ドリル (工具)

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ドリル (drill, drill bit) は、回転する動作によって、物に円柱の形のを開ける工具である。物を削る、つまり切削という加工をするための工具である。切削工具の一種であり、また、の一種である。

ドリルとドリルビットをまとめてドリルと称することもあるが、ドリルビットのことをドリルと呼ぶのは間違いである。ドリルビットとは、穴を開ける対象物に接する部分を持つ部品である。ドリルビットは、ドリル刃とも呼ばれる。ドリルは、ドリルビットを固定し、また回転する力をドリルビットに与えるための工具である。ドリルがドリルビットを固定する部分は、チャックと呼ばれる。ドリルビットのうち、ドリルのチャックによって固定される部分は、「シャンク」と呼ばれる。シャンクの形状は、細長い金属製の棒であり、ほとんどの場合、円柱または六角柱である。

ドリルビットは穴を開けるときに回転するので、回転軸を持つ。ドリルビットの回転軸の一方の先端は、物を削る部分であり、もう一方の先端は、シャンクである。ドリルビットの物を削る先端のほうには、金属製の刃があり、この刃が回転することにより、物を削る。ドリルビットは、穴の直径によって、また穴を開ける物の材質によって、さまざまな物がある。一つのドリルのチャックには一つのドリルビットしか取り付けることはできず、二つ以上のドリルビットを同時に一つのチャックに取り付けることはできない。ドリルビットは交換して使うことができるので、たいていの人はドリルよりもドリルビットのほうをたくさん所持している。ドリルビットは、電気ドリルまたは手動のドリルのチャックに取り付けて使われる。

ドリルビットの直径は、ミリメートル単位か、またはインチ単位である。

材質[編集]

ドリルは、切削性能だけではなく、耐熱性、耐摩耗性、じん性を考慮した材料が使用されている。工具鋼や超硬質合金などを用いるほか、焼き入れ窒化処理、チタンなどをコーティングする処理などによって特性を改善し、総合的な性能向上を図っている。掘削工具用になると、機械構造用鋼なども使われる。

法律による制限[編集]

日本では、ドリルは特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律(ピッキング防止法)の「指定侵入工具」に該当する場合がある。業務その他正当な理由による場合を除いて、隠して携帯すると処罰の対象となる。

ツイストドリル[編集]

各種ツイストドリル

丸棒に切りくず排出用の螺旋(らせん)状の溝が2本切られ、円錐型に尖らせた先端に一対の切れ刃が設けられる。 この切れ刃は中心で交わらず、それぞれの逃げ面が先端で峰を形成する。これを「チゼルエッジ」と呼び、この部分には切れ刃が無い。正確に穴の位置を定めるためには、被削材にチゼルエッジの幅よりも大きな径の円錐状の窪みを予め加工しておく必要がある。この作業は通常、「センタ打ち」などと呼ばれる。 チゼルエッジの幅はウェブの厚みに比例し大きな径のドリルほど大きくなるため、これを小さくする(あるいは無くす)ためにシンニング (thinning) 加工を施す。 金属などの深穴加工用ドリルでは、ドリル先端の切削点へ切削油が確実に届くようにするために、ドリルの内部に先端まで貫通したオイルホールを持つものがある。

柄の形状[編集]

ツイストドリルのシャンクには、主に以下の様な形状がある。

ストレートシャンク
円筒状の柄は、ストレートシャンクと呼ばれ、この径は一般にはドリルの呼び径と同一寸法である。この柄を持ったドリルは、ストレートドリルと呼ばれる。
エンドミルシャンク
エンドミルシャンクはストレートシャンクの一種であるが、呼び径より太い径の柄を持つ。エンドミルにおいて一般的に用いられる6mm、8mm、12mmといった径が使われ、コレットチャックによる強力で精密な把握が可能である。
ノス型
ノス型はストレートシャンクの一種であるが、呼び径より細い径の柄を持つ。一般的なハンドボーラ(ハンドドリル)のチャック有効把握径は10mmあるいは13mmであるためストレートドリルではこれより大きな穴あけは行えない。このときノス型のドリルを用いればチャック有効径より大きな穴あけが行える。
テーパシャンク
円錐状の柄をテーパシャンクと呼ぶ。この形状の柄を持つドリルは一般にテーパドリルと呼ばれるが、これは「テーパの付いた穴をあけるドリル」を意味するものではない。
SDSプラス、SDS-max
SDS-maxシャンク
ボッシュの開発した特殊な形状のシャンクでハンマドリルなど強力な穴あけに用いられる。SDSとはドイツ語の Steck, Dreh, Sitzt (差し込み、回すと、固定される)の略[1]であり、簡単に強力な把握が可能で振動にも強い。

溝の長さ[編集]

スタブ (stub)
穴の径に対して3倍以下の深さの、浅い穴に用いられる。
レギュラー (regular)
穴の径に対して5倍以下の深さの穴に用いられ、これが標準的な溝長である。
ロング (long) 、エキストラロング (extra-long)
これらは、穴の径に対して5倍より深い穴に用いられる。こうした非常に長いドリルを使用するには、「ガイド穴」と呼ばれるドリルを被削材に導き入れるための加工を予め施す必要がある。

超硬ドリル[編集]

ツイストドリルの先端に超硬合金のチップを取り付けたもの。コンクリートなど脆性の低い被削材の穴あけに適する。先端にツイストドリルのような切れ刃はなくタガネのような形状となっている。これに振動ドリルやハンマドリルで軸方向に衝撃を与えることにより被削材を砕き穴を空ける。 超硬合金製のツイストドリルのことを指す場合もある。

超硬ドリル

コアドリル[編集]

ツイストドリルは穴容積分の被削材をすべて切りくずとして排出するが、コアドリルは穴の外周部のみを削り取り中心部(コア)をくり抜くものである。このためツイストドリルに比べて大きな穴を短時間で空ける事ができる。建物の壁に配管用の穴を空ける場合に用いられることが多い。

コアドリル

半月ドリル[編集]

切刃を付けた丸棒の片側半分を削り落としただけのものである。一般的にツイストドリルと比べると強度が劣るといわれる。しかし、この形状からドリル溝を切りくず排出に利用できる特性を持つため、一部の被削材に対しては、効果が認められる。半月ドリルはすくい角を持たず、0°であるため、切削の際に通常のドリルより切削抵抗が高くなる傾向がある。

ガンドリル[編集]

半月ドリルの一種で直線状の溝を持ったものである。

ホールソー[編集]

コアドリル同様に穴の外周部のみを削り取るものであるがこちらは薄板用である。

ホールソー

ステップドリル[編集]

ステップドリルは多数の円筒切れ刃を段階的に設けることにより円錐形の外形としたものである。主に薄板の穴あけに用いられ、任意の段で送りを止めることにより広い範囲の大きさの穴あけが可能である。その形状から、「ドリル」とも俗称される。

ステップドリル

木工用スペード・ビット[編集]

木工用スペード・ビット(: spade bit)は、板錐(いたぎり)とも呼ばれる。大創産業が運営する100円ショップでは、「平ベタ ドリルビット」という商品名が付けられて売られていた。木材に貫通する穴を作るために用いられる。木工用スペード・ビットの先端に近い部分の形状は、平らな金属板になっていて、回転軸の中心の先端は突き出して尖っている。その平らな金属板の中央付近に、小さな穴が開けられていることが多いが、この穴の目的は、例えば壁のようなところの向こう側に人が行けなかったり手が届かない状況において、壁に貫通した穴を開けた後、ドリルの回転を止めて、壁の向こう側に突き出た木工用スペード・ビットの穴に、壁の向こう側にあるワイヤーやケーブル等を通し、その後ビットの先端を壁から引き抜くことにより、壁の向こう側にある細長い物の先端を壁の自分側に引き寄せることである。先端から遠い部分の形状は、細く長い棒であり、その直径は、ドリルで開けられる穴の直径よりも、短い(細い)ことが多い。木工用スペード・ビットの軸の先端部分が飛び出しているので、木材を貫通させずに途中まで穴を開けようとすると、穴の中心部が深い穴になってしまう。穿孔の際、木工用スペード・ビットが木材の裏側から出るときに、木の裏側の表面を荒らしがちである。鉄工用スペード・ビットの構造は木工用スペード・ビットとは違う。

木工用スペード・ビット

脚注[編集]

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  1. ^ Journal of Bosch History 2007

関連項目[編集]