AN/SPS-39

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AN/SPS-39
種別 3次元レーダー
開発・運用史
開発国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
就役年 1960年
送信機
周波数 Sバンド
パルス (1) 4マイクロ秒
(2) 2マイクロ秒
パルス繰返数 (1) 925 pps
(2) 1850 pps
送信尖頭電力 1 MW
アンテナ
形式 シリンドリカル・パラボラアンテナ
直径・寸法 2.9 m
アンテナ利得 34 dB
ビーム幅 2.4×3.0度
走査速度 (1) 5 rpm
(2) 15 rpm
(3) 11.5 rpm
方位角 全周無制限
仰俯角 48度
探知性能
探知距離 150 nmi (280 km)
RCS 1㎡の目標に対して
探知高度 100,000 ft (30,000 m)
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AN/SPS-39は、アメリカ合衆国ヒューズ社が開発した艦載用3次元レーダー。AN/SPS-26を元にした量産機であり、アメリカ海軍が初めて艦隊に配備した3次元レーダーでもあった。後に改良型のAN/SPS-52に発展した。

来歴[編集]

第二次世界大戦直後より、3次元レーダーと呼ばれる新しい原理のレーダーの開発が開始された。まず多重ビーム式のAN/SPS-2が開発されたものの、機構が複雑すぎたために試作のみに終わった。その後、画期的な電子走査方式として、ヒューズ社のヤルー氏によって、周波数走査(FRESCAN)と呼ばれる方式が開発された。これは発射電波の周波数を変えることで電波の位相を変え、電波ビームを指向するものであった[1]

これを受けて、垂直方向の走査にはFRESCAN方式、水平方向の走査にはアンテナの旋回による機械式を採用した実験機として、AN/SPS-26が試作された。これは1953年より陸上試験、1957年8月より「ノーフォーク」において洋上試験が開始された。そして信頼性を向上した実用機として、1960年1月より海軍への引渡しが開始されたのが本機である[2][3]

設計[編集]

アンテナとしては、AN/SPS-26と同様の縦長のシリンドリカル・パラボラアンテナを利用している。ただしAN/SPS-26では電子的に安定化されていたのに対し、AN/SPS-39では測高レーダーから流用した機械的安定化機構が導入されている。また後にはMTI技術も採用されている。平均故障間隔(MTBF)は、1960年から1962年にかけての試験の際にはわずか14.2時間であったが、のちの改良によって、シリーズIIIの場合、「サンプソン」搭載機では43.2時間、「ガルベストン」搭載機では67.4時間とされていた[2][4]

後に海軍戦術情報システム(NTDS)とのインターフェースを導入したAN/SPS-42、さらに改良されたAN/SPS-52が開発された。なお、1963年より配備されたAN/SPS-39シリーズIIIでは、AN/SPS-52と同型のプレーナアレイ・アンテナが採用され、このために外見上ではAN/SPS-52と区別できなくなっている。シリーズIIIでは下記の3つの動作モードが存在した[2]

高データレート・モード
近接した目標を探知するためのもの。走査回数15 rpm、探知距離60海里、パルス幅2.5マイクロ秒
高角モード
高高度の目標を探知するためのもの。走査回数7.5 rpm、探知距離160海里、パルス幅4.6マイクロ秒。
遠距離モード
遠距離の目標を探知するためのもの。走査回数7.5 rpm、探知距離245海里、パルス幅10マイクロ秒。

搭載艦[編集]

本機の搭載艦の多くは、後にシリーズIIIないしAN/SPS-42, 52へ更新している。

参考文献[編集]

  1. ^ 藤木平八郎「艦載レーダー発達の歴史 (特集 最近の艦載レーダー)」『世界の艦船』第607号、海人社、2003年2月、69-75頁、NAID 40005630579 
  2. ^ a b c Norman Friedman (1981). Naval Radar. Naval Institute Press. ISBN 9780870219672 
  3. ^ 野木恵一「艦載レーダーの歩み」『世界の艦船』第433号、海人社、1991年3月、69-75頁。 
  4. ^ Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. ISBN 9781557502629. https://books.google.co.jp/books?id=4S3h8j_NEmkC 

関連項目[編集]