尼崎事件

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尼崎事件(あまがさきじけん)[1][2][3][4][5]とは、25年以上にわたって[6]尼崎市を中心に兵庫県高知県[6][7]香川県滋賀県[8]岡山県[3]京都府[9]の5府県で、複数世帯の家族が長期間虐待、監禁され、複数名が殺害された連続殺人事件[6][10]

2011年11月に主犯が逮捕され、2012年10月に別件で逮捕されていた従犯が全面自供した事により、事件が発覚した。なお事件の主犯は事件発覚後に自殺している。

本項では、主犯の仮名を主犯X、被害者一家の仮名をそれぞれ居住していた地名に由来するイニシャルであるT一家、M一家とする。

概要[編集]

主犯一派とT一家、転落死男性一家等との相関図。もちろん他にもM一家など不明者がいる。

この事件の主犯は事件発覚時64歳の女(以下、主犯X)で、従犯とされる親族の在日韓国人[11]2012年当時38歳の男やその他数名の取り巻きを従えて、標的とした複数の家族を暴力的に支配して、家庭に居座る、裸で外を歩かせる、などあらゆる虐待を繰り返し、結果死亡した女性をドラム缶に詰める、などした[12]。主犯Xらによって暴力的・精神的に支配された被害者家族らは家ごと乗っ取られ、互いに殴打し合わされたり、監禁され暴行されたり、全財産を奪われたりしたが、主犯Xの手口は巧妙で、自ら手を出すことは控えめだった[13]

主犯Xらは、些細なことに難癖をつけては弱みを見せる相手を脅迫し、多数の取り巻きを引き連れて家庭に侵入し[14][15]、金品をむしり取ることを生業としており、夜の街で獲物を探し歩いていた[16]。主犯Xは普段から飲み仲間に、「交通事故に遭ったら金になる」など当たり屋の指導をするなどし[16]、うっかり隙を見せて食い物になってしまった家族らのその後は凄惨で、高松市のある家族(以下、T一家)は2003年5月頃、餓死寸前になり、服も着させて貰えず、父親が全裸で長女をおんぶして親族の元に「何か食べさせてほしい」と、助けを求めてきたこともあった[17]

またある時は夫婦揃って全裸で泣きながら親族に金を借りに来ることもあり[18]、やがては親族までもが呼び出され、長女が「お父さん、ごめんね」と泣きながら両親を顔が腫れるまで殴らせられている光景を目の当たりにし、「情けなくてつらくて、ノイローゼになるかと思った」とショックを受けた[19]

しかし、警察兵庫県警尼崎東署香川県警高松東署高松南署)は再三親族や、T一家の父親、親族など17人から被害相談や通報が36件もあったにもかかわらず、全く対応することはなく、「事件ではないので動けない」などと繰り返し[20][21][22]、2003年2月以降、T家の父親が主犯Xらから「家に火つけるぞ」と脅されたり、軟禁されたりしたなどとする相談を寄せた時も、2004年に娘らからの暴行に被害申告をした時も、被害届の受理さえ拒んでいた[23]。結果的に長年の間、被害者たちはなすすべもなく主犯Xらの暴力、虐待の前に見殺しにされ、2011年管轄外の大阪府警へ被害者女性が駆け込み、その連絡を受けた兵庫県警が捜査を行ったことで、ようやく事態が公になった。被害者たちは、何度も逃げたが、そのたびに連れ戻されていた[24]

また中には、保険金目的に万座毛から転落を強要されて殺された者もいるが[25]、この時も警察は現場の聞き込みや生命保険契約有無の確認さえ怠り、主犯X達の主張を受け入れ事故として処理していた[26][27][28]。また、兵庫県警は主犯X逮捕後も主犯X宅の現状維持さえ怠り、競売に出されるがままになっており、逮捕一年後、2012年10月になってようやく家宅捜索を行うが、既に一味残党に証拠隠滅のため、監禁小屋を撤去されてしまうなど捜査の遅れが目立った[29][30]。2012年11月7日、上述の主犯Xや、その内縁の夫など8人が再逮捕、または逮捕された[31]。2012年12月1日から、高松市にて行方不明者の一人である、かつて床下から遺体が発見された民家に住んでいた88歳の女性(T一家の祖母)の遺体の捜索が行われた。12月2日の捜索では倉庫の床下から多数のコンクリートの破片が見つかり、12月3日に遺体が発見された。女性は行方不明後、主犯Xらの住むマンションで死亡したとされ、警察は殺人容疑で捜査している。12月5日にも親族数人が殺人容疑で再逮捕された[32]

主犯の自殺[編集]

12月12日午前6時20分頃、兵庫県警本部の留置所にて、主犯Xが布団内で長袖のTシャツを首に巻き自殺を図っているのが見つかり、病院に搬送されたが死亡が確認された。主犯Xは10月以降、弁護団や留置所を巡回する警察官に「生きていても意味がない」「死にたい。どうすれば死ねるのか」など自殺をほのめかす発言を複数回にわたりしていたという[33][34]。逮捕後、主犯とされる容疑者が死亡したことにより、この事件の真相解明は極めて困難な状況になったと見られる[35][36][37]。この事件は、第46回衆議院議員総選挙や12月2日の笹子トンネル天井板落下事故、北朝鮮のミサイル打ち上げなどと重なったため、重大な事件であるにもかかわらず、あまり大きく報道されなかった。

残る親族の裁判[編集]

主犯Xは死亡によって不起訴処分となったが、逮捕された他数名の親族の捜査は続いており、裁判員裁判で審理されている。また、主犯Xらの住んでいたマンションから被害者の虐待の様子を映した画像が数百枚以上が押収されている[38]。兵庫県警は、2013年2月3日に遺体で発見された女性(T一家の長女、主犯Xの息子の妻の姉)の殺人容疑で、これまで別の男性の殺人・死体遺棄容疑で起訴されていた親族らを再逮捕した。2013年3月6日には、主犯Xの兄の交際相手(死亡時67歳)の女性の傷害致死及び監禁容疑で、同じ親族が再逮捕されたが、高血圧の持病があったことや監禁期間が短かったことなどから加害者の行為と死亡の因果関係を立証するのは困難として監禁罪でのみ起訴された。

手口[編集]

接点[編集]

上述のように主犯Xの手口は、被害者たちを次第に取り込んでいくことであり、まずはきっかけから(あるいは口実を作って)接点を持ち、弱みを握り、相手の些細な「落ち度」を咎めて10人近くの集団で家に押しかけ[14]、自宅に乗り込んで事実上占領し、職場にも押しかけて[39]、挙句に被害者たちを虐待して意のままにすることであった[13]

家宅占領後[編集]

そのうえで、主犯X自身は手を下さず、従犯とされる義理の従弟や、「金髪デブ軍団」と呼ばれる取り巻き達を使い、あるいは恐怖によって怯えさせ、家族同士を自分の指示通りに殴り合いさせるなどして、家族間の信頼関係を破壊し、暴力で支配を完成させていった[13][19]。また、子供の身の安全を理由(ネタ)にし脅し、その両親を服従させることもしばしばだった。 何年もの虐待の末に、その家庭の子供が恐怖と安全への願いから主犯Xに洗脳されてしまうケースもあった。T一家の娘は虐待された挙句に洗脳され自ら主犯Xの養女になることを願い、次第に主犯Xの命じる犯行の実行犯としての役割を演じるようになり、主犯Xの息子と結婚するに至った[19]

被害者の待遇[編集]

主犯Xは自宅(主犯Xの)近くのワンルームのアパートにある一家を丸ごと押し込んだりすることもあった[40]。主犯Xは集めた金で自身の分譲マンションに別ルームを購入し、そこにも他の被害者家族を押し込み、一部はベランダの犬小屋大の隔離小屋に起居させることもあった[41]。また、逃亡を防止するため、時に裸で暮らさせ、被害者の妻は猿轡をかませられ[42]、それを見た親族の女の口からはとても言えないほど、無残な姿で暮らしていた。ベランダのこの小屋は複数個あって、外から施錠できる仕組みになっており、そこに閉じ込められた被害者へは、主に脅迫された親族らから継続的にリンチが行われ、少なくとも四名が衰弱して死亡している[43]。またこの小屋を外から見られるのを防ぐため、ベランダの周囲には木製のフェンスが張り巡らされていた[41]。また虐待の方法も凄惨、多様で、ある男性は、両耳をつぶされ、両手足をバーナーで焼かれていた[44]。またある女性は耳が欠け、唇はえぐれて、発見時、放心状態であり[45]、殺された別の女性は形が分からないほどに殴られて顔が変形しており、後日リンチの最中と思われる「生きているか死んでいるか分からない」写真を見せられた父親は慟哭した[46][44]

被害者・その被害[編集]

主犯Xらの犯行によって、数世帯が壊滅に追い込まれ、一家は離散し、親族の多くが暴行・監禁を受け衰弱死した[47]。以下に紹介する主犯Xらの犯行の説明では、イニシャルが登場するが、前述の通りこれは被害者の居住していた地名から取った頭文字であり、実名とは関係がない。またここに紹介する以外にも、数軒の家族が崩壊している[48]。医師が病死と判断したため、警察が捜査していないものもある。

高松市のT一家[編集]

きっかけ[編集]

T一家は裕福で高松市で保険代理店を経営し、マイホームの他に田畑等を持ち、地元の住民の話では上昇気流に乗っており、幸せな家庭を営んでいた。家族構成は、夫婦、姉妹の4人家族で、長女は英国に語学留学の後、IT企業に就職、ウェブデザイナーになることを夢見ていた。また上司の言うところによると、会社では非常に優秀で、デザイナーのエースだった[49][50]。また次女は県内有数の進学校に通い、成績優秀で、運動神経も非常によく友達も多かった。

しかし、この事件の主犯X達と接点を持ってから、運命は暗転する。 事の始まりは、2003年2月、かつてT一家でも過ごしたことのある遠縁の親族Y(上述の従犯)を、主犯に執拗に頼まれて、「更生のため」として一時預かりを引き受けたことだった。従犯Yは素行は不良で、暴力をふるい、金銭を盗むこともあった。業を煮やしたT一家の夫は、従犯Yを主犯の元に返したが、それが主犯XがT一家に付け入るきっかけとなった。[51]

主犯達の乗り込み[編集]

主犯Xは従犯Yを追い出したことに「抗議」するため、2003年4月、10人ほどの暴力団風の若い衆らしき人物を引き連れ、Tの家に乗り込んできた[14][15]。あまりの剣幕と気勢、そして多少の弱みもあったため、T夫は話し合いのため、主犯達をとりあえず家の中にあげてしまったが、あっという間に主客転倒し、主犯XらはT一家に以後ずっと居座り続け、あらゆる暴行・狼藉をはたらき、T一家を完全に支配下に置いた。

T一家の家族の外部への逃走を防ぐため、住宅の扉には外側から暗証番号式の鍵で施錠された。食事は無論、大小便の回数まで制限され(排泄は1日に2回以下)、何をするにも主犯Xの許可が求められるようになった。やがて食べ物も水(水は一日500mlに制限)も満足に与えられず、夫は白昼、全裸で娘を背負って親族宅に食べ物を無心に行く姿さえ、目撃されている[52][53]。また主犯Xらは自らも暴力は振るったが、事件化を恐れ、なるべく家族達を脅して相互に争わせることに注力した[13]。結果的に精神的・肉体的に主犯らに隷属するようになり、理不尽な指示にも従わざるを得なくなった。T次女は、泣きながら「お父さんごめん」などと言い、顔が腫れ上がるまで実父を殴り続ける光景を目撃されている[19]。またある日、主犯XらはT夫婦に水をかける虐待を行い、別の親族らを呼び出しその様を目撃させた。親族らは、「情けなくてつらくて、ノイローゼになるかと思った」「あの当時は地獄だった」と振り返る[54][55]。時には、夫婦で共に全裸のまま親族宅まで金を借り行かせられることもあり[18]、ある日はT夫が殴られて形も留めぬほど、耳の外観が変わってしまった姿を見られており、あまりに沢山の血を流しながら歩いていた、と近隣の者が証言している。またある日はT妻が裸で正座させられているのを近隣住民が見かけており[56]、こうした手法で、主犯XらはT一家の全財産を搾り取り、T一家の稼業は廃業。さらに親族からも現金二千万円を巻き上げた。長女は後述する尼崎移転後は大阪営業所に転勤したが、ほどなく退社、次女も高校を退学した[49]

尼崎への連行[編集]

こうして、すっかり取るものを取りつくしてしまった主犯Xらは、Tの長女と次女を連れて尼崎に引き上げたが、T妻は、ショックと心労で一時和歌山まで逃亡する。程なくして高松の実家に戻ったところで、また暴行を受け、倒れて通行人に発見されるが、脳挫傷を負い入院、急性肺炎にかかり死亡する。同じく、T一家の妻方の祖母、叔父、叔母も相次いで主犯らに襲われ、祖母は監禁され、虐待死し、叔母も行方不明に、叔父は東京まで逃亡して病死している。また引き揚げる際、T長女は「新天地で心機一転、やり直すことにしたの」と同僚に説明し、事件のことは「聞かないで」と友人にさえ隠していた。やがて、彼女は主犯Xに命令されて、「上納するから」と友達からお金を借りて回るようになり、その後職場を退社[57]。主犯Xらと同居していた一味の男性をあてがわれて結婚、入籍、改姓するが、やがて主犯X・他の誘拐家族らから凄惨なリンチを受けるようになり、最後はベランダの犬小屋大の小屋に押し込められ、鍵を架けられて冬場でもそこで起居した[41]。冬場に水をかけられる光景も目撃されており、最後はリンチの末に屋外の小屋に繋がれて虐待死した[49][41]。T長女は顔面を数限りなく殴打され、また足で踏みつけられ、瞼には煙草を押し当てられ、死亡時には容貌は形が全く分からないほど変わり果て、写真を見せられたTは慟哭したという[58][44]

一方で、取り込まれてしまったT次女は主犯Xから好かれて、「跡取りにしたい」と言われるようになり、主犯Xの一人息子と結婚する。主犯Xの息子とT次女との間には、二人の子供が生まれている[19]。以後、T次女は主犯Xの犯行の先棒を担うようになり、2012年に窃盗罪で逮捕された。他方、高松のT夫も身の危険を感じて家を出て、友人宅に一年間引きこもり、自身の受けた被害を警察に打ち明け、捜査を願うも、どの警察署からも相手にされず、偽名を使い、主犯Xらの近所に潜伏した。また、主犯らに同行したT夫の兄も他の被害者らと同様に監禁され、殺害されて埋められており[21]、警察はその家族の捜索願を受理しながらも、捜査をしようとはしなかった[59]

主犯Xの逮捕後、主犯Xの息子とその妻となったT次女が逮捕後、主犯Xに「縁を切る」と供述している。主犯Xの息子とT次女は、尼崎市のマンションで主犯Xと同居。2人はもちろん子供も外出に許可が必要だった。 主犯Xと従犯が別の事件で逮捕された後、主犯Xの息子は2011年12月ごろから大阪府内で飲食店の経営を計画。2012年3月に開業した。周囲には「主犯が逮捕される前は自由なことができなかったが、ようやく働けるようになった」と意欲を見せていたという。また、妻のT次女も、逮捕される8月まで、生きがいを得たように飲食店を手伝っていたという[60]

M一家[編集]

きっかけ[編集]

M夫は大手電鉄会社に勤務しており、尼崎市内に二世帯住宅を構え、夫婦とその姉、母、子供2人の6人で幸せに暮らしていた。一味との接点は、2009年4月にT次女が引くベビーカーが電車のドアに挟まれたと、主犯Xがクレームをつけた事に始まった。クレーム係として応対に出たMだったが、オフィスに訪れた主犯Xは従犯Yを「元ヤクザ、怒ったら手がつけられない」と紹介して脅迫する一方、M夫の小さな長所を褒め、以後もしばしば訪れて、Mとの関係を深めていく[61]。やがて雑談の折に、Mは喫茶店経営など自分の夢やプライベートなことを話し出すが、そこに主犯Xは付け入り始め、開店用として高価なカップを贈ったり土地を探すなど、次第に関わりは複雑化した[61]

一家の崩壊と家族会議[編集]

主犯Xは、脅し、透かしで喫茶店開店を勧め、ついにはMも「おいしいコーヒーを入れる店を」と店の開業を決意する。電鉄会社は反対するが、主犯Xは「なんで辞めさせへんねん」と会社に怒鳴り込む始末であった[62]。住宅ローンや娘二人も抱えていたため、同じくMの妻も反対し夫婦仲は冷却、離婚話にも発展し、そこに仲裁を買って出た主犯Xは従犯YやT次女を伴い、週に一度Mの家族・親族を集め「家族会議」を開催する。2010年11月についにM夫婦は離婚するが、主犯の催す「会議」はまだ終わらず、連日の招集になり食事や排泄制限、暴力までが入りはじめ[63]、M姉は会社を首になってしまった。親族は、話というより拷問に遭っている感じで、毎日一日16時間延々と繰り返され、寝る間もままならなかった、と述懐する。主犯XらはあらかじめM家の子供たちを自分の家に預けさせていたため、「会議」を断ることも難しかったのである。挙句の果てには、M妻を売春宿飛田新地で働くよう強要し、結局、そこで働くには至らなかったものの、また、Mの退職金も喫茶店開業資金として借りたお金も全て巻き上げられてしまうなどして、一家は完全に崩壊した[61][40][64]

祖母の殺害[編集]

主犯Xの指示で、M夫は家族と別れて主犯Xのマンションの近くのワンルームアパートに居住するが、やがて「娘の養育の責任」を口実に、M一家全員のアパート移転を迫り、僅か一部屋に6人が雑居することになってしまう。睡眠や食事、排泄は主犯Xらの許可が必要で、生活環境は劣悪だった[40]。主犯Xらからの暴力や虐待は常習で、時にはMの当時小五の娘までもが、主犯Xの指示により、公園でM一家全員からリンチされることさえ起きていた[64]。家族の信頼関係は完全に崩壊し、こうした中、ついには2011年「一緒に暮らしていけない」とM祖母が脱出し、東京の親戚宅に移るが[62]、直ちに居場所を突き止められ、連れ戻されて主犯Xの命を受けたM一家達に連日暴行、一時はそれでも脱出して通行人にと助けを求めるが最後には虐待死する。司法解剖の結果、肋骨三本とのど骨の一部が折れており、胸や腹も強打され、喉が圧迫を受けていた[65]

姉の脱走と事件発覚[編集]

続いて2011年11月、M姉が脱走し、大阪府警に相談したところ、自身も負傷していたため、府警は事件性があると判断し、尼崎東署に連絡した。府警の要請で県警は主犯Xらを捜査、M祖母の殺害が発覚した。M祖母はコンクリート詰めにされ、ドラム缶に密封されており、ここでようやく主犯Xら5人が逮捕された[65]。ただし、5人のうち、主犯X、従犯Yを除くと残りはM夫婦、M姉であり、こうしてM家の生存者全員は、全てを失ったうえに犯罪を犯した容疑者として逮捕されてしまった。Mの親族は、主犯Xに対して「子供のショックは大きく、回復にはかなり時間がかかるようです」「正直、死刑にするくらいではまだ足りない。お母さんのような極限の空腹状態を一片味合わせてやりたい」と悔しさを吐露している[64]。事件発覚時、M妻は耳が欠け、唇がえぐれており、話しかけても放心したように無表情で、Mは、M祖母の殺害について「自分達がやった、資産管理は主犯にお願いする」という遺書を書かされていた。主犯Xは虐待するにあたって、通販カタログを丸く固めた「しばき棒」を使い、被害者の目や顔、唇を突き、傷ができ、かさぶたになると、その箇所をまた突いていた[45]

被疑者の暮らしぶり[編集]

被疑者は豪華なマンションに住み、入口には若い衆を侍らせ、室内をアンティーク家具などで飾っていた[5]。また、バーが設けられた部屋では自慢の2億円相当のバカラクリスタルガラスが備えられていた[5]。被疑者は息子を幼少時から芸能界に進出させる夢を描いており[5]タレント養成所に通わせ学校にはほとんど通わせなかった[66]。被疑者は孫には幼少時からシャネルを着せ、金魚に興味を示すと600匹も購入するなど身内への愛情にこと欠かなかった[67]。冬期になると家をアンパンマンなどのキャラクターを表したイルミネーションで飾ることなどから近隣では有名な豪奢な暮らし振りであった[67]

逮捕後[編集]

主犯Xは警察の取り調べに完全黙秘を続けていたが[68][69]、一方で産経新聞2012年12月5日号は、「再逮捕後の取り調べにおいて「悪いのは全て私です」と自らの責任を認めていた」と報道した[70]。留置場で主犯Xと同じ房に居合わせたある女性は、主犯Xに「あんたはこういうことに気をつけたほうがいい。取り調べでもなんでも、いらんことしゃべったらあかんで」と黙秘を勧められたと主張している。担当刑事や看守に対しても、何も喋らず、堂々とした態度を取っていたと証言している[71]。その女性が罪状を尋ねると、主犯Xは「傷害や」と笑って答えていた[71]。女性によるとこのように当初は余裕綽々であった主犯Xは、2012年9月ごろから動揺し始め、感情の起伏が激しくなり「おかしい、おかしい…」と呟く日もあれば、「なんやの、これは! どないなってるん」と言い出す時もあり、最後には自ら首を縛って命を絶った[71]。なお主犯Xは自らの親族において遺体の引き取り手が無く、神戸市が行旅死亡人として引き取り、2012年12月19日に火葬された[72]

報道被害[編集]

この事件の報道をめぐっては、マスコミ各社が主犯Xと見られる被告人の顔写真として、全く別の人物のものを使い続けてしまい、本人や担当弁護士からの指摘で初めてミスであることに気づき、新聞の紙面やテレビ放送などで「お詫び」をする結果となった[73][74][75]。また、前述のように別人の写真は公開できるにもかかわらず本人の写真は公開されないというマスコミ各社のチグハグな対応が続いている。2012年10月31日発売の週刊誌にも別人の写真が掲載されているにもかかわらず通常通り発売されている店舗がある[76]

2012年11月7日、兵庫県警は被告の顔写真を公開した。理由について、新たな被害者が名乗り出ることが考えられることと、被告と間違って報じられた被害者の名誉回復の役に立つことを挙げ、例外的に提供したなどとしている[77]。しかし、記者会見を記者クラブ以外にも開放する試みが中央省庁等ではあるにもかかわらず、この写真は記者クラブ加入のメディア以外には提供されていない[78]

脚注[編集]

出典元の記事名に当事者の実名が含まれている場合は、その実名箇所を当事者の仮名表記とする。

  1. ^ 「尼崎事件、被告親族「転落死の男性に自殺強要」」 読売新聞 2012年10月21日(2012年10月23日時点でのアーカイブ)
  2. ^ 「「側近」逮捕で支配崩れ、次々と告白…尼崎事件」 読売新聞 2012年10月22日(2012年10月25日時点でのアーカイブ)
  3. ^ a b 尼崎事件:「香川・岡山にも遺棄」 被告宅保証人ら不明 毎日新聞 2012年10月16日(2012年10月18日時点でのアーカイブ)
  4. ^ 尼崎事件不明8人に 男性転落死親族に保険金 テレビ東京 2012年10月18日(2012年10月24日時点でのアーカイブ)
  5. ^ a b c d 尼崎事件の(主犯X)被告人宅に訪問経験ある男性が内部の様子明かす 週刊ポスト 2012年11月2日号
  6. ^ a b c 家族呪縛、25年の闇 尼崎の連続変死事件 朝日新聞 2012年10月18日(2012年10月18日時点でのアーカイブ)
  7. ^ 尼崎連続変死事件 高知県男性から千数百万円 高知新聞 2012年11月9日[リンク切れ]
  8. ^ 滋賀の一家離散、(主犯X)被告の影 尼崎の実家案じ姿消す 朝日新聞 2012年10月21日(2012年10月21日時点でのアーカイブ)
  9. ^ 尼崎連続変死、京都の一家も離散 TBS NEWS 2012年11月2日[リンク切れ]
  10. ^ 尼崎遺棄事件被害者 1日に水500ml、トイレ2回の監禁生活 女性セブン2012年11月1日号 東京産業新聞社
  11. ^ スポーツ報知、2011年11月26日
  12. ^ 「尼崎事件、「まるで○○被告の暴力装置」 いとこの受刑者、忠実な配下」zakzak、2012年10月21日
  13. ^ a b c d 尼崎事件、異様な暴力支配 自らの手は汚さない○○被告zakzak、2012年10月21日
  14. ^ a b c 住人親族の高松の家でも暴行かNHK NEWS WEB、2012年10月17日
  15. ^ a b FNNニュース、2012年10月17日
  16. ^ a b 難癖付けて金品要求 夜の街では「獲物」探し 尼崎事件主犯女のカツアゲ人生zakzak、2012年10月22日
  17. ^ 尼崎事件「他にも3遺体」、香川で不明者TBSニュース、2012年10月16日
  18. ^ a b TBS,7day`sニュースキャスター、2012年10月20日
  19. ^ a b c d e 「お父さん、ごめんね」娘は泣きながら父親を殴った産経新聞、2012年10月17日
  20. ^ 「香川県警、対応「不適切」と認め謝罪…尼崎事件」『読売新聞』2013年4月19日
  21. ^ a b 尼崎連続変死告発の男性 命懸け潜伏 偽名使い近くで監視 スポーツニッポン 2012年10月18日
  22. ^ 尼崎連続変死:男女不明の直後、警察相談応じず 毎日新聞 2012年10月17日(2012年10月19日時点でのアーカイブ)
  23. ^ 「香川県警、対応「不適切」と認め謝罪…尼崎事件」『読売新聞』2013年4月19日
  24. ^ 尼崎・床下遺体:謎多い関係 64歳被告が精神的に支配か 毎日新聞 2012年10月16日(2012年10月18日時点でのアーカイブ)
  25. ^ 沖縄・万座毛の転落死、現場検証 尼崎市の連続変死事件 共同通信社 2013年4月23日
  26. ^ 転落死、聞き込みせず事故と判断 共同通信社 2012年10月23日
  27. ^ 沖縄の転落死、崖から自殺強要か (主犯X)被告の親族証言 共同通信社 2012年10月21日
  28. ^ 自殺教唆で合同捜査へ 尼崎連続変死 日刊スポーツ 2012年10月29日[リンク切れ]
  29. ^ 発覚恐れ自宅の監禁物置撤去か 尼崎連続変死事件 神戸新聞 2012年10月27日[リンク切れ]
  30. ^ 監禁小屋すでに撤去 証拠隠しか…尼崎事件 読売新聞 2012年10月27日[リンク切れ]
  31. ^ 尼崎連続変死事件、(主犯X)被告ら逮捕 サンスポ 2012年11月7日
  32. ^ 殺人容疑で再逮捕 読売新聞[リンク切れ]
  33. ^ (主犯X)容疑者が自殺 NHKニュース 2012年12月12日(2012年12月12日時点でのアーカイブ)
  34. ^ (主犯X)容疑者が留置場で死亡、自殺か…尼崎連続変死 スポーツ報知 2012年12月12日(2012年12月12日時点でのアーカイブ)
  35. ^ 兵庫・尼崎の連続変死:○○容疑者自殺 事件の真相闇に 兵庫県警、大失態 毎日新聞夕刊 2012年12月12日[リンク切れ]
  36. ^ 捜査への影響必至…○○被告自殺 読売新聞 2012年12月12日[リンク切れ]
  37. ^ 【(主犯X)容疑者自殺】「出所時には80~90歳、生きていても意味ない」 弁護士に漏らす 産経新聞 2012年12月12日(2012年12月12日時点でのアーカイブ)
  38. ^ (主犯X)元被告宅を捜索 (T一家長女)さん殺人・監禁容疑 虐待映した写真等押収 産経新聞 2013年1月24日
  39. ^ (主犯X)被告、高知でも千数百万円集める 養子の親族宅に乗り込み スポーツニッポン 2012年11月5日
  40. ^ a b c 介入家庭、暴力と甘言で支配…尼崎ドラム缶事件 読売新聞、2012年10月16日(2012年10月19日時点でのアーカイブ)
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  78. ^ 「記者クラブ以外は出していない」 J-CASTには(主犯X)被告の写真提供されず J-CASTニュース 2012年11月8日

関連書籍[編集]

  • 小野一光「家族喰い――尼崎連続変死事件の真相」(太田出版)

関連項目[編集]