イージス艦

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アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦

イージス艦(イージスかん)とは、イージスシステムを搭載した艦艇の総称。通常、高度なシステム艦として構築されている。

フェーズドアレイレーダーと高度な情報処理・射撃指揮システムにより、200を超える目標を追尾し、その中の10個以上の目標(従来のターター・システム搭載艦は2~3目標)を同時攻撃する能力を持つ。開発当初の目的である艦隊防空だけではなく様々な任務に対応可能な汎用性を持つため、アメリカ海軍ではイージス艦のみで水上戦闘群を編成している。

イージス(Aegis)とは、ギリシャ神話の中で最高神ゼウスが娘アテナに与えたという盾(胸当)アイギス(Aigis)のこと。この盾はあらゆる邪悪を払うとされている。

概要[編集]

イージス艦の戦闘システム(ベースライン6以前)の概要を表すシェーマ。
この総体をイージス戦闘システムと称することもある。

イージス艦とは、イージスシステムを搭載するあらゆる艦艇を指す総称である。したがって、巡洋艦駆逐艦といった軍艦の艦種を指すものではなく、実際、2013年現在で、巡洋艦、駆逐艦、フリゲートの3つの艦種に搭載されており、小型のコルベットなどに搭載する案もあった。

イージスシステムは、遠くの敵機を正確に探知できる索敵能力、迅速に状況を判断・対応できる情報処理能力、一度に多くの目標と交戦できる対空射撃能力を備える画期的な装置である。このおかげで、イージス艦は、同時に多数の空中目標を捕捉し、これらと交戦できる、極めて優秀な防空艦となった。またイージスシステム以外にも、イージス艦が搭載する全ての兵器は、イージスシステムのコンピュータを中核として連結され、イージス戦闘システムと呼ばれる統合システムを構築している。これによって、イージス艦は、対空・対艦・対潜水艦など、戦闘のあらゆる局面において、脅威となる目標の捜索から識別、意思決定から攻撃に至るまでを、迅速に行なうことができるのである。このことから、90隻と多数を保有するアメリカ合衆国においては、艦隊防空のほかにも、トマホーク巡航ミサイルによる対地攻撃から海賊の取り締まりに至るまで、様々な任務に使われている。

その一方で、武装の搭載量や抗堪性などは、従来の艦と比べて特に優れているわけではない。従って、かつての戦艦に相当するような艦と解釈するのは誤解である。また、建造費や運用コストなどが高くつくことも欠点のひとつといえよう。イージスシステムは極めて高価である上に機密のレベルが高く、開発国であるアメリカの提供認可査定が極めて厳しいことから、その保有は、相応の経済力とアメリカからの信頼を持つ国家に限られている。これらの要件を満たしていたとしても、その国の置かれている環境において過剰性能となる場合、あえて導入しないという選択肢もありうる。

なお、近年、ヨーロッパにおいては、PAAMSNAAWSなど、イージスシステムに類似、あるいは同等の機能を持つとされる防空システムが開発されており、イギリスフランスドイツなどは、イージス艦を導入せずに、これらを搭載した艦を建造・就役させている。これらの艦艇については、イージス艦と類似した点があることから、ミニ・イージス艦と呼ばれることがある(詳細は#誤用としてのイージス艦を参照)。

歴史[編集]

米国による開発と実用化・艦隊配備[編集]

幻に終わった原子力イージス巡洋艦CGN-42 (想像図)
初のイージス艦、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦

イージス・システムを搭載した艦艇という点では、1975年以降、イージスシステムの実験に従事した実験艦「ノートン・サウンド」が、初のイージス艦ということになるだろう。しかし、「搭載されたSPY-1レーダーは1枚だけ」など、ノートン・サウンドに搭載されたイージスシステムはあくまで試作品である。

イージス艦は、単にイージス・システムを搭載しているだけではなく、イージス・システムを艦のシステムの一部として統合している。このように統合システム艦としての建造を可能にしたのが、アメリカ海軍の建艦プロジェクトであるPMS-400である。これは1977年に設立されたもので、イージス武器システム、イージス戦闘システムのプロジェクト・マネージャーを歴任してきたウェイン・E・マイヤー提督が引き続き指揮を執った[1]。イージスシステムは、従来の艦隊防空システムの枠を超えた高度な能力を有していたことから、マイアー提督は、これを単なる防空システムとしての枠を超えた、防空司令所として用いることを構想しており、そのプラット・フォームとして、打撃巡洋艦が考えられた。これは、空母戦闘群(現 空母打撃群)から独立した作戦行動を前提とした高速・強力な原子力戦闘艦で、満載17,210トン、艦の枢要部には装甲が施されることになっており、スタンダードMk.26発射機2基、ハープーン艦対艦ミサイル16発、Mk 71 8インチ砲を搭載予定だった。しかし、この計画はあまりに高価であるにもかかわらず効果が疑問であるとして、1970年代末に消滅した。その後、バージニア級原子力ミサイル巡洋艦をベースにした新造案 (CGN-42案) や、既に運用中だった原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチを改修する案などが検討されたが、いずれも断念された。

最終的に実行に移されたのが、当時建造中だったスプルーアンス級駆逐艦をベースにしたDDG-47計画である。当初はミサイル駆逐艦(DDG)として計画は進められたが、期待される任務や性能を考慮して、1番艦の建造途中で種別がミサイル巡洋艦(CG)に変更された。これによって建造されたのがタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦で、1983年より94年にかけて27隻が建造された。

その後、チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦の後継となるミサイル駆逐艦にもイージスシステムを搭載することが決定された。これによって建造されたのが、1991年より就役を開始したアーレイ・バーク級で、66隻以上が建造されることになっているが、これは、アメリカ海軍が戦後に建造した水上戦闘艦としては最多の建造数である。タイコンデロガ級では、スプルーアンス級をベースとしなければならないという制約があり、機関配置などが既に決まっていたために、必ずしも効率的な設計が行なえなかった。これに対し、アーレイバーク級は一から設計されたため、イージス・システムの搭載に最適な設計になっている。イージス・システムそのものが合理化されたこともあり、タイコンデロガ級のトップヘヴィー状態が改善されている。初期建造艦のフライトI、電子装備を強化したフライトII、ヘリコプターを搭載したフライトIIAに分けられる。

アメリカ国外への広がり[編集]

アメリカ国外初のイージス艦、こんごう型ミサイル護衛艦
最小のイージス艦、AFCONコルベット(未成約)

このアーレイ・バーク級の初期建造艦(フライトI)をベースとして、独自の運用要求を加えて建造されたのが、1993年から1998年にかけて4隻が就役した日本こんごう型ミサイル護衛艦である。アメリカ以外では初のイージス艦で、主砲がオート・メラーラ社製の速射砲に変更されたほか、指揮統制能力が強化されており、タイコンデロガ級に迫る規模になった。

こんごう型に続く、海外のイージス艦の2例目が、2003年より就役を開始したスペインアルバロ・デ・バサン級フリゲートである。アーレイ・バーク級をベースとしたこんごう型とは異なり、かなり独自色の強い設計で、満載排水量5,853トンとさらに小さくまとめることに成功した。ミサイル搭載数が削られているものの、アーレイバーク級フライトIIと同じイージスシステムを搭載している。

アルバロ・デ・バサン級をベースとして設計されたのが、ノルウェーフリチョフ・ナンセン級フリゲートである。さらに小型化されており、より軽量のSPY-1Fレーダーを組み込んだ簡易型のイージスシステムを搭載している。本級は、イージスシステム一式を搭載しているが、運用上、通常はスタンダード対空ミサイルを搭載しないとされている。2007年1月にネームシップが就役し、2011年までに同型5隻が就役した。

またオーストラリアでも、アルバロ・デ・バサン級をベースとしたホバート級駆逐艦の建造に着手しており、2016年ごろより3隻を整備する計画である。

日本はこんごう型の運用実績を踏まえて、たちかぜ型ミサイル護衛艦の更新用として、さらに2隻の二世代目イージス艦の導入を決定した。これによって建造、2007年順次就役となったのがあたご型である。こんごう型をベースとして、アーレイ・バーク級のフライトIIAと同様の改良を施した。こんごう型と比べての変更点は、主砲を米艦と同じMk 45に変更したほか、ヘリコプターの搭載・運用能力が追加されたことがある。ヘリの機数の問題から常時搭載機はないが、海上自衛隊のミサイル護衛艦としてはじめて着艦拘束装置およびヘリ格納庫を設置している。

あたご型と同様に、アーレイ・バーク級フライトIIAを下敷きに設計されたのが、韓国世宗大王級駆逐艦(計画名KDX-3)である。2009年から2012年にかけて3隻が就役し、船体設計などはアーレイ・バーク級フライトIIAとほぼ同じだが、アーレイ・バーク級で抑えられたミサイル搭載数をタイコンデロガ級並みに差し戻すと共に、近接防御火器の機種増加がおこなわれている。

各国の運用[編集]

アメリカ[編集]

イラクに向けトマホークミサイルを発射するアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦ドナルド・クック。本艦はイラク戦争においてイラクに対する初攻撃を行った。

イージス艦の生みの親であるアメリカはタイコンデロガ級、アーレイバーク級合わせて84隻を保有する世界最大のイージス艦保有国であり、湾岸戦争アライド・フォース作戦アフガニスタン紛争イラク戦争オデッセイの夜明け作戦等さまざまな戦争、作戦に参加させている。イラン民間機を敵機と見誤り撃墜したイラン航空655便撃墜事件や、後のアメリカ海軍のドクトリンに大きな影響を与えた米艦コール襲撃事件などイージス艦に関連した事件も発生している。

日本[編集]

日本はイージス艦をアメリカに次いで導入した国家であり、保有数も世界で2番目の6隻である。「こんごう型」の就役により、8艦8機体制(新八八艦隊)が完成するなど、イージス艦の配備は海上自衛隊にとっても大きな時代の節目となった。自衛隊のイージス艦はアメリカ海軍と異なりトマホークミサイルを搭載しておらず、純粋な防空艦として運用されている。48隻の護衛艦のうちイージス艦は6隻だけで、建造費も1,400億円と年間維持管理費40億円と護衛艦史上最高額である。

海上自衛隊の護衛艦の名称は旧日本海軍の艦のものを使用する場合が大半であるが、イージス艦にはそれ以前のミサイル護衛艦(DDG)で使われていた駆逐艦の名称ではなく、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)と同様に戦艦重巡洋艦の名称が使われており別格の扱いを受けている。

自衛隊インド洋派遣の際には高性能なイージス艦の派遣を巡って議論が発生し、政治的問題化したため一時期派遣が見送られた。

「こんごう型」の4隻はミサイル防衛に対応した改修がおこなわれ、日本におけるミサイル防衛の一翼を担う重要な存在となっており、北朝鮮によるミサイル発射実験に対して発令された破壊措置命令4回すべてに出動している。「あたご型」2隻も2013年現在、ミサイル防衛機能の追加改修を行っている。

イージスシステム[編集]

艦対空ミサイルを連続発射するアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦

イージスシステムは、イージス艦のイージス艦たる所以であって、その戦闘システムの中核である。イージス艦が搭載する全ての兵器はイージスシステムに接続され、組み込まれる。このため、イージス艦が搭載する戦闘システム全体を指してイージスシステム(イージス戦闘システム; Aegis Combat System)と総称することもある。

イージスシステムは、SPY-1レーダー情報処理システムスタンダード対空ミサイル・システムによって構成されている。

SPY-1レーダーはイージスシステムの中核であり、八角形のフェーズドアレイ・レーダーが4枚、四方に向けて艦の上部構造物に固定されている外見は、イージス艦の特徴ともなっている。最大探知距離450キロ以上、最大探知目標は200以上である。

イージス艦のスタンダード対空ミサイル・システムは、改良型のスタンダード・ミサイル2型を使用し、また新型の射撃指揮装置が組み込まれているため、同時に多数(10個以上)の目標と交戦することができる。現在就役している艦では、ミサイル・ランチャーとしてMk 41垂直発射装置が採用されており、即応性や速射能力などが向上している。

さらに近年、イージスシステムはミサイル防衛任務にも対応できるように改修されつつある。ミサイル防衛は極めて困難な任務であるため、スパイラル開発のコンセプトに基づいて、漸進的に開発が進められており、2009年3月現在、イージスBMD3.6と呼ばれるバージョンが配備されている。イージスBMD3.6搭載艦は、弾道ミサイル迎撃専用に開発されたスタンダード・ミサイル3型(SM-3)を搭載し、高度150kmの目標と交戦できると言われている。[2]


その他の搭載兵器・機器[編集]

これまでに建造されたイージス艦は、イージスシステム以外にも、その時点において標準的な各種の兵器を搭載してきた。

ミサイル[編集]

Mk 41垂直発射装置

現用のイージス艦が搭載するMk 41垂直発射装置は汎用性が高く、スタンダード艦対空ミサイル以外にも多くの種類のミサイルを搭載することができる。ESSM(発展型シースパロー)、垂直発射式アスロック(VLA)対潜ミサイルトマホークなどが、その例である。(ESSM(発展型シースパロー)は1セルにつき4発を搭載可能)

Mk 41では、どのミサイルをどれだけ搭載できるかが任意に決められるので、イージス艦の兵装構成は非常に多様である。例えば、防空艦としての活動が多いタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦においては、ミサイル搭載数の大部分をスタンダード対空ミサイルが占めているのに対し、汎用艦としての活動が多いアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦では、トマホーク巡航ミサイルの搭載数が増えていると言われているし、対潜戦闘を重視する日本の艦ではVLAがある程度の比率で搭載されており、ノルウェーのフリチョフ・ナンセン級フリゲートESSM(発展型シースパロー)のみ搭載する。

また、アーレイ・バーク級35番艦以降を除いて、Mk 41のほかに対艦ミサイルの4連装発射筒を搭載している。対艦ミサイルの機種は、あたご型が90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)、フリチョフ・ナンセン級がNSM、世宗大王級がSSM-700Kであり、他の艦はすべて、アメリカ海軍で標準的なハープーンである。

近接防空システム(CIWS)[編集]

アーレイ・バーク級35番艦以降を除いて、全てのイージス艦は、従来艦と同様に近接防空システム(CIWS)を搭載する。その機種は通常ファランクスだが、スペインのアルバロ・デ・バサン級フリゲートは国産のメロカを、韓国の世宗大王級駆逐艦オランダ製のゴールキーパーおよびRAM近接防御ミサイルを組み合わせて搭載する。

また、CIWSを搭載していないアーレイバーク級35番艦以降では、ESSMをもってその代用とするとされているが、アーレイバーク級35番艦以降の中には後部にCIWSを1基のみ搭載している艦も存在する。

砲熕(ほうこう)兵器[編集]

Mk 45 5インチ砲、発砲の瞬間。

イージス艦の主たる兵器はミサイルではあるが、汎用性が高く、即応性にも優れることから、通常型の艦砲も搭載する。

その機種は、こんごう型がオート・メラーラ社製の127 mm 単装砲、フリチョフ・ナンセン級が同じくオート・メラーラ社製の76 mm 単装砲を搭載している他は、全てのイージス艦がアメリカ製のMk 45 5インチ砲を搭載している。これは、現代のアメリカ軍でもっとも一般的な艦砲である。

伝えられるところでは、こんごう型で、オート・メラーラ社製の砲をイージス・システムに接続する際には、通常使われる砲とは違っていたために、若干の困難があった、とのことである。


対潜戦闘システム[編集]

アーレイ・バーク級から発射される対潜用のMk 46短魚雷

全てのイージス艦は、それぞれの海軍で標準的な対潜戦闘システムを搭載している。

対潜水艦戦闘でのセンサーとしては、通常は最近の従来艦と同じくバウ・ソナーと戦術曳航ソナーを装備するが、沿岸海域での戦闘を重視したアーレイ・バーク級フライトIIAでは、ヘリコプター運用設備との兼ね合いから、曳航ソナーが省かれる。

また、攻撃手段としては、舷側のMk 32 短魚雷発射管から発射される短魚雷、Mk 41 VLSより発射されるVLA対潜ロケット、さらに場合によってはヘリコプターが使用される。ここで用いられる短魚雷としてはMk 46が長く用いられてきたが、現在は、より高速で強力なMk 5097式短魚雷なども就役している。

これらセンサーと攻撃手段を統合した対潜戦闘システムとして、米艦とあたご型はAN/SQQ-89統合対潜戦闘システムを搭載している。これは、スプルーアンス級やオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートにおいて導入されたもので、対潜戦闘を大幅に自動化するものであり、いわば対潜版のイージスシステムということができる。

しかしSQQ-89は機密レベルが高く、海外輸出が制限されるため、こんごう型やアルバロ・デ・バサン級などでは、国産あるいは輸入した別の対潜戦闘システムを使用しており、従ってソナーの機種や構成も異なっている。

航空機[編集]

アーレイ・バーク級駆逐艦に着艦しようとするSH-60Jヘリコプター

多くの場合、イージス艦も、他の現代水上戦闘艦と同様にヘリコプターを搭載する。アメリカのLAMPS構想に見られるように、これらはソナーと魚雷を搭載しての対潜哨戒のほか、軽輸送や救難など、多用途に用いられる。ただし、アーレイバーク級の初期建造艦(フライトI、II)、およびこれをもとにしたこんごう型は、格納庫をもたず、ヘリコプター用飛行甲板と給油設備、データ・リンクのみを設置している。

アメリカ海軍の艦ではSH-60B LAMPSヘリコプターが搭載されており、これを含んだLAMPSシステムは、SQQ-89統合対潜戦闘システムを介してイージス・システムに接続されている。一方、日本のあたご型護衛艦ではSH-60JSH-60K 1機を搭載可能であるが、これはLAMPSのように母艦と連携しての運用のほか、独立しての作戦行動も可能になっている。


通信設備[編集]

イージス・システムの開発以前より、アメリカ海軍は艦隊全体で一体となって戦闘を行なうため、海軍戦術情報システム(NTDS)を開発・使用してきた。そのネットワークに接続するための戦術データ・リンク装置は、イージス艦にも当然搭載される。従来はリンク 11が使用されてきたが、1990年代より新型のリンク 16が運用開始され、既存の艦にも順次装備されている。

海上自衛隊では、こんごう型の4番艦で初めてリンク 16に対応し、続いて建造されたあたご型にも搭載されたほか、既存のこんごう型3隻に対しても搭載改修が行われている(イージス艦以外に、たかなみ型汎用護衛艦ひゅうが型ヘリコプター護衛艦にも搭載されている)。ただし、リンク 16は見通し線外通信ができないため、艦隊全体での通信にはリンク 11が依然として使われている。

また、より広域での作戦統制のため、アメリカ海軍のイージス艦ではUHF帯とSHF帯の衛星通信回線が設置されている。これらの衛星通信回線は、アメリカ海軍の骨幹的指揮統制システムである海上用-汎地球指揮統制システム(GCCS-M)や情報資料を配信する統合同軸報送信サービス、多国間作戦を調整するためのCENTRIXSといった情報システムのために用いられている。

ミサイル防衛(BMD)など広域での戦術情報共有が必要な作戦においては、アメリカ海軍はリンク 16をベースにした衛星データリンクであるS-TADIL Jを使用しており、海上自衛隊のイージス艦の一部にもその通信装置が装備される。海上自衛隊のイージス艦では、このほかに、海上自衛隊の骨幹的指揮統制システムである海上作戦部隊指揮管制支援システム(MOFシステム)のためのSUPERBIRD衛星通信回線が設置されている。

類似の艦[編集]

誤用としてのイージス艦[編集]

ザクセン級フリゲート
052C型駆逐艦。その外観から「中華イージス」や「中華神盾」と呼ばれることがある

上述のとおり、イージス艦とはイージスシステムを搭載する艦のことである。イージスシステムは実用化から25年が経過しているにもかかわらず、とくにその中核となるSPY-1レーダーなどは、今でも他機種の水準をはかるための基準として利用されている[3]。また、一般に対する知名度も比較的高いため、イージスシステム以外の防空システムを搭載する艦艇まで含めてイージス艦と呼ぶことがある。

例えば、ドイツのザクセン級フリゲート、オランダのデ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲート、英仏伊の45型駆逐艦フォルバン級駆逐艦アンドレア・ドーリア級駆逐艦、日本のあきづき型汎用護衛艦などはしばしばミニ・イージス艦と称される[4]。また、同じく四面固定式のフェイズドアレイ・レーダーを採用していると思われる中国の蘭州級(052C型)駆逐艦昆明級(052D型)駆逐艦は、「中華イージス(中華神盾)」と呼ばれる事が多い。これらの艦を「○○イージス艦」と呼ぶ場合には、下記のような共通点が認められる。

  • NTU改修艦の場合のような数個程度ではなく、十数個〜数百個という非常に多数の空中目標への同時対処が可能な防空能力を備えている
  • 高度に統合された戦闘システムを備えている(NAAWSPAAMSFCS-3など)
  • フェーズドアレイ・レーダーを搭載している
  • 多機能レーダーの運用に重点を置いた船体構造に設計されている
  • 垂直発射式のミサイル・ランチャーを搭載している

海上自衛隊のむらさめ型汎用護衛艦においては、「ミニ・イージス艦とも言うべき高性能艦」などと紹介される一方で、「ミニ・イージス艦となる予定だったが断念した」など報道される事もあり、表現の混乱が見られる。むらさめ型は1面回転式のフェイズドアレイ・レーダーであるOPS-24を搭載しているが、これは純粋の捜索レーダーであるので、多機能レーダーであるSPY-1とは別種のものである。また、むらさめ型は対空戦闘システムFCS-3の搭載を断念した経緯がある(後にあきづき型が搭載)が、たとえ搭載されたとしてもFCS-3は国産の対空戦闘システムであり、イージスシステムとは別物である。

固有名詞が一般名詞化する段階では拡大解釈が行われ、この様な誤用が見られる。本来ゼネラル・エレクトリック社のジェットエンジンに装備されている再燃焼装置を指す言葉であるはずの「アフターバーナー」が、ジェットエンジンの再燃焼装置全般を指す用語として使われているなど、類似の事例は皆無ではない。

ミニ・イージス艦[編集]

ノルウェーのフリチョフ・ナンセン級は、軽量簡易型のレーダーを搭載すると共にシステム全体を簡略化しており、ベースライン別に分類される従来のものとは異なる、簡易型のイージスシステムを搭載する。これは「ミニ」ではあるが、前述の誤用としての「イージス艦」とは異なり正式なイージス艦である。また比較的小さな艦型(全長132m、全幅16.8m)を指して「ミニ・イージス艦」と呼ばれることもある。

イージス艦一覧[編集]

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

日本の旗 日本

スペインの旗 スペイン

ノルウェーの旗 ノルウェー

韓国の旗 韓国

オーストラリアの旗 オーストラリア

創作中のイージス艦[編集]

小説・漫画・アニメなどに登場するイージス艦で、作品中のイージスシステムが実在のそれとどの程度同一であるかは、それぞれの作品の世界観によるが、その有無についてはっきりと語られる場合を除くと、作中での名称や描写(艦名や艦番、レーダーの形)から推測する事になる。なお、1シーンのみの登場でも、その描写によってイージス艦と推測できる作品は、他にも数多く存在する。

イージス艦を扱った作品
ゲーム
アーレイバーク級ミサイル駆逐艦がニューヨーク沖でロシア艦隊の攻撃を受け撃沈される。
タイコンデロガ級22番艦「アンツィオ」がパトリオットミサイルとともにワシントンD.C.の防衛に当たるがSu-35の体当たり攻撃を受け大破、沈没する。
架空のイージス艦

本来の意味でイージス艦と呼んでよいものもあれば、誤用に近いものもある。

イージスシステムの中核に国産品を使うなど改良が加えられており、本当のイージス艦と言えるかは微妙。
  • DDG-79「カニンガム」(USS Cunningham; 『ステルス艦カニンガム出撃』など)
米海軍の発展型イージス艦。SPY-2レーダーなどを搭載。
正規のイージス艦。
正規のイージス艦
イージス艦と呼称されSPY-1レーダーの様な描写もある。しかし、架空世界(コズミック・イラ)の艦であり、本来のイージス艦ではない。ただし作品世界内の過去において「アメリカ合衆国」が存在し、イージスシステムの開発元と設定されており、この世界でも現実世界と同じイージス艦が存在し、その名を継承したと解釈できない事は無い。
  • いそかぜ(『亡国のイージス』)
原作の小説では、はたかぜ型ミサイル護衛艦の3番艦に試験艦「あすか」のFCS-3を搭載した架空の艦である。よって題名とは裏腹に[7]イージス艦ではない。あえて言うなら「ミニ・イージス艦」(誤用)である。
映画版では実物のこんごう型イージス護衛艦DDG175「みょうこう」を撮影に使用したため正規のイージス艦と思われる。

脚注[編集]

  1. ^ マイヤー提督は、イージスシステムが、AWSからACS、さらにイージス艦へとシステム統合が進められるとともに、そのいずれの段階においてもプロジェクト・マネージャーをつとめており、イージスの父とも言われている。その功績から、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の58番艦は、同提督にあやかってウェイン・E・マイヤー (DDG-108)と命名された。
  2. ^ ただし、2008年2月に制御不能に陥った偵察衛星NROL-21を撃墜した際には、高度247kmで交戦し、撃破していることから、衛星軌道上の衛星に関しての交戦可能高度はさらに高い。
  3. ^ 野木恵一「世界の艦載多機能レーダー」『世界の艦船』2008年3月号(通巻687号)、86-89頁
  4. ^ 編集部「世界のイージス艦とミニ・イージス艦」『世界の艦船』2006年12月号(通巻第667集)、84-89頁他
  5. ^ http://www.sankeibiz.jp/gallery/news/131208/gll1312081200000-n1.htm
  6. ^ http://sankei.jp.msn.com/world/news/131210/kor13121020550004-n1.htm
  7. ^ 「国防の盾」という象徴的意味合いと、単に高性能防空艦の代名詞としてイージスという名を使用していると思われる。

参考文献[編集]

  • 「海上自衛隊の現有艦載レーダー」『世界の艦船』2003年2月号(通巻第607集)、42-44頁
  • 岡部いさく「現用イージス・システムの防空能力」『世界の艦船』2006年12月号(通巻第667集)、76-83頁
  • 藤木平八郎「イージス・システム開発の歩み」『世界の艦船』2006年12月号(通巻第667集)、69-75頁
  • 編集部「イラストで比較する『あたご』級とKDX-3型」『世界の艦船』2006年12月号(通巻第667集)、94-97頁
  • 編集部「幻に終わった大型イージス艦たち」『世界の艦船』2006年12月号(通巻第667集)、100-101頁
  • 野木恵一「米海軍の研究開発システム」『世界の艦船』2007年5月号(通巻第674)、96-101頁

関連項目[編集]