チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦
Uss lawrence ddg4 h98402.jpg
艦級概観
艦種 ミサイル駆逐艦
艦名 海軍功労者。一番艦はチャールズ・フランシス・アダムズ海軍長官に因む。
建造期間 1958年 - 1964年
就役期間 1960年 - 1993年
前級 ジャイアット(DDG-1)
次級 キッド級ミサイル駆逐艦
性能諸元
排水量 基準:3,277t
満載:4,526t
全長 133.2 m
全幅 14.3 m
吃水 6.7 m
機関 B&Wボイラー
(84kgf/cm², 510℃)
4缶
GE蒸気タービン
(35,000 hp/26 MW)
2基
推進器 2軸
速力 最大: 32.5ノット
航続距離 4,500海里(20ノット時)
乗員 士官24名、兵員330名
兵装 Mk.42 5インチ単装速射砲 2基
ターター(後にSM-1MRSAM発射機
※DDG-2~14 Mk.11(連装発射機)
※DDG-15~ Mk.13(単装発射機)
1基
Mk.16アスロックSUM 8連装発射機 1基
Mk.32 3連装短魚雷発射管 2基
FCS Mk.68 主砲用
※後に一部艦はMk.86へ改装
1基
Mk.74 SAM用 2基
Mk.111/114 水中用 1基
C4I 海軍戦術情報システム
(JPTDSリンク 11/14) ※一部艦が後日装備
WDS Mk.4
※後にMk.13へ改装
1基
レーダ AN/SPS-39 3次元
※後にAN/SPS-52へ改装
1基
AN/SPS-29 対空捜索用
※後期型はAN/SPS-40
1基
AN/SPS-10 対水上捜索用 1基
ソナー AN/SQS-23 艦首装備式 1基
電子戦 AN/WLR-1F ESM装置
※後にAN/SLQ-32(V)2へ改装
1基
AN/ULQ-6B ECM装置 1基
Mk.137 6連装デコイ発射機
※後日装備
4基

チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦英語: Charles F. Adams-class guided missile destroyers) は、アメリカ海軍ミサイル駆逐艦の艦級。

先行する艦隊駆逐艦であるフォレスト・シャーマン級をもとに、新開発の艦隊防空ミサイル・システムであるターター・システムの搭載など大幅に拡大発展して改設計された。アメリカ海軍がミサイル駆逐艦として建造した初の艦級であるとともに、大戦型艦隊駆逐艦の掉尾を飾る艦級でもあった[1]

アメリカ海軍向けとしては1957年度計画から1961年度計画で23隻[2]、またオーストラリア海軍ドイツ連邦海軍向けにさらに3隻ずつの計29隻が建造された。その後性能の陳腐化に伴い、アメリカ海軍では1993年までに、またその退役艦の貸与を受けたギリシャ海軍など国外においても、2004年までに運用を終了した。

来歴[編集]

1950年代初頭、アメリカ海軍は、艦対空ミサイル搭載艦の整備を進めていた。最初の実用艦対空ミサイルであるテリアボストン級ミサイル巡洋艦およびプロビデンス級ミサイル巡洋艦に、次に実用化されたタロスオールバニ級ミサイル巡洋艦およびガルベストン級ミサイル巡洋艦に搭載された。しかしこれらはいずれも大型のミサイル巡洋艦であり、航空機の発達と冷戦構造の成立に伴う経空脅威の増大に対処する必要から、より多数を整備できる小型の艦を開発する必要があった。第二次世界大戦中のレイテ沖海戦で日本艦隊に差し向けた航空攻撃を米艦隊自身が受けた場合、艦隊上空に到達した敵機の75%が直掩機の邀撃をかいくぐって殺到するとのシミュレーション結果が導かれたことからも、多数を占める駆逐艦へのミサイル装備は急務とされた[3][4]

まず、ギアリング級駆逐艦の1隻である「ジャイアット」にテリア・システムを搭載する改修が行なわれ、1956年にミサイル駆逐艦として再就役したが、艦型に対してミサイル・システムの重量が過大で運用に難儀したことから、テリア・システムは駆逐艦に搭載するには大がかりすぎるシステムであると結論された。このことから、アメリカ海軍は、テリア・システムを搭載できる小型防空艦としてミサイル嚮導駆逐艦(DLG)の整備に着手する一方、駆逐艦に搭載可能な艦対空ミサイル・システムを志向するようになった。ちょうどこの時期、テリアミサイルの開発計画から派生したミサイルMk.15 ターターの実用化の目途が立ち、1958年に初飛行に成功、1959年から生産が開始された。ターターは、テリアよりもはるかに小規模なシステムであり、駆逐艦級であっても搭載が可能であると考えられた。このターター・システムを搭載するミサイル駆逐艦の本命として開発されたのが、本級である[3][4]

設計[編集]

上記の通り、本級の設計は、おおむねフォレスト・シャーマン級をもとにしており、フレッチャー級以来の強いシアを持つ平甲板船型も踏襲されたが、シアはさらに傾斜が大きく鋭いものとなっている。また改設計に伴い、満載排水量にして600トンの艦型増大となっている[2][5]

主機関はフォレスト・シャーマン級とほぼ同一であり、ミッチャー級以来の蒸気圧力1,200 psi (84 kgf/cm²)、温度510℃の高圧ボイラー(いわゆるTwelve Hundred Pounder)を備えている。また蒸気タービンとしても、高・中圧タービンと低圧・後進タービンの2車室を備えた2胴式・2段減速のギヤード・タービンが踏襲された。ボイラー2缶とタービン1基をセットにして、両舷2軸を駆動するため2組を搭載しており、機関配置としては、艦首側から前部缶室・前部機械室・後部缶室・後部機械室が並ぶシフト配置とされている[6]

装備[編集]

本級は基本的に、フォレスト・シャーマン級の53番砲および長魚雷発射管とバーターに、ターター・システムおよびアスロック・システムを装備したものとなっている[1]

C4ISR[編集]

ターター・システムのメインセンサーとしてAN/SPS-39が搭載された。これは1960年に実戦配備されたばかりの新鋭機で、アメリカ海軍初の実用3次元レーダーであった[7]。また、これはのちに、発展型のAN/SPS-52に更新された[2]。これを補完する2次元式の対空捜索レーダーとしては、前期型(DDG-14まで)ではAN/SPS-29が搭載されていたが、後期型(DDG-15以降)では新型のAN/SPS-40に更新された[8]

ソナーとしては、低周波・大出力のAN/SQS-23が搭載される。また後期型では、これをもとに信号処理装置などに改良を加えたAN/SQQ-23に更新された[8]

またその後、海軍戦術情報システム(NTDS)の艦隊配備の進展を受けて、艦隊の主たるワークホースである本級にもこれをバックフィットする計画が生まれた。ただし本級では、容積や発電容量等の制約のためにフルスペックのNTDSの戦術情報処理装置を搭載出来なかったことから、簡易型としてJPTDS(Junior Participating Tactical Data System)が開発された。これは処理目標数や武器管制能力、処理装置や端末の台数とのトレードオフのもとで小型化・省電力化したものであるが、空母戦闘群の一員としての行動を考慮して、リンク 11への連接能力は維持された。コスト高騰を受けて、アメリカ海軍では4隻が搭載したのみであったが、オーストラリア海軍ではパース級駆逐艦の3隻全艦に搭載し、また海上自衛隊のたちかぜ型護衛艦向けのWESのベースともなった[9]

武器システム[編集]

ターター用のミサイル発射機は、当初艦橋前部に登載する計画だったが、耐候性などの面で難点があり、後部01甲板に落ち着いた。前期型は連装の発射機であるMk.11 GMLSを装備したが、装填速度が遅く信頼性に難があったことから、14番艦「バークレー 」(DDG-15)以降は、新しく開発された単装発射機であるMk.13 GMLSに更新された。また、ターター・システムのミサイル射撃指揮装置としてはMk.74 GMFCSが搭載され、そのAN/SPG-51イルミネーター(誘導レーダー)は、第2煙突後部に2基が搭載される。なお、艦対空ミサイルのターターは、後日SM-1MRへ変更されている。またさらにハープーン艦対艦ミサイルの運用に対応した艦もある[2]

対潜兵器としては、アスロック対潜ミサイル用のMk.16 GMLS及び3連装短魚雷発射管を装備する。Mk.16 GMLSのMk.112 8連装発射機は前後煙突間の中部甲板に配置された。弾数は発射機内の8発のほか、のちに予備弾4発を搭載可能となった。魚雷発射管は艦橋脇の両舷に設置された。水中攻撃指揮装置(UBFCS)としては、前期型はMk.111、後期型はMk.114を搭載する[8]

主砲としては、シャーマン級と同様にMk.42 54口径5インチ単装速射砲を採用している。ただし5インチ砲の搭載数は1門減の2門とされ、近接防空用の3インチ砲も省かれたことから、砲射撃指揮装置(GFCS)は、主方位盤としてのMk.68を1基のみ搭載する。なお後部の52番砲はターター発射機と同甲板にあるため、射界に制約を受ける。また一部艦では、のちにGFCSを完全デジタル式の新型機であるMk.86に更新し、AN/SPG-60DとAN/SPQ-9Aレーダーを搭載している[8]

配備[編集]

同型艦一覧
 アメリカ海軍 退役/再就役後
# 艦名 起工 就役 退役 再就役先 # 艦名 就役 退役
DDG-2 チャールズ・F・アダムズ
USS Charles F. Adams
1958年 6月 1960年 9月 1992年11月 博物館への改装を予定して保管中。
DDG-3 ジョン・キング
USS John King
1958年 8月 1961年 2月 1990年 3月 スクラップ処分。
DDG-4 ローレンス
USS Lawrence
1958年 3月 1962年 1月 1990年 3月
DDG-5 クロード・V・リケッツ
USS Claude V. Ricketts
1959年 5月 1962年 5月 1989年10月
DDG-6 バーニー
USS Barney
1959年 8月 1962年 8月 1990年12月
DDG-7 ヘンリー・B・ウィルソン
USS Henry B. Wilson
1958年 3月 1960年12月 1989年10月 実艦標的として海没処分。
DDG-8 リンド・マコーミック
USS Lynde McCormick
1958年 4月 1961年 6月 1991年10月
DDG-9 タワーズ
USS Towers
1958年 4月 1961年 6月 1990年10月
DDG-10 サンプソン
USS Sampson
1959年 3月 1961年 6月 1991年 6月 スクラップ処分。
DDG-11 セラーズ
USS Sellers
1959年 8月 1961年10月 1989年10月
DDG-12 ロビソン
USS Robison
1959年 4月 1961年12月 1991年10月
DDG-13 ホーエル
USS Hoel
1959年 8月 1962年 6月 1990年10月 発電所として転用するよう計画されたが、最終的にスクラップ処分。
DDG-14 ブキャナン
USS Buchanan
1959年 4月 1962年 2月 1991年10月 実艦標的として海没処分。
DDG-15 バークレー
USS Berkeley
1960年 6月 1962年12月 1992年 9月  ギリシャ海軍 D221 テミストクレス
HHMS Themistocles
1992年10月 2002年 2月
DDG-16 ジョセフ・シュトラウス
USS Joseph Strauss
1960年12月 1963年 4月 1990年 2月 D220 フォーミオン
HHMS Formion
1992年10月 2002年 7月
DDG-17 カニンガム
USS Conyngham
1961年 5月 1963年 7月 1990年10月 スクラップ処分。
DDG-18 セムズ
USS Semmes
1960年 8月 1962年12月 1991年 4月  ギリシャ海軍 D218 キモン
HHMS Kimon
1991年 9月 2004年 6月
DDG-19 タットノール
USS Tattnall
1960年11月 1963年 4月 1991年 1月 スクラップ処分。
DDG-20 ゴールズボロー
USS Goldsborough
1961年 1月 1963年11月 1993年 4月 予備部品確保のためオーストラリアに売却。
DDG-21 コクレーン
USS Cochrane
1961年 7月 1964年 3月 1990年10月 スクラップ処分。
DDG-22 ベンジャミン・ストッダート
USS Benjamin Stoddert
1962年 6月 1964年 9月 1991年12月 スクラップ処分のため曳航中に沈没。
DDG-23 リチャード・E・バード
USS Richard E. Byrd
1962年 2月 1964年 3月 1990年 4月 予備部品確保のためギリシャに売却されたのち、実艦標的として海没処分。
DDG-24 ワッデル
USS Waddell
1962年 2月 1964年 8月 1992年10月  ギリシャ海軍 D219 ネアコス
HHMS Nearchos
1992年10月 2003年 7月
DDG-25 米艦名なし 1962年 9月 パース級として建造  オーストラリア海軍 D38 パース
HMAS Perth
1965年 7月 1999年10月
DDG-26 1962年10月 D39 ホーバート
HMAS Hobart
1965年12月 2000年 5月
DDG-27 1965年 2月 D41 ブリスベン
HMAS Brisbane
1967年12月 2001年10月
DDG-28 トールマン
USS Tolman
1966年 3月 起工後に変更され
リュッチェンス級として建造
 ドイツ海軍 D185 リュッチェンス
Lütjens
1969年 3月 2003年12月
DDG-29 ヘンリー・A・ウィリー
USS Henry A. Wiley
1966年 4月 D186 メルダース
Mölders
1969年 2月 2003年 5月
DDG-30 シア
Shea
1967年 8月 D187 ロンメル
Rommel
1970年 5月 1998年 9月

退役[編集]

実艦標的として海没処分とされる「タワーズ」(DDG-9)

退役は1989年から始まり、93年に「ゴールズボロー」(DDG-20)の退役をもってアメリカ海軍からは姿を消した。オーストラリア海軍および西ドイツおよび統一ドイツ海軍は2003年までに本級を全て退役させた。本級のうち4隻は1992年にギリシャ海軍に、1994年に1隻が部品取りとしてオーストラリア海軍に移管しているが、それらもすでに退役している。

チャールズ・F・アダムズ」(DDG-2)はモスボール化され保管施設に係留されているが、同艦を博物館として保存しようとして民間グループが活動している。ホーエルはブラジルで同艦を発電プラントとして使用しようとする民間企業に売却された。この2隻及びキモン(前セムズ)を除いた全ての艦は標的艦として沈められるかスクラップとして売却され、またはこの二つの運命のため保管中である。

アメリカ国外での運用状況[編集]

 ギリシャ海軍
アメリカ海軍の退役艦4隻を購入し、1991年より運用を開始したが、2004年までに全艦が退役し、スクラップとされた。
 ドイツ海軍
ドイツ連邦海軍は、アメリカ海軍向けに起工されたものの計画が中止されたDDG-28〜DDG-30を建造途中で引き取り、自国の運用要求に基づいた改正を加えたうえで、リュッチェンス級駆逐艦Lütjens-Klasse)として就役させた。乗組員の居住区画、バウ・ソナーの位置、マストや煙突ファンネルキャップが異なったほか、のちに近代化改装でMk.31 RAM GMWSを装備した。2003年12月までに運用を終了し、その代替として、NAAWS搭載のザクセン級フリゲートが就役している。
 オーストラリア海軍
王立オーストラリア海軍は独自の仕様書に基づきチャールズ・F・アダムズ級3隻の建造を発注した。これらの艦はパース級駆逐艦Perth class)と呼ばれた。アメリカ海軍仕様とほぼ同じであるが、アスロックの代わりにアイカラ対潜ミサイルが搭載された。2001年10月までに運用を終了した。


参考文献[編集]

  1. ^ a b 香田洋二「国産護衛艦建造の歩み 第7回 1次防艦 その2“あまつかぜ”」、『世界の艦船』第780号、海人社、2013年7月、 104-111頁。
  2. ^ a b c d 「アメリカ駆逐艦史」、『世界の艦船』第496号、海人社、1995年5月、 13-135頁。
  3. ^ a b 岡部いさく「ミサイル (特集・対空兵装の変遷)」、『世界の艦船』第662号、海人社、2006年8月、 84-89頁、 NAID 40007357720
  4. ^ a b 大塚好古「米艦隊防空艦発達史 (特集 米イージス艦「アーレイ・バーク」級)」、『世界の艦船』第769号、海人社、2012年11月、 90-97頁、 NAID 40019440596
  5. ^ 「船体 (技術面から見たアメリカ駆逐艦の発達)」、『世界の艦船』第496号、海人社、1995年5月、 150-155頁。
  6. ^ 阿部安雄「機関 (技術面から見たアメリカ駆逐艦の発達)」、『世界の艦船』第496号、海人社、1995年5月、 156-163頁。
  7. ^ 野木恵一「艦載レーダーの歩み (特集・艦載レーダー)」、『世界の艦船』第433号、海人社、1991年3月、 69-75頁。
  8. ^ a b c d グローバルセキュリティー (2011年7月22日). “DDG-2 Charles F. Adams - Specs” (英語). 2013年12月29日閲覧。
  9. ^ 香田洋二「国産護衛艦建造の歩み 第14回 3次防その2 護衛艦建造実績,地方隊改編,「ちくご」型,4個護衛隊群体制,「たちかぜ」型その1」、『世界の艦船』第792号、海人社、2014年2月、 141-149頁。

関連項目[編集]