マフラー (原動機)

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オートバイのマフラーの一例
自動車のマフラーの一例

マフラーアメリカ英語: muffler)とは、内燃機関エンジン)において排気ガスが外部へ排出される際に発生する音(排気音)や吸気管に空気が吸い込まれる際に発生する音(吸気音)を低減する装置である[1]。mufflerという言葉は「音量を下げるために(音源を)包んだり覆ったりする」という意味の"muffle"に[2]、動作主名詞を形成する接尾辞"-er"を加えた単語である。消音器サイレンサーイギリス英語: silencer)などとも呼ばれるが、自動車などの分野では排気音を低減するものはマフラー、吸気音を低減するものはサイレンサーと呼ばれるのが一般的である[1]。オートバイの分野では排気管全体を指してマフラーと呼ぶ場合もあり、この場合には消音機能を持つ部分のみを区別してサイレンサーと呼ぶ[3]

排気マフラー[編集]

エンジンから排出される排気ガスは高温、高圧で、大気に解放されると急激に膨張して大きな音となる[4]。マフラーは排気ガスを段階的に膨張させたり、繰り返して圧力波を干渉させるなどの方法で、圧力と温度を下げて騒音を抑える装置であり[4]、ラジコンや草刈り機のような小型のエンジンから、定置型の発電機や船舶のような大型のエンジンまで広い用途のエンジンに取り付けられている。マフラーは排気ガスの流れを妨げる抵抗、すなわち背圧を生む構造であるが、自動車などのエンジンにおいては背圧を利用して、発進時や加速時などに有用なエンジン出力の過渡特性を向上させている場合もある[5]。こうした場合に用いられるマフラーは効率よく排気ガスを排出させる機能と、適度な背圧を与える機能とのバランスを考慮した設計がされている[5]マフラー装着を想定したエンジンからマフラーを取り外すと始動できない場合もある。[独自研究?]

最も簡単なマフラーの構造は単純な管を取り付けただけのものであるが、より高い消音効果を得るために次のような構造を設ける場合や、これらを組み合わせる場合がある。

  • 流路を部分的に広くする。
  • 内部に、パンチングパイプと呼ばれる穴の開いた管を通した二重構造とする。
  • 管の内壁に凹凸を設ける。
  • 障壁となる構造(バッフル)を設ける。
  • 内部空間に吸音性のある材質、構造物を充填する。

単純な構造のものほど軽量で安価に作ることができ、排気ガスの流れに抵抗となりにくいが、消音機能や背圧を利用する機能は低くなる。自動車や農機、可搬式エンジン機器などで多く見られるマフラーは、内部を邪魔板(バッフルプレート)で仕切って複数の空間に分け、それらを遠回りになるように長さや太さの違うパイプで繋いだ構造をとったものである。排気ガスが複雑な経路でマフラーの中を通過するうちに、膨張や圧力波の干渉を繰り返して音量を抑えられる。構造的に背圧を高めやすいので、燃焼効率上昇や低回転域からのトルク特性向上を達成しやすい。しかし、背圧が高まりやすいということは特に高回転域での排気効率が悪化することにも繋がりやすいので、素早い回転数上昇や高回転型の出力特性に向かないとされる[独自研究?]

マフラーの主要構造に使われる材質には鋼管鋼板、場合によってはステンレス鋼材が用いられることが多い。エンジンの用途によってはアルミニウム合金や真鍮(黄銅)、チタン合金やインコネルといった合金が使われることもある。サイレンサーの外殻部分など、排気が直接触れない部分ではFRPやCFRPといった繊維強化プラスチックが使われることもある。マフラー内に吸音材として充填される材料には、グラスウールやスチールウール、スチールメッシュ(金網)などが使われる。

自動車等のマフラー[編集]

公道を走行する自動車やオートバイの騒音については、多くの国において法令により制限が設けられている。公道を走行しない自動車競技オートバイ競技についても、フォーミュラ1のような一部のカテゴリを除き、公式な競技では競技規則(レギュレーション)よって車両の騒音レベルに上限が設けられている。非公式な競技や個人的にサーキットを走行する場合でも、サーキットの利用規則によって制限されている場合もある。したがって、ほとんどの自動車やオートバイにおいて、マフラーを装備することは不可欠となっている。以前には、エキゾーストマニホールドと一体でほぼ同じ径を持つ金属パイプでしかなく、サイレンサーと呼べる部分を持たないために音量低減効果もほとんど期待できないようなものもあった[独自研究?][6]。しかし現在では、より確実で耐久性のある音量低減効果や有害成分抑制効果を発揮する構造や装置を内蔵する[独自研究?]ために、エキゾーストマニホールドやセンターパイプよりも大幅に太く大きなサイレンサー部分を持つものが主流である。

自動車はオートバイに比べると車体が大きく、重量面でも制約が少ないために、エンジン性能と音量低減を両立させたマフラーを造るのはオートバイほど困難ではない[独自研究?]ことが多い。またエンジンやマフラーが車体に覆われているので、排気音などの音量低減の条件がオートバイよりも厳しくなく[独自研究?]、マフラーの材質や形状が車両の外観にほとんど影響しないのが一般的である。そのために、エンドパイプといった外部へ露出する一部分を除けば、マフラーが車両の外観に及ぼす影響をほとんど考慮せずに、マフラーそのものの性能を追求して開発や製造を行える[独自研究?]という特徴がある。

自動車においては、1つのマフラーだけでは消音性能が不十分な場合、段階的に複数のマフラーが取り付けられる場合があり、メインマフラー(メインサイレンサー)、サブマフラー(サブサイレンサー)、プリマフラーのように呼び分けられる[7]。サブマフラーには音量低減効果の他、エキゾーストパイプの不等長の効果などを緩和する[独自研究?]膨張室としての役割を持っている場合もある。プリマフラーは、メインマフラーとサブマフラーだけでは消音効果が不足する場合に排気管の途中に膨らませた構造を設けたものである[7]。車体に覆われたメインマフラーの出口から車体の外部へ排気ガスを導くパイプは、外観意匠に影響する部品であるため、材質や表面処理、パイプの本数や寸法、角度などが車両外観の一部としてデザインされたり、目立たないようにデザインされる場合もある。あるいは開口部をリヤバンパーの一部として設計される場合もある。マフラーよりも下流にあるために軽視されがち[独自研究?]だが、この部分の寸法はエンジンの出力特性にも影響する[要出典]。外観や性能に対する要求に応じてバンパーからはみ出す寸法が大きくなる場合もあるが、日本では2009年以降、バンパーからのはみ出し寸法や管材端末部の処理などについての保安基準が設けられている[8]

オートバイは自動車よりも車体が小さく、マフラーは大きさに制限がある。音量低減の条件が自動車よりも厳しく、熱の問題が厳しく、エンジン性能と音量低減を両立させたマフラーを開発することに対して、オートバイやマフラーのメーカーは多くの時間をかけている[独自研究?]。マフラーが露出している場合が多く、それは排気音量低減に厳しい[独自研究?]ほか、車体外観に影響するため材質や形状、場合によっては色も含めて、車両の外観意匠の一部として設計されている場合がある。

改造マフラー[編集]

自動車やオートバイには、車体の製造時に取り付けられる純正マフラーのほかに、車体製造メーカー以外のアフターマーケットによって製造されるマフラーも販売されている。アフターマーケット製のマフラーには消音性能などを純正マフラー同等とした製品のほかに、純正マフラーよりも排気効率や耐食性を向上したり、エンジンの出力特性や音量・音質、外観デザインをユーザーのニーズに合わせた設定としたマフラーも製造販売されている[5][9]。あるいは、排気効率と軽量化を重視して、公道を走行するための保安基準は満たさない競技専用とした製品もある[10]。競技専用マフラーの中には、排気効率をさらに向上させる着脱式のパイプや、着脱式の追加サイレンサーをマフラー出口から挿入して、走行する状況に応じてユーザーが排気効率や音量を調節できるようにした製品もある[10]追加サイレンサーを取り付けた状態で初めて車検に適合する製品もある。[独自研究?]

ありがちな誤解として、音量低減効果が高いほど最高出力やトルクが低下するということが挙げられる。実際にはサイレンサーやそれ以外の構造、エンジンや吸気系の調整などの要因が関係して決まるもので、必ずしも広告通りの性能向上を発揮するわけではない。マフラーの構造が違えば背圧や排気効率が変わり、キャブレター燃料噴射装置 (ECU) といった吸気系の調整が必要となる。「マフラーを交換するだけで出力向上」と謳われていても、実際に無調整では純正マフラー装着時よりも出力が落ちてしまう場合もある[独自研究?]

公道用の自動車やオートバイの純正マフラーでは、騒音規制法から、音量低減効果や耐久性が高い多段膨張式を採用する例が多い。純正マフラーにおいて、どんな高出力傾向を持つ高性能なスポーツ車であってもほぼ例外なく多段膨張式を採用しているのは、特別な整備を行わずともそのままで複数回の車検自動車検査登録制度)に合格できるだけの性能と耐久性が重要とされるからである。アフターマーケット品はストレート排気式を採用するマフラーが多いが、これには、社外マフラーを製造する社外マフラー専門メーカーや店舗では車両メーカーほど開発や製造のコストを掛けられないこと、構造上の特徴から多段膨張式ほど低周波を抑制しきれない音質を「低音が効いている」として好む客層も多いこと、といったいくつかの理由[独自研究?]がある。しかしストレート排気式は、音量低減効果や耐久性が多段膨張式より低くなりがち[独自研究?]という欠点から、経年劣化に応じた整備や交換を行わないと「車検対応」と謳う製品でも経年劣化により車検に合格できなくなるケースもある。

近年は自動車排出ガス規制騒音規制法などの強化により、これらの基準を満たしながら性能向上を果たす社外品マフラーは開発や生産のコストなどから高価にならざるを得ず、以前よりは減少傾向にある。こうしたことから近年では、社外マフラーに交換せずともユーザーが満足できるような質感の高い外観や材質を持つ純正マフラーを初めから装着している車種も増えてきている。[独自研究?]

吸気サイレンサー[編集]

発電用や自動車用など、特に静粛性が求められるエンジンには吸気管で生じる騒音を低減するサイレンサーが付けられる場合がある。自動車用では、へルムホルツの共鳴器や拡張室を利用したものが多い[1]。ヘルムホルツの共鳴器を利用したものはレゾネーター(: resonator)とも呼ばれ、吸気管の途中に設けられた枝管に共鳴を起こして、騒音として生じる音と打ち消し合うものである[1]。枝管はくびれた首部と空洞部で形成され、首部の断面積や長さ、空洞部の容積により打ち消し合う騒音の周波数が決まる[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 大車林-自動車情報辞典. 三栄書房. (2003). ISBN 4879046787. 
  2. ^ Oxford Dictionary of English. Oxford University Press. (2010). ISBN 4879046787. 
  3. ^ バイク用語辞典”. ヤマハ発動機株式会社. 2014年2月25日閲覧。
  4. ^ a b FUJITSUBO 自動車マフラー”. 藤壺技研工業株式会社. 2014年2月26日閲覧。
  5. ^ a b c チューニングの基礎”. 株式会社エッチ・ケー・エス. 2014年2月26日閲覧。
  6. ^ これは背圧による燃焼効率向上が主目的であり、排気音低減が主目的ではなかったからである。現在でも、最高出力を重視し音量低減はほぼ無視して良いF1やMotoGPのような一部のレースでは、このような構造(サイレンサーレス)を持つマフラーが採用されることがある。また、暴走族のような大音量化を目的とした違法改造でも見受けられることがある。[独自研究?]
  7. ^ a b JASMA 日本自動車マフラー協会|スポーツマフラーとは”. 日本自動車マフラー協会. 2014年3月5日閲覧。
  8. ^ マフラーのはみ出し等に関して”. アペックス株式会社. 2014年3月5日閲覧。
  9. ^ FUJITSUBO 自動車マフラー”. 藤壺技研工業株式会社. 2014年3月10日閲覧。
  10. ^ a b 柿本改 KAKIMOTORACING|マフラーシリーズ|GT1.0Z Racing_詳細”. カキモトレーシング株式会社. 2014年3月10日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]