警察

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警察(けいさつ、: police)とは、実力を以て社会治安を維持する行政作用及びその主体をいう。つまり、社会の安全治安を維持する責任を課された行政機関である。

語源[編集]

警察を意味するpoliceという語はフランス語に由来しており、語源古代ギリシア語ポリス(秩序ある人々・都市国家)に由来するラテン語のpolitia(民事行政)である。ギリシア語のpoliteiaとは直接の関係は薄い。政府や行政の面でいう警察 (police) という語は、18世紀フランスで新たに生み出されたものである。漢字の「警察」は基本機能の警邏(けいら)や警戒の「」の字および査察の「」の字を合成した合成語であり、日本明治時代の制度導入時に造られ、その後漢字文化圏に伝播した。

社会における警察の機能[編集]

西洋法律体系内において、警察の主な役割は、人または財産に対する犯罪の防止と、社会の公序良俗の維持に主眼点を置いて犯罪の取り締まりや捜査を行うこと、そして被疑者逮捕が可能であるならばその者を拘留し関係当局に情報を通知することにある。

警察はしばしば緊急事態災害などの非常時に動員され、治安維持や捜索・救助を行う。事態に迅速に対応するため、装備の充実や訓練の他、消防救急医療機関や他の行政機関などと調整を行っている。世界の多くの国では、緊急時の連絡用に、警察・消防・医療機関などへつながる緊急通報用電話番号が設置されている(例: 「000」「110」(日本)、「111」「911」(アメリカ)「999」)。

また警察は、結果的に罰金を科すといった内容の召喚状を発行することで、軽犯罪を取り締まる責務を負っている(道路交通法違反が典型的)。時に警察は、法的な違反が生じていない場合でさえ、社会秩序の維持のため、業務を行うことがある。例えば、あるオーストラリアの管轄区では、酔って公共の場で迷惑行為を働く者を、アルコールの影響から回復するまで「drying-out centre(泥酔者保護施設、日本の「保護所」―いわゆる“トラ箱”に相当)」で保護する業務を行っている。また、大規模な集会デモなどに公安機能を提供するのも警察の役割である。

無政府主義者は、警察を支配階級の暴力的統治機構であるとし、その粉砕を目指す。

警察権[編集]

警察権は社会や公共の秩序を維持するために国民に対し命令や強制を加える公権力のことである[1]。国家における警察権とは一般にはドイツにおいて18世紀および19世紀前半にあらわれた権力形態を指し、非立憲的かつ前産業的な国家形態のうち、その行政部分を取り上げてとくに警察国家と呼ばれる。警察国家法治国家対語として用いられ、内容的に不確定な「警察権(ius politiae)」に基礎をおいた行政執行が、合目的性には従うものの格別法的な形式や法的原則に服していなかったことに特徴がある。国家を統治するための高権と人民との間には事実的な権力関係が存在し、司法や行政の名目上の区別にもかかわらず法学上の根拠をもたないため行政法や行政法学ではなく、法学上の分野としては成立しえない「警察学」により統治される。19世紀の中葉にはドイツ社会や政治理念、憲法構造の革命により警察は行政法に、警察学は行政法学にとって換わられた[2]。警察権の行使については警察公共の原則、警察責任の原則、警察比例の原則、警察消極の原則の4原則があるとされる[3]

警察の歴史[編集]

古代、治安維持の多くに責任を持っていたのは軍隊であった。 例えば古代ローマでは、ローマなどの諸都市に警察は設置されていなかったが、ローマ帝国は衰退まで合理的かつ効果的な刑事司法システムを有していた。ノルマン・コンクエスト以降のイングランドでは、公共秩序を担う制度として、constableに指揮されるtishingが存在したが、多くの場合は、地方の領主や貴族が自分の領地の秩序維持に責任を負うことで、警察活動を担う(しばしば無給の)constableを任命した。

近代になり、軍事、治安維持(警察)ともに専門性が高まってくると、軍が軍事、警察を共管することは効率的でないと判断されるようになり、軍事と治安維持を分離する傾向が見られ始めた。

警察は軍から分化した組織であるが、現代において警察と軍とが分化していない例は、国家憲兵制度などに見られる(分化していないことが即遅れていることを意味するわけではない)。

警察の機能[編集]

警察の機能には三つの基本的な部門に分類することが考えられる。第一に犯罪の予防や治安の維持などの行政警察活動を行う一般予防部門であり、第二に既に起こった犯罪の捜査や犯人逮捕などの司法警察活動を行う犯罪捜査部門である。日本の警察活動ではこの両者が区別されている。第三に反政府活動暴動騒擾の調査や警戒、防諜などの公安警察活動を行う特別部門がある[4]

また警察の機能には通常の警察力で対処が困難な暴動や騒擾などを鎮圧することを目的とする治安警察活動を行うものもあるが、これは広義には行政警察活動に含まれる。ただし市民の人権に対して行使される公権力が強大であることから、分けて扱うこともある。

犯罪の予防[編集]

一般に防犯と呼ばれる機能[要出典]であり、直接的には制服警察官あるいはパトロールカーの姿を見せることにより警察力が働いていることを公衆に知らせることで、犯罪の発生を未然に防止するものである。さらには警察官による学校、自治体などに対する防犯指導を通じ、市民の防犯意識を高める機能も担っている。また、本来の警察の治安維持の観点から、民事に絡む違法行為についても警察権の対象となり得るが、警察の公平、中立の立場から謙抑的な活動がなされるのが通例である。なお、かつては「民事不介入の原則」と呼ばれる警察は民事に介入しないという考え方もあったが、現在では、警察活動は法定されているものであって、民事不介入というものは条理、または触法行為を行なう側の逃げに過ぎないものであり、民事においても犯罪の取締り行為は行われる。

犯罪の捜査[編集]

予防に失敗した場合、警察の中でも犯罪捜査部門の部署が対処することになる。主に構成員は私服の刑事警察官であり、犯罪捜査によって得られた証拠に基づいて犯人を特定し、妥当な場合にはこれを逮捕して出廷させることを業務とする。手続きの上では重大事件が発生した場合には刑事でない警察官が犯罪現場を確保して捜査資料を保全した後、刑事部門に通報することとなっている[5]

各国の警察[編集]

各国の警察については以下の項目を参照せよ。記述量・情報量の多い国は別ページに詳述を、そうでないものはこの節において全てを述べる。

ヨーロッパ[編集]

アイルランド[編集]

アイルランドの警察はアイルランド語での正式名称をGarda Síochána na hÉireann("アイルランド市民の守護者")と言い、1922年に設立された。本部はダブリン市内フェニックス・パーク、警察学校ティペラリー州にある。特殊部隊を除く11,450人(2000年)の警察官は拳銃等武器を所持していない。警察長官から順に警察長官補佐、次官補、警視長警視、検査官、巡査部長巡査 (Garda)。国を6つの地方に分け、それぞれが各地域司令組織 (Regional Command Structure) の管轄下に置かれている。1989年アイルランドの警官は初の国連平和維持活動としてナミビアへ派遣され、その後アンゴラカンボジアモザンビーク東ティモール等で活動を展開している。

イギリス[編集]

イタリア[編集]

ドイツ[編集]

ドイツの警察は連邦レベル、州レベル、地区レベルの3段階の警察機構が存在する。連邦レベルの警察としては、連邦警察局 (BPOL) と連邦刑事局 (BKA) がある。連邦警察局の下に対テロ部隊のGSG-9が存在している。連邦刑事局は州をまたがる犯罪の捜査や重要事件の捜査を指揮する。通常の警察業務に関しては、それぞれの州の地方警察の仕事である。犯罪捜査に関しては、それぞれの州に存在する刑事警察が行うが、州によりこの刑事警察が地方警察の一部門である場合と、全く異なる場合が存在する。地区や大都市レベルの警察は過去に存在したが、地方警察との再編が行われ、現在では、一部の都市に非武装の治安維持組織が存在する。

フランス[編集]

フランスでは主に2つの法執行機関が警察の業務を担当している。国家警察パリや人口1万人以上の都市部で警察活動を行い、国家憲兵隊は地方や小さな町などを担当する。その他の国々、とくに旧フランス植民地諸国ではフランスと類似した警察制度を採用している。

アジア[編集]

日本[編集]

日本の警察は警察法刑事訴訟法警察官職務執行法で定められたところによる活動を行なう。それは具体的に、個人の生命、身体及び財産の保護と、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締りやその他公共の安全と秩序の維持のための活動である。

中華人民共和国[編集]

中華人民共和国の警察は民事事件に介入することができ、小規模な民事の争いを仲裁、解決する機能を持っている。警察官の前で当事者が合意に至れば、その合意は当事者を拘束する法的効果を持つ。

香港

香港の警察は香港特別行政区政府保安局の管轄下の香港警務処が香港警察を統括している。

マカオ

マカオの警察は澳門特別行政區政府保安司の管轄下の部門。

中華民国[編集]

大韓民国[編集]

モンゴル[編集]

タイ王国[編集]

北アメリカ[編集]

アメリカ合衆国[編集]

アメリカ連邦制であることに加え、自治の権限が高いことからアメリカの警察組織は細分化され、連邦・州・郡・市町村の各政府が独自の組織を対象とする管轄(多くは行政区画)ごとに設置できる。

警察以外にも警察活動を行う法執行機関が非常に多く、総員1名のタウンマーシャルのようなものから約3万8千名の警察官を擁するニューヨーク市警察まで、法執行機関の数は2万前後あるとも言われ、都市部では法執行官でさえ自分の管轄内に知らない法執行機関があるほど複雑である。

全米に約74万人いる法執行官(日本法では司法警察職員が近い)のうち、12%前後が女性である。終身雇用が基本の日本の警察官と異なり、実力主義の慣習は法執行機関でも例外でなく、キャリア制度は存在せず、本部長級を含め、より良い条件を求めて他組織へ転籍する法執行官もいる。

カナダ[編集]

南アメリカ[編集]

コスタリカ[編集]

コスタリカ警察は、平時は司法警察であるが、有事の際には準軍隊となる。憲法で有事規定があるからである。

チリ[編集]

チリ警察は、カラビネーロス・デ・チレ (Carabineros de Chile) と呼ばれている。いわゆる警察軍であり、形式上は国防省指揮下の第4の軍とされているが、平時は事実上内務省の指揮下にある。また、カラビネーロスの他に捜査警察 (Policía de Investigaciones de Chile)、あるいは略称からピッチ (PICH) と呼ばれる文民警察も存在する。

ブラジル[編集]

ブラジルの警察は、それぞれの責任・権限に基づき連邦、州及び大都市が組織・運営している。

連邦政府は、連邦警察及び連邦高速道路警察の機関を擁することで、麻薬密入国等取締り及びテロ対策の連邦法の執行にあたっている。州政府が責任を有する警察業務は、パトロール他の業務をPolícia Militarが行い、犯罪捜査は州警察が行う。市警察は、市の施設警備を主に担当する。

Polícia Militar(現地日系人社会では「軍警(ぐんけい)」と呼称)は、ヨーロッパ諸国での国家憲兵隊と同じ任務についているが、連邦政府ではなく州政府の機関であり、また、軍における各憲兵隊(陸: Polícia do Exército、海: Polícia da Marinha、空: Polícia da Aeronaútica)とも別の組織である。

脚注[編集]

  1. ^ 平凡社マイペディア「警察権」[1]
  2. ^ 「文献紹介:ペーター・バドゥーラ 自由主義的法治国家の行政法」佐藤立夫(比較法学15 1981.01.25早稲田大学)[2][3]P.4
  3. ^ 平凡社マイペディア「警察権」[4]
  4. ^ フランク・B・ギブニー編『ブリタニカ国際百科事典 1-20』(ティービーエス・ブリタニカ、1972年)第6巻383項、警察の項の機能についての記述を参考。
  5. ^ フランク・B・ギブニー編『ブリタニカ国際百科事典 1-20』(ティービーエス・ブリタニカ、1972年)第6巻384項、警察の項の犯罪捜査部門についての記述を参考。

関連項目[編集]