あさぎり型護衛艦

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あさぎり型護衛艦
JS Setogiri (DD-156) in the Pacific, -16 Nov. 2007 a.jpg
DD-156 せとぎり
艦級概観
艦種 護衛艦(DD:汎用護衛艦)
建造期間 1985年 - 1989年
就役期間 1988年 - 就役中
前級 DD:はつゆき型護衛艦
次級 DD:むらさめ型護衛艦
性能諸元
排水量 基準 3,500トン
(5番艦以降50トン増)
満載 4,900トン
(5番艦以降50トン増)
全長 137m
全幅 14.6m
深さ 8.8m
吃水 4.4m(5番艦以降4.5m)
機関 COGAG方式
SM1Aガスタービンエンジン(13,500PS) 4基
スクリュープロペラ 2軸
速力 最大30kt
乗員 220名
兵装 62口径76ミリ単装速射砲 1基
高性能20mm機関砲
CIWS Mk.15 mod.2)
2基
シースパロー短SAM 8連装発射機 1基
ハープーンSSM 4連装発射筒 2基
74式アスロックSUM 8連装発射機 1基
HOS-302A 3連装魚雷発射管 2基
艦載機 HSS-2B/SH-60J哨戒ヘリコプター 1機
C4I MOFシステムSUPERBIRD B2衛星通信)
海軍戦術情報システム
OYQ-6/7 CDSリンク 11/14
FCS-2-22A/23 主砲FCS
FCS-2-12E/G ミサイルFCS
SFCS-6B 水中FCS
レーダー OPS-14C 二次元式対空用
(5番艦以降OPS-24 三次元式対空用)
OPS-28C 対水上用
ソナー OQS-4A 船底装備式
OQR-1 戦術曳航
電子戦
対抗手段
NOLR-8 ESM装置+OLR-9C RWR
OLT-3 ECM装置
Mk 137 チャフフレア発射機
AN/SLQ-25対魚雷デコイ

あさぎり型護衛艦(あさぎりがたごえいかん、: JMSDF DD ASAGIRI class)は、海上自衛隊の汎用護衛艦である。はつゆき型(52〜57DD)の拡大改良型と位置付けられる。8隻が建造された。

概要[編集]

はつゆき型12隻に続き、計20隻で、4個護衛隊群に各5隻の汎用護衛艦(DD)を配するいわゆる新「八八艦隊構想」の基準構成艦として整備された。前級にあたるはつゆき型は当初、建造費の低減を図るため上部構造にアルミ合金を使用し軽量化を図っていた。

のちに51防衛大綱が制定され、それまで重視されていた単年度会計における単艦の建造費の圧縮から、中期防衛力整備計画における艦艇定数の制約、すなわち質の重視へと移行したため、極端な排水量抑制を行う必要がなくなったことから、1981年度計画の8番艦「やまゆき」から上部構造物を鋼製に設計変更している。

その後、昭和57年(1982)11月27日に誕生した第1次中曽根内閣によって防衛費が増額されたことから、はつゆき型の詰め込みすぎた設計を改めることとなる。これが1983年度計画艦となるあさぎり型であり、多様な任務をこなす汎用護衛艦として、基本的にはつゆき型と同じ運用構想で建造された。

船体・機関[編集]

船型としては、はつゆき型と同じく遮浪甲板(平甲板)型を採用しているが、上甲板の整一化が図られている。はつゆき型に比して船体は7m長く、排水量は約500t大きくなった。艦首は再びクリッパー型に改められ、艦橋構造物は1層低くなり2層とされた。ヘリ格納庫は、哨戒ヘリコプターを必要に応じて2機収容できるよう大型化された[1]

また、主機構成としては、はつゆき型のCOGOG方式からCOGAG方式となり出力が増大、水中放射雑音の低化なども図られている。機種としては、はたかぜ型(56/58DDG)のCOGAG機関で巡航機として採用されたロールス・ロイス スペイSM1Aの単一機種とされた。機関配置も改められており、はつゆき型では左舷軸用と右舷軸用の主機関が艦の両側に並行に配置されるパラレル配置が採用されていたのに対し、本型では被弾時の生残性を高めるため、左舷軸用と右舷軸用の主機関を前後に間隔を置いて配置するシフト配置が採用されている。このため煙突は主マスト後とヘリ格納庫直前の2本に変更され、それぞれ左右にシフトして設置されている。COGAG機関のシフト配置という方式は、本型以降に建造されたすべての甲型警備艦(DD, DDG, DDH)において踏襲された[2]

装備[編集]

C4Iシステム[編集]

本型の搭載する戦術情報処理装置は、はつゆき型のものを基本としているが、その能力は大幅に強化されている。前期建造艦が搭載するOYQ-6は、対空レーダーとの連接やリンク 11の送受信に対応しており、アメリカの文献では「full destroyer CDS」とも称される。

その後、最終艦である「うみぎり」においてOYQ-101 ASWDSの搭載に伴い、これとの連接に対応したOYQ-7に発展した。これにより、対潜戦におけるパッシブ情報の統合・表示および哨戒ヘリコプターとのデータ・リンク機能が強化されており、この情報処理所要の増大に伴い、電子計算機はデュアルプロセッサ化されている。これはのちに、あさぎり型の他艦にもバックフィットされたとされている。

対空戦闘システム[編集]

本型は、はつゆき型と同様、シースパローIBPDMS62口径76ミリ単装速射砲高性能20mm機関砲CIWS)と3重の対空火網を備えており、これらの火器は、OYQ-6/7を中核として連接され、半自動システムを構成している。そのサブシステムは下記のとおりである。

経空脅威に対しては、まずOPS-14/24対空捜索レーダーで目標を探知しOYQ-6/7戦術情報処理装置により捕捉・追尾しコンピュータからのリコメンドまたはオペレータの情勢を判断により攻撃の優先順位を決定し自動または手動によりFCSに目標を指示しシースパローIBPDMSまたは76ミリ速射砲による攻撃に至る。

射撃指揮装置としては国産のFCS-2シリーズが用いられており、76ミリ砲の射撃指揮にはFCS-2-22が、シースパローIPDMSの射撃指揮にはFCS-2-12E/Gが使用されている。なお、DD-155~DD-158はFCS-2-22に換えてFCS-2-23が装備されシースパローIPDMSを管制できる。また、シースパローIBPDMSのGMLS-3発射装置(アメリカ海軍のMk 29と同等)には、機力による直接装填装置が後日装備された。

近接防空火器 (CIWS) としては高性能20mm機関砲(CIWS Mk.15 mod.2; ファランクス ブロック0)2基が搭載される。なお、OYQ-6/7戦術情報処理装置から20mm機関砲に対する干渉は必要最小限であり、基本的には独立したシステムとして攻撃を実施することになる。


対水上戦システム[編集]

本型は、はつゆき型に引き続いて、ハープーン艦対艦ミサイルによる長距離対水上打撃力を備えている。ハープーンは4連装のMk 141発射筒2基に収容されて、艦中央部の煙突脇に搭載されており、その射撃指揮を行なうSWG-1 HSCLCSを介してOYQ-6/7に連接されており、目標諸元の入力を受けることになる。

また、対水上センサーとしては、新型のOPS-28対水上レーダーが搭載された。これはCバンドで動作し、遠距離での精密捜索能力に優れており、水上の目標のみならず低空を飛行する巡航ミサイルなどの探知にも使用される。

また、レーダーを作動させることが危険な状況においては、NOLR-6C ESM装置やデータリンクからの情報に基づいて攻撃が実施されることになる。

対潜戦闘システム[編集]

本級の対潜戦闘システムは、当初、あらゆる面ではつゆき型搭載のものを踏襲したものとなっていた。

本型の主たる対潜センサーは、船体装備のOQS-4A IIIソナー、および哨戒ヘリコプター装備のディッピングソナーソノブイである。このうち、ソノブイからの情報のみが戦術情報処理装置に入力されて処理を受け、それ以外のセンサーからの情報は、いずれも水測員によって処理された上で、直接に水中攻撃指揮装置SFCS-6Bに移管されていた。

一方、対潜攻撃兵器としては、従来より使用されてきたアスロック対潜ミサイルの8連装発射システムMk 16およびHOS-302A 3連装短魚雷発射管に加え、搭載するヘリコプターの短魚雷を使用することができる。従って、本型は長射程においてはヘリコプター、中射程においてはアスロック、短射程においては短魚雷と3段構えの対潜火力を行使することができるが、これは、同世代の欧米の同級艦と比して極めて強力なものである。特に対潜ミサイルについては、オランダ海軍コルテノール級西ドイツ海軍ブレーメン級など当時盛んに建造された列国の3,000トン級フリゲート(いわゆるStandard Frigate)には無い装備である。また、従来の護衛艦装備のアスロック発射機が人力装填であったのに対し、艦橋構造物下部の弾庫から直接次発装填する方式に改められている。

これらのうち、アスロックおよび短魚雷発射管はSFCS-6B水中攻撃指揮装置によって統制を受ける。一方、本型の搭載する対潜哨戒ヘリコプターは、アメリカ海軍のLAMPSとは異なり、かなり高度な独立作戦能力を有しており、固有のディッピング・ソナーからの情報に基づいて攻撃を実施することもできるが、LAMPSと同様、母艦からの統制のもとで攻撃を実施することもできる。

その後、最終艦である「うみぎり」において、長距離捜索が可能なOQR-1戦術曳航ソナー(TACTASS)によるパッシブ・オペレーションが導入されたことに伴い、対潜情報処理能力を向上させる必要性からOYQ-101 ASWDS(ASW Direction System)が装備された。これにより、対潜センサー情報はすべてASWDSで一元的に管理されることとなった。

電子戦システム[編集]

「はまぎり」と「あまぎり」

本型は、ESM装置としてNOLR-8、ECM装置としてOLT-3を有する。また、対ミサイルのソフト・キル用として、OLR-9C ミサイル警報装置、Mk 137 チャフ発射機および曳航式デコイを備えている。

航空機[編集]

「うみぎり」のヘリ甲板に駐機するSH-60J

8艦8機体制をとる護衛隊群のワークホースとして考えたとき、本型のもっとも重要な装備と言えるのが、搭載する哨戒ヘリコプターである。

本型では、初めて当初よりSH-60Jの搭載を想定した設計がなされており、その機上のヘリコプター戦術情報処理装置(HCDS)とのデータ・リンクのため、ORQ-1ヘリコプター・データリンクを搭載する[3]

またハンガーも拡張されており、常時の搭載機数は1機であるが、緊急時にはさらにもう1機を収容できる[4]

遍歴[編集]

あさぎり型は同型艦が8隻建造された。

長らく護衛艦隊の編制においては、4つの護衛隊群に20隻のDDが配属されているが、護衛隊群にむらさめ型(3〜9DD)たかなみ型(10〜13DD)が就役するに従い、あさぎり型の初期の2隻「やまぎり」と「あさぎり」は相次いで練習艦に種別変更された。

2011年3月16日に「やまぎり」が、2012年3月14日には「あさぎり」が護衛艦に種別変更され、それぞれ護衛艦隊直轄護衛隊(2桁護衛隊)に護衛艦として復帰した。

2012年以降、護衛隊群にあきづき型(19〜21DD)が就役し護衛隊群所属のあさぎり型は護衛艦隊直轄護衛隊(2桁護衛隊)に押し出されつつあるが、あきづき型の建造が4隻に止まる為、25DDの就役まであさぎり型のうち2隻は護衛隊群にて保持される可能性がある。

平成23年度から25年度予算までに、あさぎり型の艦齢延伸のための5隻分の改修予算と、のべ9隻分の先行的部品調達予算が計上されており、順次、艦齢延伸改修工事が実施される予定である。艦齢延伸措置を行い、運用期間をこれまでより5~10年程度延伸する計画を予定している。

評価[編集]

あさぎり型の設計には、いくつかの欠陥が指摘されている。

例えば、大型のヘリコプター格納庫(ステルス性の面で極めて不利)や、後部煙突からの熱煙(後部マストとシースパロー対空ミサイル射撃指揮装置に悪影響を及ぼし、焼損事故もあったと言われる)などが挙げられる。

その他ディーゼル発電機の排煙処理に問題があるほか、竜骨の強度不足なども指摘されている。これ等の欠陥が他の艦型よりも多いという批判もある。

同型艦[編集]

艦番号 艦名 建造 起工 進水 竣工 練習艦への
艦種変更
護衛艦への
艦種変更
所属
現:DD-151
旧:TV-3516
あさぎり 石川島播磨重工業
東京第1工場
1985年
(昭和60年)
2月13日
1986年
(昭和61年)
9月19日
1988年
(昭和63年)
3月17日
2005年
(平成17年)
2月16日
2012年
(平成24年)
3月14日
護衛艦隊第14護衛隊
舞鶴基地
現:DD-152
旧:TV-3515
やまぎり 三井造船
玉野事業所
1986年
(昭和61年)
2月5日
1987年
(昭和62年)
10月8日
1989年
(平成元年)
1月25日
2004年
(平成16年)
3月18日
2011年
(平成23年)
3月16日
護衛艦隊第11護衛隊
横須賀基地
DD-153 ゆうぎり 住友重工
追浜造船所浦賀工場
1986年
(昭和61年)
2月25日
1987年
(昭和62年)
9月21日
1989年
(平成元年)
2月28日
DD-154 あまぎり 石川島播磨重工業
東京第1工場
1986年
(昭和61年)
3月3日
1987年
(昭和62年)
9月9日
1989年
(平成元年)
3月17日
第2護衛隊群第2護衛隊
(司令部:佐世保基地
(定係港:佐世保基地)
DD-155 はまぎり 日立造船
舞鶴工場
1987年
(昭和62年)
1月20日
1988年
(昭和63年)
6月4日
1990年
(平成2年)
1月31日
護衛艦隊第15護衛隊
大湊基地
DD-156 せとぎり 住友重工
追浜造船所浦賀工場
1987年
(昭和62年)
3月9日
1988年
(昭和63年)
9月12日
1990年
(平成2年)
2月14日
第3護衛隊群第7護衛隊
(司令部:舞鶴基地)
(定係港:大湊基地)
DD-157 さわぎり 三菱重工業
長崎造船所
1987年
(昭和62年)
1月14日
1988年
(昭和63年)
11月25日
1990年
(平成2年)
3月16日
護衛艦隊第13護衛隊
(佐世保基地)
DD-158 うみぎり 石川島播磨重工業
東京第1工場
1988年
(昭和63年)
10月31日
1989年
(平成元年)
11月9日
1991年
(平成3年)
3月12日
護衛艦隊第12護衛隊
(呉基地)

登場作品[編集]

映画
三陸沖で落下隕石の調査をしていた『うみぎり』とその艦載ヘリコプターがガメラを発見する。
小説
  • 『大逆転!ミッドウェー海戦』(檜山良昭作品 『大逆転!』シリーズの小説)
環太平洋合同演習へ参加するため、ミッドウェー島沖を航行中だった、海上自衛隊護衛艦8艦が、アメリカのタイムトラベル実験に巻き込まれ、そのうちの護衛艦4艦がミッドウェー海戦勃発直前の同沖にタイムスリップしてしまう、1艦に『あさぎり』が登場する。
『あさぎり』が登場。「DAIS」にCICを接収され、実質的な指揮下に置かれる。
アニメ・漫画
ソノラマ文庫版に「あまぎり」が登場。護衛艦「しらね」とともに「こんごう」を護衛)
大友克洋監修の『最臭兵器』に登場。

参考文献[編集]

  1. ^ 「護衛艦の技術的特徴 - 1.船体デザイン」、『世界の艦船』第742号、海人社、2011年6月、 100-105頁、 NAID 40018815744
  2. ^ 阿部 安雄「護衛艦の技術的特徴 - 2.推進システム」、『世界の艦船』第742号、海人社、2011年6月、 106-111頁、 NAID 40018815745
  3. ^ 編集部「海上自衛隊のシステム艦隊化はどこまで進んでいるか」、『世界の艦船』第594集、海人社、2002年4月、 94-99頁。
  4. ^ 岡部いさく「ヘリコプター搭載護衛艦の発達 -「はるな」から「ひゅうが」まで (特集 海上自衛隊の艦隊航空)」、『世界の艦船』第696号、海人社、2008年10月、 82-87頁、 NAID 40016204589