総選挙が告示された。投票日は9日後の11月3日であった。日程は野党の選挙態勢を整わせないよう極めて慌ただしく進められた。結果は、人民行動党82、労働者党1。野党議席が3に満たなかったため、非選挙区選出枠からシンガポール民主連合1人が選出された。人民行動党は得票率75.29%で98.80%の選挙区議席を獲得している。

2006年総選挙[編集]

2006年5月6日、総選挙が投開票された。与党・人民行動党 (PAP) が全84議席のうち82議席を獲得した。得票率は2001年の総選挙より8.7ポイント低下し、66.59%であった。投票率は94%で、有権者数は122万人。37議席は人民行動党候補が無投票当選。選挙が行われた47議席中人民行動党が45議席を獲得した。野党は1988年以来過半数を上回る候補を立てられず、政権を争うという意味では選挙前から「不戦敗」の状況が続いてきたが、回避した。労働者党が1議席(ラウ・アキアン書記長)、シンガポール民主連合が1議席(チャム・シートン新人民党書記長)を獲得した。

与党の得票率は、2001年の前回75.29%、2006年の今回は、8.7ポイント下がって66.59%。野党の2人はいずれも前回よりも得票率を伸ばした。人民行動党は1965年のシンガポール独立以来、単独政権を維持してきた。

2011年総選挙[編集]

2011年5月7日、総選挙が投開票された。野党は、立候補届け出が遅れて受理されなかったタンジョン・パガー選挙区(定数5)を除いて候補を擁立し、全87議席のうち82議席で選挙戦となった。インターネットでの選挙活動が解禁された。

その結果、与党・人民行動党(PAP)が全87議席のうち81議席を獲得したものの、野党・労働者党(WP)が1集団選挙区で勝利して過去最多となる6議席を獲得した。同集団選挙区では外務大臣ジョージ・ヨーが人民行動党のグループを率いており、現役閣僚が落選するという与党には厳しい結果となった。集団選挙区で人民行動党が敗北するのは史上初。野党・シンガポール人民党(SPP)は改選前の1議席を守れず議席を失った。

人民行動党の得票率は60.1%と、過去最低だった1991年総選挙時の60.9%を下回った。投票率は93.06%であった。

2012年補欠選挙[編集]

2012年5月27日、野党労働者党議員の不倫発覚後、国外逃亡して2月に自動失職したホーガン選挙区(定数1)の補欠選挙が行われた。結果は与党人民行動党が圧倒的有利にも関わらず、野党労働者党の候補が6割以上の得票率で勝利した。争点が野党の不祥事より移民政策の方が大きくなり、外国人を積極的に受け入れている政権与党が否定的な野党に敗北した格好となった。

法律[編集]

シンガポールの体系はイングランド法を基礎としている。主要な法分野(特に行政法契約法、衡平法および信託法、財産法、不法行為法)は、その一部が立法により修正がなされたものの、主に判例法の体系によっている。刑法会社法家族法を含む他の領域は、その性質上主として制定法となっている。

シンガポールにおける判例がない場合はイギリスにおける判例法を参照するか、シンガポールの法律のモデルとなったイングランド法の解釈を援用することがある。最近においては、イギリス本土のアプローチが不適当であるときに、同じ英連邦の主要国であるオーストラリアカナダの判例を参照する傾向が強い。一部のシンガポールの法律は、イギリス法を継承したものではなく、他の法体系に起源を有するものがあり、それらの法律は最初の立法時の経緯を斟酌し母国法を参照する。例えば、証拠法や一部の刑法の取り扱いはインド法に基づいて解釈されることがある。憲法解釈については、他国の例を参照することを嫌い、シンガポール国内の政治的・社会的状況を斟酌し解釈される。

刑事法や取締法規については一般的にいって厳格であり、裁判所の許可のない拘留を認めることや、イギリス植民地時代に制定された、組織について政府が管理権を有する結社法が未だに存在し、身体刑死刑が実施されている。

死刑制度[編集]

世界的にも厳しい死刑制度を維持している。人口あたりの死刑執行件数は正確な統計がある国としては最も高い。特に、麻薬に関する犯罪に死刑が適用されるため、外国人の麻薬密売業者が死刑になる事例があり、死刑廃止国とのあいだで外交問題に発展したことがある。死刑の方法はイギリス式の絞首刑であり、死刑執行人が存在する。

同性愛に関する法律[編集]

男性間の同性愛行為は違法とされ、最高で無期刑が科されることとなる。女性の同性愛については特に禁止されていない。

仲裁[編集]

国際取引に関する紛争の解決方法としては、一般に訴訟よりも仲裁が広く用いられているが、アジアではシンガポールの仲裁が広く利用されている。このことは、シンガポール、さらにはイギリス法系の法律家にとって、巨大なリーガルマーケットを意味しており、シンガポールにとっては、国家的な戦略と位置付けられる[10]

行政区画[編集]

警察[編集]

情報機関[編集]

  • シンガポール
    • JID (Joint Intelligence Directorate) - 統合情報本部
    • G2-Army
    • ISD (Internal Security Department) - 内務省国内公安部
    • SID (Security and Intelligence Department) - 公安・情報部

軍事[編集]

海軍のフォーミダブル級フリゲート及びヴィクトリー級コルベット

兵力は陸軍50,000、海軍9,000、空軍13,500の計72,500名。徴兵制により男子に2年間の兵役を義務付けており、兵役終了後は予備役に編入され、有事の際は総動員体制となる。2006年の軍事予算は100.5億シンガポールドルで、全歳出に占める割合は22.5パーセントである。

陸軍はイギリスセンチュリオン戦車約100両(旧式)、およびドイツレオパルト2戦車(現在132両)を保有している。海軍は、チャレンジャー級潜水艦スウェーデン海軍の旧シェーオルメン級)を4隻、ラファイエット級をベースとして設計されたフォーミダブル級フリゲートを6隻、ヴィクトリー級ミサイルコルベットを6隻、フェアレス級ミサイル艇6隻、哨戒艇を23隻、そして戦車揚陸艦4隻を保有する。空軍は米国戦闘機F-5を45機、F-16C/D (Block52) を62機、F-15SGを保有し、2010年以降は第五世代のステルス戦闘機F-35が順次導入され、F-5を置き換えていく予定である。

国土が狭小なこともあり、演習・訓練はオーストラリア等の国外地域でも積極的に行われている[11]タイインドネシアフィリピンなどの近隣諸国のように反政府ゲリラなどによる攻撃は存在しないが、その質、数とともに国土に対して十分である。

対外軍事協力[編集]

イギリス植民地時代に同国の要塞であった歴史的経緯から、現在もイギリス軍と密接な関係にある。イギリスは1967年スエズ以東からの撤退を宣言したが、これに対応するための枠組みとして、1971年にシンガポール、マレーシア、ニュージーランドオーストラリアとともに五ヵ国防衛取極めを締結した。当初は、防空システムに関する協力から始まったが、後に空軍だけではなく、海軍の合同演習も行われるようになった。

冷戦を通じてアメリカ軍との関係も深まっており、1990年にはアメリカ軍によるシンガポール国内施設の使用に関する覚書を締結した。シンガポール軍の装備も、アメリカ製が多い。特に空軍の歴代主力戦闘機は、アメリカ製で占められてきた。F-35戦闘機の開発計画(統合打撃戦闘機計画)においても、最も低いレベルではあるが、優先的に輸出枠を確保できる“Security Cooperation Participation”として参加している。また、2013年にはアメリカ海軍の最新鋭艦艇である沿海域戦闘艦のローテーション配備が発表されている[11]

このほか、台湾(中華民国)との間で「星光計画」と呼ばれる協力関係が1975年以来続いている。これは、シンガポールの国土が狭いため、当時のリー・クアンユー首相蒋経国総統の間で、シンガポール陸軍部隊の訓練を台湾国内で行うことなどを取り決めたものである。台湾と対立を続ける中華人民共和国もシンガポール軍に海南島の訓練施設の提供を申し出たが、シンガポール側はこれに応じていない[12]。さらに、シンガポールとフィリピンが「台湾有事」の際に、台湾の防衛に協力するという「敦邦計画」が存在するとの報道もある[13][14]

近年は、アメリカフランスブルネイ、オーストラリアからも同様の協力を取り付けているが、「星光計画」(Starlight training program)も継続・拡大され、戦車部隊や防空システムの演習や両国海軍艦艇の相互訪問も行われるようになった。

国際関係[編集]

2000年、ウィリアム・コーエン米国国防長官と会談を行うリー・クアンユー上級相及びチャン・ヘン・チー駐米大使

宗主国イギリスや、太平洋地域での有力国である日本オーストラリアなどと貿易を通じ密接な関係を持つ他、隣国であるマレーシアインドネシアタイ王国などのASEAN諸国とも密接な関係を持っている。

対マレーシア関係[編集]

隣国で元々は同じ国であったマレーシアとは、領土や開発問題、欧米諸国へ対する姿勢などでたびたび衝突しており(軍事的な衝突ではなく、あくまで外交上のもの)、心理的・物理的に密接ながら複雑な関係といえる。

ASEANの一員でありながら、欧米諸国(と日本)との貿易金融に過度に依存した都市国家である故に、主な「顧客」である欧米諸国(キリスト教国)におもねる言動を取ることが多いため[要出典]、マレーシア以外のほかのアジア諸国(おもにイスラム教国)とも、幾度にわたり外交的な衝突を繰り返している。

対日関係[編集]

日本との外交関係はおおむね良好である。シンガポールは日本にとって初めての自由貿易協定締結相手国でもある(JSEPA)。日本-シンガポール間の貿易について、シンガポールを原産地とする貨物については特別な関税率が適用されており、将来的には関税撤廃スケジュールに基づいて両国間の関税は撤廃される予定である。2006年は外交関係樹立40周年であった。

経済[編集]

シンガポールは2014年、ビジネス、人材、文化、政治などを総合評価した世界都市ランキングにおいて、世界9位の都市と評価された[15]

IMFの統計によると、2013年のシンガポールのGDPは2957億ドル(約30兆円)であり[16]神奈川県とほぼ同じ経済規模である[17]。同年の一人当たりのGDPは54,775ドルであり、世界でも上位に位置する。国際競争力が非常に強い国であり、2011年世界経済フォーラムの研究報告書において、世界第2位の国と評価された[18]富裕世帯の割合が世界で最も高く、およそ6世帯に1世帯が金融資産100万ドル以上を保有しているとされる[19]。2013年の勤労者世帯の平均世帯月収は10,469シンガポールドル(約85万円)であり[20]東京都の勤労者世帯の平均を大きく上回っている[21]

通貨シンガポール・ドルが使用されている。ASEANの原加盟国で、2002年には日本と「新時代経済連携協定」に調印し、関税の撤廃と両国間における物品・人・サービス資本情報の移動の自由度向上をはかっている。20世紀末から急速な経済成長が続いており、熱帯地域では珍しく経済力がある地域である。

2013年9月、アメリカのダウ・ジョーンズなどが公表した国際金融センターランキングにおいて、ニューヨークロンドン香港東京に次ぐ、世界第5位と評価された[22]

租税[編集]

法人税と個人所得税の両方はほかの多くの国と同様に累進税率方式を採っている。住民税事業税のような地方税は存在せず、すべて国税となる。

法人税[編集]

法人税は日本のような自己申告課税方式ではなく賦課課税方式であり、納税額の確定は納税者の提出する申告書類などによって税務当局が行うため、確定までに通常は2-3年、納税額に疑問があればさらに数年を要する。税務調査官が実地調査することはほとんどない。シンガポールでは、交際費損金として認められている。

個人所得税[編集]

個人所得税は前年分の課税を当年に行うため、所得期間と賦課年度はそれぞれ前年と当年となって1年ずれて表記される。個人所得税の源泉徴収制度はないが、企業従業員が前年度の収入分に対して当年での分割納付を行う場合は、税務当局が企業に指示を出して給与から控除される制度が存在する。

GST[編集]

2003年1月1日に、消費税(付加価値税、GST、Goods and Service Tax)は4%から5%に上げられ、2007年7月1日からはさらに7%になった。日本のような記帳方式ではなくインボイス方式を採っているため、課税業者はすべての取引について「Tax Invoice」と呼ばれる税額票を発行する。住宅不動産の売買、金融商品サービスの提供、輸出取引、サービスの輸出、企業そのものの売買、三国間取引、保税倉庫内取引、(S$1百万/人以下の)個人間の取引を除くすべての売買について課税される。

外税表示方式と内税表示方式が混在しているために、旅行者などの外国人は物品やサービスの購入時に注意が必要である。

固定資産税[編集]

不動産取得税は存在せず、不動産の所有に対して比較的高率での固定資産税 (Property Tax) が毎年課税される。不動産取得時には印紙税が1-3%程度かかる。

パイオニア企業への優遇税制[編集]

1967年から何度か改訂されてきた経済拡大奨励法 (Economic Expansion Incentives Act) に基づき、シンガポールにとって特に有益な事業への企業の新規参入と投資を奨励するために「パイオニア企業」(Pioneer Industries)といった分類を設けて、税制上での優遇措置が図られている。これは最初の生産開始日から起算して5-10年間の全額租税免除という適用企業にとっては極めて有利なものである。

中央積立基金[編集]

老年年金および医療貯蓄として、中央積立基金英語版が強制的に個人の収入などより徴収される。たとえば、50歳以下では毎年の給与と賞与の総額に対して雇用者14.5%と従業員20%、計34.5%の掛金を政府に払い込まれ、個人ごとのCPF口座に貯蓄される。この貯蓄からは医療費支払い、住宅購入などの特別な用途の原資となり、残りは退職後の生活安定に使用される。

メイド税[編集]

都市国家のシンガポールでは、多くの家庭で外国人メイドを雇用している。

メイドの雇用には雇用主が毎月200-295シンガポールドルのメイド税を払う義務がある。この金額は多くの場合、メイドが受け取る給料よりも高い。 外国人メイド控除という制度があり、就業している女性などが外国人メイドを雇用した場合、メイド税の2倍に相当する額を所得から控除することが出来る。

産業[編集]

東南アジア東アジアヨーロッパ中東オーストラリアを結ぶ交通の要衝であるため、東西貿易の拠点となって古くから繁栄し、海運産業や航空産業が発達した(ゆえに国内最大の企業はシンガポール航空である)。独立後は積極的な外資導入により、重工業を中心とする工業化政策をとり、東南アジアでは最大級の工業国に成長している。

都市国家であるため、国内の人口や消費の規模は小さいものの、英語中国語の話者の多さから、香港と並び欧米諸国の多国籍企業アジア太平洋地域の拠点が置かれることが多く、近年は東南アジアの金融センターとして不動の地位を保っている。

地元企業[編集]

地元の世界的企業としてはシンガポール・テレコムシンガポール航空などがある。近年は政府を挙げてIT分野と観光分野の振興に力を入れているものの、「見た目とは違って借入れが多く、経済的に困窮している企業も少なくない」と中華民国の元総統である李登輝は分析している[要出典]

観光[編集]

「ガーデン・シティ」とも呼ばれる美しい国土と、海運上極めて重要なマラッカ海峡のそばにある上、東南アジア各地を結ぶチャンギ空港ハブ空港として非常に重要な役割を果たしているため、観光面ではアドバンテージがある。2012年マスターカードが公表した統計によると、ロンドンパリバンコクに次いで、世界で4番目に外国人旅行者が多く訪れる都市である[23]ラッフルズ・ホテルグッドウッド・パーク・ホテルザ・フラトン・ホテル・シンガポールなどの世界的に有名なホテルも集積している。

政府と民間の協力のもと人工的な観光資源開発を進めており、一環として、セントーサ島テーマパークユニバーサル・スタジオ・シンガポール』や、「リゾート・ワールド・セントーサ」が建設されることが決定し、完成した部分から逐次開業している。「リゾート・ワールド・セントーサ」の投資額は52億シンガポールドルに上るとされる。

2010年2月1日には、「リゾート・ワールド・セントーサ」のショッピングモールが開業し、2月14日にシンガポール初となるカジノが、3月18日には『ユニバーサル・スタジオ・シンガポール』が同施設内にオープンした。他にも、世界最大となる水族館Marine Life Park が2010年中には完成する予定で、2011年には美術館、ウォーター・パークなどが完成する予定である。

マリーナ・エリアでは、世界最大観覧車シンガポール・フライヤー」が2008年3月に完成し、巨大カジノリゾート施設「マリーナベイ・サンズ」が2010年4月に開業した。2008年9月には市街中心部の公道を利用してF1シンガポールグランプリが開催された。これはF1初の夜間開催のレースでもある。

建築[編集]

シンガポールの建築は非常に多種多様である。国土が狭く、慢性的に土地が不足していることから、歴史的な建造物は都市部にわずかに残る程度であるが、それらがより新しく、より大きく立て替えられていく過程で現代建築の中心地となった。歴史的に土地の高度利用の需要は、ビジネス・ディストリクトやセントラル・ビジネス・ディストリクト(CBD)に集中しており、数十年続いた開発の末、多くの高層ビルが林立する結果となった。マリナ湾とラッフルズ広場の海岸沿いに高層ビルを浮き立たせた輪郭線を描き、その景観はシンガポールを代表する観光地であり、象徴する景観にもなっている。建造物の高さは280mに制限されているため、シンガポールで最も高いリパブリック・プラザUOB Plaza及びOUB Centreの高さはいずれも280mである。

主な観光地[編集]

交通[編集]

ブギス・ジャンクション付近のERP

自家用車[編集]

シンガポールにおいて市内の交通渋滞は深刻な社会問題であり、政府もその対策には腐心しており、自家用車の保有、および利用には厳しい制限がなされている。

車両割り当て制及び諸税
国内の道路整備状況により自動車の新規登録可能件数が定められ、車両購入権(COE:Certificate of Entitlement、拥车证)の価格は入札により決定される。新車を購入する際にはインターネットを通じて行われる入札に応じる必要がある。価格は車種によって変わり、時期による変動もある。たとえば、中型車(排気量1600cc以下)については、2008年頃まで、S$10,000-15,000程度で推移していたが、2008年末から2009年初めの世界同時不況の余波をうけた時期にはS$5,000前後まで暴落、しかし、2009年夏には景気回復を受けS$19,000前後まで急上昇、以降上昇S$100,000に達するなど乱高下を続け、2014年現在でS$60,000前後(排気量1600cc以上はS$70,000前後)に到っている。購入に際し、輸入関税消費税登録料・追加登録料・道路税が課せられ、上のCOEも合わせると車両価格の4-5倍程度を支払うこととなる(但し、COEについては、廃車時に市場価格で売却することができ、譲渡時には譲渡価格に上乗せして売却される)。
渋滞抑制政策
一定地域への車両の流入を抑制するため、特定地域への立ち入りに際してはクーポン購入を義務付けるロードプライシングを早くから導入。1998年3月から世界で初めてプリペイドカードを利用した電子式道路料金徴収システムであるERP(日本の有料道路のETCを一般道に適用したものを想像すると理解しやすい)を導入している。
その他
道路が左側通行で、アジア圏ということもあり、日本車が多数を占める。なかには日本から非正規輸入(並行輸入)されたため、日本の低排出ガス車認定制度シール、車庫証明シール、自動車ディーラーのシールが張られた車も走っている。ジョホール海峡を挟んだ隣国マレーシアのジョホール州とは2つの道路(ジョホール・シンガポール・コーズウェイマレーシア・シンガポール・セカンドリンク)で結ばれている。ガソリン価格がシンガポールに比べて圧倒的に安い、隣国マレーシアへ給油のために国境を越える者があとを絶たなかったため、国境を越える際、ガソリンメーターが4分の3以上ない場合は罰金を科す「3クォーター・タンク法」が存在する(マレーシアナンバーの車は対象外)。

バス[編集]

公共交通機関バスSBSトランジットSMRTバスの2社が事業展開をしており、路線は市内のほとんどを網羅している。運賃は一般路線で乗車距離によりS$1.00-1.90となっている(EZ-linkを使用した場合、S$0.69-1.65に割引)が、通勤時間帯に運行される着席保証の「プレミアムサービス」や「バス・プラス・サービス」、SMRTバスが運営するセントーサ島行きの「RWSサービス」、一部停留所を停車しない急行サービスや「NR」というサービスナンバーがつくいわゆる深夜バスでは均一価格制や割増料金などが設定されており、多彩な運賃構造を持つ。乗り継ぎ割引についても、地下鉄連絡やバス同士の乗り継ぎにおいて例外となるパターンがごく一部しかなく、3乗車目、4乗車目と連続した場合であっても、個別に条件を満たせば割引が適用されるなど柔軟な運用がなされている。

タクシー[編集]

シンガポールのタクシーは、初乗り(1.0km)料金がS$2.50、その後は175-210mごとにS$0.10が加算されていく仕組みになっており、日本と比較すると料金は安い。車種は日産・セドリック(Y31型セダン)やトヨタ・クラウンコンフォートが多いが、同車種をよく使う日本や香港と違い、自動ドアではない。

グレードの高い車種になると初乗り料金が少し高く、ヒュンダイ・ソナタはS$3.00、メルセデス・ベンツE200などはS$3.20となっている。

メーター料金以外にも、条件に応じて様々な料金が加算される。

  • ピークアワー:S$2.0
  • 祝祭日:S$1.0
  • 深夜および早朝:メーター料金の10~50%増し(時間帯で変動)
  • チャンギ国際空港からシティへ向かう際の特別加算:S$3.0-5.0(時間帯で変動)
  • 市内中心部特別通行料:S$0.50-4.50(概算、時間帯により変動)
  • 電話予約:S$2.50(平常時)、S$3.50(ピークアワー)

鉄道[編集]

マレー鉄道
シンガポール国内で旅客扱い駅は、ウッドランズ・トレイン・チェックポイントしかなく、隣駅はジョホール海峡土手道ジョホール・シンガポール・コーズウェイ)で越えたマレーシアJBセントラル駅である。かつては、これより先に、列車のすれ違いが可能なブキッ・ティマ駅信号場扱い)と、終着駅のタンジョン・パガー駅があったが、2011年6月30日をもって、シンガポール領内の大半の路線が廃止された。
MRT地下鉄高架鉄道)
3路線(厳密には4路線: EW line Joo Koon-Pasir Ris間、支線 Changi airport-Tanah Merah間、NSLine Jurong East-Marina Bay間、NE Line Harbour Front-Punggol間)ある。乗車券は非接触型ICカードとなっており、下車駅の自動改札で回収されない。このため、初回乗車券購入の際に表示された運賃にはS$0.1のデポジット料金が含まれており、最大6回まで繰り返し使用することができる(デポジットは、一定回数以上乗車すると、乗車券購入時の運賃と相殺)。

船舶[編集]

セントーサ島を背景としたシンガポール港。コンテナ貨物取扱量で同港は上海に次ぐ世界第2位である[24]

航空[編集]

国民[編集]

春節のチャイナタウン
シンガポールのスルタンモスク
タミル人によって執り行われるヒンドゥー教の祭り、タイプーサム

住民は、華人(中華系)が76.7%、マレー系が14%、インド系(印僑)が7.9%、その他が1.4%となっている。華人、マレー系、インド系からなる複合民族国家のため、公共メディア文化一般に3系統の文化が共存するが、共生しながらもそれぞれ異なるコミュニティーを形成している。

シンガポールは、世界でも少子化が進んでいる国の一つであり、政府は労働力確保のため、移民を推進している。しかし、国民からの反発は根強く、一党独裁であるシンガポールでは異例の抗議集会が開かれる騒ぎとなっている[25]

言語[編集]

シンガポール人の第一言語[26]
言語 第一言語の割合
中国語
  
49.9%
英語
  
32.3%
マレー語
  
12.2%
タミル語
  
3.3%

公用語英語マレー語華語(標準中国語マンダリン)、タミル語(インド系に母語とする者が多い)である。これらの言語は平等に扱われ、学校教育でも、各民族語が英語とともに必須科目として教えられている。シングリッシュシンダリン(シンガポール式華語)など、それぞれの言語で、独特の発音や他言語の語彙・文法の混用などが見られる。

シンガポール・チャンギ国際空港。案内板は英語の表記である。

華人の間では、閩南語広東語潮州語客家語など中国語の各方言も母語としている人がいる。中国語は簡体字で表記されるが、繁体字の使用も見られる。簡体字の導入当初は、シンガポール特有の字体も見られたが、1976年以降中国大陸と同じ字体が実施されている(詳細はシンガポールにおける漢字参照)。1979年から華語普及運動(講華語運動Speak Mandarin Campaign)が始まり、これ以降に育った若い華人には祖父母世代とのコミュニケーションに若干の困難を伴うことがある。シンガポール統計局によると、5歳以上の華人が家庭で最もよく使う言語として華語を挙げた割合は1990年には30.1%であったが、2000年には45.1%、2010年には47.7%に上った。中国語と英語を公用語とする点で共通する香港とは異なりシンガポール華人の名前は、日本語のマスメディアでは通常英文表記から音訳された片仮名で表記される。氏名の英文表記は必ずしも華語の発音によるものとは限らず、それぞれの祖先の出身地での発音が基になっていることが多い(「」を「Chen」ではなく「Tan」と表記するなど)。

マレー語が憲法上国語とされているが、儀礼的なもので、シンガポールがかつてマレーシア連邦の一員だったことの名残でもある。公式の場でもマレー語はほとんど用いられず、ビジネス行政などでは英語が広く使われ、公共の場の表記や放送も主に英語が使用されている。空港や駅などの案内板、地下鉄の車内放送は英語をメインとし、場所により中国語、マレー語、タミル語が併用されている。日本人観光客の多い場所では案内板に日本語が併記されている場合もある。華人やインド系でも英語を母語とする者(英語系華人など)がおり、教育でも初等教育から各民族語以外は英語中心に行われている(大学教育はほぼ英語のみ)。若い世代は大多数がバイリンガルあるいはトライリンガルであるが、古い世代では中国語などの民族語しか話さない者も多い。政府発行の公文書は基本的に英語だが、国語はマレー語、国歌もマレー語である。英語を表記する際には、イギリスの植民地であったことから、colourや、centreなど、イギリス英語が用いられる場合が多い。しかし高等教育を受けていても英語を流暢に話せる人は少なく、独特の英語(シングリッシュ)を話す。2000年以降、これが問題として取り上げられ、論争が行われている。


シングリッシュ[編集]

シンガポールで話される英語は独特の発音や用語法があり、シングリッシュ(Singlish)と呼ばれる。マレー語、標準中国語閩南語が混ざった英語であり、ピジン言語の一種とされる。発音の面から見ると、シングリッシュにおいて、「r」を「l」として発音することが多く、例えば「very」「already」がそれぞれ「vely」と「oleddy」になる。英語にない語彙もある[※ 3]。語彙のみならず、他言語の文法もそのまま英語に編入され、独特のシンガポール英語ができている[※ 4]

政府はシングリッシュに肯定的ではなく、正しい英語を話すことを国民に求めている。大学には、シングリッシュ矯正講座もある。2000年4月「正しい英語を話す運動 (Speak Good English Movement)」を開始した。

宗教[編集]

シンガポールの宗教
宗教 割合
仏教
  
33%
キリスト教
  
18%
無宗教
  
17%
イスラム教
  
15%
道教
  
11%
ヒンドゥー教
  
5.1%
その他
  
0.9%

主な宗教は、仏教道教イスラム教キリスト教ヒンドゥー教などである。

  • 仏教は主に華僑系により、中国浄土教系が信仰され、全人口の32.5%を占める。華僑系は、道教の信仰者も多い(約8%)。
  • イスラム教は、主にマレー系住民(中華系・インド系も少なくない)により信仰され、全人口の約14%の信者を有する。
  • ヒンドゥー教は、主にタミル系住民により信仰されている(約4%)。
  • 民族にかかわらずキリスト教が広く信仰されており、全人口の15%程度の信者を有し、カトリックプロテスタントが1:2の割合となっている。

保健[編集]

世界でも最高水準といわれる医療制度を誇り、世界各国から医療観光者が訪れる。ユニバーサルヘルスケアが達成されており、公的医療保険は賦課方式ではなく個人別の積立方式であり、#中央積立基金がMedisaveとして運営している。シンガポールの医療制度の効率性は、2000年のWHO調査にて世界6位と評された。

政府が管掌する公的病院と自由診療の民間病院が存在するが、公的病院は政府により、誰もが安心して受診できるような安価な診療費を設定することが目標とされている。サービスの質を落とさぬよう、病院の運営組織は地域別に2分割され、競争原理が働くよう考慮されている。同一内容の診療でも、永住権を持たない滞在者には高めの費用が設定されている。

罰金の国[編集]

トイレの水流し忘れや、紙屑一片のポイ捨てにも罰金が科せられるような公衆政策は、ときに「ファインアンドファイン」「ファインシティ」「Singapore is fine country」とも揶揄される。罰金(英語:Fine)と綺麗(同:Fine)を意味する。又、国内でのガムの販売はポイ捨てする人がいる事から禁止されている

文化[編集]

食文化[編集]

食生活外食中心であり、シンガポール人が自炊をする事はあまり無い。以前から商業都市であり、男女関係無く毎日仕事に明け暮れるシンガポール人が多いため、自然と時間のかかる自炊よりも外食で済ますことが好まれるようになったからである。

外食文化が非常に発達しており、多数のフードコートや、「ホーカーズ」と呼ばれる、大衆向け外食広場が存在している。一部の観光客向けホーカーズを除けばフードコートやホーカーズで提供される食事の値段は手ごろで、1食分の値段が3~5S$程度で済むメニューが多い。

シンガポール料理[編集]

混合文化圏らしく、潮州福建を起源とする華人料理、南インド系の料理、マレー系の料理に大別される。以下に代表的なものを挙げる。

肉骨茶(バクテー)

骨付きばら肉等をニンニクや漢方系ハーブで煮込んだスープ

海南鶏飯(ハイナンチーファン)

海南風チキンライス(現地では、単にチキンライスという)としても有名な料理。鶏のスープでゆでた米飯に蒸し鶏又は茹で鶏を添えるもの。タイ料理のカオマンガイ等と同系。

フィッシュヘッドカレー

大型の魚の頭部を煮込んで作ったカレー。解体後の余り物を用いたのが起源。

娯楽[編集]

英語と各種中国語マレー語という東南アジアの主要言語を揃って使用することのアドバンテージを生かし、東南アジアの主な情報発信地の一つとしてポピュラー音楽ファッションなどで存在感を見せている。

土地が狭いことや、政府の規制が厳しいためもあり、国内に娯楽施設は少なく、若い世代は映画クラブビリヤード、スヌーカー、カラオケに興じることが多いようだ。特にビリヤード場は都市部のそこかしこで見かけることができる。最近ではインターネットカフェが増加している。

中東部のゲイラン地区には国公認の売春地区がある。トランジット(飛行機乗り換え)で立ち寄る西洋人(主にアメリカ系)が中国本土やロシア東部の女性目的に立ち寄ったり、日本人が顧客の接待で立ち寄ったりするが、基本的にはローカルのシンガポール人が一番多い。トップレスダンスショーを披露するパリキャバレー「クレージーホース」を政府当局が誘致したが、客足が伸びず、開業からわずか1年あまりで閉店される事となった[2]

結婚[編集]

中国文化圏であることから、結婚の際は夫婦別姓である。

スポーツ[編集]

国内では比較的サッカーバスケットボールが人気である。

サッカー[編集]

シンガポールにはSリーグと呼ばれるプロサッカーリーグがあり、日本からはアルビレックス新潟・シンガポールが参戦している。

祝祭日[編集]

日付 日本語表記 英語 中国語 マレー語 タミル語 備考
1月1日 正月 New Year's Day 元旦 Tahun Baru புத்தாண்டு  
1月10日 ハリ・ラヤ・ハジ Hari Raya Haji 哈芝节 Hari Raya Haji ஹஜ்ஜிப் பெருநாள் 移動祝祭日(イスラム暦
1月29日-1月30日 春節 Chinese New Year 春节 Tahun Baru Cina சீனப் புத்தாண்டு 移動祝祭日(太陰暦
4月14日 聖金曜日・受難日 Good Friday 受难节 Jumat Agung   移動祝祭日(教会暦
5月1日 労働者の日・メーデー Labour Day/May day 劳动节 Hari Buruh    
5月12日 ウェーサク祭 Vesak Day 卫塞节 Hari Vesak விசாக தினம் 移動祝祭日(仏教の暦)
8月9日 独立記念日 National Day 国庆日 Hari Kebangsaan தேசிய தினம்  
10月21日 ディーパバリ Deepavali 屠妖节 Deepavali தீபாவளித் திருநாள் 移動祝祭日
10月24日 ハリ・ラヤ・プアサ Hari Raya Puasa 开斋节 Hari Raya Puasa நோன்புப் பெருநாள் 移動祝祭日(イスラム暦)
12月25日 クリスマス Christmas 圣诞节 Krismas கிறிஸ்துமஸ் பண்டிகை  
12月31日 ハリ・ラヤ・ハジ Hari Raya Haji 哈芝节 Hari Raya Haji ஹஜ்ஜிப் பெருநாள 移動祝祭日(イスラム暦)

日曜日が祝日の場合は月曜日に振り替えられる。移動祝祭日については2006年の日付である。

通信とメディア[編集]

性的表現に対する規制[編集]

性的表現に関しては上記を除いては全体的に厳しく、例えば雑誌ヌードグラビア掲載は厳しく規制されている。そのため、日本のグラビア付週刊誌などは、ヌード写真がある場合はそれを切り取った上で販売されている。

報道規制[編集]

人民行動党による独裁体制の弊害の一つとして、各種マスコミに対する報道規制がある。一例として、非政府組織(NGO)「国境なき記者団」が毎年実施している報道の自由度調査の結果、シンガポールは毎年きわめて低い評価を受けている。

  • 2002年 (調査対象外)
  • 2003年 166の国・地域で144位
  • 2004年 167の国・地域で147位
  • 2005年 167の国・地域で140位
  • 2006年 168の国・地域で146位
  • 2007年 169の国・地域で141位
  • 2008年 173の国・地域で144位
  • 2009年 175の国・地域で133位
  • 2010年 178の国・地域で136位

実際、過去に政府に対する批判的な報道を行った記者が投獄された他、同じく批判的な報道を行った外国人記者が国外追放になるなど、自称「先進国」らしからぬ前時代的な報道規制が内外から大きな批判を浴びている。標準中国語マンダリン)以外の中国語の方言をメディアに載せることは基本的に禁じられている。そもそも、リー・シェンロン首相の妻が社長を務める政府保有投資会社テマセク・ホールディングスが、地上波報道局Channel News Asiaなどを保有するメディアコープの100%株主であることなどからも、政府に対して批判的な報道は規制されていると言える。

2013年6月には、インターネットのニュースサイトに対する免許制を導入する。この免許制については、シンガポール国民の間で、政府による検閲だと反発する動きがあり、デモなどが行われている[27]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ a b アメリカ英語発音:[ˈsɪŋəˌpɔr] スィンガポア
  2. ^ a b イギリス英語発音:[sɪŋəˈpɔː] スィンガポー
  3. ^ si beh=福建語で「非常に」、lobang=マレー語で「穴」を意味する。しかし、シングリッシュではlobangとは「何か良いものを紹介して欲しい」を意味する。
  4. ^ 例えば、文の後に「lah」「leh」「mah」をつけたり、動詞の時制を変換しなかったり、be動詞を省略したりする。ほかに、Yar?=Yes.、No lah=No.、Think what?=What do you think?.、OK lah =OK.、You like that think meh? =Do you think like that?、Haiya, Never mind one lah. = It's okay, don't worry.、Can or not? =Can you do it?など。

出典[編集]

  1. ^ a b c d IMF Data and Statistics 2009年4月27日閲覧([1]
  2. ^ “マーライオンの目 煙霧にかすむ街”. 産経新聞. (2013年6月20日). http://sankei.jp.msn.com/world/news/130620/asi13062003330002-n1.htm 2013年6月20日閲覧。 
  3. ^ Weather Statistics”. National Environment Agency. 2010年11月24日閲覧。
  4. ^ Climatological Normals of Singapore”. Hong Kong Observatory. 2010年5月12日閲覧。
  5. ^ 田村慶子「選挙制度」/田村慶子『シンガポールを知るための60章』明石書店 2001年 237-238ページ
  6. ^ 『シンガポールから、羽田にただいま!』朝日新聞 2010年11月2日付
  7. ^ 対外経済政策総合サイト シンガポール
  8. ^ 田村慶子「人民行動党」/田村慶子『シンガポールを知るための60章』明石書店 2001年 235ページ
  9. ^ 山本隆史 シンガポールにおける下からの民主化の可能性 (PDF)
  10. ^ 栗田哲郎「アジアにおける外国仲裁判断の承認・執行に関する調査研究」
  11. ^ a b 平成25年防衛白書 第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 第5節 東南アジア
  12. ^ 「『星光』重要性不如以往」『自由時報』台湾2005年3月10日
  13. ^ 江雨航「李顯龍訪問台灣(下):星建構新戰略思維回應中國崛起」『亞洲時報在線中文版』2004年7月27日
  14. ^ 「敦邦計劃 動台菲星互訪 漢光演習元首後撤境外作戰?」(中国事務論壇)
  15. ^ 2014 Global Cities Index and Emerging Cities Outlook (PDF) (2014年4月公表)
  16. ^ IMFの統計
  17. ^ 内閣府による県民経済計算 (PDF)
  18. ^ 世界経済フォーラム 国際競争力レポート
  19. ^ BCG Global Wealth 2012
  20. ^ Key Household Income Trends, 2013 DEPARTMENT OF STATISTICS SINGAPORE 2014年7月7日閲覧。
  21. ^ 都民のくらしむき(東京都生計分析調査報告)東京都の統計 2014年7月7日閲覧。
  22. ^ Xinhua-Dow Jones International Financial Centers Development Index (2013) (PDF) (2013年9月公表)
  23. ^ MasterCard Global Destination Cities Index 2012 (PDF)
  24. ^ シンガポール、コンテナ取扱量で上海に抜かれ2位
  25. ^ “シンガポール政府の移民増に抗議集会”. NHK. (2013年2月17日). http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130217/k10015572141000.html 2013年2月17日閲覧。 
  26. ^ Census of Population 2010” (2010年). 2011年2月19日閲覧。
  27. ^ “ニュースサイト免許制度に反対デモ、シンガポール”. TBS. (2013年6月9日). http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye5353121.html 2013年6月9日閲覧。 

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]