マック (船)

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艦後部から1943年に撮られた完工後のリシュリュー級戦艦リシュリュー」。特徴的なマックが良く判る写真。

マック英語mack)とは、煙突(英語:stack)にマスト(英語:mast)の機能を組み合わせた構造物のことでmaststackを合成した語である。日本語ではそのままマックと訳す。 

マックの採用[編集]

軍艦としての帆走用マストは19世紀になると、風任せの風力よりも安定した推進力を得ることが出来る蒸気機関ディーゼル機関の信頼性の確立などにより動力源としての地位を奪われ、本数は1本にまで少なくなった。柱は見張り台や探照灯の基部として、ヤード軍艦旗戦闘旗や、平時・戦時に他船に信号を送信する国際信号旗を掲揚するためなどに使用され続けていた。

その後、無線機の開発により船舶無線のためにアンテナ線の展開長確保のためにマストは軍艦の重要な施設として残された。本数は再び2本に増えたが、前部マストは船橋が大型化して塔型艦橋化すると簡素化して次第に設けられなくなった。同時期に艦上構造物の複雑化に伴い、重心低下のために後部マストも簡素化の一途を辿り、ついにはフランス海軍リシュリュー級戦艦では後部マストは廃止され、構造上外せない存在である煙突に後部マストの機能を一体化させた。断面が四角形の煙突は半ばで斜め45度後方に曲げて後方に排煙させ、煙突の上方にアンテナと測距儀や射撃指揮装置を設けた。

第二次世界大戦時に艦船用レーダーが発達し、レーダーアンテナを高所に設置する必要性があったが、その用途のためだけにマストを設けるよりも、煙突効果のために高くせざるを得ない煙突に設置した方が効率が良いために同大戦後はイタリア海軍の「ヴィットリオ・ヴェネト (ヘリコプター巡洋艦)」から現在に至るまで世界の軍艦に採用されており、海上自衛隊でも「たかつき型護衛艦」から採用された。

マック構造の衰退[編集]

しかし、1960年代から軍艦、特に戦闘艦艇の主機関が蒸気機関からディーゼル機関やガスタービン機関へと移行し始めると、戦闘艦艇の設計においてマック構造を導入する例は急速に減っていった。

特に従来の蒸気機関やディーゼル機関よりも高温の排気を大量に排出するガスタービン機関を使う場合、煙突を大きく低くして大量の排気を効率よく排出できるようにする必要があるが、マック構造ではレーダーアンテナを設置する必要上煙突もある程度高くしなければならない点で前述の条件と矛盾する。
またマック構造では排気口とレーダーアンテナとの距離を開けにくく、高温排気にレーダーアンテナが晒される可能性が高く、電子部品の劣化や故障などを招きやすくなる弱点がある。

このため、何らかの方式でガスタービン機関を主機関として搭載する[1]ことが主流となった巡洋艦駆逐艦、大型のフリゲート艦などの主力戦闘艦艇では、低く太い煙突とレーダーアンテナ類を搭載するための高いトラス型マストないし塔型マストを設置する構造が主流となっている。

また、主機関がディーゼル機関のみで構成された戦闘艦艇[2]の場合でも、ディーゼル機関は蒸気機関のような煙突効果を必要としないためマック構造を積極的に採用する意義に乏しいが、一部の艦艇にはマック構造と解釈できるような構造をした艦艇もある。

脚注[編集]

  1. ^ 主機関をガスタービン機関のみで構成したCOGOGCOGAGCOGLAGは勿論のこと、ディーゼル機関とガスタービン機関を併用するCODOGCODAGCODLAGCODLOGも含む。
  2. ^ 一つの推進軸を複数のディーゼル機関で駆動させるCODAD方式を含む。主にそれほど高速航行能力を要求されない哨戒艦艇コルベット、小型のフリゲートに多い。

関連項目[編集]