百日紅 (漫画)

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百日紅』(さるすべり)は、杉浦日向子による日本漫画作品。『漫画サンデー』(実業之日本社)にて、1983年から1987年まで連載された。

作家でもあり、時代考証家でもある杉浦が、奇行の絵師として知られる葛飾北斎を中心とした実在の人物たちを軸に、江戸の風俗や庶民の生活を描いた傑作。恋愛、人情、ホラーといった様々な要素を取り扱う。

単行本は実業之日本社から全3巻(絶版)、ちくま文庫から上下巻が発売されている。

原恵一監督、Production I.G制作による長編アニメーション映画化が進行中。2015年公開予定[1]

概要[編集]

江戸は下町の長屋に暮らす絵師の鉄蔵こと葛飾北斎とその娘、お栄。そして居候の善次郎。3人は書き損じが散らかった部屋を気にも留めず、日夜創作活動に励んでいた。「親父と娘。筆二本、箸四本あればどう転んでも食っていける」と豪語するお栄ではあったが、なにかと気持ちが揺れ動く難しい時期を迎えていた。3人が遭遇する事件を軸に生き生きとした江戸の生活が描かれる。

主な登場人物[編集]

葛飾北斎(かつしかほくさい)
通称、鉄蔵。55歳。既にこの時代を代表する人気絵師としての地位を確立しながら、汚らしい長屋に起居し、三女のお栄を片腕に創作活動を続ける。気が短く、粋を好み、洒落っ気たっぷりな典型的江戸っ子。既に老境に入っているが、政女を相手に色恋でも健在ぶりを発揮し、公私ともに充実している。息子の多吉郎(お栄の弟)は御家人に養子に入り順風満帆だが、一門を継いだ長女の婿(柳川重信)とは折り合いが悪く、末娘の猶は盲目で病弱と、決して家庭円満とは言い難い。金銭や自らの屋号に全く執着しない一方で、徳川将軍家からの招きを受けた際には功名心を垣間見せる一面も持つ。ひねくれ者の皮肉屋で、気に入らない仕事では法外な報酬をふっかけるなど、版元泣かせ。滝沢馬琴山東京伝といった友人を持つ。
お栄(おえい)
北斎の三女で後妻の子。23歳。父・北斎から絵師としての才能を受け継いでおり、代筆を行う。画才は確かなもので、彼女の描く絵は真に迫った物であるが故に、騒動を起こすことも。ただし、春画に関しては未だ生娘であることから、「女は上手に描くが、男は借り物」と酷評される。年頃ではあるが、容姿は顎長、地黒で、お世辞にも器量良しとは言えず、北斎からは「アゴ」、「化十」(人三化七といわれたブスの俗称を更にもじったもの)と詰られる。父の高弟、初五郎に恋心を抱く。火事見物が好き。
池田 善次郎(いけだ ぜんじろう)
北斎宅の居候。23歳。後の渓斎英泉。3年前までは武士だったが、刃傷事件をきっかけとして主家を出奔。菊川派に入り、絵師を志す。後に北斎に私淑するようになった。商売女から町娘、果てはにまで手を出す部類の女好きで、その経験を春画に活かしている。絵師としての腕前は本人も未熟と自覚しているが、「なんともいえぬ色気がある」と周囲からその才能を認められている。
歌川国直(うたがわ くになお)
若手の売れっ子絵師。19歳。歌川豊国門下を代表する絵師だが、対立する北斎を尊崇する。お栄や善次郎とひょんなことから知り合い、その後は北斎宅に出入りするようになる。派閥意識の強い一門にあっては異端児であり、その行動は快く思われていない。若いがきっぷがよく、飄々とした人柄で愛される。
井上 政女(いのうえ まさめ)
北斎の弟子で、愛人。28歳。画号は葛飾北明。艶めかしく、色気たっぷりの美女。北斎の囲い女だが、初五郎にも色目を使う。幽霊画を得意とする。
岩窪 初五郎(いわくぼ はつごろう)
北斎門下の俊英。売れっ子絵師。34歳。画号は魚屋北渓。美男子だが気さくな人柄で、心優しい好人物。変わり者の師匠にも敬意を払い、善次郎にも助言を与える。未だ独り身であることから、お栄が恋慕し、政女が狙っている。
歌川国芳(うたがわ くによし)
歌川門下の若手絵師。17歳。兄弟子の国直の元に寄食する。

脚注[編集]

  1. ^ 杉浦日向子「百日紅」を原恵一がアニメ映画化、来年公開”. コミックナタリー (2014年4月25日). 2014年4月28日閲覧。