国家憲兵隊 (フランス)

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国家憲兵隊員

国家憲兵隊(こっかけんぺいたい、Gendarmerie nationale)は、フランス共和国国防・退役軍人省および内務省傘下の法執行のための警察組織である。

フランス語「憲兵」からジャンダルムリ (Gendarmerie) といわれることもある。[1]日本語へは、国家憲兵隊の他に警察軍、軍警察とも訳される。隊員はジャンダルム (gendarme) と呼ばれ、古フランス語gens d’armes(武装した者たち)が語源である。

概要[編集]

フランス共和国において陸軍海軍空軍に次ぐ第4の軍隊として組織されている。軍内の憲兵業務、警備公安警察活動と地方部における通常警察業務が主要任務である。フランス国家警察と並び、フランスにおける主要警察機関の一つである。その任務は犯罪捜査暴動鎮圧、海上の治安維持、テロ対策、政府庁舎等の警備、外国要人に対する儀仗業務などである。2011年時点の人員は98,155人。

歴史[編集]

Gendarmerie は、フランス革命以前は近衛騎兵隊であった。1337年、国王領の警備にあたる騎兵隊(コンスタブル)が始まりである。

やがて1626年maréchaussée(近衛騎兵隊)に改編され、街道警備も行うようになった。

1720年に憲兵の隷下となった。

フランス革命後に廃止されたが、1791年2月16日に国家憲兵隊を創設する法律が施行され、そのまま任務を引き継いだ。ナポレオン時代の騎兵中隊の一部が Gendarmerie と呼ばれるようになり、当初は主に脱走兵の捜索等の軍隊内の規律維持がその任務であったが、平時には警察力が弱い地方における治安維持も任務となった。

構成[編集]

1969年よりパリ16区に置かれている憲兵総監部 (Direction générale de la Gendarmerie nationale; DGGN)の下には、次のような部門がある。

  • 検査局 (I.G.N) - 研究開発と各種情報の収集及び組織管理を所掌する。
  • 人事部 (S.R.H.) - 憲兵官の訓練と全職員の人事管理を所掌する。
  • 計画実施部 (S.P.M.) - 総合統制、国家憲兵隊の各種業務計画及び予算管理を所掌する。
  • 作戦役務部 (S.O.E.) - 以下の5つの小委員会を管理する。
    • 組織評価小委員会
    • 国際協力小委員会
    • 法秩序防衛小委員会
    • 公共交通安全小委員会
    • 刑事科小委員会

現在、国家憲兵隊は、機動憲兵隊県憲兵隊とに分かれて組織されている。

組織管理と有事の際の運用は国防大臣の指揮を受ける。平時の運用については機動憲兵隊は内務大臣の指揮を、県憲兵隊は県知事の指揮を受ける。犯罪捜査の場合は裁判官の指示を受ける場合もある。

国家憲兵隊の司令部はパリにあり、憲兵大将司令官になる。士官学校ムランにある。

各県憲兵隊の司令官は憲兵大佐であり、各県を管轄範囲としている。また、憲兵中隊が各郡を管轄している。

機動憲兵隊と県憲兵隊の大佐以下の階級章肩章に入っている線の色が黄色(機動憲兵隊)、白色(県憲兵隊)と異なる。応募資格はフランス市民で身長170センチ以上なら性別不問。

正規憲兵官は、士官(Commissioned officer)および下士官(Non-commissioned officer, NCO)で構成される。より低位の構成員は、制約された勤務時間・訓練を実施する任期制の補助憲兵官からなる。

任務[編集]

機動憲兵隊の装甲車両VBRG
海上憲兵隊の巡視艇
山岳憲兵隊と協力して負傷者を救助する国家憲兵隊ヘリコプター
高速道路警備隊のパトカー

機動憲兵隊の平時の任務は、暴動の鎮圧(機動隊と同様の装備で任務にあたる)、国家の公安維持、海上の治安維持、テロ対策、政府庁舎等の警備などである。有事の際は国防大臣の指揮を受け、軍事行動を実施する。軍が国外派遣されている際の駐屯地警備も行っている。

警察業務は人口1万人以下の地方部が中心であり、大都市部はフランス国家警察が担当する。

重装備部隊は、装甲兵員輸送車(VBRG、AMX-VCI)や装甲戦闘車両(Panhard AML、VBC-90)も装備している。この重装備部隊は主に平和維持活動などで運用される。

国家警察の共和国保安機動隊 (CRS)と任務が似ているため、間違われることも多い。

特務部門[編集]

特別部門[編集]

  • 海上の治安維持のため海上憲兵隊を置き、警備艦艇(哨戒艇など)を配備している。
  • 大統領警護パリにある政府庁舎の警備のために共和国親衛隊を設置している。
  • 山岳地域の警備や救助活動のため、山岳憲兵隊(PGHM)を置いている。
  • 県憲兵隊の任務は犯罪捜査のほか、交通取締り、自動車免許の管理、地域のパトロール、環境の保護などである。
  • 空港施設の警備等を行う空港憲兵隊の任務は、航空機、テロ対策と麻薬密輸(貨物輸送監視)、空港専用施設の監視、空港の内の道路の交通管制、空港における重要人物の警護、航民間空機の事故調査委員会の運営などである。
  • 航空機の運用を任務とする航空憲兵隊は、空軍との二重管理下にあり、空軍基地の警備や軍用機の事故対策も実施する。
  • 需品憲兵隊は、憲兵隊の警察任務と警備任務を円滑に実行せしめる為に後方支援を実施する。また、DGAとも連携している。

2005年12月、フランス国家憲兵隊の高速道路警備隊の取り締まり車両として使用されているプジョー306の置き換え時期が迫ったことから、その代替車として初の日本車スバル・インプレッサWRXを150台購入し準備配備されるというニュースが伝えられた。フランスではプジョー306は「追われても逃げ切れるパトカー」として知られており、その他ドイツ車をはじめとする高速車の速度違反を多数取り逃がしていたことから、それらを捕まえるためでもあると言われる。2010年からはルノー・メガーヌのスポーツバージョンである「メガーヌ ルノー・スポール」をベースとした車両も導入されている[2]

ツール・ド・フランスのコース上における観衆整理、走っている選手集団の警護(青灯付きの白バイで先導している)、競技の不正(ドーピング)取り締まりを行なっているのも彼ら。

特殊部隊[編集]

暴動の鎮圧・大規模犯罪取締・有事の際の軍事活動等のため、国家憲兵隊空挺介入中隊(EPIGN)を、テロ対策のため国家憲兵隊治安介入部隊(GIGN:Groupement D'Intervention De LaGendarmerie Nationale)と呼ばれるテロ対策・暴動対策・大規模犯罪対策等の有事対策の特殊部隊を設置している。

人員構成[編集]

  • 4169人の憲兵幹部
  • 7万5842人の憲兵。
  • 154人の高級官僚
  • 3729人の技術管理官。
  • 1万5757人の補助憲兵。
  • 2011人の事務官(文民スタッフ)は国家公務員と契約職員からなる。
  • 予備役4万人枠の内、約2万5000人の予備憲兵が登録されている。

シンボル[編集]

シンボルは手榴弾。これはイタリアカラビニエリイギリスグレナディアガーズと同じである。

備品[編集]

IT関連の導入・維持・管理費用を削減するため、オープンソースソフトウェアを積極的に取り入れている。2013年現在、3万7000台のコンピュータUbuntuを使用しており、2014年夏には7万2000台まで台数を増やし、ほぼすべてのコンピュータにオープンソースのOSを入れる予定[3]。フランス議会上院やウィーン市政府を抜いて、単一組織としては世界最大のUbuntuユーザーとなる。

脚注[編集]

  1. ^ 例:トミカ No.44(2014年7月~) メガーヌ ルノー・スポール ジャンダルムリ。ちなみに上述の通りこのパトカーは実在する。
  2. ^ これはカッコイイけど20台限定! フランス高速警備隊風の「メガーヌ ルノー・スポール ジャンダルムリ」【東京オートサロン2014】 - Cliccar、2014年1月11日配信
  3. ^ OSやソフトウェアをオープンソース化して総保有コストを40%削減できた仏憲兵隊 Gigazine 2013年10月12日

外部リンク[編集]