事実認定

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事実認定(じじつにんてい)とは、裁判官その他の事実認定者(陪審制における陪審、裁判員制度における裁判官と裁判員など)が、裁判刑事訴訟民事訴訟)において、証拠に基づいて、判決の基礎となる事実を認定することをいう。

日本法においては、刑事訴訟では厳しい要件を満たした証拠のみが事実認定の基礎になるのに対し、民事訴訟では証拠となる資格(証拠能力)には特に制限がない。いずれの場合も、採用された証拠が事実認定にどのように用いられるか(証明力の評価)は裁判官の自由な心証による。

刑事訴訟[編集]

証拠能力[編集]

刑事訴訟法317条に、事実の認定は、証拠による旨の明文規定がある(証拠裁判主義)。すなわち、厳格な証明の対象となる事実については、証拠能力を備えた証拠について、法定の証拠調べ手続を踏まなければならない。 例えば、被告人反対尋問権の保障および実体的真実発見のため、伝聞証拠は原則として排斥され(同法320条)、確度の高い証拠のみが事実認定の基礎となる。 何が厳格な証明の対象となる事実であるかは議論されている。刑罰権の存否および範囲を定める事実が厳格な証明の対象であることは争いがない。他方、訴訟法的事実は自由な証明で足りると解されている。

証明の程度[編集]

証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる(刑事訴訟法318条、自由心証主義)。

証明の程度としては、合理的な疑いを差し挟まない程度まで検察官が証明することが要求される。犯罪事実について合理的な疑いを越える程度の証明がないときは、「被告事件について犯罪の証明がないとき」として、無罪判決を言い渡さなければならない(刑事訴訟法336条)。

すなわち、検察官、被告人・弁護人とも、証拠調べを請求する権限があるが(刑事訴訟法298条1項)、犯罪事実を立証する証拠を提出し、証明すべき責任は検察官にある。

なお、検察官が手持ちの証拠を提出するかどうかは検察官の判断によるため、被告人にとって有利な証拠が存在しても、被告人・弁護人に開示されないと、公判に提出されないこともある。これが冤罪事件発生の原因になることがあるともいわれている。

民事訴訟[編集]

証拠能力[編集]

民事訴訟においては、証拠となる資格(証拠能力)の制限は特にないため、伝聞証拠等であっても証拠として採用される。民事訴訟においても違法収集証拠の証拠能力が否定されるべきか否かについては争いがある。

証明の程度[編集]

事実の認定について、裁判官は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を事実として採用すべきか否かを判断する(民事訴訟法247条自由心証主義)。

必要な証明の程度に関して、最高裁は、「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである」と判示している(最高裁昭和50年10月24日判決・民集29巻9号1417頁、「東大病院ルンバール・ショック事件」)。刑事事件よりは若干緩やかな基準であるということもできる。

関連項目[編集]