オハイオ級原子力潜水艦

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オハイオ級原子力潜水艦
USS Maine (SSBN-741).jpg
艦級概観
艦種 戦略ミサイル原子力潜水艦
艦名 州名。5番艦のみ人名。
建造期間 1976年 - 1996年
就役期間 1981年 - 就役中
前級 ベンジャミン・フランクリン級原子力潜水艦
次級 SSBN-X(計画中)
性能諸元
排水量 水上:16,764t
水中:18,750t
全長 170.67m
全幅 12.8m
吃水 11.1m
船体構造 単殻式
機関 原子力蒸気タービン推進(60,000 shp),1軸推進
GE社製加圧水型S8G原子炉 1基
蒸気タービン 2基
速力 公表値:水中20ノット
推定値:水中24ノット+
潜航深度 最大300m程度?
燃料棒寿命 10~15年
乗員 155名
探索装置 BQQ-6 パッシブソナー
BQR-15 曳航ソナー
BPS-15A 対水上レーダー
BPS-16に換装されたとの情報もあり
兵装 533mm水圧式魚雷発射管 4基
5番艦以降
ミサイルハッチ
トライデント SLBM
24基
1番艦~4番艦
Mk 45 VLS
トマホーク SLCM 
22基

オハイオ級原子力潜水艦(オハイオきゅうげんしりょくせんすいかん、 Ohio class)はアメリカ海軍が現在保有する唯一の戦略ミサイル原子力潜水艦(以下SSBNと表記)。

西側諸国で最大の排水量を誇る潜水艦である。また全長と弾道ミサイル搭載数は現役の潜水艦で最多。

開発の経緯[編集]

1970年代アメリカが保有していた戦略ミサイル原潜は1950年代から60年代に開発されたものばかりでこのころ開発する原潜はもっぱら攻撃型原潜であった。新規戦略ミサイル原潜の開発も計画されていたがその膨大な開発予算から議会も開発許可を出し渋っていた。それに対してソ連はアメリカに対する遅れを取り戻そうと新たにデルタ型を開発し射程約8,000kmのSS-N-8や射程約6,500kmのSS-N-18などを次々と開発していった。

この影響を受け議会はやっと新規SSBNの開発を許可、これによりオハイオ級の開発がはじまった。しかし開発が進められることになったもののなかなか順調には進まず、開発当初1番艦は1979年には引き渡される予定であったが結局1番艦が就役したのは1981年末だった。

オハイオ級はそれまでいた35隻の原潜をすべて代替するため24隻の建造を予定していたが、冷戦終結の影響により18隻とそれまでの半数程度の建造で打ち切られた。しかし1隻あたりの弾道ミサイル搭載数は16基から24基と1.5倍になっているため核弾頭の数からいえばそれほど減少していない。

兵装[編集]

オハイオ級の主な兵装は潜水艦発射弾道ミサイル24基と533mm魚雷発射管4門である。改良型については後述。

潜水艦発射弾道ミサイル・ハッチ

就役当初、弾道ミサイルは1番艦から8番艦までが射程4,000海里以上(7,400km)のトライデントI(C4)を、8番艦以降が射程6,000海里以上(11,000km)のトライデントII(D5)を装備していた。トライデントD5はC4にくらべ射程が延びたかわりにサイズも一回り大きくなっているがオハイオ級は当初から余裕のある構造だったため外見上はC4搭載艦とD5搭載艦に差はない。4番艦から8番艦は弾道ミサイルをC4からD5に換装中である。

オハイオ級が装備するトライデントは1基につき核弾頭をC4は8発、D5は14発まで装備可能だがこれもSTART Iとの関係から現在のところの弾頭は最大で8発に抑えられている。つまりトライデントを24基装備するオハイオ級は1隻で計192発程度の核弾頭を装備することになる。核弾頭1発あたりの核出力は数種類あるがいずれも100kt~475kt(長崎市に落とされたファットマンは20kt程度)と都市一つを破壊するには十分な威力を備えている。

なおこの先START IIではSSBNに搭載できる核弾頭の総数は1,700~1,750発程度までとされており、それにあわせてトライデント1基に搭載する弾頭数は4~5発程度まで減らされる予定である。

オハイオ級の主任務は弾道ミサイルの発射で、敵潜水艦への攻撃はロサンゼルス級などの攻撃型原潜の任務であるが、敵潜水艦に発見された場合の反撃手段としてMk48魚雷も搭載する。しかしその性質上隠密性が求められるため探査用のアクティブソナーは装備していない(航海用は装備している)。そのためそれほど有効な攻撃は出来ないと考えられる。また潜水艦は魚雷発射管から発射可能な対艦ミサイル巡航ミサイルを装備していることが多いがオハイオ級は魚雷のみを装備する。

その他に魚雷攻撃を受けたときのための音響囮も8基装備されている。

任務[編集]

オハイオ級の任務は、海中に潜み、アメリカ合衆国に対して核ミサイルが発射された場合、または発射される恐れがある場合に相手国に核ミサイルを発射することである。

そのため、出港後、待機する海域まで航行した後はひたすら海中に身を潜め、いつでも核ミサイルの発射が出来るように待機している。この1回の航海はラファイエット級までは60日程度であったが、オハイオ級は大型で居住性が若干改善されたため航海の期間も若干延び、70日から90日程度になった。

これら戦略ミサイル原潜がどの海域を待機海域にしているかは軍事機密であり、詳細は公表されていない。任務に当たる艦ですら、詳細は艦長を含めた数人しか知ることはない。しかし、現在では搭載するミサイルの射程がICBM並に長いことから、危険を冒して敵国沿岸に行くようなことはなく、アメリカ本土に比較的近い太平洋や大西洋、北極海などで待機していると思われる。

稼働率[編集]

ドック入りしたミシガン (SSBN-727)

通常、アメリカの戦略ミサイル原潜は、ブルーとゴールドの2組のクルーが用意されている。これは一言でいえば、艦より先に乗組員が限界になってしまうためである。オハイオ級も例外ではなく、ひとつのグループが70日間の航海を終えて帰港すると、約1ヶ月ほど艦の整備などを行い、その後もうひとつのグループが70日間の航海に出て行く。そして、航海を終えた方のグループは、しばしの休暇の後訓練をおこなう、というローテーションを繰り返す。その他に、約10年に1度は1年間ほどかけてオーバーホールと燃料棒の交換をおこなう必要がある。

そのことから実際可稼働率は60%程度であり、18隻でローテーションを組んでいたときは常に10隻前後は任務についていることになる。また14隻では8隻前後となる。

改良型オハイオ級[編集]

オハイオ級改良型イメージ

START IIで核弾頭数が制限された関係から、2001年にアメリカ海軍はオハイオ級の1番艦から4番艦までを戦略任務から外し、巡航ミサイル潜水艦に改造することを決定した。2007年現在、弾道ミサイル発射筒の換装工事など工事が完了したオハイオが作戦航海に出るほか、残る三隻も改装に着手している。なお艦種は戦略ミサイル原潜を表すSSBNから巡航ミサイル原潜を表すSSGNに変更された。

具体的な内容としては24基の弾道ミサイル発射筒のうち22基をトマホーク発射筒に改め、残りの2基を海軍特殊部隊SEALs」のためのロックアウト・チェンバーに改造。トマホーク発射筒の一部も任務に応じてトマホークの代わりに小型潜水艇ASDSドライデッキ・シェルターを搭載することも可能とされる。トマホークは1基あたり7発を装備、最大で計154発と大量のトマホークを搭載可能となっている。

ちなみに同国の攻撃型原潜であるロサンゼルス級でも10~20発程度、水上艦で一番搭載可能数が多いアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦でも最大で96発(これは発射機の総数でありイージス艦の主任務は艦隊防空である為通常は大半が対空ミサイルが搭載され、トマホークの本数はやはり10〜20発程度であることが多い)であり、オハイオ級の154発というのはアメリカ海軍が保有する艦船の中でも一番搭載数が多く、陸上攻撃に大きな役割を果たすこととなる。

後継艦について[編集]

オハイオ級については、1番艦のオハイオ(SSGN-726)など、初期に建造・就役した艦については、就役から既に20~30年近くを迎える。アメリカ海軍では、このうちSSGNに改装された改良型オハイオ級を除くSSBNについて、これらを更新する後継艦を“SSBN-X”として計画している。海軍における水上艦・潜水艦の開発を担当する海軍海洋システムコマンド(NAVSEA)では、SSBN-Xについて「2029年に最初の戦略抑止パトロール任務に就く」という計画・タイムラインの下で開発を進める予定である[1]。一方で、海洋システムコマンドでは、同じ2029年に本級の7番艦であるアラスカ(SSBN-732)を退役させる予定としており[1][2]潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)による核ミサイルの運用を行う戦略軍(STRATCOM)が要求する「12隻が作戦行動可能な体制」を維持するためにも、SSBN-Xの開発計画を着実に進めていくことが求められている。海洋システムコマンドでは、より着実に更新計画を進めていくためのプランとして、「2026年に海軍に納入、以後約1年間をかけて各種の試験を実施、さらにもう1年をかけて試運転(シェイクダウン)と乗務員訓練(ミサイル発射要員についてのミサイル発射試験を含む)を実施した上で、2029年に計画通り全面的作戦能力を付与する」という構想を立案している[1]

しかし、近年の(累積)財政赤字の増大とそれに対応するべくバラク・オバマ政権が実施している歳出見直し・予算削減の流れの中で、SSBN-X計画も例外なく影響を受けている。2012年に発表された2013会計年度(Fiscal Year 2013、FY2013)に向けた国防予算案の中では、国防予算削減策の一環としてSSBN-X計画を2年延期する案が盛り込まれている[3]。この2年延期が実行されれば、SSBN-X開発計画はそれだけ遅延することになり、場合によってはオハイオ級の退役とSSBN-Xの就役の間に空白期間ができ、2030年代(特に前半)のアメリカの海軍力およびそれに基づいた軍事的プレゼンスが低下するリスクが懸念されるが[3]国防総省ではそのリスクはマネジメントできる(低減・克服できる)ものとしている[3]

同型艦[編集]

艦番号 艦名 建造所 起工 進水 就役 退役 所属 備考
旧:SSBN-726
現:SSGN-726
オハイオ
USS Ohio
エレクトリック・ボート 1976年
4月10日
1979年
4月7日
1981年
11月11日
太平洋艦隊
バンゴール基地
巡航ミサイル潜水艦
に改装
旧:SSBN-727
現:SSGN-727
ミシガン
USS Michigan
1977年
4月4日
1980年
4月26日
1982年
9月11日
旧:SSBN-728
現:SSGN-728
フロリダ
USS Florida
1976年
7月4日
1981年
11月14日
1983年
6月18日
旧:SSBN-729
現:SSGN-729
ジョージア
USS Georgia
1979年
4月7日
1982年
11月6日
1984年
2月11日
SSBN-730 ヘンリー・M・ジャクソン
USS Henry M. Jackson
1981年
1月19日
1983年
10月15日
1984年
10月6日
太平洋艦隊
バンゴール基地
SSBN-731 アラバマ
USS Alabama
1980年
10月14日
1984年
5月19日
1985年
5月25日
SSBN-732 アラスカ
USS Alaska
1983年
3月9日
1985年
1月12日
1986年
1月25日
SSBN-733 ネバダ
USS Nevada
1983年
8月8日
1985年
9月14日
1986年
8月16日
SSBN-734 テネシー
USS Tennessee
1986年
6月9日
1986年
12月13日
1988年
12月17日
大西洋艦隊
キングス・ベイ基地
SSBN-735 ペンシルベニア
USS Pennsylvania
1984年
1月10日
1988年
4月23日
1989年
9月9日
太平洋艦隊
バンゴール基地
SSBN-736 ウェストバージニア
USS West Virginia
1987年
10月24日
1989年
10月14日
1990年
10月20日
大西洋艦隊
キングス・ベイ基地
SSBN-737 ケンタッキー
USS Kentucky
1987年
12月18日
1990年
8月11日
1991年
7月13日
太平洋艦隊
バンゴール基地
SSBN-738 メリーランド
USS Maryland
1986年
4月22日
1991年
8月10日
1992年
6月13日
大西洋艦隊
キングス・ベイ基地
SSBN-739 ネブラスカ
USS Nebraska
1987年
7月6日
1992年
8月15日
1993年
7月10日
SSBN-740 ロードアイランド
USS Rhode Island
1988年
9月15日
1993年
7月17日
1994年
7月9日
SSBN-741 メイン
USS Maine
1990年
7月3日
1994年
7月16日
1995年
7月29日
SSBN-742 ワイオミング
USS Wyoming
1991年
8月8日
1995年
7月15日
1996年
7月13日
SSBN-743 ルイジアナ
USS Louisiana
1992年
10月23日
1996年
7月27日
1997年
9月6日

脚注・出典[編集]

  1. ^ a b c “OHIO CLASS REPLACEMENT” (英語) 海軍海洋システムコマンドのホームページに掲載されているオハイオ級の更新計画に関する記事。
  2. ^ アラスカよりも先に建造・就役した5番艦のヘンリー・M・ジャクソン(SSBN-730)、6番艦のアラバマ(SSBN-731)については前掲記事では触れられていない。
  3. ^ a b c “Defense Budget Priorities and Choices” (英語) 国防総省が発表した2013会計年度国防予算案に関する概要説明冊子。本冊子では「選択と集中」と題し、予算の削減に向けた兵器調達計画の変更案や既存兵器の退役案をまとめている。戦略原潜も含めた戦略的核抑止力については、8ページに記述がある。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]