レーダー

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レーダー用パラボラアンテナ(直径40m)

レーダー (Radar) は電波を対象物に向けて発射し、その反射波を測定することにより、対象物までの距離や方向を明らかにする装置である。 遠くにある物との距離を電波によって計測し、図示することで航空機船舶の位置把握や雨雲の雨量計測に、また物体の速度測定や障害物検知などのシステムに使われている。

語源[編集]

Radarという単語は定着したアクロニムであり、英語の Radio Detecting and Ranging(電波探知測距) からきている。これは、アメリカ人による命名であり、当初イギリスでは電波標定機(Radio Locator)と呼ばれていた[1]

送信電波の変調方式と測定原理[編集]

空間中に伝播する電波はほぼ一定の速度で直進する性質を持つ。(厳密には、下記の気象条件の影響の項で述べるが定速度性と直進性は電波の必然的な性質ではない。)また電波は物体に当たると反射する性質も持つ。この性質を利用し知りたい対象の存在する方向や距離などを測定する装置がレーダーである。

レーダーは、アンテナから発射する送信電波の変調する方式の違いにより以下のように分類でき、それぞれの方式により測定原理が異なる。

無変調連続波レーダー[編集]

Continuous Wave から単にCWレーダーとも呼ばれる。間断のない連続波を送信電波に使用するレーダーである。特に変調は行わないものは、レーダーの位置を中心とした極座標空間において、測定対象の方位は測定できるが距離は測定できない。対象からの反射波のドップラー偏移を測定し半径方向の移動速度は測定することができる。しかし円周方向の移動速度は測定できない。このようにレーダー1基の単独使用では対象の位置を同定することはできないが、2次元レーダーの場合は最低2か所、3次元レーダーの場合は最低3か所十分離れた地点からそれぞれ方位を測定して三角測量の要領により平面あるいは空間における位置を同定することができる。

周波数変調連続波レーダー[編集]

Frequency Modulated Continuous Wave からFM/CWレーダーとも呼ばれる。発信電波の周波数を周期的に変化させて間断なく送信し続けるレーダーである。対象からの反射波が受信される時には送信波の周波数が変化している。常時この発信電波と受信電波の周波数の差を測定し、反射波の時間の遅れを測定することで対象までの距離を知ることができる。

このレーダーは測定対象の平面あるいは空間における位置を単独使用で同定できる。

位相変調連続波レーダー[編集]

Phase Modulated Continuous Wave からPM/CWレーダーとも呼ばれる。発射電波の位相を周期的に変化させて間断なく送信し続けるレーダーである。対象からの反射波が受信される時には送信波の位相が変化している。常時この発信電波と受信電波の位相差を測定し、反射波の時間の遅れを測定することで対象までの距離を知ることができる。

このレーダーは測定対象の平面あるいは空間における位置を単独使用で同定できる。

パルスレーダー[編集]

アンテナから電波をある方向に向け収束させて極短時間だけ発射する(このような電波を指向性パルス波と呼ぶ。)。その方向に物体があると電波が反射しアンテナに戻ってくる。電波をアンテナから発射した瞬間から、反射した電波を再びアンテナで受信した時間を計測すると物体までの距離を知ることができる。またこの時のアンテナの向いている方向からその物体の方向を知ることができる。このレーダーは測定対象の平面あるいは空間における位置を同定でき、反射波のドップラー偏移を測定することにより対象の半径方向の速度を測定することができる。円周方向の速度は測定できない。しかし、2次元レーダーの場合は最低2か所、3次元レーダーの場合は最低3か所十分離れた所からそれぞれの半径方向の速度を測定しそれをベクトル合成することにより対象の真の速度と運動の方向を知ることができる。

この他に反射パルス波の強度(振幅の大きさ)を測定することにより、ある広がりを持った対象(雨粒、雪片など)の方向と距離に加え雨滴の密度(単位体積中の雨粒の個数)を測定できる。このデータを基に、その地点での雨量(降水強度)を予測することができる。このような気象状態の測定に利用されるレーダーを一纏めに気象用レーダーと呼ぶ。

気象条件の影響[編集]

厳密に言えば電波は空気密度の変化に応じて屈折率が変化する。標準大気の屈折率は高度が高くなるにつれて直線的に減少する。それにより電波は下方に曲がりながら伝播する。またその他に、電波が地表付近を通過すると回折現象により下方に曲がりこむ。これらにより例えば水上捜索レーダーや航海レーダーの2次元レーダーの場合、レーダー水平線までの距離(最大探知距離)は見通し距離に比べ若干ではあるが拡大する。つまりより遠方の物体を探知することができる。

サブ・リフラクション[編集]

標準大気ではない、例えば大気の密度構造が逆転状態(高さに対する温度低下が急激であったり相対湿度が高さと共に増加する場合)となる場合は、サブ・リフラクションといって電波が上方に曲げられるためレーダー水平線までの距離は短縮される。

スーパー・リフラクション[編集]

また大気の密度構造つまり高さに対する屈折率の低下の割合が急激な状態(温度の低下率が標準状態よりも少ない場合、または高さと共に温度が上昇するような温度逆転層がある場合、もしくは相対湿度が高さと共に減少する場合)となる場合は、スーパー・リフラクションといって電波が下方に曲げられレーダー水平線までの距離が延長される。

ラジオダクト[編集]

スーパー・リフラクションの状態がさらに著しくなると電波はさらに下方に曲げられて海面に達しそこで反射してまた下方に曲げられるということを繰り返し非常に遠方まで到達しレーダー水平線までの距離が大きく伸びる。この現象をラジオダクトと呼ぶ。

レーダー電波の減衰[編集]

電波は、大気中の酸素や水蒸気などの気体により吸収されたり、霧、雲、雨、雪などにより散乱して減衰したりする。波長の短い電波ほど大気中の気体に吸収され易く、電波を送信・反射・受信する間に、電波のエネルギーはその経路にある気体により吸収され減衰する。

10GHz以下の周波数では酸素や水蒸気等の気体による吸収はほとんど無視できる。雲や霧においては、視程が100m以上程度の濃度の場合、探知距離はほとんど影響を受けないが、視程が50m程度の濃霧の場合、影響を受ける。特にレーダーから測定対象までの距離が遠方にある場合(電波の往復距離が長いので影響を受けやすい。)、減衰が大きい。雨や雪の場合、雨滴が大きくなると散乱が急増し減衰が起きる。電波の波長が長くなると散乱による影響は少なくなる。雪の影響もほぼ同様の傾向を示す。

このようにレーダーでは、波長の長い(=周波数が低い。)電波を使うと電波の散乱による減衰が少なく、遠くまで探知することができるが、一方で分解能が低くなるため、目標の解像度は悪くなる。逆に、波長の短い(=周波数が高い。)電波は、空気中に含まれる水蒸気や雲・雨などに吸収・反射され易いので減衰が大きく遠くまで探知するのに困難を伴う一方で高い解像度を得ることができる。したがって、遠距離の目標をいち早く発見する必要性のある捜索用の対空レーダーや水上レーダーでは周波数が低い電波を用いる傾向があり、一方で射撃管制レーダーなど、目標の形・大きさなどを精密に測定する必要性のあるものでは周波数が高い電波を用いる傾向がある。

歴史[編集]

発明[編集]

八木・宇田アンテナを用いたレーダーを装備したメッサーシュミットBf110

電波による遠隔物体の感知の歴史は電磁波研究の最初期、つまりドイツハインリッヒ・ヘルツが電磁波の実験を行っている時、周囲に存在する導体との干渉を発見した時にまで遡る。1900年初頭には、ドイツでは航海安全のための電波利用が実際に行われていた。1904年にドイツのクリスチャン・ヒュルスマイヤー (Christian Hülsmeyer) は、火花式送信機とコヒーラー受信機により距離5kmの船舶の探知を実用化し、英国において"Telemobiloscope"の名で特許を取得したが、この技術には需要が無く忘れられてしまった[2]

黎明期[編集]

1930年頃から英米国では、電離層の観測目的で電波の利用が行われていた。その後、航空機の通過で観測が妨害される現象を逆に使用して、航空機を発見するためのラジオ・ロケーターと呼ばれるレーダーの開発が始められた。イギリスはこの電磁波を兵器(殺人光線)に利用できないかロバート・ワトソン=ワットに打診し、殺人光線としては利用できないが、航空機の早期発見には役立てることができるだろうとの見通しを得た。最初に航空機の探知に成功したのは1935年の英国である。

実用化と軍事への応用[編集]

1930年代に、ドイツでは、ヴィルスンとアーブスローが海軍司令官エーリヒ・レーダーの指示のもとで、イギリスでは、ロバート・ワトソン=ワットらにより航空省が援助して開発が進められ実用化され、1940年にイギリスはドイツ空軍空襲に対する迎撃戦闘で大々的に使用し、ドイツのイギリス侵攻の阻止に大いに役立った。

ドイツ空軍の空襲に対してイギリス空軍はレーダーを使った防空システムの整備により有効に対処することができ、この戦いは戦局の分水嶺となった。また、イギリス空軍は、ドイツ空軍による夜間爆撃に対抗するため、機上レーダーを搭載した夜間戦闘機を1941年に世界に先駆けて実用化し、ドイツ空軍の夜間爆撃を封殺した。海上戦闘でも、サボ島沖海戦ビラ・スタンモーア夜戦で、アメリカ海軍がレーダーを活用して日本海軍を相手に勝利をおさめた。補給路を脅かす潜水艦に対してもレーダーは有効に働き、連合軍の海上輸送路の防衛に大きな役割を果たした。こうして、レーダーは戦術戦略上でも重要な兵器であることを実証した。

ドイツ本土防空戦においては、イギリス空軍が夜間爆撃機の航法のためにマッピング・レーダーを搭載した。一方でドイツ空軍は夜間爆撃機に対して、夜間戦闘機にリヒテンシュタイン・レーダーなどを搭載して対抗したが、イギリス空軍も夜間戦闘機を護衛につけるなど対抗策を取ったため、イギリス空軍の夜間爆撃機が大打撃を被ることは少なかった。

日本でも、本土防空用にレーダーを組み込んだ早期警戒システムを整備したり、レーダー搭載の夜間戦闘機を開発したが、情報を管理するシステムに問題があり、戦闘機の数自体も不足していたため、有効に機能することはなかった。

八木・宇田アンテナ[編集]

1925年(大正14年)日本人の発明した八木・宇田アンテナ(以降、「八木アンテナ」)は、既存の技術に比べると非常に容易に指向性を得ることができる、実に画期的な技術だった。しかし、日本では全く反響が無く学会から無視された[3]。一方欧米では大々的な評判を呼び、各国で軍事面での技術開発が急速に進んだ。英国ではバトル・オブ・ブリテンの時点では無指向性アンテナを使用する短波帯の「CHレーダー」により、複数地点より観測して目標位置を特定していたが、直ぐに八木アンテナを使用したVHFレーダーを実用化した[2]

日本での歩み[編集]

陸軍[編集]

日本では、1930年代中頃に日本陸軍陸軍科学研究所日本無線(JRC)や日本電気(NEC)などとともに対空レーダー研究をはじめたことがその元始となる。陸軍側の開発指揮者は佐竹金次中佐。1939年2月、研究チームは連続波で航空機からの反射波を受信することに成功。また陸軍上層部のレーダーに対する理解は高く、これらの実績をもとに開発されたドップラーレーダーである「超短波警戒機甲」は日本初の実用レーダーとして量産され、1940年から日本本土や中国大陸に大量に配備された。「超短波警戒機甲」は出力、探知距離により4種類がある。

1941年にはレーダーに関心が高い山下奉文中将を団長とする遣独視察団に佐竹中佐らも随員として参加、ドイツの先進的なレーダーを調査、パルス波を用いる新レーダーを開発することとし同年中頃に開発を開始した。これは「超短波警戒機乙」として太平洋戦争開戦前後頃に実用化された。配備は1942年6月以降となったが、以降量産され日本本土全域や中国大陸のみならず、南方作戦において占領や進出した外地にも多数が配備された。性能に劣る旧型の「超短波警戒機甲」に代わり、この「超短波警戒機乙」は1940年のバトル・オブ・ブリテンで活躍したイギリス軍のレーダー程度の性能は持っており、信頼性や性能面で悩まされアメリカ軍の無線妨害などにより万全ではなかったものの、陸軍航空隊は前線各地や日本本土防空戦でこれを有効的に活用している。「超短波警戒機乙」は主なもので要地用の「タチ6号」、車載野戦用の「タチ7号」などがありいづれも探知距離は約300km。

地上設置型は「タチ」、航空機搭載型は「タキ」、船舶搭載型は「タセ」と称しレーダーごとに後ろに番号が付され、各種が開発された。

従来の陸軍科学研究所は既に改編されており、さらに第5、第7、第9の各陸軍技術研究所第4陸軍航空技術研究所の電波兵器研究部門を統合した、多摩陸軍技術研究所が新設されてレーダーを始めとする電波兵器の研究開発を行っていた。

1942年8月、陸軍は佐竹中佐を通しドイツの新型「ウルツブルグ・レーダー」の入手を計画。遣独潜水艦作戦伊号第三〇潜水艦による輸入を試みたが伊三〇はシンガポールで触雷し沈没。そのため1943年6月16日にイタリア海軍の潜水艦「ルイジ・トレッリ」がテレフンケン社技術者ハインリヒ・フォーダスと佐竹中佐を乗せ、また同時に僚艦「バルバリーゴ」は「ウルツブルク・レーダー」設計図面を乗せたフランスのボルドーを出航した。「バルバリーゴ」は24日にイギリス軍の攻撃を受け沈没したものの、「ルイジ・トレッリ」は8月30日にシンガポールに到着、フォーダスと佐竹中佐は空路日本に向かい多摩陸軍技術研究所、日本無線にて技術指導を行った。これによって開発された陸軍の和製「ウルツブルク・レーダー」の初期生産型は一部が東京の久我山に送られ、五式十五糎高射砲ともに配備されていた。

海軍[編集]

一方、先進的な陸軍と異なりレーダーに対する上層部の理解が低かった日本海軍では、(陸軍がレーダー研究を開始した1936年に)海軍技術研究所谷恵吉郎造兵中佐がレーダー研究の旨を上に進言するも「闇夜の提灯」と一蹴され、同研究所の伊藤庸二造兵中佐の下でマイクロ波パルスを利用した「暗中測距儀」の実験を独自に行っていたにすぎなかった。

1940年秋の大観艦式の際に艦船からの波長10cmの反射波が捕らえられ、レーダー開発の可能性がもたらされた[4]。1941年には陸海軍遣独視察団に参加した伊藤ら海軍随員がドイツへ渡ってレーダーを含む軍事技術の供与を依頼したが、ドイツにとってもレーダーは極秘事項だったために伊藤らに公開された情報はわずかなものだった。また、ロンドン駐在の濱崎諒中佐もバトル・オブ・ブリテンにおける英国のレーダー部隊の実戦投入と活躍を報告し、その有効性を主張している。しかし、海軍中央はレーダーの効果よりも、自ら電波を出して敵に発見される危険性の方を重視したため開発には消極的であり、陸軍が既に「超短波警戒機乙」を開発中の1942年頃に(陸軍の「超短波警戒機甲」に相当する)旧型レーダーを試作したにすぎなかった。

太平洋戦争初期では、まだレーダーはそれほどの性能を持たなかったため、訓練で練度が高かった日本海軍が戦局を優位に進めた。しかし、時代が進みレーダーの性能が加速度的に進化した結果、ミッドウェー海戦マリアナ沖海戦など、多くの戦いでアメリカ海軍に敗北を重ねるようになってしまう。

開戦後、レーダーの重要性を痛感した日本海軍は慌てて開発に力を入れた[3]。1942年に戦艦「日向」において実験を行なったがあまり良い結果が得られずそのままミッドウェー海戦に参加し、結果、無敵を誇ったはずの南雲機動艦隊の参加空母全てを喪失するという無残な大敗北を喫し、ショックを受けた日本海軍は戦前・開戦時とうって変わって開発を全力で行い、開発を終戦まで続けた。1941年に大和型戦艦に水上索敵と射撃管制用の「2号2型電探」を備えてはじめて実戦に使用可能なレベルのレーダーを手にした[5]。初期のレーダーは雨が降ると反射されほとんど役に立たなかったうえ指向性も不十分だったが、改良を続けることにより光学測距と遜色ない精度がでるようになり、事例は少ないが日本海軍においてもレーダー射撃による対艦攻撃が実践された。2号2型電探は1000台以上量産され、主力艦から駆逐艦まで多くの艦艇に装備された。が、日本製レーダーのどれにも言えるが、当時の日本の工業力では信頼性に欠ける代物でしかなかった。 例として、迎撃戦のとき、月光の機上レーダーを搭乗員・整備員が扱いに不慣れであったのと、その信頼性の低さから「アテにできぬ」と飛行性能向上のために取り外してしまったという逸話も伝えられている。[6]1943年には海軍も陸軍と同様にドイツから「ウルツブルク・レーダー」の技術指導を受け、1944年にデッドコピーを行い試作品を開発している。

日本語では、電波の照射の跳ね返りにより位置を探るものを「電波探信儀」、相手の発する電波によって方向探知するものを「電波探知機(もしくは受信機)」と呼び、双方共に短く「電探」と呼んでいた(後者においては「逆探」と呼んでもいた)。なお、これは海軍での呼称とされており、陸軍では特に前者を「電波警戒機」と呼称した。

なお、八木アンテナはその後、主に家庭のテレビアンテナなどとして広く使用されるが、21世紀の現在でも当初の頃からほとんど変わっていない。それだけ完成度の高い技術だったことになる。

技術の向上[編集]

パルスレーダー

電磁波の発生には、マグネトロンクライストロンなどの真空管を使うことが多いが、ガン・ダイオードや終段回路を集積したマイクロ波集積回路への置き換えが進行中である。その進歩によりレーダーの性能も上がっていった。アンテナは、周波数の上昇により、四角い網状のものだけでなく、皿状のパラボラアンテナも使うようになった。

現在のレーダー装置の多くは、パルス状に電波を送信して送信をしない間は受信を行うパルスレーダーという方式である。これによりアンテナは1つで済むが、アンテナを送信用と受信用の2つを備えた常時送受信を行うレーダー方式もある。

距離の測定精度はパルスの幅とS/N比によって決まる。方位や仰角の精度は送信ビームの幅とS/N比によって決まり、送信ビームの幅は送信周波数/アンテナの開口長で決まる。複数のわずかにずれたビームによって測定精度を向上させることができる。目標との距離の変化は、受信周波数の変化から測定する。

パルスドップラーレーダーと呼ばれる方式では、時間軸では無く周波数軸を測定することにより、一次的に速度を、二次的に距離を測定する。

平均エネルギーが大きく小型でも比較的遠距離を探知可能であるため、戦闘機などの搭載レーダーに多用される。

連続した受信パルスをフーリエ変換することで、かなり正確に周波数の変化を測定し、速度を求めることができる。

軍事技術の一つにステルス性があり、これはなるべく敵レーダーへの反射波を返さない技術である。近年では、計算機の発展に伴い、外面が曲面で構成されたステルス兵器もあるが、ステルス兵器が出現した当初は、平面で構成された外面を持っていた。これは、レーダーが送信されてきた方向へはなるべく反射波を返さずに、送信方向とは別の特定の方向にまとめて反射させる工夫である。ステルス技術には電波を吸収する工夫も含まれており、通常は形状によるステルスと共に電波吸収剤も併用される。電波を別方向に反射するステルス兵器を発見するためには、「バイスタティックレーダー(またはマルチスタティック・レーダー)」と呼ばれる送信アンテナと受信アンテナが遠く離れたレーダーシステムが有効だと考えられている。また、電波吸収体は吸収する周波数が固定されるため、広い周波数帯のレーダーが有効だと考えられている[5]

レーダーそのものは電子工学により極めて理論的に設計、製造されているが、運用にあたってはオペレーターの経験と勘に依存する度合いが大きいという特徴がある。インターネットの普及により、オペレーターの経験不足はある程度補えるようになるが、レーダーとオペレーターの目視や体感を併用しなければ実用的な経験値をあげることはできない。

なお、正確な位置距離やドップラー効果を測定する為に、パラボラアンテナを使用している。

クラッター[編集]

軍事用レーダーでは目標以外の反射波は本来不要であり、地面、海面、雲、雨などは「クラッター英語版」として有意情報からは除外されなければならない。気象レーダーなどでは航空機などによる反射波は不要であり、雲や雨が有意情報である。軍事用レーダー装置では固定した反射波は地面や海面からのクラッターとして、ここからの検出をのみを抑制することで不要な情報をフィルターする、「クラッターマップ」と呼ばれる仕組みがある。また、同じような技術に「Moving Target Induction:MTI」と呼ばれるドップラーシフトが0の信号を抑制する方法がある。これらは自らの位置が移動する航空機のレーダーでは、自己位置の移動分を補正する必要がある。

表示方式の変遷[編集]

初期のレーダーは、旧日本海軍二二号電探(二号二型電波探信儀)でも採用されたAスコープ表示方式が用いられた。縦軸に電波強度、横軸に時間を取ったオシロスコープに波形を表示(心電図のようなイメージ)させることにより、強度が最も大きい反射波が戻ってくる時間から対象物までの距離を読み取っていた。レーダー送信機の方向は別に表示されていたため、他方向に多数の対象物が存在する場合、一覧することができなかった。

次の世代のレーダー表示器は、PPIスコープ (Plan Position Indicator scope) と呼ばれる円形の表示器に、時計方向に回転する走査線(アンテナが探査波を発射し反射波を受けている方向を表す)によって、対象物の二次元上の所在を一覧できるようになった。また、Bスコープと呼ばれる表示方式では横軸に方位、縦軸に距離(あるいは目標の速さ)を示す方式で戦闘機などの対空レーダーに利用されている。

現代のレーダー表示器は通常のラスタースキャンディスプレイ上に、対象物の情報を文字表示したり、既にデータベースにある地形情報などを合成して表示することが可能である。

周波数帯[編集]

以下にレーダー波に関する代表的な周波数帯の分類を示す。

一般的な周波数帯[編集]

IEEE規格[編集]

IEEE 521-2002による周波数帯の分類を以下に示す。

バンド名 周波数範囲 バンド名の由来
HF バンド 3 - 30MHz High Frequency
VHF バンド 30 - 300MHz Very High Frequency
UHF バンド 300 - 1000MHz Ultra High Frequency[7]
L バンド 1 - 2GHz Long wave
S バンド 2 - 4GHz Short wave
C バンド 4 - 8GHz Compromise between S and X
(S と X の中間)
X バンド 8 - 12GHz Cross = 十字の照準線に由来[8]
Ku バンド 12 - 18GHz Kurz-under
K バンド 18 - 27GHz ドイツ語での Kurz (短い)
Ka バンド 27 - 40GHz Kurz-above
V バンド 40 - 75GHz
W バンド 75 - 110GHz
mm バンド 110 - 300 GHz

EU, NATO, US のECMバンド一覧表[編集]

EUNATO、米国で使用されている軍用電波での周波数帯の分類を以下に示す。近年(2008年現在)では軍用兵器の周波数表記にこれらが使用されており、従来のIEEE表記と異なることに注意が必要である。

バンド名 周波数範囲
A バンド 0 - 0.25GHz
B バンド 0.25 - 0.5GHz
C バンド 0.5 - 1.0GHz
D バンド 1 - 2GHz
E バンド 2 - 3GHz
F バンド 3 - 4GHz
G バンド 4 - 6GHz
H バンド 6 - 8GHz
I バンド 8 - 10GHz
J バンド 10 - 20GHz
K バンド 20 - 40GHz
L バンド 40 - 60GHz
M バンド 60 - 100GHz

導波管周波数のバンド一覧表[編集]

バンド名 周波数範囲[9]
R バンド 1.70 - 2.60GHz
D バンド 2.20 - 3.30GHz
S バンド 2.60 - 3.95GHz
E バンド 3.30 - 4.90GHz
G バンド 3.95 - 5.85GHz
F バンド 4.90 - 7.05GHz
C バンド 5.85 - 8.20GHz
H バンド 7.05 - 10.10GHz
X バンド 8.2 - 12.4GHz
Ku バンド 12.4 - 18.0GHz
K バンド 15.0 - 26.5GHz
Ka バンド 26.5 - 40.0GHz
Q バンド 33 - 50GHz
U バンド 40 - 60GHz
V バンド 50 - 75GHz
W バンド 75 - 110GHz
Y バンド 325 - 500GHz

上には示されていないが、周波数の表現の1つにマイクロ波(Microwave)があり、これは注意が必要である。 第二次世界大戦が始まった頃のレーダーは波長が数mから数十m程度(短波領域)と長く、大戦中にcm台のものが開発された。当時はこれが非常に短い波長であると考えられ、この新たな波長領域は「マイクロ波」と名付けられた。現在でも1mから1mm弱程度の電波領域がマイクロ波と呼ばれるが、この領域は1cmから1mmの「ミリメートル波」(ミリ波)と呼ばれる領域を含んでおり、10-6を意味するマイクロが10-3を意味するミリを含むようで混乱を招く。マイクロ波のマイクロは10-6を示すのではなく、「極めて小さな」という意味で使われている[10]

第二次大戦時の主な軍用レーダー[編集]

大日本帝国海軍
名称 用途 範囲 出力 周波数 波長
二号一型 対空捜索 54海里 5kW 200MHz 150cm
二号二型 対水上捜索/射撃 19海里 2kW 2.5GHz 10cm
一号三型 対空捜索 54海里 10kW 150MHz 200cm
合衆国海軍
名称 用途 範囲 出力 周波数 波長 備考
SK 捜索 150海里 330kW 200MHz 150cm 主力艦用
SC 駆逐艦用
SD 20海里 140kW 114MHz 263cm 潜水艦用
SG 対水上射撃 50kW 10GHz 3cm 不明
Mk.3 20kW 750MHz 40cm
Mk.8 3GHz 10cm
Mk.13 50kW 10GHz 3cm

無線局としてのレーダー[編集]

船舶用レーダーの例。無線航行移動局に分類される。

日本では、レーダーは無線局における無線設備の一種として扱われる。 電波法施行規則第2条第1項第32号ではレーダーを「決定しようとする位置から反射され、または再発射される無線信号と基準信号との比較を基礎とする無線測位の設備」と定義している。 関連する定義として

  • 「無線測位」を第2条第1項第29号に「電波の伝搬特性を用いてする位置の決定又は位置に関する情報の取得」
  • 「無線航行」を第2条第1項第30号に「航行のための無線測位(障害物の探知を含む。)」
  • 「無線標定」を第2条第1項第31号に「無線航行業務以外の無線測位」

がある。すなわち、レーダーには船舶・航空機の航行のための無線航行用とそれ以外の気象観測や速度測定や物体検知などのための無線標定用がある。

レーダーのみを無線設備とする無線局は無線測位局といい、用途及び移動の可否により無線航行陸上局無線航行移動局(あわせて無線航行局という。)、無線標定陸上局無線標定移動局として免許される。 詳細は各項によるものとし、レーダーのみが無線設備である無線局の操作又はその監督に最低限必要な無線従事者のみについて掲げる。

種別 資格 備考
無線航行陸上局 レーダー級海上特殊無線技士  
無線航行移動局 レーダー級海上特殊無線技士 空中線電力5kW未満の通称、第4種レーダー(無線航行移動局#実際を参照)は不要[11]
無線標定陸上局 第二級陸上特殊無線技士 陸上系の無線従事者を要するのは政令電波法施行令第3条第2項第6号の陸上の無線局であることによる。

警察用以外で空中線電力0.1W以下の適合表示無線設備技適マークのあるもの)は不要[11]

無線標定移動局 第二級陸上特殊無線技士

従前の特殊無線技士(レーダー)は無線航行用と無線標定用のどちらのレーダーも操作できる。

レーダーのみが無線設備である航空用無線航行局は存在しないので表にない。

自衛隊のレーダーについては自衛隊法第112条により無線局の免許および無線従事者に関する規定が適用されない[12]ので表にない。

上述より、

  • 船舶搭載であれば資格不要な第4種レーダーでも、陸上に設置し使用するのであれば無線従事者を要する[13]
  • スピード測定器でも、スポーツ・レジャー用の通称スピードガンであれば資格不要であるが、警察の速度取締用には無線従事者を要する

こととなる。

レーダーと他の海上用または航空用の無線機器をあわせて無線設備とする無線局は、移動の可否により海上用は海岸局(あるいは無線航行陸上局)または船舶局(あるいは無線航行移動局)、航空用は航空局または航空機局として免許される。 これらの操作には各々海上系または航空系の無線従事者を要する。但し、第4種レーダーの無線航行移動局は除く。 また、自衛隊の艦船、航空機については上述と同様に自衛隊法第112条により無線局の免許および無線従事者に関する規定が適用されない。

免許も無線従事者も不要な特定小電力無線局にもミリ波レーダー用又は移動体検知センサー用としてレーダーを用いた機器がある。 自動車の障害物検知用レーダーや防犯用侵入者検知センサーなどである。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 霜田光一. “電波探知機・電波探信儀用鉱石検波器の研究”. 2013年7月20日閲覧。
  2. ^ a b "DEFLATING BRITISH RADAR MYTHS OF WORLD WAR II, Maj. Gregory C. Clark, The Research Department, Air Command and Staff College, USA, March 1997"
  3. ^ a b COBS ONLINE 20世紀の発明品カタログ 第4回 世界の屋根に君臨する、八木アンテナ(2002年1月9日)
  4. ^ "海軍技術研究所―エレクトロニクス王国の先駆者たち, 中川 靖造"
  5. ^ a b 『防衛用ITのすべて』防衛技術ジャーナル編集部編(財)防衛技術協会 ISBN4-9900298-1-X
  6. ^ 日本海軍 (歴群「図解」マスター)ISBN-978-4054047631より)
  7. ^ 216 - 450MHz はPバンドと呼ばれることがある。これは従来イギリスのレーダーで使われていた周波数帯であり、現在はより高い周波数へ移動しているためである。
  8. ^ 第二次世界大戦期にこの周波数帯が火器管制に使用されたため、十字の照準線を意味する Cross = X に由来する。
  9. ^ Waveguide frequency bands and interior dimensions microwaves101.com
  10. ^ 防衛技術ジャーナル編集部編『ミサイル技術のすべて』(財)防衛技術協会 2006年10月1日初版第1刷発行 ISBN 4-9900298-2-8
  11. ^ a b 電波法施行規則第33条および平成2年郵政省告示第240号
  12. ^ 但し、使用する周波数について総務大臣の承認を受けること及び従事する者について自衛隊としての内部基準を規定しなければならない。
  13. ^ 船舶用レーダーの沿岸監視等への利用 四国総合通信局

関連項目[編集]