新興工業経済地域

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新興工業経済地域(しんこうこうぎょうけいざいちいき、英語: Newly industrialized country、略称: NIC)とは、政治学者及び経済学者により世界の複数の国に適用される社会経済学上の分類である。

NICsは、マクロ経済上、当該国の経済が先進国の段階には達していないが、他の開発途上国を凌ぐ国である。NICsのもう1つの特性は、通常は輸出志向型の当該国の急速な経済成長である。初期又は継続的な工業化は、NICの重要な指標である。多くのNICsにおいて、製造業の成長に伴う多数の雇用創出により、主として地方又は農村部から都市部への人口流入に伴って社会的な変動が生じる。

NICsは通常、以下の共通する特徴を有する。

  • 強力な政治的指導者
  • 農業経済から、特に製造部門における工業経済への転換
  • 世界の他国との自由貿易が認められる次第に開放的な市場経済
  • 複数の大陸で活動する多国籍企業
  • 外国からの強固な資本投資
  • 当該国の勢力範囲における政治的指導力
  • 都心部及び人口の急速な成長

歴史[編集]

新興工業経済地域という言葉は、香港シンガポール大韓民国台湾アジア四小龍が、1960年代以後の群を抜いて急速な工業成長で1970年代及び1980年代に世界的な重要性を増し、前記の全4経済地域が先進国及び高所得国になって以後、NICsとして1970年頃に使われ始めた。[1]前記の経済地域及び現在NICsと考えられる国との間には、明確な違いが存在する。特に、開かれた政治過程、国民一人当たりのGNI、好調な輸出志向型の経済政策の組み合わせは、多くの先進国の地位に達したのみならず、上回ったことを示している。

前記の全4経済地域は、世界銀行により高所得国に、国際通貨基金 (IMF) 及び米国の中央情報局により先進国に各々分類されている。前記の全経済地域は、西欧諸国のように、国連により人間開発指数が「非常に高い」と考えられている。

1988年のトロント ・ サミットにおいて、香港及び台湾を独立した「国家」と呼ぶのは不適切であるという中華人民共和国に対する政治的配慮が表明され、Newly Industrializing Economies (NIES) という用語が使用されるようになった。

現在のNICs[編集]

下の表は、様々な著者及び専門家により常にNICsと考えられる国を示している。[2][3][4][5]トルコ及び南アフリカ共和国CIAにより先進国に分類される。[6]トルコは1961年のOECD原加盟国であり、メキシコは1994年に同機構に加盟した。G8+5は、G8参加国に加え、中華人民共和国インドメキシコ南アフリカ共和国ブラジルで構成される。

注釈: 緑色のセルは各指標における高位又は最高位を示し、黄色のセルは低位又は最低位を示す。

地域 国名 GDP (PPP)
(国際ドル、2013年IMF)[7]
一人当りGDP (PPP)
(国際ドル、2013年IMF)[8]
所得不平等 (GINI) 2008-09年[9][10] 人間開発指数
(HDI、2014年)[11]
GDP (実質) 成長率
2013年時点
出典
アフリカ 南アフリカ共和国の旗 南アフリカ 662.6 12,507 63.1 0.658 (中位) 2.5 [3][4][5]
北アメリカ メキシコの旗 メキシコ 2,058.9 17,390 48.3 0.756 (高位) 3.9 [2][3][4][5]
南アメリカ ブラジルの旗 ブラジル 3,012.9 14,987 54.7 0.744 (高位) 0.9 [2][3][4][5]
アジア 中華人民共和国の旗 中国 16,149.1 11,868 45.3 0.719 (高位) 7.8 [3][4][5]
インドの旗 インド 6,776.0 5,450 32.5 0.586 (中位) 6.5 [3][4][5]
インドネシアの旗 インドネシア 2,389.0 9,635 36.8 0.684 (中位) 6.2 [3][4][5]
マレーシアの旗 マレーシア 693.6 23,160 46.2 0.773 (高位) 5.6 [3][4][5]
フィリピンの旗 フィリピン 643.1 6,597 43 0.660 (中位) 7.2 [2][3][4][5]
タイ王国の旗 タイ 964.5 14,136 40 0.722 (高位) 6.4 [2][3][4][5]
ヨーロッパ トルコの旗 トルコ[注釈 1] 1,443.5 18,874 39 0.759 (高位) 4.0 [3][4][5]

ゴールドマン・サックスの新興経済国の報告によれば、2050年までに世界最大の経済国は、中華人民共和国、アメリカ合衆国、インド、ブラジル、メキシコになるとしている。[12]

IMFにより中国の一人当たりのGDPは中高位国に分類されているが、OECDの一人当りのGDPの数値に関連し、2014年6月時点で12億人を超す中国及びインドの膨大な人口により、例えいずれかの国が全体のGDPにおいてアメリカを上回ったとしても、国民一人当りの所得は低水準で推移し続ける。購買力平価による国民一人当りのGDPを算出する際には、各新興工業経済地域の低水準の生活費を考慮する。

ブラジル、中国、インド、メキシコ、南アフリカ共和国は、G8+5において、今日の世界市場及び環境影響における各国の経済的重要性のため、毎年G8参加国と金融及び気候変動に関して議論している。[13]G8+5は、エジプト及び前記の5箇国の追加によりG14に拡大することが期待されている。[14]

他のNICs[編集]

著者によっては、各々異なる経済分析の手法に基づき、いかなる国がNICsかを定める。他の著者がNICとは考えていない国をNICとみなす場合もある。例えば、アルゼンチンチリエジプトスリランカ[15]ロシア[2]がこの事例に該当する。

注釈[編集]

  1. ^ Turkey is physiographically considered a transcontinental country—mostly in Western Asia, partly in Eastern Europe. However, in terms of geopolitical regions, it is considered European.

脚注[編集]

  1. ^ Japan and the Newly Industrialized Economies
  2. ^ a b c d e f Paweł Bożyk (2006). “Newly Industrialized Countries”. Globalization and the Transformation of Foreign Economic Policy. Ashgate Publishing, Ltd. p. 164. ISBN 0-7546-4638-6. http://books.google.com/books?id=iuHsIuez5qoC. 
  3. ^ a b c d e f g h i j k Mauro F. Guillén (2003). “Multinationals, Ideology, and Organized Labor”. The Limits of Convergence. Princeton University Press. pp. 126 (Table 5.1). ISBN 0-691-11633-4. 
  4. ^ a b c d e f g h i j k David Waugh (2000). “Manufacturing industries (chapter 19), World development (chapter 22)”. Geography, An Integrated Approach (3rd ed.). Nelson Thornes Ltd.. pp. 563, 576–579, 633, and 640. ISBN 0-17-444706-X. 
  5. ^ a b c d e f g h i j k N. Gregory Mankiw (2007). Principles of Economics (4th ed.). ISBN 0-324-22472-9. 
  6. ^ CIA World Factbook
  7. ^ World Economic Outlook, October 2014, International Monetary Fund. Accessed on 23 November 2014.
  8. ^ Data refer mostly to the year 2013. World Economic Outlook, October 2014, International Monetary Fund. Accessed on 23 November 2014.
  9. ^ GINI Index Data Table”. World Bank. 2012年4月4日閲覧。
  10. ^ Note: The higher the figure, the higher the inequality.
  11. ^ United Nations report [1]
  12. ^ The N-11: More Than an Acronym - Goldman Sachs
  13. ^ G8 Structure and activities
  14. ^ "France invites Egypt to join G14"[リンク切れ]
  15. ^ John Broman (1996). Popular Development: Rethinking the Theory and Practice of Development. Wiley-Blackwell. p. 81. ISBN 1-557-86316-4. 

関連項目[編集]

グルーピング:

外部リンク[編集]