精神病

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Psychosis
分類及び外部参照情報
ICD-10 F20- F29[1]
ICD-9 290-299
OMIM 603342 608923 603175 192430
MedlinePlus 001553
プロジェクト:病気Portal:医学と医療
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精神病(せいしんびょう、psychosis)とは、妄想や幻覚を特徴とした症状である。こうした症状は、統合失調症の症状であったり、また他が原因となるものは精神病性障害(psychotic disorder)とも呼ばれる。統合失調症を指す場合もある。

広く精神の病的な状態を表す用語として、精神疾患ではなくこの精神病の語が使われることがある。

様々な精神障害の総称であり、一般的には神経症と対比し、より重い症状を意味する[2]。主に内因性の精神障害を指し、統合失調症躁うつ病などが含まれる[3]

定義[編集]

下記のような定義がある。

口語的な精神的な病気全般[編集]

精神的な病気全般を表すmental diseaseやmental illnessの訳であり、本来は精神疾患のことである。

精神病理学における精神的な病気全般[編集]

同様に、精神的な病気を表す精神病理学(psychopathylogy)におけるもの。

エミール・クレペリンは、精神病を、統合失調症双極性障害躁うつ病)・てんかん等の「内因性の精神疾患」と定義し、この3つを三大精神病と呼んだ。カール・ヤスパースもこの3つを「大精神病」と呼び、「精神障害を伴う既知の身体疾患」「精神病質」とともに精神疾患のカテゴリーとした。

クルト・シュナイダーは、精神疾患一般を精神病と呼んだ。

現行の診断基準における妄想や幻覚の症状[編集]

精神病の現在的な定義は、厳密には当人に現実検討ができない幻覚や妄想である[4]。もう少し広義には、当人が幻覚や妄想が存在していることを、いくらかは洞察している状態である[4]。アメリカでは過去にさらに広い定義で使用され、統合失調症が過剰診断された[4]。世界保健機関のICD-10は、精神病あるいは精神病性の定義に触れ、妄想や幻覚のような症状であるとしている。

世界保健機関 (WHO)『疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版』(ICD-10)の第5章の「精神と行動の障害」には、F1x.5精神病性障害(Psychotic disorder)の診断コードが用意されている。

アメリカ精神医学会(APA)による『精神障害の診断と統計マニュアル』第4版 (DSM-IV) においては、妄想や幻覚のような精神病症状を持つ様々な障害が用意されている。

精神病と原因[編集]

精神病の原因には、内因・外因・心因がある。これらが複数重なって精神病が発症することもある。この3つに環境因も加えることがある。

診断には先に外因性を除外する必要があり、つまり医学的あるいは薬理学的に症状が生じていない場合に、心因性などとなる。

外因性精神病[編集]

DSM-IVでは、35歳すぎの発症は、外因性の可能性を気づかせるとし、非聴覚性の幻覚の9割が、物質誘発性か一般身体疾患によるものであるとしている。

外因性精神病は、原因が非心因性に認められる精神病である。日本では従来、外因性精神病は器質精神病(広義)と呼ばれ、次の4分類がなされてきた。

器質精神病(狭義)

中枢神経細胞自体の障害によるものである。

器質精神病(狭義)・症状精神病は、ICD-10ではF00~F09に、DSM-IV-TRでは「~による精神病性障害 (293.xx)」にそれぞれ該当する。
症状精神病
感染などの脳以外の身体疾患によって現れる。
てんかん
今日では精神病に含めない。ICD-10G-40, 41の神経疾患である。

物質誘発性精神病性障害[編集]

ICD-10では、「向精神薬の使用による精神と行動の障害」のF1x.5精神病性障害に、DSM-IV-TRでは、物質関連障害の物質誘発性精神病性障害にそれぞれ該当する。
原因となりやすい物質は、アルコールや、アンフェタミンのような覚醒剤、鎮静催眠剤のような医薬品である。中毒あるいは離脱に伴って短期的に生じる。

ICD-10では、向精神薬誘発性精神病の状態は、アンフェタミンやコカイン精神病の場合のように短期的なものであり、誤ってより深刻な統合失調症のような状態が診断されれば、悲惨な影響を与えると注意している。

DSM-IVでは、覚醒剤、大麻、アヘンの中毒あるいは、アルコール、鎮静催眠剤の離脱において、現実検討ができる、光、音、幻視は、物質誘発性精神病性障害ではない。中毒あるいは、離脱である。4週間以上にわたる場合は、別の原因を考慮せよとしている。

アルコールが直接原因ではなく、ニコチン酸チアミンの不足によって起こる。
幻覚・妄想を中心症状とした、統合失調症に似た精神病。断薬時に重篤な離脱症状は起こらないが、初回よりもはるかに少量・短期間の再摂取で、精神病症状が再燃する(感作)。
大麻乱用後に起こることがあるとされている仮説の精神病。大麻との因果関係を示すエビデンスはなく、疾患単位は確立されていない。
過感受性精神病は、抗精神病薬の多用によって精神病が起きやすくなった状態である。
  • 中毒精神病

厚生省保健医療局長通知「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」の「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準の説明」によると精神作用物質の摂取によって引き起こされる精神および行動の障害を指す。精神作用物質とは、有機溶剤などの産業化合物、アルコールなどの嗜好品麻薬覚醒剤コカイン向精神薬などの医薬品など。

心因を主とする精神病[編集]

心因性精神病は、ストレスなどの心的要因によって起こった、精神の強い反応である。反応精神病では、人格の解体・現実検討能力の著しい障害が見られる。ICD-10では、症状に応じて急性一過性精神病性障害 (F23) や感応性妄想性障害 (F24) などに含める。一ヶ月以内に症状が治まる場合、DSM-IV-TRでは短期精神病性障害に含めることになる。

内因を主とする精神病[編集]

内因性精神病は、原因が脳自体にあると思われるが、いまだに原因が明確には解明されていない精神病である。たとえば内因性精神病の代表である統合失調症は、先天的な脆弱性のあるところに環境的な要因が加わって発症するとされている。

内因性精神病と心因性精神病は、ICD-10では「統合失調症、統合失調症様障害と妄想性障害 (F20-F29)」に、DSM-IV-TRでは「統合失調症および他の精神病性障害」にそれぞれ含まれ、症状に応じて細分類がなされる。

脚注[編集]

  1. ^ icd10online
  2. ^ 伊藤正男; 井村裕夫; 高久史麿編 『医学書院医学大辞典』 (第2版) 医学書院2009年2月、1540頁。ISBN 978-4260005821http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=54705 
  3. ^ 大辞林第三版「精神病」、『コトバンク』、朝日新聞社2014年6月21日閲覧。
  4. ^ a b c アレン・フランセス 『精神疾患診断のエッセンス―DSM-5の上手な使い方』 金剛出版、2014年3月、122頁。ISBN 978-4772413527Essentials of Psychiatric Diagnosis, Revised Edition: Responding to the Challenge of DSM-5®, The Guilford Press, 2013.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]