チェーンソー

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チェーンソー
チェーンソーの刃

チェーンソー: chainsaw, chain saw)は、多数の小さな刃がついたチェーンを動力により回転させてと同様に対象物を切ることができる動力工具の一種。日本語では鎖鋸(くさりのこ)という。

構造[編集]

一般的なチェーンソーは、本体とカッティングアタッチメントから構成される。互換性があれば、異なる種類の本体とカッティングアタッチメントを交換して使用できる。

本体[編集]

本体は動力を発生させるエンジン(またはモーター)とその制御装置、使用者が機械を保持するためのハンドル、燃料タンク(またはバッテリー)、チェーンオイルタンク、各種の安全装置とそれらを格納するケースからなる。

  • 制御装置:右手で保持するほうのハンドルに取り付けられたトリガーを引くことで回転数を制御する。このトリガーはエンジンチェーンソーの場合はキャブレターの開き方を、電動チェーンソーの場合はモーターの回転数を加減する。他に、エンジンを停止するためのスイッチや、エンジンを始動するときに用いるチョークを操作するレバーがあり、これらはハンドルを持ったまま右手で操作できるような位置に取り付けられている。
  • ハンドル:2つのハンドルがあり、利き腕の左右に関わらず、前のほうのハンドルを左手で、後のほうのハンドルを右手で握る。
  • 燃料タンク:ガソリンとエンジンオイルを混合した燃料を入れる。詳しくは2ストロークエンジンの項を参照。
  • チェーンオイルタンク:エンジンオイルとは別に、チェーンを潤滑するオイルを入れる。チェーンオイルは使い捨てで、チェーンの回転に応じてタンクから吸い出され、チェーンを潤滑する。オイルは遠心力によって切削した木(おがくず)などと一緒に外部に廃棄される。チェーンオイルには鉱物油由来のもののほかに、生分解性を持つ植物油由来のものがある。
  • 安全装置:回転中に切れて飛んだチェーンを受け止めるハンドガード、チェーンキャッチャー、チェーンの回転を止めるチェーンブレーキ、エンジンの振動が手に伝わらないようにする防振スプリング、防振ゴムが含まれる。
  • ケース:金属、またはプラスチックのケースで、いくつかの部分は内部の機構を調節、清掃できるように取り外せる。

カッティングアタッチメント[編集]

エンジンやモーターで発生された動力を受けて回転するソーチェーンと、チェーンを誘導するガイドバーからなる。

  • ソーチェーン:ソーチェーンは、木を切るカッターと駆動力を受け止めるドライブリンクをいくつも連ね、タイストラップで相互に連結してエンドレスにしたもの。
  • ガイドバー:長さおよそ30~60cm、幅およそ10cm、厚さおよそ4mmの金属板で、厚み部分には幅およそ1mmの溝がある。この溝にドライブリンクの突起を差し込み、ソーチェーンを巻きつけて本体と接続する。

ガイドバーとソーチェーンは長さ、形状、得意とする作業種類ごとにいくつかの異なる種類が製造されている。行おうとする作業(太い木を伐採する、細い木を伐採する、木から枝を払い落す、丸太を切る、彫刻をする、など)や持ち運びやすさ(庭で使用するのか、山林内を移動しながら使用するのか)に応じて最適なガイドバーとソーチェーンを選択し、同じ本体に取り付けることが出来る。

メンテナンス[編集]

  • チェーンソーの刃はその形式によっても違うが、一般的には断面が円形で棒状の丸やすりを使って研ぐことで、新品同様の切れ味を回復させる事ができる。この研ぎ方の巧拙により、刃の切れ味・ひいては作業効率が大幅に違ってくる(例:丸太の切削時間に差が出る)。このチェーン刃は製造の際に高い技術力が求められる。

安全対策[編集]

1960年代後半、チェーンソーの過度な使用による白蝋病が問題となり、労働安全衛生法により振動加速度が29.4m/s2(3G)以下とすることが決められた。もっとも現在の機種では、グリップ・ハンドル部分とエンジン部分との間に、振動を緩和するゴム素材が挟み込まれているものがほとんどである。

チェーンソーでの作業時間も、日本では1日あたり最大2時間までという制限が労働省(当時・現在の厚生労働省)の通達で定められている(『チエンソー取扱い業務に係る健康管理の推進について』の別添2で規定(昭和50年10月20日基発第610号)。ただし近年ではチェーンソーの技術的改良・および国際的"日振動ばく露量"の算定基準化もあって、新基準で造られたチェーンソーに於いては1日あたりの作業時間制限が緩和されることもある[1]

チェーンソーを扱う際は、このように適切な保護用具を装着するのが原則である

また、実際の使用に際しては、作業用ヘルメット、チェーンソー用防振手袋、防護めがね(ゴーグル、おがくずの飛散対策)、上下長袖の作業服(回転刃が触れた際の怪我の防止など)、チェーンソー用チャップス(作業中に誤って作業者が転倒したり、あるいは勢い余った際にチェーン刃で脚を切ったりしないため)、イヤープロテクター林業安全靴などの着用が望ましい。

安全対策としては、「キックバック」と呼ばれる現象への対応が一番重要となる。キックバックはチェーンの先端上部90度位の部分を切断木材に当てた際、作業者側にチェーンソーが勢い良く戻る現象である。これにより、回転する刃が作業者の身体(特に脚)に触れ、大怪我をするケースが多い。キックバックでの負傷防止のためには、チャップス(前垂れ)などを着用する。 他にも、自分の目線以上の高さの物(枝など)を切ろうとするのは危険である。

キックバックなどの事態を想定して、現代のチェーンソーの本体には安全機構としてチェーンブレーキが付いている。これがないと、作業中の事故で致命傷を負う場合もある。また、法的には、チェーンブレーキがない場合は本業には使うことができない。チェーンブレーキを完備しているメーカーとそうでないメーカーでは重量、サイズも変わる。ドイツスチール英語版社、スウェーデンのハスクバーナ社のものは完備しており、日本のメーカーでも最近は付いているものが多い。

また、右手でグリップ・左手でハンドルを構えて使う現在の様式のチェーンソーは、一種のフェイルセーフ機構として右の手の平でグリップ部分の突起を押し込み、さらに人差し指でトリガー様のスロットルを引くことで、はじめてエンジンが動作するようになっている。

使用場面[編集]

チェーンソーカービング[編集]

木をチェーンソーで切ったり削ったりしてつくる彫刻、あるいはその制作過程を観客に見せるパフォーマンス。細かい造形ができるよう、先端を細くしたガイドバー(カービングバー)も製造されている。チェーンソーカービング英語版も参照。

派生[編集]

災害救助のため、鋼材を切断できるチェーンソーもある。

コンクリートソー[編集]

歴史[編集]

Chainsaw blade.jpg
チェインソーアートの例。伊太祁曽神社に奉納された物

その起源に関しては諸説あるが、最初のチェーンソーはおそらく1830年ごろにドイツ整形外科学者ベルナルト・ハイネ(Bernard Heine)によって作られた。この器具「オステオトーメ osteotome」は傾いた小さな刃のついたチェーンの環を持ち、骨の切断に用いられた。チェーンは、鎖歯車のクランクを回すことによって、ガイド部の周囲を移動する仕組みだった。

現代のチェーンソーの成立に大きく寄与したのは、ジョゼフ・ビューフォード・コックス英語版アンドレアス・シュティール英語版の二人である。後者は1926年にチェーンソーの特許を取り、1929年にはガソリンエンジンで動くチェーンソーを大量生産する企業を設立した。世界初のガソリン動力チェーンソーを開発したのはドルマー英語版社の創立者エミール・ラープ(Emil Lerp)であり(1927年)、彼も大量生産を行なった。ドイツ・FESTOOL英語版(フェスツール)社は1929年に世界最初のポータブル・チェーンソーの発売を開始した[2]。北アメリカのマッカラー(McCulloch)工業機器社もチェーンソーの製造を開始した。初期のモデルは重く、長く、二人で扱うように作られた道具であった。あまりに重いため、それらはドラッグソー英語版のように車輪を備えていることもあった。車輪つきの発電機から電線で動力を供給されるものもあった。

第二次世界大戦中にはアメリカ陸軍が前線でチェーンソーを使用した。両端を2人で抱える大型のものであったが、終戦後、日本を含めて各国でコピーが進み国産化への動きが活発になり、世界的に普及するきっかけとなった。1960年代になるとアルミニウム冶金技術とエンジン設計の進歩が、チェーンソーを一人で運べるほど軽くした。1970年代には前述の防振対策が進み、さらに一般に浸透する下地が造られている。2000年代に登場した最軽量のモデルは2.2kgしかなく、枝打ちなどに用いる手斧ノコギリの代替品としても用いられるようになった。しかし、スキッダーとチェーンソー作業者の大部分が起重機に取って代わられた地域もある。

日本では建築用材やパルプなどの木材需要が増加した戦後昭和30年代から普及し、集材機とともに林業の作業現場では欠かすことのできない機械となった。ただしこの時代のものはほとんどがアメリカなどからの輸入品であり(ポーランマッカラーなど)、本体の重量もエンジン式のものの場合、日本人の体格にとっては相当いかついものであった。 チェーンソーは、林業の分野においてはほとんど完全に、普通の手動鋸に取って代わった。サイズも多様化し、小は電動のものから大は「木こり用」鋸まで幅広い。軍事工学会ではチェーンソーを使う訓練を行なっている。

メディア[編集]

その甲高くうるさい稼働音(動力源が2ストロークエンジンなので、小排気量オートバイのような音がする)や勢いよく回転する刃といった、一種の暴力的なイメージからか、殺人拷問に使われる道具としてホラー映画スプラッター映画)の中では割とポピュラーな存在である。有名な作品として『死霊のはらわた』、『悪魔のいけにえ』、『テキサス・チェーンソー』などがある。派生作品の影響から『13日の金曜日』のジェイソンの武器とのイメージが強いが、ジェイソンはチェーンソーを武器として用いたことはない。

その他[編集]

ジャグリングのパフォーマンスでボールの他にクラブ、松明、刀剣、を投げるパフォーマーがいるが、更にチェーンソーを投げる者もいる(Michael Moschenなど)。当然、危険度は非常に高い。

プロレスラーのスーパー・レザー・フェイス[3](本名:トーマス・スピア)は、入場時に稼働したチェーンソーを振り回しながら客席を練り歩く。その結果、客は怯えながら逃げ惑う光景が演出そのものとなる。

ヨーロッパモトクロス会場では、一部の熱狂的な観客がバーおよびチェーンを取り除いてエンジン部分のみにしたチェーンソーを、チアホーンの代用品としてライダーの応援に使用している光景が見受けられる。

赤沢自然休養林(長野県木曽郡上松町)の施設内には『チェンソー導入の地』の記念碑と看板がある。

脚注[編集]

  1. ^ 安全衛生情報センター・チェーンソー取扱い作業指針について・および別紙
  2. ^ History of Festool
  3. ^ [1]

関連項目[編集]