バージニア級原子力潜水艦

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バージニア級原子力潜水艦
USS Virginia
艦級概観
艦種 攻撃型原子力潜水艦
艦名 州名。
建造期間 2000年 - 建造中
就役期間 2004年 - 就役中
前級 シーウルフ級原子力潜水艦
次級 最新
性能諸元
排水量 水中:7,800t
全長 114.8m
全幅 10.4m
吃水 9.3m
予備浮力
機関 原子力ギアード・タービン推進(40,000 shp
GE S9G型加圧水型原子炉 1基
蒸気タービン 2基
スクリュー 1軸
電池
速力 公表値:水中25ノット
推定値:水中34ノット
航続力
乗員 134名
探索装置
兵装 533mm水圧式魚雷発射管
Mk 48 魚雷
ハープーン USM
• 各種機雷
弾庫容量: 38基分
無人潜水艇の使用も可能
4基
トマホーク SLCMVLS 12基

バージニア級原子力潜水艦(バージニアきゅうげんしりょくせんすいかん Virginia Class submarine)は、アメリカ海軍が現在調達中の攻撃型原子力潜水艦。艦名はアメリカ合衆国の州名がつけられている。2004年10月に1番艦が就役した。

開発の経緯[編集]

冷戦末期アメリカ海軍は、主力攻撃型原潜であるロサンゼルス級の後継としてシーウルフ級を開発した。シーウルフ級はソ連海軍アクラ型などに対抗すべく攻撃能力、静粛性、速力、潜航深度などすべての面において最高レベルの性能をもった潜水艦として開発されたが、その反面高価なものとなってしまった。そのため、冷戦の終結による予算縮小もあって、建造は3隻で打ち切られた。

当初からシーウルフ級は高価であるため量産は不可能と考えられ、シーウルフ級より性能を若干落とし価格を下げた安価な潜水艦でロサンゼルス級を代替することが計画され、計画名もセンチュリオンと名付けられた。これがバージニア級の原点となる。センチュリオンは冷戦時にはそれほど注目されていなかったが、冷戦終結に伴う予算縮小が現実化するにつれ注目されることとなり、1992年には計画名がNSSN (New Attack Submarine) へ変更され本格的な開発が開始された。

NSSNは、静粛性はシーウルフ級並ながらロサンゼルス級より一回り小さい船体で、速力をはじめとした能力も若干低下させた潜水艦が予定されていた。だが、後に沿岸浅海域(littoral area)からの陸上攻撃能力を重視したアメリカ海軍の新戦略である「from the sea」に基づく陸上攻撃能力の向上やSEAL輸送能力の付与などにより、最終的には静粛性はシーウルフ級並、その他の面はロサンゼルス級以上シーウルフ級以下の性能を持つ潜水艦となった。結果として価格も高騰してしまい、調達性が低下してしまった。

コスト削減策[編集]

冷戦終結後に登場したバージニア級には、かつてほどの潤沢な予算を振り向けるわけにはいかなくなった。そこで、コスト削減に意が用いられることになった。

その例の1つが民生品転用(COTS: commercial off the shelf)で、純粋に軍用に開発されたのではない、一般に使用されている商用民生品を導入するというものである。民生品の中でもコンピューターのような電気製品では、軍用品に比べ安価で能力も良いが、信頼性や耐久性には欠けるため、兵器の一部として使用する場合は交換を容易にするなどの保守のための配慮が欠かせなくなる。

バージニア級では、船体をパーツの交換が容易なモジュール構造とすることで、民生品の信頼性の低さを補っている。また、バージニア級は長期にわたっての建造が予定されており、その途中での装備変更も計画されているが、上記の様にモジュール構造を用いることで能力向上も比較的簡単に行うことができるとされている。光ケーブルを使用した艦内LANにはオープン・アーキテクチャーを採用している。

また、原子炉核燃料棒の寿命は艦の寿命(33年とされる)と等しいものを採用した。いままでの原子力潜水艦では、おおむね10年ほどで核燃料棒の交換をしなければならず、そのつど艦体を切断しての大がかりな工事が必要であった。この工事自体のコストだけでなく、大規模工事に伴う長期の戦力不在を埋めるために、代艦を確保しなければならず、これらがコスト上昇の大きな要因となっていた。バージニア級においても、ドック入りを伴う整備は不可欠であることは変わらないが、特にコストの大きい核燃料棒交換工事の必要を事実上なくしたことによる、コスト節減が期待されている。

特徴[編集]

船体構造[編集]

組み立て作業中のUSSバージニア

船体内部は前から順にソナートマホーク垂直発射管、発令所、居住区、原子炉区画、機械室と後期型ロサンゼルス級と基本的には変わっていない。船体をモジュラー構造とし、各区画ごとに独立した機能を組み込んだことで船体が長くなった。主要な鋼材にHY80高張力鋼を使用し、シーウルフ級のHY100より安価としたが最大潜航深度も610mから488mに落ちているとされる。

セイルは後期型ロサンゼルス級やシーウルフ級と同じように潜望鏡や対水上レーダー、シュノーケルなどが装備されており、基部は整流用に整形されている。氷海での行動も考慮して、潜舵はセイルではなく船体前部に装備されている。潜望鏡は非船殻貫通型と呼ばれる新しい仕組みが採用されている。従来の光学的な潜望鏡と異なり船殻に穴を開けて潜望鏡を設置する必要がなくなるため、耐圧船殻の開口部を減らし、強度を増すことが出来る。

スクリューは静粛性に効果のあるシュラウドリング(一種のカバー)を取り付けており、スクリュー形状も変わったとも言われるが、形状が確認できる確かな情報源はない。シーウルフ級と比べて39ノットから34ノットに最大水中速力が落ちているとされる。船体はアクティブソナー対策としてソナー部分など一部をのぞき吸音タイルで覆われているが、これはロサンゼルス級以来行われているのと同様である。

兵装[編集]

USSバージニアの魚雷発射管室内の制御装置

バージニア級の兵装は533mm魚雷発射管×4門にトマホーク用VLS×12基で、後期型ロス級と同様である。デコイ発射筒は再装填不可の14基と再装填可能な1基の合計15基がある。

魚雷
533mm魚雷発射管×4門のための発射管室はセイル部がある発令所の下の階に位置する。シーウルフ級の660mm魚雷発射管8門と比べると戦闘能力は下がったかのような印象を受けるかも知れないが、魚雷発射管室内の弾庫の搭載数(魚雷・対艦ミサイル38発)とトマホーク用VLSを合わせればシーウルフ級と同数である。なお、魚雷発射管は、従来と同様に機雷の使用も可能である。
VLS
トマホーク用の12基のVLSはセイル部と艦首ソナーの間に設置されている。これは改良型のタクティカル・トマホークが軽量化とコストダウンによって強度が低下し、魚雷発射管からの発射が出来なくなったためである。
2028年までに4隻のオハイオ級原子力巡航ミサイル潜水艦(SSGN)は全て退役予定である。そこで海軍は現在、2019年から調達が開始される20隻のバージニア級攻撃型原子力潜水艦(SSN) Block Vにモジュール(VPM)を組込む予定である。バージニア級SSNは1隻辺り12~40発のトマホーク(TLAM)を搭載できるが、4本の大径発射筒をもつVPMを組込むことで、トマホークの数が3倍になる。オハイオ級SSGNを新規に1隻建造するのと同程度のコストで、10隻のバージニア級SSNをVPM搭載へと改修可能である。

センサー[編集]

非船殻貫通型潜望鏡
従来型の光学式潜望鏡に代わって採用された新たな非船殻貫通型潜望鏡は、3種のテレビカメラで外部を撮影し、その信号を発令所のディスプレイに送信するというものである。テレビカメラは可視光線域の高解像度カメラと光量増感式カメラ、赤外線カメラが2本のマスト先端に取付けられ、360度の視界が得られる。従来の光学式潜望鏡では、潜望鏡を覗ける1-2名だけが画像情報を得られたが、新型の電子光学式潜望鏡では昼夜を問わず大型ディスプレイによって艦内の必要な人員が同時に見る事が出来、録画や艦外への情報提供も可能となる。
マスト
セイル上部には合計8本のマストがあり、内2本は非船殻貫通型潜望鏡である。6本は航海用レーダー、電波逆探知用(ESM)、電波傍受用に使用されている。
ソナー
  • 艦首ドーム内に球形ソナー(中周波のアクティブ/パッシブ)と艦首下部のチン・ソナー(高周波のアクティブ)
  • 船体両側面の各3箇所に軽量広開口ソナー(中周波のパッシブ)BQG-5A。4番艦「ノースカロライナ」からはコンフォーマル音響速度ソナーに変更。
  • ケーブル曳航式ソナーTB-16とTB29Aの2種
  • セイル前面上部のソナー(高周波のアクティブ)
チン・ソナーとセイル・ソナーは主に前方の機雷の探知を行ない、他のソナーは船舶や潜水艦の探知に使用される[1]

SEAL支援装備[編集]

バージニア級は開発当初からSEALの活動を想定して設計された最初の艦である。魚雷室の搭載魚雷を減らすことで、空いた空間にSEAL潜水隊員用の居住コンパートメントを設置して最大40人程度のSEAL隊員を輸送することができる。

船体上部には、アクアラングを装備した最大9名のSEALが水中で同時に出入りすることができるエアロック・チャンバーも備えている。セイル前方側面には艦外収納庫があり特殊部隊用の装備を格納できる。SEAL輸送用の小型潜水艇ASDS (Advanced SEAL Delivery System) の開発は中止されている。

同型艦[編集]

2013年現在、バージニア級は調達中である。しばらくの間は年1隻ずつ、その後年2隻ずつ調達し、最終的に30隻程度が導入される予定である。

Block 艦番号 艦名 建造所 起工 進水 就役 退役
I SSN-774 バージニア
USS Virginia
エレクトリック・ボート 2000年
9月2日
2003年
8月16日
2004年
10月23日
SSN-775 テキサス
USS Texas
ニューポート・ニューズ 2003年
7月12日
2006年
4月9日
2006年
9月9日
SSN-776 ハワイ
USS Hawaii
エレクトリック・ボート 2004年
8月27日
2006年
6月17日
2007年
5月5日
SSN-777 ノースカロライナ
USS North Carolina
ニューポート・ニューズ 2004年
5月22日
2007年
4月21日
2008年
5月3日
II SSN-778 ニューハンプシャー
USS New Hampshire
エレクトリック・ボート 2007年
4月30日
2008年
2月21日
2008年
10月25日
SSN-779 ニューメキシコ
USS New Mexico
ニューポート・ニューズ 2008年
4月12日
2009年
1月18日
2010年
3月27日
SSN-780 ミズーリ
USS Missouri
エレクトリック・ボート 2008年
9月27日
2009年
12月5日
2010年
7月31日
SSN-781 カリフォルニア
USS California
ニューポート・ニューズ 2009年
5月1日
2010年
11月14日
2011年
10月29日
SSN-782 ミシシッピ
USS Mississippi
エレクトリック・ボート 2010年
6月9日
2011年
10月13日
2012年
6月2日
SSN-783 ミネソタ
USS Minnesota
ニューポート・ニューズ 2011年
5月20日
2012年
11月3日
2013年
9月7日
III SSN-784 ノースダコタ
USS North Dakota
エレクトリック・ボート 2012年
5月11日
2013年
9月15日
2014年
5月(予定)
SSN-785 ジョン・ウォーナー
USS John Warner
ニューポート・ニューズ 2009年
4月29日
2015年
8月(予定)
SSN-786 イリノイ
USS Illinois
エレクトリック・ボート 2011年
3月
SSN-787 ワシントン
USS Washington
ニューポート・ニューズ 2011年
9月2日
SSN-788 コロラド
USS Colorado
エレクトリック・ボート
SSN-789 インディアナ
USS Indiana
ニューポート・ニューズ
SSN-790 サウスダコタ
USS South Dakota
エレクトリック・ボート
SSN-791 デラウェア
USS Delaware
ニューポート・ニューズ
IV SSN-792
SSN-793
SSN-794
SSN-795
SSN-796
SSN-797
SSN-798
SSN-799
SSN-800
SSN-801
V SSN-802
SSN-803
SSN-804

出典[編集]

  1. ^ 河津幸英著 『アメリカ海軍の超戦闘艦&有事作戦』 アリアドネ企画 2008年5月15日発行 ISBN 9784384041651

関連項目[編集]