たちかぜ型護衛艦

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たちかぜ型護衛艦
JS Asakaze at SDF Fleet Review 2006 a.jpg
DDG-169「あさかぜ」
艦級概観
艦種 ミサイル護衛艦ミサイル駆逐艦
建造期間 1973年 - 1981年
就役期間 1976年 - 2010年
前級 DDG:あまつかぜ
次級 DDG:はたかぜ型護衛艦
性能諸元
排水量 基準:3,850トン
(「さわかぜ」は100トン増)
満載:5,200トン
全長 143m
全幅 14.3m
吃水 4.65m
深さ 9m
機関 三菱長崎CE 2胴水管ボイラー (40kgf/cm², 450℃, 120t/hr) 2缶
三菱舶用2胴衝動型蒸気タービン (30,000 hp/22 MW) 2基
推進器 (340rpm 2軸
速力 最大: 32ノット[1]
乗員 277人(「あさかぜ」から250人)

たちかぜ型護衛艦(たちかぜがたごえいかん、英語: JMSDF Tachikaze-class destroyer)は海上自衛隊が運用していたミサイル護衛艦(DDG)の艦級。同型艦は3隻。

8艦6機体制に対応して建造された第二世代DDGである[1]海軍戦術情報システム(NTDS)に準じた戦術情報処理装置SM-1MR艦隊防空ミサイルに対応するなど改良されたターター・システムを搭載しており、海自護衛艦の武器システムを世界最高水準とする第一歩であったと評価されている。なお、本型の最終艦は、推進機関に蒸気タービン方式を採用した最後の護衛艦でもある[2]

来歴[編集]

海上自衛隊では、第1次防衛力整備計画末期の「あまつかぜ」(35DDG)によりターター・システムの艦隊配備を実現し、その性能に強い感銘を受けていた。しかし、取得費だけでも、「たかつき」(38DDA)の約70億円に対して、35DDGでは約98億円と、極めて高コストであったことから、以来ほぼ10年間DDG(ミサイル搭載護衛艦)は建造されていなかった[3]

その後、第3次防衛力整備計画において、護衛隊群の編成について8艦6機体制が採択されると、各護衛隊群にターター・システム搭載のミサイル護衛艦(DDG)1隻を配分する必要上、ヘリコプター護衛艦(DDH)と同様、周辺海域にとどまらない外洋作戦にも対応した大型のミサイル護衛艦が求められた[4]。これに応じて、3次防の最終年度にあたる昭和46年(1971年)度に計画されたのが「たちかぜ」である。なお同艦の取得費用は、最終的に、約185億円にのぼった[3]。この時点で、既にMSA協定によるアメリカからのMAP援助は終了しており、ターター・システムは全て海自予算を使用した対外有償軍事援助(FMS)により購入されたことから、本型は日本の経済復興にともなう独力での防衛力整備の象徴的存在ともされた[2]

船体[編集]

本型の総合的な特徴は、「あまつかぜ」とたかつき型(38DDA)をあわせたものとなっている。船体形状はたかつき型とおおむね同等であり、また昭和40年度計画艦(40DDA40DDK)以降と同様、凌波性向上のためのナックルなども採用されている[1]。なお可変深度ソナーの後日装備が予定されていたことから、艦尾にはトランサムが付されている[2]

71式ボフォースロケットランチャーをもたないことから、艦橋構造物はたかつき型より前方に位置している。たかつき型と同様、煙突はマストと一体化したマック方式を採用しており、2基を設置している[5]。主要武器の配置はチャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦と同様で、前甲板に51番砲、第2マック後方の構造物に2基のMk.74 ミサイル射撃指揮装置、その後方に52番砲、ついでMk.13 ミサイル発射機が配置されている。ただしアスロック発射機については、アダムズ級では船体寸法の制約から中部甲板に設置さざるを得なかったのに対して、本型ではたかつき型と同様に51番砲の後方、艦橋構造物の前方に配置することで、十分な水平射界を確保している[2]

機関[編集]

主ボイラーとしては「たかつき」(38DDA)および「もちづき」(40DDA)と同系列の三菱重工業長崎造船所・米国CE社製の舶用2胴水管型ボイラーを採用している。力量と蒸気性状はたかつき型と同一で、蒸気圧力は40 kgf/cm² (570 psi)、温度450℃、蒸気発生量は各120トン/時である。一方、主蒸気タービンははるな型(43/45DDH)と同様、三菱舶用2胴衝動型シリーズ・パラレル型で、シリンダー構成は高圧・巡航一体型タービンと低圧タービンの組み合わせであった[6]

本型では、海自護衛艦としては初めて、同型艦の間でボイラー・タービンの形式統一が実現された。またボイラーやタービン、補機類の操縦および運転状況を自動監視する機関操縦室が設置され、自動化が進展している。しかし一方で、経費節減の必要上、蒸気性状については、はるな型で採用された高蒸気条件ではなく、2次防艦と同等に留められた[2]

蒸気タービン主発電機は出力1,500キロワット(「さわかぜ」では1,800キロワットに増強)で、前後の機械室に1基ずつ配置されており、また出力300キロワットのディーゼル非常発電機も船体前後部に分散配置されている。「あまつかぜ」において、ターター・システムへの電力供給が問題になった経験を踏まえて、本型では、当初から蒸気タービン主発電機の常時運転を前提とした設計が行われており、これによって緊急出港時も蒸気機関の準備時間が大幅に短縮(従来艦の4時間に対して30-45分)されて即応性が向上した一方、機関の維持管理に要する負荷は大幅に増大した[2]

装備[編集]

本型は、海上自衛隊のDDGとしては初めてターターD・システムを搭載しており、自他護衛艦の砲熕兵器とあわせて縦深を持った防空火網を形成することを期待された。また、たかつき型と同等の対潜戦・対水上戦能力も具備していた[2]

C4I[編集]

本型が搭載するターターD・システムは、従来のターター・システムをもとに海軍戦術情報システム(NTDS)とのシステム統合を重視してアメリカ海軍が開発した改良型であり、従って、たちかぜ型護衛艦においても海軍戦術情報システムに準じた戦術情報処理装置(TDS)が搭載されることとなった。これにより本型は、海上自衛隊において初めて大規模なコンピュータを搭載した艦級となっており、各種センサー及び武器類を統合管制する戦術情報処理装置として、1番艦の「たちかぜ」(46DDG)ではOYQ-1 WES、2番艦の「あさかぜ」(48DDG)では小改正型のOYQ-2を搭載している。アメリカ政府の輸出規制により、これらは戦術データ・リンクには対応できなかったものの、戦術情報処理(NTDS)と武器管制(WDS Mk.13)[7]を一元的に統合し、艦の戦闘システムの中核となっている[8]

また、計画年度にして2番艦との間に5年の差がある3番艦の「さわかぜ」(53DDG)では、輸出規制が解除されたことから、リンク 11に対応するとともに情報処理装置をAN/UYK-7に更新したOYQ-4が搭載された。OYQ-1・2についてもこれと同等の性能を備えるようにアップグレードが行われており、「たちかぜ」のOYQ-1は1989年2月から9月、「あさかぜ」のOYQ-2は1989年12月から1990年6月に改修を受けて、それぞれ形式名はOYQ-1BとOYQ-2Bに変更された[2]

センサ[編集]

ターター・システムの主センサとなる3次元レーダーとしては、前期建造艦2隻では「あまつかぜ」のAN/SPS-39Aの発展型にあたるAN/SPS-52Bが採用され、空中線部は第2マック上に、機器室が船体内の第2ボイラー室上に設置された。ビーム制御など情報処理用のコンピュータとしてはヒューズH3118が採用されたが、これは航空自衛隊自動警戒管制組織(BADGE)と同一機器で元来艦載用ではなく、機器室直下のボイラー室が高温多湿の環境であったこともあり、特に「たちかぜ」就役後数年間は故障が多発した。この経験から、海上自衛隊は、システム艦における環境整備の必要性を痛感し、「あさかぜ」以降は特に配慮された結果、この問題は急速に改善された。なお「さわかぜ」ではAN/SPS-52Cが搭載されたが[2]、こちらでは、コンピュータは艦載用に開発されたAN/UYK-20とされていた[7]

またこれを補完して、対空捜索用レーダーとしてはOPS-11Cの搭載が予定されていたが、予算上の問題から「たちかぜ」では当初搭載されず、1980年に後日装備された。対水上捜索用としては「たちかぜ」にはOPS-16Dが、「あさかぜ」には改良型のOPS-18が、そして「さわかぜ」には低空警戒能力を強化した新型機であるOPS-28が搭載されたほか、1992年から1994年にかけて、全艦に航海用のOPS-20が順次に搭載された[2]

ソナーとしてはその時々の標準機が搭載されており、前期建造艦2隻では66式探信儀OQS-3が、「さわかぜ」ではOQS-4(I)が、それぞれ艦首装備式に搭載されている。上記の通り、当初はSQS-35(J)可変深度ソナーの後日装備が予定されていたが、これは最終的に実現しなかった[2]

電子戦支援用の電波探知装置(ESM)としては、「たちかぜ」では2次防艦で標準的だったNOLR-5が搭載された。その後、「あさかぜ」以降では、電子攻撃機能も備えた電波探知妨害装置としてNOLQ-1、これを補完するレーダー警報受信機(ミサイル警報装置)としてOLR-9Bが搭載されるとともに、これらと連動してチャフフレアなどデコイを展開するためのMk.36 SRBOCも搭載された。また「たちかぜ」でも、1986年の改修で、電波探知装置をNOLR-6に換装するとともにOLT-3電波妨害装置、OLR-9ミサイル警報装置、Mk.36 SRBOCを追加搭載し、おおむねはつゆき型護衛艦(52DD)と同等のレベルにアップデートされた[2]

武器システム[編集]

ターター・システム[編集]

上記の通り、ターターD・システムは本型の主要な武器システムであり、Mk.74 ミサイル射撃指揮装置(GMFCS)、Mk.13 ミサイル発射機(GMLS)、RIM-66 スタンダードMR(SM-1MR)艦隊防空ミサイル(SAM)から構成される[2]

Mk.74 ミサイル射撃指揮装置(GMFCS)
前期建造艦2隻で搭載されたMk.74 mod.6では、AN/SPG-51C/Dイルミネーター(目標捕捉レーダー兼用; 「あまつかぜ」搭載のAN/SPG-51Cのデジタル化版)とMk.73方位盤、Mk.152射撃計算機などから構成されていた。「さわかぜ」では、射撃計算機を新型のCV-3432としたMk.74 mod.13とされており、前期建造艦でも、のちにこちらに更新されている[2]
Mk.13 ミサイル発射機(GMLS)
前期建造艦2隻では「あまつかぜ」と同じmod.3であるが、「さわかぜ」では、ハープーン艦対艦ミサイルの運用に対応したmod.4に更新された[2]
RIM-66B/E スタンダードMR(SM-1MR)艦隊防空ミサイル(SAM)
「あまつかぜ」がターター・システム第1次改装で搭載したRIM-66A SM-1Aの本格量産機にあたるものであった[3]。本型では、旧式のRIM-66AやRIM-24ターターなどの運用は行われなかった[2]

砲熕・水雷兵器[編集]

主砲としては、たかつき型(38DDA)と同様の要領で、73式54口径5インチ単装速射砲を前甲板と後部上部甲板室上に1基ずつ搭載した。砲射撃指揮装置(GFCS)としては、前期建造艦2隻では41DDAと同じく72式射撃指揮装置1型A(FCS-1A)が、「さわかぜ」では新型の81式射撃指揮装置2型21(FCS-2-21)が、いずれも艦橋構造物上に設置されており、またターター・システムのMk.74 GMFCSにも砲射撃指揮能力が付与されていた。またこれらに加えて、近接防空用の高性能20mm機関砲CIWS)2基が1984年から1987年度にかけて後日装備されている[2]

水雷装備としては、やはりたかつき型(38DDA)と同様に、艦橋構造物直前の前甲板にアスロック8連装発射機(74式アスロックランチャー)、船体中部両舷に68式3連装短魚雷発射管HOS-301を搭載した。艦橋構造物左舷側にはアスロック弾庫が設けられており、ここからアスロック発射機への再装填は、前期建造艦2隻ではラマー・クレーンを使用した機力補助の手動装填方式がもちいられたが、「さわかぜ」では52DD以降と同様に弾庫からの直接装填方式が採用されたため、発射機の装備位置は艦橋構造物に近づけられた[2]

兵装・電装要目[編集]

たちかぜ
(46DDG)
あさかぜ
(48DDG)
さわかぜ
(53DDG)
兵装 73式54口径5インチ単装砲×2基
高性能20mm機関砲CIWS)×2基
※後日装備
Mk.13 mod.3 単装ミサイル発射機×1基
SM-1MR SAM用)
Mk.13 mod.4 GMLS×1基
(SM-1MR SAM /
ハープーン SSM用)
74式アスロックSUM 8連装発射機×1基
HOS-301 3連装短魚雷発射管×2基
C4I MOFシステム SUPERBIRD-B2衛星通信)
※後日装備
OYQ-1 TDS OYQ-2 TDS OYQ-4 TDS
FCS Mk.74 mod.13 ミサイルFCS
※46/48DDGでは当初はmod.6
FCS-1A 砲FCS FCS-2-21 砲FCS
SFCS-6A 水中FCS
レーダー AN/SPS-52B 三次元式 AN/SPS-52C 三次元式
OPS-11C 対空捜索用
OPS-16D 対水上捜索用 OPS-18 対水上捜索用 OPS-28 対水上捜索用
OPS-20 航海用
※後日装備
AN/SPG-51C/D ミサイル射撃指揮用×2基
ソナー OQS-3A 艦首装備式 OQS-4(I) 艦首装備式
電子戦
対抗手段
NOLR-5→
NOLR-6 ESM
NOLQ-1 ESM/ECM
OLT-3 ECM
※後日装備
OLR-9B ミサイル警報装置
※46DDGでは後日装備
Mk.36 mod.2 SRBOC(Mk.137発射機×4基)
※46DDGでは後日装備
AN/SLQ-25 対魚雷デコイ

配備[編集]

本型は、8艦6機体制時代の護衛艦隊において、少数ながら最新鋭の防空中枢艦として活躍し、8艦8機体制においても、引き続き艦隊防空を担った。このことから、上記の通り、継続的な改修により、装備のアップデートを図っていた。その後、老朽化とイージス艦の増勢に伴って、2007年から2010年にかけて順次に除籍され、運用を終了した。ネームシップの「たちかぜ」は「あたご」(14DDG)と、2番艦「あさかぜ」は同じく「あしがら」(15DDG)と交代するかたちになったが、3番艦「さわかぜ」の後継艦は計画されていない。

艦番号 建造番号 艦名 建造 起工 進水 竣工 除籍
DDG-168 2308 たちかぜ 三菱重工業
長崎造船所
1973年
(昭和48年)
6月19日
1974年
(昭和49年)
12月17日
1976年
(昭和51年)
3月26日
2007年
(平成19年)
1月15日
DDG-169 2309 あさかぜ 1976年
(昭和51年)
5月27日
1977年
(昭和52年)
10月15日
1979年
(昭和54年)
3月27日
2008年
(平成20年)
3月12日
DDG-170 2310 さわかぜ 1979年
(昭和54年)
9月14日
1981年
(昭和56年)
6月4日
1983年
(昭和58年)
3月30日
2010年
(平成22年)
6月25日

艦隊旗艦[編集]

「たちかぜ」は1998年(平成10年)に2番砲塔の撤去と司令部設備の新設改修を施し[1]、2007年(平成19年)1月15日の退役まで護衛艦隊旗艦を務めた[9]

「たちかぜ」の退役によって護衛艦隊旗艦は廃止されたが、2007 年(平成19年)3月25日より、3番艦「さわかぜ」が旗艦に準じて運用される護衛艦隊直轄艦として充当された。なお同艦は2番砲塔の撤去を行なわなかった。2010年(平成22年)6月25日の同艦の退役により、護衛艦隊旗艦およびこれに準じた直轄艦運用は廃止された[9]

登場作品[編集]

映画
伊勢湾防衛線展開の場面で「たちかぜ」が登場。
アニメ
TV版第八話に国連軍駆逐艦として登場。ガギエルに対し対潜攻撃を行うも全く効果がなかった。
漫画
「たちかぜ」が第2護衛隊群の一員として登場。原作6巻で米海軍のヘリコプターからミサイル攻撃を受ける。また撃沈された「くらま」の生存者を収容した。
小説
  • 『異界戦艦大和』
戦艦大和」の幽霊船出現の報を受け、「たちかぜ」が調査に出動。
架空のたちかぜ型4番艦「うらかぜ」が登場する。

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d 自衛隊装備年鑑 2006-2007 朝雲新聞 P227 ISBN 4-7509-1027-9
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 香田洋二「国産護衛艦建造の歩み 第15回 3次防その3 「たちかぜ」型その2, 「はるな」型」、『世界の艦船』第793号、海人社、2014年3月、 148-155頁。
  3. ^ a b c 香田洋二「国産護衛艦建造の歩み 第7回 1次防艦 その2“あまつかぜ”」、『世界の艦船』第780号、海人社、2013年7月、 104-111頁、 NAID 40019692292
  4. ^ 第三次防衛力整備計画作成作業経過報告 秘 四〇・一〇・二八 堂場文書
  5. ^ 「護衛艦の技術的特徴 - 1.船体デザイン」、『世界の艦船』第742号、海人社、2011年6月、 100-105頁、 NAID 40018815744
  6. ^ 阿部 安雄「護衛艦の技術的特徴 - 2.推進システム」、『世界の艦船』第742号、海人社、2011年6月、 106-111頁、 NAID 40018815745
  7. ^ a b Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. ISBN 9781557502629. http://books.google.co.jp/books?id=4S3h8j_NEmkC. 
  8. ^ 山崎眞「わが国現有護衛艦のコンバット・システム」、『世界の艦船』第748号、海人社、2011年10月、 98-107頁、 NAID 40018965310
  9. ^ a b 香田洋二「護衛艦隊の誕生と発展」、『世界の艦船』第750号、海人社、2011年11月、 76-85頁、 NAID 40019002769

外部リンク[編集]