白人至上主義

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白人がそれ以外の人種(インドなどの肌の色が濃いコーカソイドを含む「有色人種」)より優れている、もしくはコーカソイドが他の人種より優れているという主張に集約される。

歴史[編集]

黎明期の白人主義者として知られるゴビノー伯爵。一方で彼は奴隷との混血でもあったが、自身は認めなかった。
南軍司令官にして元奴隷商人という肩書きを持つネイサン・フォレスト将軍。初期のKKKを率いた。

人種差別は古来から人類社会に存在する差別意識であるが、その中でも白人至上主義は代表例として想起され易い。


当時はチャールズ・ダーウィンらの研究によって生物学(ひいては人種研究)が飛躍的な進化を遂げた時期ではあったが、その研究は現在に比べれば欠陥が多く、導き出された答えにも偏りが存在していた。研究を担う学者達がヨーロッパ人で占められていたのも、人種研究に関する公平さを欠く遠因となった。実際、先述した近代生物学の権威たるダーウィンの従兄弟は、白人至上主義の影響を多分に受け、今日では疑似科学・人種差別思想と考えられている優生学を創始したフランシス・ゴルトンであるが、ダーウィンはゴルトンの優生学に対して一定の評価を与えている。これはゴルトンの優生学のような人種思想が当時の欧州人にとって突飛な意見ではなく、学術的な世界ですら一般的な意見として罷り通っていたことを示している。古典的な段階における植民地主義や帝国主義の場合、この人種差別的なイデオロギーは露骨で素朴な型で広まっていた。

現代に入って植民地諸国の独立が進み、更なる進歩を遂げた生物学による人種研究が進められても、白人至上主義はヨーロッパ(あるいはその流れを汲む国々)の人々の意識と無関係になったとは言い難い。各国憲法、国連憲章などにおける人種差別の廃止、人種差別撤廃条約や公民権運動などによる働きかけにも拘らず、合衆国の法学が白人性の概念を取り上げて問題化しているように、そのイデオロギーは存続している。

定義[編集]

先に述べた通り、「白人」が他の人種に優越すると主張する立場ではあるが、肝心の「白人」の定義は論者ごとに異なる曖昧さを持つ。

元より三大人種という概念自体が差別思想や宗教的価値観・政治的主張などから作為的に作られた経緯を持つため、必ずしも科学的な純生物学的検証による線引きが行われているわけではない。白人至上主義が唱えられた国の状況によって「人種の線引き」や「優等さの順位」は容易に変動するので、明確な定義を客観的に行うのは難しい。たとえばヨーロッパのユダヤ人は外見上白人であるが、白人至上主義の「白人」にユダヤ人が入るかどうかはその国の反ユダヤ感情の度合いによって変わってくる。

「白人至上主義」の類例[編集]

アメリカ[編集]

世界で最も有名な白人主義者のインターネット会議室「Stormfront White Nationalist Communityストローム・ホワイト・ナショナリスト・コミュニティ」に書き込むKKK幹部デヴィッド・デューク英語版
ナショナル・アライアンスの指導者だったウィリアム・L・ピアース博士。
クー・クラックス・クラン (KKK)
クー・クラックス・クランは、アメリカにおける白人主義の代名詞としてしばしば紹介される著名な団体。元々は南北戦争後に旧南軍兵士らが立ち上げた交遊会であったが、次第に南部の反黒人グループを統合する存在として台頭した。政府により非合法化されたことで一度解体されたが、後にキリスト教原理主義と結びついて(そのため、当初は無かった「反ユダヤ主義」などの宗教的教義が加えられた)、「第2のKKK」として再興された。アメリカ中南部を中心に活動し、最盛期は構成員が知事に選出されるなど権勢を極めた。しかし性愛問題など人種主義から離れた部分への論難やリーダーのスキャンダル事件によって衰退し、現在は無数の小規模組織に分裂している。ストームフロント管理人のドン・ブラック英語版はKKKと太いパイプを持っており、ネット上の白人主義でもKKKが影響力を維持している。
アメリカ・ナチ党[1]
アメリカ・ナチ党は、その名の通り国家社会主義ドイツ労働者党(NSDAP、ナチ党)の後継を自負するネオナチ系団体で、退役軍人のジョージ・ロックウェルによって結成された。ナチスのアーリア人主義(ヒトラーは「アーリア人」を「白人」と同意義の用語として用いていた)と反共主義を掲げ、また反ユダヤ主義の観点から「第2のKKK」を離脱した者達も多く含まれていた。とはいえヨーロッパのネオナチ運動が必ずしもナチズムと同一ではない様に、彼らもまた独特の政治的主張を行っていた。指導者ロックウェルが暗殺された後には党の名を国家社会主義白人党と改め存続している。この運動は後述するナショナル・アライアンスへと繋がり、アメリカの白人主義者へ多大な影響を与え続けていく。
ナショナル・アライアンス[2]
ナショナル・アライアンスは、かつてアメリカ・ナチ党の幹部であった物理学者ウィリアム・ルーサー・ピアースによって指導された運動。思想自体は概ねアメリカ・ナチ党と変わらないが、ピアースの元でアメリカ最大のネオナチ組織の1つにまで拡大した。またピアースがアンドリュー・マクドナルドのペンネームで発表した小説『ターナー日記』は現在でも白人至上主義者のバイブルの1つと見なされている。『ターナー日記』は近未来の米国における人種間闘争を題材としており、その中で「民族の裏切り者」に対する激しい暴力が描かれている。
ホワイト・アーリア・レジスタンス[3]
ホワイト・アーリア・レジスタンスは、アメリカ・ナチ党とKKK双方の流れを汲む団体。その成立過程から極右的な主張になりがちな白人主義団体としては珍しく極左的な革命理論を説き、「革命による連邦主義の打倒と、それによる人種別国家の樹立」をスローガンにしている。彼らはアメリカにおける人種対立の遠因は「他なる存在との共生」にあると考え、その象徴たる連邦主義と中央政府こそが真の敵であると述べている。故に彼らは他人種の根絶ではなく住み分けを主張し、同じく住み分けを望んで連邦主義と対立するのならたとえ黒人主義団体(ブラックパンサーなど)であっても共闘する。
ミリシア(民兵団)
アメリカでは独立戦争以来、市民が独自に自衛団的な民兵組織を形成している。その内容や行動理念は様々だが、その中にはネオナチやKKKなどの白人至上主義・キリスト原理主義の影響を受けたグループも存在している。

オーストラリア[編集]

白豪主義と呼ばれる強烈な白人至上主義で知られ、過去には先住民アボリジニに対する虐殺や、第二次世界大戦時における日本軍兵士捕虜に対する虐待やアメリカの黒人部隊の上陸の拒否などで知られる。

先住民を虐殺、放逐した結果誕生した白人国家であることから、近年にいたっても白人至上主義的な言動が多い。具体例として2005年シドニー郊外のクロナラ・ビーチに5000人を超える白人が集まり、暴徒化した白人集団による中東系移民への無差別襲撃が発生した(クロナラ暴動)他、アジア移民を拒否し白豪主義に戻ろうとする極右政党「ONE NATION」の台頭や、日本ノルウェーによる捕鯨活動に対する感情的な批判などが挙げられる。

2008年に、オーストラリアの大学がオーストラリア人1万2500人を対象に人種差別について10年かけて調査した結果を発表した[4]。それによると、回答者の46%は「特定の民族はオーストラリアにふさわしくない」と回答。特にイスラム教徒黒人アボリジニに対する差別意識が根強いとされる。また、およそ10%が「異民族間結婚は認められず」、同じく10%が「自分たちよりも劣る民族がいる」と回答しており、未だに白人至上主義的な人種差別意識が残っていることが伺える。

その他[編集]

蒙古症

先天性疾患の一種であるダウン症はかつて蒙古症などと呼ばれていた。ダウン症の人々には「まぶたの肉が厚く目が小さい、鼻が低い、小柄、髪が直毛」などの外形的特徴があることから「高等な白人の中に劣った東洋人の子供が生まれてきた」という誤解が生まれ、「東洋人」を指す蒙古症という名称が発生したのである。

脚注[編集]

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  1. ^ : American Nazi Party
  2. ^ : National Alliance
  3. ^ : White Aryan Resistance
  4. ^ 「10人に1人は人種至上主義者」豪の大学が調査” (日本語). MSN産経ニュース. 2009年5月25日閲覧。

関連項目[編集]