マフラー (原動機)

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オートバイのマフラーの一例
自動車のマフラーの一例

マフラーアメリカ英語: muffler)とは、内燃機関エンジン)の付属部品の1つであり、排気ガス(排気)が外部へ排出される際の音(排気音)を低減する装置である。消音器サイレンサーイギリス英語: silencer)などとも呼ばれるが、これらの言葉から連想されるような完全に音を消すような装置ではない。また、エキゾーストマニホールドと併せてマフラーと呼ぶこともある。本頁では主に、自動車オートバイなどにおけるマフラーについて述べる。

目次

概要 [編集]

マフラーという言葉は、「(音などを)包み込む、あるいは鈍くする」という意味を持つ「muffle」に由来する。その由来の通り、マフラーの最も基本的な役割は、内燃機関(エンジン)の発する排気音の低減である。4ストローク機関2ストローク機関ロータリーエンジンディーゼルエンジンといった様々なエンジンの形式や方式に関係なく、排気音を騒音の一つとしてとらえ、これを低減して周囲への悪影響を抑えるものである。

その役割から、本来エンジンにとって必須の部品ではなく、理論的にはマフラーがなくてもエンジンは稼動する。しかし実際には、マフラーがないエンジンは爆発的な音量が連続的に発生し、実用的ではない。また、マフラーには騒音を低減すると共に背圧を発生させてエンジンの燃焼効率や出力特性を向上させる役割もあり、マフラー装着を想定したエンジンからマフラーを取り外すと始動できない場合もある。このため、実際の運用上はエンジンにとってほぼ必須の付属部品といえる。

さらに近年では、自動車排出ガス規制など環境関連の基準が強化され、マフラーに三元触媒(触媒)といった排気ガス中の有害成分を抑制する装置や構造を内蔵あるいは併設するのが一般化しており、排気音量低減と並ぶマフラーの重要な役割となっている。

自動車やオートバイでは、製造時に取り付けられる(あるいはそれと同等の)「純正マフラー」(純正品)と、マフラー専門メーカーや車両販売店や用品店といった車両メーカーではない者が製造販売する「社外マフラー」(社外品)という分類が存在する。一般に純正マフラーは、音量などの基準を遵守した上で、静粛性・安全性や耐久性を重視したものであり、一方社外マフラーは、これらを最優先してはいない。また、音量等の公道走行保安基準を満たしていない競技専用型もある。

ありがちな誤解として、音量低減効果が高いほど最高出力やトルクが低下するということが挙げられる。実際にはサイレンサーそれ以外の構造、エンジンや吸気系の調整などの要因が関係して決まるもので、必ずしも広告通りの性能向上を発揮するわけではない。マフラーの構造が違えば背圧や排気効率が変わり、キャブレター燃料噴射装置 (ECU) といった吸気系の調整が必要となる。「マフラーを交換するだけで出力向上」と謳われていても、実際に無調整では純正マフラー装着時よりも出力が落ちてしまう場合もある。

どこまでをマフラーと呼ぶのか [編集]

自動車やオートバイの部品としてのマフラーでは、場合によってその言葉が指し示す範囲が異なることがある。

狭義のマフラーは、エキゾーストマニホールドを除いた、消音器部分とその前後のごく狭い範囲を指す。具体的には、円筒や太鼓あるいは箱といった形状をしていることの多い消音器部分とその直後の短いパイプ(テールピースやエンドパイプあるいはテールパイプなどと呼ばれる[1])、そしてそれらをエキゾーストマニホールドを繋ぐ中間パイプ(センターパイプやメインパイプあるいはテールパイプなどとも呼ばれる[1])までを指すことが多い。センターパイプを含まない消音器部分のみをマフラーと呼ぶこともあり、この場合はサイレンサーと呼ぶことも多い[2]。なおこの狭義のマフラーには、触媒などの有害成分抑制装置が含まれる場合と含まれない場合の両方がある[3]

広義のマフラーは、エキゾーストマニホールドからセンターパイプと消音器までを含む、シリンダーヘッドより後[4]の排気管全てを指す。この場合は単に「マフラー」と呼ばずに、「フルエキゾースト」や「エキゾーストシステム」あるいは単に「エキゾースト」と呼ぶこともある。なお、この広義の意味ではいわゆるチャンバーも含まれるために、2ストローク機関においてはこの広義のマフラーのことを「チャンバー」と呼ぶ場合がある[5]

構造と材質 [編集]

マフラーの構造は、エンジンそのものと同様に、時代と共に発達や進化をしているが、基本的な構造はあまり変わっていない。その基本的な構造とは、エンジンに取り付けられた管状のエキゾーストマニホールド、場合によってはそれにセンターパイプや触媒など[6]が続き、最後に太鼓や円筒や箱といった形状をした消音器部分が取り付けられ、エンドパイプで終わる、というものである。ここでは主に、マフラーの中心的部品である消音器部分(サイレンサー)について述べる。

サイレンサーの構造 [編集]

サイレンサーの構造は年と共に進化してきたが、以前には、エキゾーストマニホールドと一体でほぼ同じ径を持つ金属パイプでしかなく、サイレンサーと呼べる部分を持たないために音量低減効果もほとんど期待できないようなものもあった[7]。しかし現在では、より確実で耐久性のある音量低減効果や有害成分抑制効果を発揮する構造や装置を内蔵するために、エキゾーストマニホールドやセンターパイプよりも大幅に太く大きなサイレンサー部分を持つものが主流である。現在流通しているマフラーのほとんどにおいて、サイレンサーの内部構造は、その違いにより大きく次の2つに分けられる。

多段膨張式
多段膨張式とは、サンレンサー内部を仕切っていくつかの小室に分け、それらをわざと遠回り(迷路状)になるように長さや太さの違うパイプで繋いでいき、そこを通った排気が膨張や収縮などを繰り返すことで音の圧力波を減衰し音量を下げる仕組みである。製造コストは掛かるが構造そのものが高い音量低減効果を持つので経年劣化による音量増大が起きにくく、原則的にグラスウールなどの吸音材に頼らない構造にできることもあって、特別な整備を必要とせず耐久性が高いという利点がある。また構造的に背圧を高めやすいので、燃焼効率上昇や低回転域からのトルク特性向上を達成しやすい。しかし、背圧が高まりやすいということは特に高回転域での排気効率が悪化することにも繋がりやすいので、素早い回転数上昇や高回転型の出力特性に向かないとされる。また、その構造の複雑さから、開発や生産のコストや、サイレンサーの重量が増大しやすいのも欠点とされる。
ストレート排気式
ストレート排気式とは、サイレンサーの入口から出口まで排気をほぼ直線的に通す通路があり、その通路の太さを変化させたり、その通路の側壁を構成するパンチングパイプ[8]やその外側全周に配置されたグラスウール等の吸音材という構造によって、音の圧力波を減衰し力を分散させて音量を下げる仕組みである。この方式は、構造が単純な為に多段膨張式よりもサイレンサーそのものを軽量にでき、排気も多段膨張式より抵抗なく排出しやすいので素早い回転数上昇や高回転型の出力特性に向くという利点がある。その反面、背圧が高まりにくいので、燃焼効率が向上しにくく、低中回転域でのトルク特性が低下しやすいという欠点もある。また、音量低減効果を吸音材に依存しやすい構造のために、その効率は多段膨張式ほど高くはなく、高温の排気が直接当たることで吸音材が経年劣化しやすく音量増大が起こりやすい。そのために吸音材の定期的な交換が重要であり、これを行わないと設計時に想定された消音効果を発揮できなくなる可能性が高いという欠点もある。

このように、多段膨張式とストレート排気式にはそれぞれの利点と欠点がある。特に公道用の自動車やオートバイの純正マフラーでは、騒音規制法自動車排出ガス規制といった様々な環境規制から、音量低減効果や耐久性が高い多段膨張式を採用する例が圧倒的に多い。特に純正マフラーにおいて、どんな高出力傾向を持つ高性能なスポーツ車であってもほぼ例外なく多段膨張式を採用しているのは、特別な整備を行わずともそのままで複数回の車検自動車検査登録制度)に合格できるだけの性能と耐久性が重要とされるからである。

サイレンサー以外の構造 [編集]

前述の通りマフラーの基本的役割である音量低減効果については、サイレンサーが最も大きな役割を果たしているが、それ以外の部分にもそれぞれの役割や意味がある。

エキゾーストマニホールド
エキゾーストマニホールドも参照のこと。
エキゾーストマニホールドは「エキマニ」と省略して呼ばれたり、「エキゾーストパイプ」やその省略形である「エキパイ」とも呼ばれる。エンジンから出た燃焼気(排気)が最初に通る部分であり、この部分の太さ(管径)や長さはエンジンの出力特性を決める重要な要因の一つである。特に多気筒エンジンなどでの複数のパイプからなるエキゾーストマニホールドでは、それらを1本や2本に集合させるかどうか、集合させるならその順番や集合方法、集合させるまでの各パイプの長さや太さ、といった様々な要因により、エンジンの出力特性をかなり大きく変えることができる。また近年では、年々厳しくなる騒音規制により、エキゾーストマニホールドのパイプを二重構造として音量低減効果を持たせているものも存在する。
触媒
三元触媒も参照のこと。
排気ガス中の有害成分抑制を行う装置。マフラーの基本的役割からすれば本来必要のないものであるが、近年では自動車排出ガス規制の強化などにより必須のものとなっている。現在主流の三元触媒では、浄化対象の排気ガスがある程度の高温でないと性能を発揮できないために、エキゾーストマニホールドの直後といった、できるだけマフラーの上流側に配置されることが多い。オートバイなど車種によっては、サイレンサー内に触媒が内蔵されているものもある。
センターパイプ
構造的にはエキゾーストマニホールドとサイレンサーを繋ぐ単なる連結パイプであることが多いが、その太さや長さによりエンジンの出力特性に影響を及ぼす。
サブサイレンサー
車種やマフラーの種類によっては、メインとなるサイレンサーとは別にもう一つのサイレンサーを持つものもある。音量低減効果の他、エキゾーストパイプの不等長の効果などを緩和する膨張室としての役割を持っている場合もある。
エンドパイプ
メインサイレンサーの直後に取り付けられたパイプで、ここを通じて排気ガスは大気中へ放出される。サイレンサーよりも下流にあるために軽視されがちだが、この部分の寸法もエンジンの出力特性に影響力を持っており、マフラーの重要な部品の一つである。また、ほぼ唯一外から見える部品であるため、見た目に気を遣われた処理が行われることが多く、パイプ断面の形、大きさ、数や切り口の角度、リアバンパーからのはみ出し量、材質や焼入れの有無など数多くのパターンがある。
インナーバッフル
エンドパイプの内部に挿入される部品で、消音機能を持つものはインナーサイレンサーと呼ばれることもある。社外品のマフラーの中にはそのままでは音量が余りにも大きすぎるためにインナーサイレンサーがオプション設定されている場合がある。このようなマフラーの中にはインナーサイレンサーを取り付けた状態で初めて車検に適合する製品もある。
インナーバッフルという場合には単純にエンドパイプの内径を絞るために金属製の円筒を挿入することを指す場合もある。この場合には消音性能は余り重視されず、単純に排気効率をエンジンの排気量や出力特性に合わせて微調整するための意味合いで用いられる。

材質 [編集]

エキゾーストマニホールドやセンターパイプ、エンドパイプやサイレンサー内部の仕切りなど、マフラーの主要部分、特に高温の排気が直接触れる部分には金属が使われることがほとんどである。一般的なものとしては)やステンレス鋼などが最も多く、やや珍しいものとしてはアルミニウムアルミニウム合金)や真鍮(黄銅)、更にはチタン合金やインコネルといった特殊な合金が使われることもある。サイレンサーの外殻部分などの排気が直接触れない部分ではFRPやCFRPといった繊維強化プラスチックが使われることもある。生産コストや耐久性が重視されやすい純正マフラーでは、鉄やステンレスが採用されることが多い。

一方、サイレンサーの内部などに使われる吸音材としては、グラスウールやスチールウール、デミスター(金属線を立体成形した三次元構造の金網)などが使われる。

オートバイのマフラー [編集]

オートバイは自動車よりも車体が小型軽量であるために、マフラーの大きさの制限や熱の問題が厳しく、エンジン性能と音量低減を両立させたマフラーを開発することに対して、オートバイやマフラーのメーカーは多くの時間を掛けている。マフラー各部から発する熱によって、車体各部やバッテリが熱の影響を受けたり、火傷への対策を行う必要がある。更に、オートバイではエンジンやマフラーが外部に露出している場合が多く、それは排気音量低減に厳しい。また、排気音などの音量低減の条件が自動車よりも厳しくなっている[9]。またオートバイのマフラーは外部に露出していることもあって、車両の外観をなす一部となり、その材質や形状、場合によっては色までもが、車両の意匠の一部として考慮され製造されていることが多い。

自動車のマフラー [編集]

自動車はオートバイと違って車体も大きく重量面でも制約が少ないために、エンジン性能と音量低減を両立させたマフラーを造るのはオートバイほど困難ではないことが多い。またエンジンやマフラーが車体に覆われているので、排気音などの音量低減の条件がオートバイよりも厳しくなく、マフラーの材質や形状が車両の外観にほとんど影響しないのが一般的である。そのために、エンドパイプといった外部へ露出する一部分を除けば、マフラーが車両の外観に及ぼす影響をほとんど考慮せずに、マフラーそのものの性能を追求して開発や製造を行えるという特徴がある[10]

改造マフラー [編集]

純正と同様の多段膨張式もあるが、ストレート排気式を採用するマフラーが多い。これには、社外マフラーを製造する社外マフラー専門メーカーや店舗では車両メーカーほど開発や製造のコストを掛けられないこと、構造上の特徴から多段膨張式ほど低周波を抑制しきれない音質を「低音が効いている」として好む客層も多いこと、といったいくつかの理由がある。しかしストレート排気式は、音量低減効果や耐久性が多段膨張式より低くなりがちという欠点から、経年劣化に応じた整備や交換を行わないと「車検対応」と謳う製品でも経年劣化により車検に合格できなくなるケースもある。


オートバイではマフラーを交換すると車両外観の印象が自動車よりも変わりやすいために、カスタムやドレスアップの一環としてマフラーの交換を行う人がいるが、近年は自動車排出ガス規制騒音規制法などの強化により、これらの基準を満たしながら性能向上を果たす社外品マフラーは開発や生産のコストなどから高価にならざるを得ず、以前よりは減少傾向にある。こうしたことから近年では、社外マフラーに交換せずともユーザーが満足できるような質感の高い外観や材質を持つ純正マフラーを初めから装着している車種も増えてきている。

自動車においてもオートバイと同様にドレスアップの目的で交換する人もおり、その場合は、エンドパイプやリアサイレンサーといった比較的外部から見えやすい部分のみが交換される場合もある。

競技車のマフラー [編集]

競技専用型の社外マフラーは、その車両(エンジン)の本来の性能を追求するのが最優先であり、音量を無視したり低回転域の出力特性を犠牲にして最高性能を重視とされることもあり、ストレート排気式やそれに準じた構造が多い。ただし近年では、レースのレギュレーションやサーキットの規定などにより、競技専用車といえども一定の音量規制が設けられることが増えてきており、競技専用の車両やマフラーも大音量は許されなくなってきている。

脚注 [編集]

  1. ^ a b マフラーのうち「テールパイプ」と呼ばれる部分は2箇所あるので注意が必要である。マフラーの消音器部分よりも後ろとなる一番下流の部分をそう呼ぶのは自動車の場合が多く、対して消音器より上流側の部分をそう呼ぶのはオートバイの場合が多い。なお本頁では便宜上、前者を「エンドパイプ」、後者を「センターパイプ」として統一する。
  2. ^ 特に2ストローク機関においては、これを「サイレンサー」と呼ぶ傾向が4ストローク機関よりも強い。2ストローク機関においてはチャンバーが燃焼効率向上や出力特性改善の役割のほとんどをなしており、消音器部分は文字通り消音効果のみを担っている場合が多いからである。
  3. ^ これは自動車やオートバイの車種や、その純正マフラーの構造によって変わることが多く、どちらかが良いということではない。
  4. ^ 2ストローク機関やロータリーエンジンではシリンダーヘッドがないので、排気ポート(あるいはその直後に取り付けられた排気デバイス)より後、となる。
  5. ^ 特に、2ストローク機関を搭載したオートバイや自動車においては多く呼ばれる。これは2ストローク機関においては、サイレンサー(狭義のマフラー)よりもチャンバーの機能が重視されることが多いからである。
  6. ^ ターボチャージャー装着車では、エキゾーストマニホールドの直後にタービンも付く。
  7. ^ これは背圧による燃焼効率向上が主目的であり、排気音低減が主目的ではなかったからである。現在でも、最高出力を重視し音量低減はほぼ無視して良いF1MotoGPのような一部のレースでは、このような構造(サイレンサーレス)を持つマフラーが採用されることがある。また、暴走族のような大音量化を目的とした違法改造でも見受けられることがある。
  8. ^ 側面の全周に渡って無数の穴が開いているパイプのこと。
  9. ^ 特に日本においては、騒音規制法などでの音量規制基準が自動車よりもオートバイのほうが厳しくなっており、より音量低減が難しいという事情もある。
  10. ^ 自動車でも、質感の高い材質や形状を採用して製造されたマフラーに意味がない訳ではないが、オートバイでのように外観の大幅な違いとなって現れにくいということである。

関連項目 [編集]

外部リンク [編集]