電子攻撃

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カバー妨害を受けているレーダー画面。90度から130度にかけて3つの妨害源がある。
トーネードECR電子戦機。機体下にHARM、左翼下にケルベロスECM装置を搭載している。

電子攻撃英語: Electronic Attack, EA)とは、敵が利用する電磁スペクトルを妨害するための活動のこと。下記のように細分化される[1][2]

電子対抗手段 (ECM)[編集]

電子対抗手段Electronic Counter Measures, ECM)は、単に妨害とも称される[1][2]。また、妨害を行う装置を電波妨害装置と称する。

妨害の手法は、おおむね4つの軸によって分類することができる。

  1. 信号方式 - レーダー信号であるか、通信信号であるか。
  2. 攻撃方式 - カバー妨害であるか、欺瞞妨害であるか。
  3. 妨害プラットフォームと対象の位置関係 - 自己防御方式であるか、スタンドオフ方式であるか。
  4. デコイ(囮)

信号方式[編集]

通信信号に対する妨害(通信妨害COMJAM)は、受信機が求める信号から情報を再生する機能を妨げるものである。通常、ノイズ変調によるカバー妨害という形態をとる[2]

一方、レーダー信号に対する妨害(レーダー妨害Radar jamming)は、レーダー装置が反射信号から目標の情報を得る機能を妨げるものであり、カバー妨害と欺瞞妨害の双方の攻撃方式が用いられる[2]。なお、プラットフォームにステルス技術を適用することにより、敵レーダー画面上でSN比を下げ、レーダー妨害をより有効化できることから、ステルス技術を受動的なECM技術として分類する場合もある[1]

攻撃方式[編集]

カバー妨害(ノイズ・ジャミング, 電力妨害[1])は、敵の被妨害受信機に対し、敵が求める信号を上回る出力で妨害電波を発することによってSN比を下げるという攻撃手法である。通信妨害の場合、これによって、敵が求める信号を再生できないか、少なくとも再生により得られる情報の品質を大幅に劣化させる。レーダー妨害の場合、レーダー反射波をノイズによって覆い隠し、その存在を覚知できないようにする[2]

欺瞞妨害は、敵が求める信号とともに偽の信号を受信させることで、誤った情報を与えるという攻撃手法である。この手法は、通常はレーダー妨害に用いられ、目標の位置や速度について誤った情報を与えることでレーダー処理を妨害する[2]

位置関係[編集]

自己防御方式の場合、レーダーの目標とされているプラットフォーム自身が搭載する妨害装置によって妨害が行なわれる[2]

一方、スタンドオフ方式の場合、レーダーの目標とされているプラットフォームを防護するため、他のプラットフォームに搭載された妨害装置によって妨害が行なわれる[2]

デコイ[編集]

デコイ(囮)とは、敵を欺瞞して本物の目標と誤認させる目的で展開する装備である。その任務は下記の3つに分けられる[2]

  • 誘惑(seduction)- 敵の攻撃を真の目標からデコイに転換させる
  • 飽和(saturation)- 敵の防御を飽和させる
  • 輻射強制(detection)- 敵がデコイを攻撃しようとすることで、その姿を曝露するように仕向ける

チャフフレアはもっとも古典的なデコイとして知られているが、これらはいずれも誘惑任務のデコイであり、前者は電波、後者は光波を目標帯域としている。

対電波放射源兵器 (ARW)[編集]

対電波放射源兵器英語: Anti-Radiation Weapon, ARW)は、電波送信機を物理的に無力化する兵器である。通常、敵防空網制圧SEAD)作戦において用いられる。

指向性エネルギー兵器 (DEW)[編集]

指向性エネルギー兵器英語: Directed-Energy Weapon, DEW)は、送受信機以外の敵資産を電磁波的に攻撃する兵器である。現在のところ、アクティブ・ディナイアル・システム(ADS)に代表されるような非致死性兵器が主流であるが、戦術高エネルギーレーザー(THEL)のように物理破壊可能な兵器も研究されている。

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d 防衛技術ジャーナル編集部 「第10章 電波電子戦」『防衛用ITのすべて (防衛技術選書―兵器と防衛技術シリーズ)』 防衛技術協会、2006年、152-176頁。ISBN 978-4990029814
  2. ^ a b c d e f g h i デビッド・アダミー 『電子戦の技術 基礎編』 東京電機大学出版局、2013年ISBN 978-4501329402