ベレッタM92

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ベレッタM92
ベレッタM9
概要
製造国 イタリア
設計・製造 ピエトロ・ベレッタ
性能
銃身長 125mm
119mm (Vertec)
109mm(コンパクト,Centurion)
ライフリング 6条右回り
使用弾薬 9mmパラベラム弾
40S&W弾
9mm×21 IMI弾
装弾数 15発(92シリーズ、98シリーズ)
10発(96シリーズ)
10,13発(コンパクトL)
8発(コンパクトM)
作動方式 ダブルアクション
プロップアップ式ショートリコイル
全長 217mm
211mm (Vertec)
197mm(コンパクト,Centurion)
重量 950g (92)
970g (92S/SB/F/G)
920g (92D)
900g(コンパクト,Vertec)
銃口初速 365m/s
有効射程 50m
  

ベレッタM92:Beretta M92)は、イタリアピエトロ・ベレッタ社が生産・販売している、9mm口径の半自動拳銃

目次

[編集] 概要

世界中の警察軍隊で幅広く使われており、現在はコルト・ガバメントに代わりアメリカ軍の制式拳銃になっている、なお、米軍では「M9」のモデル名で呼ばれている。

正式名称はピエトロ・ベレッタM92。より詳細には、M92S・M92SB・M92SB-F (M92F) ・M92FS など複数のモデルが存在する。米軍のM9は採用当初はM92SB-Fであったが、今はM92FSに切り替わっている。現在最も一般的なモデルはM92FSで、後述のように外見上の違いがほとんどないことから、これがM92Fと呼ばれることも多い。

ワルサーP38の流れを汲むプロップアップ式ショートリコイル機構を持ち、複列弾倉(ダブルカラムマガジン)に15発の9mmルガー(パラベラム)弾を装填できる。

同社の拳銃の特徴である遊底(スライド)の上面を大きく切り取ったデザインは、イタリアの銃器デザインのひとつの到達点とも呼ばれ、見た目の美しさから映画TVドラマなどでも主人公などの使う拳銃として、よく登場する。

また、使用弾薬が9mmパラベラム弾のため比較的反動が小さく、両手で構えれば一般的な成人女性でも撃つことができる。さらに、利き手を問わないセフティや左右取り換え可能なマガジンキャッチなど、開発当時としては格段に扱いやすい銃であった。

[編集] 歴史

ベレッタM92FS

ベレッタM92は、ベレッタM1951の後継機として1970年に開発がスタートした。

当時の西側は政治テロが頻発しており、市場のニーズが多弾装・ダブルアクションにあると睨んだベレッタ社は、資本提携を結んでいたベルギーのFN社からダブルカラムマガジンのノウハウを学び、1975年に9mmパラベラムで装弾数15発、ダブルアクションのベレッタM92を発表した。

メカニズム的には前作のM1951で採用したワルサーP38のプロップアップ式ショートリコイルメカニズムを受け継いでいるが、これは特徴的なスライド形状により他の方式を取れなかったという面もある。しかしその上面を切り取った特徴的なスライドは、軽量化によりスライド後退時の衝撃を和らげ、エジェクションポートの拡大によりジャミングを防ぐ効果もあった。この形状により耐久性が無さそうに見えるが、適切な熱処理を施すことで十分な強度を持たせることが出来る。

またベレッタM92は、1978年から始まり長期に渡る米軍制式採用トライアルをくぐり抜け、1985年にシグ・ザウエルP226を破って(納入価格が安かったことが決め手と言われている[要出典])米軍制式採用の座を射止めることとなる。この際に米軍から「M9ピストル」の制式採用名が与えられた。これにより一気に人気が高くなり、各国の軍や警察組織、民間市場でも一躍人気銃となる。またこのトライアルの際に出された改善要求を逐一クリアしたことによって、ベレッタM92はより優れた拳銃へと進化した。

しかし、米兵の射撃訓練中に、スライド後部が千切れ、それが射手を直撃する(スライド上のフロントサイトとリアサイトを目標に重ねるようにして狙いを定めるという拳銃の性質上、射手の頭部など)という事故が発生した(後述)。この事故を受け、ハンマーピン(ファイアリングピン)の頭を大型化し、スライドに食い込ませることで、万が一千切れても射手に飛んでくることを防止したモデルが発売された。これが現在のM92FSである。

だが、「スライドが弱点」というイメージは払拭できておらず、しばしば根強いベレッタ批判者や他社によるネガティブキャンペーンの材料にされる。

ベレッタPx4 storm

現在でもベレッタM92は自動拳銃のスタンダードとされており、コピー品が多数存在する。しかし、1990年代に開発されたポリマーフレームのピストルと比べると、M92のスチールスライド+アルミフレームという構造が時代遅れであるという事実は否定できない。また、スタンダードとなったが故に、ベレッタ社は新型の自動拳銃のデザインをM92系の流れを汲むものにしないと「ベレッタらしくない」と不評を買いがちになるという問題も発生している[要出典]。このデザインはM1934で完成し受け継がれたものだが、それだけこのデザインがファンにとって大きな印象を与えている証拠である。

なお、ベレッタ社自体もポリマーフレームの新機種としてM8000の後継となる「Px4 storm」、M92の後継となる「90-Two」を発売している。Px4はM92系とは違ったデザインや動作機構を持つため、やはり「ベレッタらしくない」としてベレッタファンからは不評であるものの、それ以外のユーザーからは好評のようである[要出典]

[編集] トライアル

次期米軍制式採用拳銃のトライアルで、NATO標準の9mmパラベラム拳銃が必要になったアメリカ軍が、往年の名銃コルト・ガバメント(M1911)に替わる十分な性能を持った拳銃を選抜するために行った試験。これに合格するということは「米軍のお墨付きがもらえる」ということであり、商業的価値も大きいといえる。実際にベレッタはM9として米軍に321,260丁もの数を納入し、その後フランス軍と110,000丁ものライセンス契約も結んでいる (PAMAS-G1) 。この他にも各国の軍や警察関係での採用も多い。

[編集] 1978~1980年のトライアル

このトライアルはアメリカ空軍限定のものであり、アメリカ全軍のトライアルではなかった。しかし、時期的に軍首脳部の注目が集まったのは言うまでもない。このトライアルでは、参加各社から提出された8モデルのうちベレッタM92が最も優秀であるとの結論が1980年に下された。しかし、このトライアルはアメリカ全軍へのトライアルとして拡大されることになり、先の決定は白紙に戻ってしまう。

[編集] 1981年のトライアル

このトライアルでは新たに軍が要求するスペックが提示され、その難易度の高さに参加を取りやめるメーカーも少なからず存在した。結局期日までに提出できたのは2社(ベレッタ社・S&W社)のみであり、期日は延期されることとなる。

二回目の期日では4社が提出し、SIG社からは最後までベレッタM92と争うことになるP226が提出された。しかし、このトライアルの結果は「先の要求を満たすものは存在しない」というものであった。

[編集] 1984~1985年のトライアル

1984年に再開されたトライアルにはベレッタM92とシグザウエルP226を含む7モデルが提出され、最終的にM92とP226の一騎打ちとなったが、裁定は再びM92に下った。このトライアルをもって今回の米軍制式採用ピストルは決定し、M92はその栄誉を受けることとなる。

なお、このトライアルにおいてテストが不公平であるとした数社が裁判を起こしたが、いずれも公平なテストであったとの裁定が下っている。しかし、自国外の銃器メーカーに対する風当たりは強く、M92より割高だが性能と操作性で勝っていたとされるP226が敗退したこともあって「M92は政治的理由によって勝ち残ったに過ぎない(SIG社のあるスイスはNATO加盟国ではなく、ベレッタ社のあるイタリアはNATO加盟国であり米軍基地を作る計画が進行していた)」とする説も根強く残っている。

なお、基本的にM92もP226も米軍の要求をパスしており、「より良いものがあるならばそちらを採る」のか、「要求は満たしているのだから安いほうを採る」のかは、一般人の間では今でも議論になる。ただ、軍用銃というのはコストパフォーマンスが第一であり(使用機会の少ないサイドアームである拳銃はなおさら)、米軍がM92を選択したのは妥当な判断ということも出来る。

また、M92はP226に比べて、安全措置を多く用意している。例えば、シングルアクションでも比較的遊びの多いトリガーや、グリップを握った際の親指から離れた位置にあるスライドセイフティなどがそれである。これらはP226のように、最初からセイフティを廃してデコッキングレバーのみにしたり、シングルアクションでのトリガープルを可能な限り軽くしている銃に比べると、迅速な射撃の妨げになるが、逆に不注意で事故を起こす可能性は減少する。故にアメリカ軍では、充分な訓練時間を割ける特殊部隊ではP226を、拳銃を重要視しない兵士にはM92を支給するなど、ある程度住み分けを行っている。

[編集] スライド破損事故

1987年9月と1988年1月・2月に一件ずつ、合計3件発生した「スライドが破損して破損部分が射手の顔面に当たる」という事故である。事故の被害者がいずれも海軍特殊戦グループ(Navy SEALs特殊部隊)のメンバーであったため、「強装弾(通常より火薬量を増やした弾)の使用など、わざと過酷な条件下において壊した」とする説[1]も出されたが、一方「もとから欠陥があった」とする説もあった[要出典]。事件を重く見た米軍は調査を進め、

  • 使用弾はNATO標準弾であったこと
  • 何らかの理由でスライドの製造過程において強度が足りないまま出荷されてしまったこと

を発表した。

なお、米軍に納入されるベレッタM92は全てベレッタUSAで生産したものとされていたが、品不足のためイタリアから納入されたものもあった。今回の事故で破損したのは、いずれもイタリア製のスライドであったことが後に発覚した[要出典]

ベレッタ社はこれに対し、破損箇所に適切な熱処理を確実に加えることによって対応した。これにより同様の破損事故は以降発生していない。

[編集] 第四のトライアル

1988年、先のトライアルを再度実施するとした名目のトライアルが行われた。しかし、既に性能的に合格しているベレッタとSIGは提出を拒否し、結局先のトライアルで敗退したS&Wと前回の提出に間に合わなかったスターム・ルガーが参加した。ベレッタM92に関しては既に米軍内にあったため、これを無作為に抽出してテストを行った。その結果、ベレッタM92はまたしても最優秀とされ、S&Wのモデルはトラブルを起こして敗退、スタームルガーは性能的には合格したが、今更変えるほどの価値は無いと判断された[要出典]。これにより、ベレッタUSAは57,000丁の追加受注を受けた。なお、このトライアルにより「標準スライドが10万発の使用に耐える」という決定的な評価を与えられたが、未だにスライドに不安があるというイメージは払拭しきれていない。

[編集] M92のバリエーション

[編集] M92

M92シリーズの最初のモデル。写真のM92FSとの違いは、安全装置がフレームについていること、マガジンキャッチがグリップ底部についていること、トリガーガード前方に指掛けがないこと、マガジン底が薄いことである。

[編集] M92S

M92の安全装置をスライドに移したモデル。

[編集] M92SB

M92Sのマガジンキャッチを、グリップのトリガーガード付け根に移したモデル。米軍の初期トライアルに提出され高い評価を得た。いくつかのタイプが米国等で市販されている。

[編集] M92F

M92SBのトリガーガード前方に指掛けを追加し、マガジン底を分厚くしたのが、M92SB-F、すなわちM92Fである。M9として米軍制式拳銃として採用される。

[編集] M92FS/M92FS Inox

M92、M92S、M92SB (M92S1) 、M92SB-F (M92F) と続いたベレッタM92の最新の型である。万が一前記のような事故が起こったとしても、破損したスライドが射手に当たらないようにハンマーピンの頭を大型化しスライドに食い込ませることで対策したモデルで、現在はM9もFS型に切り替わっている。

なお、Inoxとはイタリア語でステンレスのこと。

[編集] M92FS Vertec/M92FS Vertec Inox

M92FSの特殊部隊・法執行官モデル。主な変更点は以下の通り。

  • グリップ後部のふくらみが無くなり、握りやすくなった。
  • M92でスライドから出ていたバレル先端が切り取られ、全長の短縮が行われた。
  • フレーム前方下部に20mmマウントレールが設置され、フラッシュライト等のオプションを装備できるようになった。
  • 日本国内では、警視庁大阪府警察特殊犯捜査係(通称SIT、MAAT)等が使用している。

[編集] M92 Elite

  • ブリガディアスライドを装備している。
  • M92でスライドから出ていたバレル先端が切り取られたことでホルスターから抜きやすくなった。また、銃身がステンレス製となった
  • グリップ上部を窪ませ、グリップしやすい形状になった。
  • ロックタイムの短縮を狙ったスケルトンハンマーの使用。ハンマーを肉抜きし軽量化した。
  • ノバックサイトの採用。
  • マガジン底にマグバンパーを追加。

[編集] M92 Elite II

M92FSをより使いやすいように改良を施したモデル。主な変更点は以下の通り。

  • ステンレスのブリガディアスライドを装備することにより、さらに耐久力をあげている。

 他はM92 Eliteとほぼ同じ。

[編集] M92 Elite IA

2002年のショットショーで登場したM9を更に使いやすくした改良モデル。上記のElliteIIとは兄弟分に当たるといって良い。主な変更点は以下の通り。

  • グリップが直線的になり、また、マガジンもダブルカラムからシングルカラムになった事により握りやすくなった。
  • ブリガディアスライド(ステンレス)を装備
  • スケルトンハンマー装備
  • ノバックサイトの採用
  • レーザーやライトを装備出来るアンダーマウント付きフレームになっている。

また、エリートIAはブラックボディが特徴的であるが、シルバーモデルも存在する。

[編集] M92DS/M92D

M92のダブルアクションオンリーモデルで、デホーンド・ハンマーとなっている。また、M92Dにはスライド後部のセイフティが無い。

[編集] M92 Compact L

M92のコンパクトモデルで、装弾数10+1発。このモデルもM92でスライドから出ていたバレル先端が切り取られ、全長の短縮が行われている。

[編集] M92FS Brigadier/M92FS Brigadier Inox

後述のブリガディアスライドを装備した、強装弾対応モデル。

[編集] M9A1

M9のフレームを、アンダーマウント付きにしたモデル。グリップ前方の滑り止めの形状も異なる。

[編集] 90-Two

M92の後継発展型として設計・製作された、詳細はベレッタ90-Twoを参照。

PAMAS-G1

[編集] ライセンス生産

M92のライセンス生産品。

[編集] M96FS

ベレッタM92の.40S&W弾使用モデルで、装弾数は10+1発。基本的なサイズはM92FSと変わってないが、弾の口径が大きくなったぶん装弾数は減っている。また、エジェクションポート大型化に従い、チャンバーとスライドの肉厚が薄くなっている。

M96にもM92と同じバリエーションが存在するが、M96コンパクトだけは無い。

[編集] M98

ベレッタM92の9mm×21 IMI弾モデル。装弾数はM92と変わらない15+1発である。

[編集] ブリガディア(ブリガデール)スライド

M92は、そのスライドのデザイン上、ロッキングブロック周辺の強度が一番低い。これは、強装弾を使用した場合問題になってくる。そのため強装弾に対応したモデルは、ロッキングブロック付近が盛り上がったデザインになった「ブリガディア(ブリガデール)スライド」を採用している。

[編集] 登場作品

米軍制式拳銃であり、法執行機関でも制式採用しているところが多いことから、現代の戦争や警察を題材としたジャンルでは最もよく登場する拳銃のひとつとなっている。また、M92はマニュアルのセイフティが左右両側についており、更に容易にマガジンキャッチ・ボタンの向きを左右に変更可能なので左利きの人にも対応できる。このためダイ・ハードシリーズのジョン・マクレーンのように左利きの人が多く使用しているのも特徴である。マガジンキャッチはグリップを外すことで左右を入れ替えることができる。

詳細は「ベレッタM92が登場する作品の一覧」を参照

[編集] ベレッタM92の遊戯銃

ベレッタの商標使用権は、日本の遊戯銃メーカーウエスタンアームズによって独占されており、ウエスタンアームズ、及び同社とライセンス契約を結んだメーカー(SIISや以前のマルシン工業等)以外は本体の刻印を忠実に再現した遊戯銃を販売することができない。このため、軍用銃であるために商標登録されていないことから、M92FS、M92FSの軍用モデル(M9、M92Fミリタリーモデル、PAMAS-G1等)を製品ラインアップに加えているメーカーが多い。

ウエスタンアームズ製の遊戯銃は伊ベレッタ社のミュージアムルームに展示されている。

[編集] 参考文献・脚注

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  1. ^ 床井雅美 『オールカラー軍用銃事典』 並木書房、2005年。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

ウィキメディア・コモンズ