統合電気推進

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45型駆逐艦のIEPシステム。

統合電気推進(とうごうでんきすいしん、英語: Integrated electric propulsion, IEP)は、の推進方式の一種。統合電源方式(: integrated power system, IPS)とも称される[1]

電気推進のうち、推進用と艦内サービス用の発電機を共用化したものを指す[2]。また、機械駆動を併用せず、電気推進のみで推進するものを、特に統合全電気推進(: Integrated Full Electric Propulsion, IFEP)と称する[3]

概要[編集]

従来、艦船の推進用の主機関においては、ターボ・エレクトリック方式ディーゼル・エレクトリック方式などの電気推進方式が開発されており、それ単独、あるいはCODLAGCOGLAGのように機械駆動による推進方式と併用するかたちで運用されてきた[4]

IEPにおいては、近年のパワーエレクトロニクスの発達や小型・高効率の電動機の開発を背景として、これらの電気推進に用いるための電力と、艦船内の他の用途(兵器や電子機器、その他船内サービス用)の電力の電源が共用化されている。これにより、主機関と発電機が統合され、効率化が期待されている。特に現代の戦闘艦においては、電子機器や兵器の電力需要が大きいことから、艦内電力の効率化は非常に重要である[5]

また従来の全電気推進艦船と同様、電動機の特性上減速機を必要とせず静音性に優れるほか正転逆転や速度制御が容易である、主機関(発電機)と原動機電動機)の位置関係の制約が少ないために艦内配置の自由度が高い、などのメリットもある。ただし一方で、エネルギー伝達上のロスの発生が不可避であり、推進効率上は直接機械駆動に劣るというデメリットはある[3]。

例えば右図のイギリス海軍45型駆逐艦では、2基ずつのノースロップ・グラマン/ロールス・ロイス WR-21ガスタービンエンジン(21.5メガワット / 28,800馬力)とバルチラ12V200ディーゼルエンジン(2メガワット / 2,700馬力)が発電機として用いられており、これによって発電された電力は、2基のコンバーチーム社製電動機(20メガワット / 27,000馬力)を駆動すると共に艦内サービスにも供給される。

採用例[編集]

イギリスの旗 キュナード・ライン

 イギリス海軍

 アメリカ海軍

Naval Ensign of Japan.svg 海上自衛隊


参考文献[編集]

  1. ^ 多田智彦「先端技術で軍艦はどこまで変われるか? (特集 先端技術と将来軍艦)」、『世界の艦船』第737号、海人社、2011年2月、 75-79頁、 NAID 40017440290
  2. ^ 立石岑生「電気推進のメカニズムとその特徴 (特集・電気推進艦船の進化)」、『世界の艦船』第592号、海人社、2002年2月、 78-85頁、 NAID 40002156251
  3. ^ a b 東郷行紀「注目の統合電気推進システムとは何か (特集・現代軍艦の推進システム」、『世界の艦船』第812号、海人社、2015年2月、 78-83頁。
  4. ^ 阿部安雄「電気推進艦船の歩み (特集・電気推進艦船の進化)」、『世界の艦船』第592号、海人社、2002年2月、 70-77頁、 NAID 40002156250
  5. ^ 「艦船と電力の話 (特集・電気推進艦船の進化)」、『世界の艦船』第592号、海人社、2002年2月、 102-105頁、 NAID 40002156255