あきづき型護衛艦 (初代)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
あきづき型護衛艦
Akiduki1st.jpg
艦尾より艦橋を望む。
画像は特務艦へ変更後の姿であり、兵装等に現役時代との差異がある。
艦級概観
艦種 指揮護衛艦(DDC)
汎用護衛艦(DD)とも
建造期間 1958年 - 1959年
就役期間 1960年 - 1993年
前級 DD:はるかぜ型護衛艦
次級 DD:建造中断
はつゆき型護衛艦登場まで)
DDK:やまぐも型護衛艦
性能諸元
排水量 基準:2,350トン
全長 118メートル (387 ft)
全幅 12メートル (39 ft)
深さ 8.5メートル (28 ft)
吃水 4メートル (13 ft)
機関 ボイラー (40kgf/cm², 450℃) 2缶
3胴型蒸気タービン (22,500ps) 2基
推進器 (360rpm) 2軸
速力 最大32ノット
乗員 330名
兵装 Mk.39 54口径5インチ単装砲 3基
57式3インチ連装速射砲 2基
Mk.108対潜迫撃砲
71式ボフォース・ロケット・ランチャーに後日換装
1基
54式対潜弾投射機 2基
55式爆雷投射機(Y砲) 2基
54式爆雷投下軌条 2条
Mk.2短魚雷落射機 2基
65式53cm4連装魚雷発射管 1基
GFCS Mk.57 (127mm砲用) 1基
Mk.63 mod.14 (76mm砲用) 1基
レーダー OPS-1対空 1基
OPS-3/5水上 1基
ソナー SQS-29J捜索用 一式
AN/SQR-8攻撃用 一式
ESM NOLR-1 一式

あきづき型護衛艦(あきづきがたごえいかん、JMSDF DD AKIZUKI class Destroyer)は、海上自衛隊が運用していた指揮護衛艦(DDC)[1]MSA協定に基づくアメリカ合衆国の域外調達(Off Shore Procurement, OSP)によって建造資金が賄われたことから、計画に際して予算に余裕があった為、護衛艦としては初めて排水量2,000トンを越える艦となった。

なお、旧海軍においても、太平洋戦争中に活躍した秋月型駆逐艦があり、1番艦が「秋月」(あきづき)、2番艦が「照月」(てるづき)というのも、共通している。

目次

来歴 [編集]

当初、アメリカは海上自衛隊の戦力強化のために、OSPにより艦艇を供与することを決定し、フレッチャー級駆逐艦ありあけ型護衛艦として運用中)に若干の改良を加えた艦の建造を日本側に行わせようと計画したが、はるかぜ型以来、日本が独自に艦艇を設計・建造していたため、米国は資金面での援助のみ行い、計画・設計・建造の全てを日本側に委ねる事となった。

船体・機関 [編集]

本型は、対空・対潜・対艦の各戦闘に対応出来るよう、あやなみ型(30〜33DDK)むらさめ型(30/31DDA)の兵装を併せ持ち、それらの艦の対潜能力を強化した汎用護衛艦として計画が始まった。更に、艦隊旗艦機能も付与されたため大型化し、基準排水量は2,000トンを越えた2,350トンとなった。

船型はあやなみ型、むらさめ型と同じ、いわゆる「オランダ坂」を有する長船首楼型であり、船体構造・船殻材料もほぼ同一である。船型の拡大から居住性も改善されていて、戦闘区画のみならず、司令室や司令公室、艦長室、士官室など居住区の一部にも冷房が施されている。また、冷戦真っ只中の情勢下、あやなみ型から実験的に装備された放射能塵除去用の散水装置を始めとした対放射能塵対策が本格的に施されていた[2]。なお、本型の設計は、旧海軍の技術者を中心に組織され、警備隊時代より技術研究本部を補完してきた外部組織である財団法人船舶設計協会が行なったが、同協会が護衛艦の設計を行なったのは本型が最後となった[3]

主機関は、あやなみ型やむらさめ型と同じく蒸気タービン方式を採用しているが、艦型の大型化に伴って、はるかぜ型(28DD)以来の蒸気タービン艦で踏襲されてきた蒸気性状よりも圧力・温度ともに高められており、圧力は40 kgf/cm² (570 psi)、温度450℃とされている。2胴型水管ボイラーを採用し、蒸気発生量は85トン/時であった[4]

装備 [編集]

本型は、アメリカ海軍の新鋭艦であるフォレスト・シャーマン級駆逐艦にはやや劣ったものの、欧米各国で就役中であった砲装型の汎用駆逐艦のなかでも、有力な広域防空能力と対潜戦能力を備えていた[5]

C2・センサー [編集]

本型は、指揮護衛艦(DDC)として、強力な指揮統制(C2)能力を備えている。司令部区画の床面積は、自衛艦隊旗艦として設計された「ゆきかぜ」(28DD)と比して2倍弱となる118m²を確保した。また通信設備も充実しており、基本要目仕様では送信機6〜8台、送受信機8〜10台、受信機20〜25台、3〜4台、特殊通信装置(ファクシミリ、模写伝送装置など)とされていた。これらの通信装備は第1・2の2つの電信室に分けて装備されていた[6]

レーダーは、基本的にむらさめ型のものを踏襲しており、対空捜索用にOPS-1、対水上捜索用にOPS-3(あるいはOPS-5)と、いずれも国産化されている。これらはいずれもアメリカ製のレーダーを元に国産化したもので、OPS-1ははるかぜ型護衛艦(28DD)用に入手したAN/SPS-6、OPS-3/5は同じくAN/SPS-5をベースとしている[7]

一方、ソナーとしてはAN/SQS-4ファミリーが初めて導入されており、本型ではSQS-29Jが搭載された[8]。AN/SQS-4ファミリーは、従来用いられてきたQHBないしAN/SQS-10/11を発展させて周波数8〜14kHz、探知距離4600メートルを狙って開発されたもので、アメリカではディーレイ級護衛駆逐艦に搭載されて1954年より艦隊配備されていた[9]。AN/SQS-29は8 kHz帯に対応したAN/SQS-4 mod.1を改称したものである[10]

武器システム [編集]

砲熕兵器システムについては、むらさめ型と同じMk.39 54口径5インチ単装砲を3基と57式 50口径3インチ連装速射砲を2基の組み合わせが採用された。砲射撃指揮装置(GFCS)についても、5インチ砲用は直視式のMk.57、3インチ砲用は斜視式のMk.63と、やはり同じ組み合わせであるが、このうちMk.57は国産化されており、戦後初めてのGFCSの国内生産例となった[11]

対潜兵装には、米国から新たに供与されたMk.108「ウェポン・アルファ」対潜迫撃砲を搭載した。Mk.108は当時最新鋭の対潜前投兵器で、第二次世界大戦中に大量建造された駆逐艦をFRAM改装する際に搭載されており、かねてより米国に対して供与を要請していた新鋭兵器であった。その他にも、ヘッジホッグや65式53センチ4連装魚雷発射管HO-401、Mk.2 483ミリ短魚雷落射機、55式爆雷投射機(Y砲)、爆雷投下軌条など充実した兵装を有していた[12]

運用 [編集]

「あきづき」は1960年(昭和35年)2月13日、「てるづき」は同年2月29日に竣工し、それぞれ「あきづき」がDD-960、「てるづき」がDD-961としてアメリカ海軍籍に入れられ、即日海上自衛隊に供与された。これらはまず、慣熟訓練のため2隻そろって横須賀地方隊に編入された。その後、1961年(昭和36年)9月1日に発動された自衛艦隊の大改編により、護衛艦を集中運用する部隊として護衛艦隊が設置されるのに伴い、「あきづき」は自衛艦隊、「てるづき」は護衛艦隊に編入され、それぞれの旗艦となった。その後、1963年(昭和38年)3月30日に「てるづき」が衝突事故によって2ヶ月余の間戦列を離れることとなり、また同年4月1日付けで自衛艦隊司令部が陸上部隊化したことに伴い、「あきづき」が護衛艦隊旗艦とされて、以後1985年(昭和60年)3月27日まで23年間の長期にわたってこの任に就いた。また「てるづき」も、第1・4護衛隊群旗艦を歴任している[6]。その間に両艦は数々の改装をうけ、対潜探知能力強化のために、艦尾の爆雷投下軌条を撤去し可変深度ソナー(VDS)を装備し、対潜兵装の目玉であったMk.108対潜迫撃砲は、1976年(昭和51年)から1977年(昭和52年)の特別改装時に71式ボフォース・ロケット・ランチャーに換装された。

両艦とも老朽化と、新型護衛艦の拡充により練習艦や特務艦に変更の後、1993年(平成5年)に除籍された。

同型艦 [編集]

艦番号 艦名 建造 起工 進水 竣工 特務艦への
艦種変更
除籍
DD-960(米艦籍)
DD-161
ASU-7010
あきづき 三菱重工業
長崎造船所
1958年
(昭和33年)
7月31日
1959年
(昭和34年)
6月26日
1960年
(昭和35年)
2月13日
1985年
(昭和60年)
3月27日
1993年
(平成5年)
12月7日
DD-961(米艦籍)
DD-162
ASU-7012
てるづき 新三菱重工業
神戸造船所
1958年
(昭和33年)
8月15日
1959年
(昭和34年)
6月24日
1960年
(昭和35年)
2月29日
1981年
(昭和56年)
3月27日
1993年
(平成5年)
9月27日

登場作品 [編集]

アイオワ級戦艦の艦上における一連のシーンが「あきづき」艦上で撮影されている。

参考文献 [編集]

  1. ^ 藤木平八郎「海上自衛隊「八八艦隊」汎用DDの系譜 「はつゆき」型から「たかなみ」型まで (特集 新DD「たかなみ」型のすべて)」、『世界の艦船』第614号、海人社、2003年8月、 94-99頁、 NAID 40005855328
  2. ^ 「1.船体デザイン (護衛艦の技術的特徴)」、『世界の艦船』第742号、海人社、2011年6月、 100-105頁、 NAID 40018815744
  3. ^ 「日米海軍連携のシンボル - 護衛艦「あきづき」型」、『世界の艦船』第728号、海人社、2010年8月、 33-41頁、 NAID 40017180432
  4. ^ 阿部 安雄「護衛艦の技術的特徴 - 2.推進システム」、『世界の艦船』第742号、海人社、2011年6月、 106-111頁、 NAID 40018815745
  5. ^ 大塚 好古「「あきづき」三代記」、『世界の艦船』第735号、海人社、2011年1月、 195-197頁、 NAID 40017400790
  6. ^ a b 阿部安雄「海上自衛隊護衛艦隊旗艦の系譜」、『世界の艦船』第422号、海人社、1990年6月、 78-81頁。
  7. ^ 多田智彦「海上自衛隊の艦載兵器1952-2010 - 4 レーダー/電子戦機器」、『世界の艦船』第721号、海人社、2010年3月、 100-105頁、 NAID 40016963809
  8. ^ 勝山 拓「オールドセーラーの思い出話 第4話 一皮剥けたか?」、『世界の艦船』第688号、海人社、2008年4月、 106-109頁、 NAID 40015874845
  9. ^ 多田 智彦「3. 兵装 (アメリカ護衛艦の技術的特徴)」、『世界の艦船』第653号、海人社、2006年1月、 130-135頁。
  10. ^ BUPERS (1969). “Chapter 8 - Sonar Equipment”. US Navy Shipboard Electronic Equipments NAVSHIPS 10794-C. 合衆国政府印刷局. http://www.navy-radio.com/manuals/10794c/10794c-08.pdf. 
  11. ^ 坂田 秀雄「海上自衛隊FCSの歩み」、『世界の艦船』第493号、海人社、1995年3月、 70-75頁。
  12. ^ 「3.水雷兵器 (海上自衛隊の艦載兵器1952-2010)」、『世界の艦船』第721号、海人社、2010年3月、 94-99頁、 NAID 40016963808

関連項目 [編集]