はたかぜ型護衛艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
はたかぜ型護衛艦
平成22年度 日米共同統合演習における「はたかぜ」
DDG-171 はたかぜ
艦級概観
艦種 ミサイル護衛艦 (DDG)
建造期間 1983年 - 1988年
就役期間 1986年 - 就役中
前級 DDG:たちかぜ型護衛艦
次級 DDG:こんごう型護衛艦
性能諸元
排水量 基準:4,600トン(2番艦は50トン増)
満載:6,000トン[1]
全長 150 m
全幅 16.4 m
吃水 4.8 m
深さ 9.8 m
機関 COGAG方式
TM3Bガスタービンエンジン
(22,500 shp)
2基
SM1Aガスタービンエンジン
(13,500 shp)
2基
推進器 2軸
速力 30ノット
航続距離 6,000海里 (20ノット巡航時)[1]
乗員 260人
兵装 73式54口径5インチ単装速射砲 2基
高性能20mm機関砲CIWS 2基
Mk.13 mod.4 単装ミサイル発射機
SM-1MR SAM用)
1基
ハープーンSSM 4連装発射機 2基
74式8連装アスロック発射機 1基
68式3連装短魚雷発射管 2基
艦載機 ヘリコプター甲板のみ
FCS Mk.74 mod.13 SAM用 2基
FCS-2-21C 主砲用 1基
SFCS-6A 水中用 1基
C4I MOFシステムSUPERBIRD B2衛星通信)
※後日装備
海軍戦術情報システム
OYQ-4-1 TDSリンク 11/14
レーダー AN/SPS-52C 3次元式[2] 1基
OPS-11C 対空捜索用[2] 1基
OPS-28B 対水上捜索用[2] 1基
ソナー OQS-4(I) 艦首装備式 1基
電子戦
対抗手段
NOLQ-1-3電波探知妨害装置[2]
OLR-9Bミサイル警報装置[2]
Mk.137デコイ発射機 4基
AN/SLQ-25 対魚雷デコイ装置[2]

はたかぜ型護衛艦(はたかぜがたごえいかん、英語: Hatakaze-class destroyer)は、海上自衛隊が運用するミサイル護衛艦(DDG)の艦級。たちかぜ型(46DDG)に続く第三世代DDGとして、五三・五六中業中の昭和5658年度計画で計2隻が建造された[3]

来歴[編集]

海上自衛隊は、第1次防衛力整備計画期間中の「あまつかぜ」(35DDG)によってミサイル護衛艦(DDG)の整備に着手した。たちかぜ型護衛艦3隻(46/48/53DDG)の整備によって、五三中業の時点で、8艦8機体制下の護衛艦隊に必要な8隻のDDGのうち半分が充足することとなった。これらの艦は、いずれもアメリカ海軍チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦に準じて、艦後部にターター・システムを搭載する設計を採用していたことから、ミサイルの射界はおおむね後方に限られた。これは適宜回頭・変針することによって補うことはできるが、戦術行動の自由度という観点からは、前方にターター・システムを装備した艦を従来艦とペアで配備するほうが望ましいことは明らかであった。このことから、海上自衛隊では、DDGの5~8番艦は、船体前部にターター・システムを装備した新型艦とすることを決定した。これによって建造されたのが本型である[1]

船体[編集]

設計面では、本型にやや遅れて計画が進められていたあさぎり型(58DD)との共通点が多くなっており、船型も、全通上甲板を有する長船首楼型とされている。また顕著なナックルを有するのも同様である。ただし長さ/幅比(L/B比)は9.1と、第1世代DDHに近い幅広の船型とされた(46DDGは10、58DDは9.4)。これはガスタービン主機の採用によって機関部重量が減少し、一方でCIWSやSSMなど搭載装備が増加したことによる重心上昇に対して、復原性を確保するための措置であった。またシアは少ないものとされている一方で、護衛艦としては珍しくブルワークを設けている。これは、艦首甲板のミサイル発射機を用いてミサイルの搭載・陸揚作業を行うための甲板平坦部を確保するとともに、凌波性も確保するための措置であった[1]

8艦8機体制下として初めて計画されたDDGとして、艦尾甲板をヘリコプター甲板として設定している。ただしハンガーを設置しないため固有の艦載機はもたないほか、通常の状態では所要の甲板長を確保できないことから、発着の際には52番砲の砲身を90度横に向けることで対処している。また発着の安全性向上の為、DDGとして初めてフィンスタビライザーが装備された[4]

なお2番艦「しまかぜ」では、同年度の58DDと同様、大きな把駐力を期待できる新型のAC-14型の錨を採用している[1]

機関[編集]

主機関としては、DDGとしては初めてガスタービンエンジンを採用している。58DDで大出力のスペイが搭載予定となったことを受けて、このスペイSM1Aと、52DDの高速機であるロールス・ロイス オリンパスTM3BCOGAG方式に配することで、1軸あたり36,000馬力を確保している。このような異機種ガスタービンの組み合わせによるCOGAG構成は、世界に類を見ないものであった。ただし入手可能な主機関の出力と船体寸法を考慮して、最大速力は、部隊運用上の許容最低値である30ノットと妥協された(46DDGは32ノット)。また船体寸法の制約上、46DDGを含む蒸気タービン艦のように機関部をシフト配置とすることができず、はつゆき型(52DD)と同様のパラレル配置とされている。なお、本型は推進装置の水中放射雑音の低減対策を総合的に実施した初の護衛艦であり、しらね型(50/52DDH)で導入されたハル・マスカーおよびプレリーに加えて、主機・補機や減速機の防振支持化や主要配管の防振対策、防振材の大量使用や防振継手の採用など多岐にわたる措置が徹底された[1]

電源としては、ガスタービン駆動およびディーゼル駆動の主発電機を各1基(出力はいずれも1,200キロワット)を第1・3機械室にそれぞれ配置するとともに、ディーゼル非常発電機(300キロワット)を第3甲板の船体前後に分散配置している[1]

装備[編集]

本型の武器システムは、基本的に「さわかぜ」(53DDG)のものを踏襲している。特にSAM・CICシステムはアメリカ海軍カリフォルニア級原子力ミサイル巡洋艦の半分の能力を備えており、イージス以前の在来型DDGとしては頂点に立つものとされていた[1]

C4ISR[編集]

戦闘システムの中核となる戦術情報処理装置は、53DDGのOYQ-4に改善を加えたOYQ-4-1である。電子計算機としてはAN/UYK-7 2基、TDSコンソールとしては、大型のAN/UYA-4(OJ-197)1基および標準のAN/UYA-4(OJ-194B)9基が配されており、ターター艦としては極めて充実したものとなっている。このために戦闘指揮所(CIC)や関連機器室、空調設備はたちかぜ型と比して大幅に拡張する必要があったが、52DD以来標準となったCIC船体内配置化によって、十分な容積を確保した[1]

3次元レーダーは53DDGと同型のAN/SPS-52Cとされた。46DDGの建造当初に搭載されていたOYQ-1とAN/SPS-52Bレーダーの組み合わせでは、目標情報は手動入力、追尾も半自動式であったのに対し、本型のシステムでは自動探知・自動追尾が可能となったため、システムとしての対空目標追尾能力は著しく向上している[1]

対空捜索レーダーはOPS-11Cを後檣頂部に、対水上捜索レーダーはOPS-28を前檣頂部に装備した。OPS-11は、当初計画では前檣のもっと高い位置に配されていたが、ガスタービンの排気の影響を避けるために後檣を新設してここに移動したものである。また電子戦システムとしては、NOLQ-1-3電波探知妨害装置(ESM/ECM)[2]およびOLR-9Bミサイル警報装置が装備された。これらはいずれも53DDGと同様であった[1]

ソナーについても53DDGと同様で、OQS-4(I)をバウ・ソナーとして装備している[1]

武器システム[編集]

本型の主要な武器システムとなるのはターターD・システムである。そのサブシステムはいずれも53DDGと同型で[1]Mk.74 mod.13ミサイル射撃指揮装置(GMFCS)Mk.13 mod.4 ミサイル発射機(GMLS)RIM-66B/E スタンダードMR(SM-1MR)艦隊防空ミサイル(SAM)から構成される[5]。上記のとおり、本型では艦の前方象限での交戦能力が求められたことから、GMLSは艦首甲板に、また2基のGMFCSも前部上構上に配されている[1]。就役後、スタンダードSM-2の運用能力付与、またアメリカ海軍がターターD搭載艦に対して行ったNTU改修に準じた近代化改修も検討されたものの、イージスDDG導入を優先する観点から、これは見送られている[6]

なお、53DDGではMk.13 GMLSを用いてハープーン艦対艦ミサイルの運用を行っていたが、その分だけSM-1MRに充当される弾庫容量が奪われることから、本型では、58DDと同様に、ハープーン専用の4連装発射筒2基を煙突後部両舷の01甲板上に対向装備として、Mk.13 mod.4 GMLSはSM-1MR専用としている[1]

主砲としては73式54口径5インチ単装速射砲を前部甲板室上と後甲板上に1基ずつ搭載、砲射撃指揮装置(GFCS)としては艦橋構造物上に81式射撃指揮装置2型22(FCS-2-22)を搭載した。また近接防空用として、高性能20mm機関砲CIWS)2基が後部上構両舷に装備されている[1]

51番砲直後にアスロック用の74式アスロック・ランチャーを搭載するのは46DDGと同様だが、52DD以来採用された弾庫からの直接装填方式が踏襲されたことから、ランチャーの装備位置は艦橋構造物寄りとなり、また同構造物前面は傾斜して装填用の扉が設置されたものとなった。また68式3連装短魚雷発射管も、従来通り装備されており、装備位置はSSM直下の上甲板上両舷である。水中攻撃指揮装置は53DDGや52/58DDと同じくSFCS-6である[1]

配備[編集]

当初の計画では4隻建造される予定だったが、3番艦の計画時点でイージスDDG(後のこんごう型(63DDG))の導入の見通しが立ったことから、本型の建造は2隻にとどまることとなった[3][6]。実際、昭和60年度予算では本型の3番艦とあさぎり型2隻を要求したものの、大蔵省査定の結果、後者3隻の建造が認められるという経緯があった。復活折衝に当たった防衛庁(現 防衛省)側も既に、イージス艦導入を視野に入れていた結果である。

上記の通り、一時は近代化改修の計画があったものの実現せず、就役後は大きな変化なく活動を続けている。平成24年、25年、27年度予算で計3隻分の艦齢延伸のための先行的部品調達予算が、平成26年度予算で1隻分の改修予算が計上された。艦齢延伸措置を行い、運用期間をこれまでより5から10年程度延伸する計画を予定している[7]

同型艦[編集]

同型艦一覧
艦番号 艦名 建造 起工 進水 竣工 所属
DDG-171 はたかぜ 三菱重工業
長崎造船所
1983年
(昭和58年)
5月20日
1984年
(昭和59年)
11月9日
1986年
(昭和61年)
3月27日
第1護衛隊群第1護衛隊
横須賀基地
DDG-172 しまかぜ 1985年
(昭和60年)
1月13日
1987年
(昭和62年)
1月30日
1988年
(昭和63年)
3月23日
第4護衛隊群第4護衛隊
(司令部:呉基地
(定係港:佐世保基地)

登場作品[編集]

映画
ソリトンの悪魔
ゴジラ×メカゴジラ
「はたかぜ」が登場。千葉県館山市の港(として撮影された横須賀基地)に係留されていた。
ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS
「はたかぜ」と艦名不明の同型艦、合わせて2隻が登場。太平洋上にて日本に向かうゴジラを、DD-147「あいづ」とともに迎撃する。
ドラマ
世にも奇妙な物語
「無人艦隊」で「はたかぜ」が出演。乗員が消えていくという怪奇現象に遭遇する。
アニメ
新世紀エヴァンゲリオン
TVアニメに於いて、国連海軍艦艇として登場。
漫画
続・戦国自衛隊
「はたかぜ」が登場。プロローグ朝鮮半島に向かう陸上自衛隊を乗せたおおすみ型輸送艦おおすみ」をこんごう型護衛艦こんごう」とともに護衛する。
小説
『大逆転!ミッドウェー海戦』(檜山良昭作品 『大逆転!』シリーズ小説)
リムパック(環太平洋合同演習)へ参加する為、ミッドウェー島沖を航行中だった、海上自衛隊の護衛艦8隻が、アメリカのタイムトラベル実験に巻き込まれ、このうち4隻がミッドウェー海戦勃発直前の同沖にタイムスリップしてしまい、その4隻中1隻に「はたかぜ」が含まれる。襲来する旧アメリカ軍機にスタンダードミサイルを発射する。
亡国のイージス
第65護衛隊(架空の艦隊)に所属する、はたかぜ型3番艦DDG-183「いそかぜ」が登場。ただし、改装してFCS-3VLSを搭載したという設定で、作中では「ミニ・イージス艦」として扱われた。
ゲーム
大戦略シリーズ
エースコンバットシリーズ
大半の作品で、“巡洋艦(CRUISER)”のCGモデルとして使われている。

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 香田洋二「国産護衛艦建造の歩み(第26回)はつゆき型DD(その4),あさぎり型DD(その3)53・56中業,はたかぜ型DDG(その1)」、『世界の艦船』第812号、海人社、2015年2月、 106-113頁、 NAID 40020307845
  2. ^ a b c d e f g Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. p. 364. ISBN 978-1591149545. 
  3. ^ a b 『自衛隊装備年鑑 2006-2007』 朝雲新聞、228-229頁。ISBN 4-7509-1027-9
  4. ^ 「はたかぜ型 (特集 ミサイル護衛艦50年史) -- (ミサイル護衛艦全タイプ)」、『世界の艦船』第802号、海人社、2014年8月、 86-89頁、 NAID 40020135994
  5. ^ 香田洋二「国産護衛艦建造の歩み 第15回 3次防その3 「たちかぜ」型その2, 「はるな」型」、『世界の艦船』第793号、海人社、2014年3月、 148-155頁、 NAID 40019955100
  6. ^ a b 香田洋二「国産護衛艦建造の歩み 第27回」、『世界の艦船』第813号、海人社、2015年3月、 148-155頁。
  7. ^ 平成24年度概算要求の概要 防衛省

関連項目[編集]

同時期のミサイル駆逐艦(第二世代の防空艦