フランスの警察

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フランス警察は国家レベルと自治体レベルとに大別され、さまざまな法執行機関によって担われる。国家レベルでは3つの機関が活動し、地域レベルではそれぞれのコミューン(市町村自治体)が自治体警察を維持できる。特定の任命された警察官だけが、犯罪を捜査する権限を有しており、捜査は捜査担当判事に監督される。

組織[編集]

国家機関[編集]

フランスには国家的な法執行機関が3つあり、逮捕や捜索令状の執行を法的に完全に遂行できる。

その他の機関[編集]

フランスの地方自治体も「police municipale」や「garde municipale」、「garde champetre」と呼ばれる地方警察を設置できるが、交通法規など自治体の条例のみ執行できたり、監視や建物からの避難、事故防止といった予防活動などに権限が制限される。

これら組織の要員が銃器を携行できるかはまちまちである。

  • コミューンは、交通関係の極めて限られた法執行能力と、地区条例の施行に関する「Police municipale」を設置できる。
  • 農村部の地方政府は「garde champetre」「Police Rurale」と呼ばれる、地域の巡回と環境保護だけに権限を持つ組織を設置できる。
  • 矯正局(Administration pénitentiaire)は「Équipes régionales d’intervention et de sécurité」というSWATチームを運用する。
  • ウォリス・フツナでは、首長直属の親衛隊がある。

警察と憲兵隊の対立[編集]

活動領域がいくらか違うとはいえ、同じ目的を持つ国家警察組織が2つあることは、ときに競争や摩擦を生む。合併論がささやかれることも時折ある。

1941年以降、国家警察憲兵隊の活動領域は、1万人以上の住民が居る町は警察、そのほかの場所は憲兵隊と分けられてきた。しかし、都市近郊の住宅地域が広がるにつれて、次第に不十分になった。また、一般に憲兵隊は広範囲を担当するため、管轄を警察から憲兵隊に移すことには、しばしば論争がおきる。

2003年から2005年の間に管轄再配置が決定、実行された。大規模な都市圏は完全に国家警察の担当となり、農村や近郊地帯、人口が5000から16000人の小都市のいくつかは憲兵隊が担当する。

警察と憲兵隊にはそれぞれ特定の担当分野もある。

  • 首都パリについてはパリ警視庁が担当し、内務大臣直轄の組織となっている。また警察は外国人の入国許可や在留許可を担当する(国境警察活動)。
  • 憲兵隊は軍内警察・憲兵として役目のほか、テロ対策や海上警備も担当し、海上憲兵隊も有する。空港や中央官庁などの警備も担当し、傘下のフランス共和国親衛隊が実施している。

フランス語で「police」という言葉は、「警察力」だけを指すのではなく、「法と秩序の維持」という一般的概念も示す。一般的な感覚では「police」は2つの意味に分類される

  • 行政警察(police administrative):制服警察官による予防巡回や交通業務など。逮捕権は制限される。
  • 司法警察(police judiciaire):法執行と犯罪捜査。完全な逮捕権が認められる。

行政警察とはたとえば、市長が市内で持つ行政警察権(例:条例適用を警察に命じる)や、判事が法廷内で行使する警察権(例:審理を妨げる者を退廷させる)である。

国家警察は1984年まで、病院前医療と患者搬送に関わっていた(Police secours)が、現在は病院前医療は消防隊が実施しているが、山岳救助は憲兵隊の部隊PGHM (Peloton de gendarmerie de haute montagne) と警察のCRS (Compagnies républicaines de sécurité)が依然として担っている。

いくつかの国がこのような方式をまね、同じ役割を持つものの、管轄の異なる警察組織に分けている。

地方警察か憲兵隊の所轄署には複雑な捜査を進める能力が認められない。そのため、警察には「regional services of judiciary police」、憲兵隊には「research sections」として知られる、犯罪捜査にあたる地域的な部署がある。警察、憲兵隊とも、犯罪科学の研究所を持っている。取り調べの多くは警察が実施する。判事はどちらの部署も選択可能で、もし片方の捜査手法や結論に不満があれば、もう片方に捜査をさせることができる。

国家警察は対テロ部門など特定の任務のため、管轄区にいくつかの拠点となる事務所を置いている。

SWATチームとして、憲兵隊は世界的に最も知られた部隊であるGIGN、警察はGIPNRAIDを有している。憲兵隊は、武装した落下傘部隊も有している。 また、警察にはCRS、憲兵隊には、CRSと間違われることの多い機動憲兵隊という暴動鎮圧部隊がある。彼らは国中どこでも出動する。

軍隊が文民警察の事案を扱い続けることを正当化する根拠としては、軍隊は国家警察と異なり、労働組合を作れないため運営しやすいということである。もっとも憲兵は、打開策として憲兵の配偶者の組合を作っている。

どの憲兵隊も、それぞれの基地内に無料の宿舎を有しているが、警察には類似の施設はない。

活動[編集]

行政警察活動[編集]

行政警察活動として国の行政部が指揮監督して多種多様な活動が行われるが、警察と憲兵隊は言うまでもなく公共の秩序を維持するために活動する。 たとえば下記のような活動である。

  • 道路交通の管理
  • 路上デモ活動の整理
  • 暴動鎮圧部隊の配置

司法警察活動[編集]

司法警察は司法部の指揮監督下、多種多様な活動を引き受けている。 たとえば

  • 犯罪被疑者の追跡と逮捕
  • 司法調査の各局面での被疑者の尋問
  • 証拠の収集
  • 捜索令状の執行

これらの行動は、刑事訴訟法(Code de procédure pénale)第12条から29条の規定に沿ったものでなければならない。任務を円滑に進めるため、国家警察の司法警察部門(police judiciaire)のいくつかの部署と、憲兵隊の対応部署であるsections de recherche(調査課)は、犯罪捜査に特化されている。

権限と制約[編集]

フランス国家警察憲兵隊の権限は、成文法と法体系に制約される。手順は捜査の段階によって異なり

  • 現行犯罪:犯人が罪を犯しているところを目撃されたり、目撃者に追われたり、犯罪に関連する物品を所持していたり、その他相当の事情がある場合
  • 予備調査:犯罪があったかどうか、またどの犯罪が行われたか定かではないが、事件があったと信ずるに十分な理由がある場合。
  • 司法情報:事件が確かに、あるいは少なくともかなりの確かさで行われたときに、捜査判事(裁判官、警察の外部的立場)が事件の捜査を監督する場合。

現行犯罪以外の事件では特に、警察機関は捜査判事からの許可を受けずに捜索や逮捕をしてはならない。

警察官が単独で逮捕や捜索をする権限は、全警官ではなく特定の法的資格を有する者に法律で限定される。(詳細次章)

司法警察官の分類[編集]

警察官や憲兵隊員が犯罪を捜査する手順は、刑事訴訟法(Code de procédure pénale)と適用可能な法体系によって定められる。犯罪捜査は司法部門の監督下に進められるが、検察官と捜査判事のどちらが指揮を執るかは状況により異なる。

捜査に当たる警察官は、主要な概念として、司法警察官(officier de police judiciaireまたはOPJ)と、司法巡査(agent de police judiciaireまたはAPJ)あるいは司法巡査補(APJ adjoint)に大別される。

司法警察官とされるのは下記の要員である。

  • 市長と副市長(ただほとんど実績はない)
  • 国家警察では
    • 警察本部長やそれ以上の階級の者
    • 部隊指揮官(corps de commandement)として、内務大臣と司法大臣が共同で指名した者
    • 3年間勤務したCorps d'encadrement et d'applicationの要員で、特定の部署に所属し、内務大臣と司法大臣が共同で指名した者
  • 憲兵隊では
    • 将校
    • 3年間任務に就いた将校以外の者で、内務大臣と司法大臣が共同で指名した者

これらの大臣の指名決定は、特定の委員会の承認があって初めてできる。現行制度によれば、法律事項の試験を修了したと保証する。

警察と憲兵隊のそのほかのほとんどの要員は司法巡査であり、警察の一部の要員や自治体警察の要員は司法巡査補である。

逮捕と捜索令状の執行については、司法警察官だけが完全な権限を持ち、司法巡査は補佐のみが許される。たとえば、司法巡査が被疑者を逮捕した場合、巡査は逮捕を完全なものにするには、被疑者を司法警察官のもとへ連れて行かねばならない。

いかなる市民も犯罪を犯したり法で罰せられる行為をした者を逮捕し(私人逮捕)、司法警察官(この場合は巡査や巡査補でも可能)のもとに連行できると法律で定められているが、一市民による逮捕は、何が罰せられるかきちんと理解しているか、また権利濫用がないかという観点から、難しい問題を含んでいる(権利濫用は個人の自由のために制限されており、不法監禁として訴えられる可能性もある)。

司法警察官の権限はいかなる場合であっても、それを必要とする立場に所属していて、地区の検事総長の決定があるときに行使される。組織的な活動時や、暴動鎮圧といった公共秩序の維持活動のときには、権限は一時的に停止される。

司法警察官や巡査らの権限は、警官が不適切な手法を取った場合、司法部門により取り上げられことがある。司法警察官は検事総長により格付けされ、その評価は昇進に影響してくる。

参考[編集]