照準器

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マークⅢ光学照準器

照準器(しょうじゅんき、:sight)は、火砲などの射出式武器兵器の狙い(照準)を定めるための装置。照準器は射手との接点のため、命中率を大きく左右する要素である。照準具(しょうじゅんぐ)、サイト(sight)などとも。

銃の照準器[編集]

銃火器)においては大きく分けて以下の2種類の照準器が存在する。

アイアンサイト(Iron sight)[編集]

オープンサイト
拳銃に装備されたオープンサイト
主に拳銃に標準装備されている、もっとも単純な照準器。銃身前方の銃口付近にある凸型の照星(しょうせい、フロントサイト)を目標に合わせ、後方の凹型の照門(しょうもん、リアサイト)の溝の間に見えるようにして狙う。
ネジを締めたり緩めたりして、銃の状態に合わせて照門を調整できる物もある(アジャスタブル・リアサイト。フロントは機種によってはいくつかの高さが異なる物が用意されていることがある)。
ピープサイト
M16アサルトライフルのピープサイト
主に小銃に標準装備されていることの多い照準器。環孔照門(かんこうしょうもん)などとも。基本はオープンサイトと同じだが、照門が溝ではなく穴になっている(ピープ=覗き)近・中距離の精密射撃(狙撃)に適している[1]
ゴーストリングサイト
ピープサイトの照門の穴を大きくしたもの。近距離での狙いの精密さより素早さを優先したCQB(近接接近戦闘)に適したピープサイトである。照準時に照門がぼやけ、お化け(ghost)のような輪(ring)に見えることからこの名が付いた。
マイクロサイト
エアライフルのマイクロサイト
主にエアライフルなど競技銃に装備されている照準器。バックラッシュの除去などピープサイトの精度を上げ、より細かな調整機能を持たせた物。アイリス(照門のピープ部)をサイズの違う物に交換したり、偏光・着色フィルターを装着する機能を持たせた物も多い。ポストタイプまたはリングタイプの照星と組み合わせて使用する。通常のピープサイトよりさらに精密な照準が可能だが、極端に視野が狭いため標的射撃専用である。
バックアップアイアンサイト(BUIS back-up iron sight)
光学照準器が破損・故障等で使用不可能になった際に用いるアイアンサイト。光学照準器使用時に邪魔にならないよう折りたためるものもある。光学照準器の装着を前提にした銃の中には、BUISとしての側面を重視したアイアンサイトを備えたものもある。

オプティカルサイト(Optical sight)[編集]

光学照準器(こうがくしょうじゅんき)とも。

テレスコピックサイト
倍率が4倍のテレスコピックサイト(スコープ)
主に狙撃銃に装備され、長距離精密射撃(狙撃)を目的とする望遠鏡機能を持つ小型の照準器。
狙撃眼鏡(そげきがんきょう)・照準眼鏡・眼鏡[2]スコープなどとも。眼鏡を覗いたときに見えるレティクル(照準線)を目標に合わせて狙い、目標とレティクルの双方に眼の焦点を合わせる事ができる。レティクルにはさまざまな形状があり、十字線からなるクロスヘアが一般的だが、その他の形状としてはマウザーKar98kモシン・ナガンM1891/30(各狙撃銃型)のT字や、ステアーAUGに見られるサークル(円)、H&K G36のようなクロスヘアの中心がサークルといったものがある。眼鏡には射撃距離などを調整する(アジャスト)機能は有している物が多いが、九七式狙撃銃九九式狙撃銃(九七式狙撃眼鏡・九九式狙撃眼鏡)などはアジャスターを有せず、狙撃時はレティクルの縦目盛を使用した。同狙撃銃は生産時に造兵廠にてゼロイン調整を行ってから出荷・配備しており、複雑なアジャスターがない利点として眼鏡は小型・頑丈となっている。
着け外しする度に調整が必要になってしまうため、一度固定したらそのまま運用しその場合も定期的に調整をするのが原則であるが、行軍・移動中は眼鏡の破損などを考慮して銃本体から外される場合もある。
また、最近ではエッチングなどレティクル製造技術の進歩により測距用のスケールや距離による照準の補正目盛りなど複雑な機能を持たせた物も多い。
通常は精密射撃を行う狙撃銃に装備されるが、低倍率のスコープが標準装備ないし装備可能なアサルトライフル短機関銃重機関銃軽機関銃も多数存在する。
第二次世界大戦初期頃にかけては戦闘機軽爆撃機攻撃機といった軍用機の固定航空機関銃砲の照準器としても広く用いられていたが、空気抵抗の増大と視界の狭さという欠点のため光像式に移行していった。
暗視装置
テレスコピックサイトの一種であり、特に夜間の視野確保のための装置。暗視装置の開発当初は小型化が難しかったため銃本体に取り付けられていた。初期の物であるドイツ国防軍StG44用の暗視装置ZF.1229'Vampirは、赤外線眼鏡と赤外線投光器、さらに電力供給用のバッテリーパックで構成されていた。これらは眼鏡と投光器が約2kg、バッテリーが約13kgとかなりの重量であった。アメリカ軍M2カービンに暗視装置を取り付けたM3カービンを開発したが、重量が嵩み過ぎること(細い銃に金属の大きな塊が付いたも同然になる)、赤外線投光器により自身の位置を暴露してしまうこと(相手も暗視装置を持っていた場合は、発光部が真っ白に浮かび上がって見えることになる)などから採用されなかった。暗視ゴーグルの配備が進んだ現在では、狙撃用モデル以外はほとんど見られない。
レーザーサイト
直進する性質を持つレーザー光を直接目標に当てて狙う照準器(ドットサイトも、機種によってはレーザー光を使用しているが原理が違うため別分類になる)。他の物とは違い、肩つけ以外の姿勢でも狙いを付けられるのが利点であるが、必中は期待できないため連射可能なアサルトライフルや短機関銃に組み合わされることが多い。
可視光を使用したものでは光線によって敵に存在を知らせる事に繋がるため、赤外線レーザーを使用したタイプもある(暗視装置を使用すると見える)日本法律ではレーザーポインターと同じ扱いを受ける(原理的には全く同じである)。
かつては映画『ターミネーター』の宣伝ポスターに登場したように、スコープ並の大きさだった[3]が、近年では部品の小型化が進み、拳銃銃口下に取り付けるタイプやグリップパネル内蔵型、自動拳銃のリコイルスプリングガイド内蔵型も実用化されている。
光像式
光像式の一〇〇式射撃照準器を搭載した一式戦「隼」二型(キ43-II)
ハーフミラーなどを用い(無限)遠方に照準用の光像を投影する。光像には十字線、円環、円状に並んだ光点などが用いられる。戦間期に開発・実用化され、従来の眼鏡式(テレスコピックサイト)に代わり軍用機の固定航空機関銃砲の照準器に使用され始めた。また、第二次大戦後期には目標の未来位置を計算し、見越し角(リードアングル)を自動的に加えるジャイロ式が開発・使用され、戦後にはレーダーと連動するものが実用化されている。 後にベトナム戦争の時期から1970年代以降にはより多くの飛行、攻撃用の情報を映し出すヘッドアップディスプレイ(HUD)が開発され以後主流となった。
ドットサイト(ダットサイト)
M4カービンのアッパーレシーバに取り付けられたドットサイトと、その後ろで折りたたまれたバックアップアイアンサイト、ハンドガード側面に取り付けられたレーザーサイト
光像式の一種で、特に小火器に装着され、照準用の光像が点(ドット)状の物がこう呼ばれ、赤色のドットを表示するものは特に「レッドドットサイト」とも呼称される。覗いたときに見える光のドットに目標を合わせて狙い、アイアンサイトやピープサイトが照星、照門を合わせるのに対し、こちらは単純に点に合わせるだけなので、素早い照準が可能となる。
ドットサイトの光学構造
ダットサイトは、原理的には光源から発せられた光をハーフミラーに投影することで実現している。構造が複雑で、LEDレーザーなどを用いた機種ではバッテリーが必要なためメンテナンスが必要、トリチウムの蛍光を利用した機種には寿命があるなどの欠点がある。スコープのように筒型の外装を持つチューブ式と、外装を持たず、むき出しになったレンズにドットを映すオープン式の二種類がある。
ブースター(マグニファイア)
ドットサイトの後ろに設置することで、通常無倍であるドットサイトに倍率を与える拡大鏡。倍率の有無を使い分けるために、ワンタッチで付け外しが行えるマウントによって設置される。
ホログラフィックサイト(ホロサイト)
ホログラフィックサイトの光学構造
EOTech 512 ホログラフィックサイト
ホログラフィックサイトでは、ホログラフィーを用いたレンズにレーザーで像を投影する。そのため、レンズやハーフミラーを使用するドットサイトと異なり、レンズに多少ダメージや汚れがあっても問題なく使用することができる。

火砲の照準器[編集]

砲身後座式装輪砲架においては、砲身の方向は砲架の旋回によって付与し得るが、架尾を固定したまま砲架の一部を移動し、迅速かつ容易に小角度の方向移動をする必要があり、このため通常は照準器を小架と揺架との間に装置し、垂直軸を中心に揺架よりも上を移動させ、砲身に方向を付与する。また、大架と小架との間に装置し、小架の軸を中心に小架よりも上を移動させる物、架身と車軸との間に装置し架尾を中心に大架よりも上を車軸上に移動させる物がある。

固定砲架においては、照準器を架匡と匡床または砲床、もしくは砲架と架匡との間に装置し、架匡よりも上もしくは砲架よりも上に旋回させ、砲身に方向を付与する。

採用された方向照準機は、その様式は一様ではないが、主要なものを以下に挙げる。

調整[編集]

四種類のゼロイン距離が刻まれたH&K G36用の照準器
1. 200mでの狙点
2. 200m先をおおよそ8km/hの速度で左から右に移動する目標を射撃する際の狙点
3. 円(400m先の1.75m等身大)
4. 200m先をおおよそ8km/hの速度で右から左に移動する目標を射撃する際の狙点
5. 水平線
6. 400mでのおおよその狙点
7. 600mでの狙点
8. 800mでの狙点
9. Xm(200, 400, 600, 800m)における1.75m等身大の指標

弾丸などの投射物が放物線を描くのに対し、光は直進する。そのため狙点(狙いを定めた点)と着弾点は一致させることが難しい。そこで照準器の調整はある距離で狙点と着弾が一致するように合わせる。これができた状態をゼロイン(Zero-In)という。「30mでゼロイン」という場合、標的と射手の距離が30mのとき狙点と着弾が一致するということになる。

一部には複数のゼロイン距離が刻まれた照準器も存在する。これは中央の狙点を調整するだけで、複数の着弾点が利用できるのが特徴であるが、銃の種類ごとに特性が違うため、基本的にその銃専用である。

脚注[編集]

  1. ^ 長距離精密射撃では目標との距離に差があり過ぎて焦点が合わず照準は困難となる
  2. ^ 「狙撃眼鏡」・「照準眼鏡」・「眼鏡」は、旧日本軍自衛隊での呼称
  3. ^ ターミネーターがAMTハードボーラーの上部にマウントしていたもの。当時としてはあのサイズでも小型の部類だった

関連項目[編集]