漁船

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北海道釧路港に接岸する漁船

漁船(ぎょせん)とは一般に、漁業に用いられる船舶である。漁法やその目的とする漁場によりその船の大きさや構造は大きく異なる。

概説[編集]

漁業設備[編集]

漁船を最も特徴づけるものが漁業設備である。一般には建造時に設備するが、後に増設や撤去等を行うこともある。漁業種類と漁業設備の対応例を以下に挙げる。

上記の設備、とくにいか釣り漁業やさんま棒受け網漁業に用いられる集魚灯などについては大量の電源供給を要することから、推進機関とは別に発電機を設備している漁船も見られる。 発光ダイオードを使ったLED集魚灯の場合、従来の集魚灯よりも重油使用量が10-20%程度で済むという。

一つの漁船で複数種類の漁業を季節に合わせて行う場合、上記の漁業設備を季節ごとに撤去又は設備する例も多く見られる。中には上甲板上の設備を大きく変えるため、毎回総トン数を変更する漁船もある。

冷凍・冷蔵設備[編集]

過去に行われた母船式遠洋漁業や、遠洋かつおまぐろ漁業では冷凍設備を有するが、沿岸漁業ではそのような設備はほとんど見られなかった。しかし近年の高鮮度による付加価値志向により、滅菌海水による水氷の積載や冷蔵設備を有する沿岸・沖合漁船も増加している。

種類[編集]

魚を獲る漁船には魚の獲り方によって船の種類の名前が個別に付けられ、また、目的の魚によって名前がつけられることもあり、さまざまな種類の漁船がある。他にも、その獲った魚を海上で受け取ってまとめて港まで運搬する船や、受け取った魚を海上で加工する船も漁船に含まれる。

漁猟船(ぎょろうせん)[編集]

  • 釣(つり)漁船 かつお釣漁船、さば釣漁船、いか釣漁船など多種がある
  • 延縄(はえなわ)漁船 
  • 流網(ながしあみ)漁船 サケ・マス流網漁船など網を固定せずに魚が自ら絡まることで獲る
  • 刺網(さしあみ)漁船 イワシ、サバ、サンマ、メバル、チヌ、カレイ、カニ、クルマエビなど海中の魚や海底の甲殻類が回遊などで移動してくる針路を遮断するように網を固定接地して獲物を得る船がある
  • 旋網(まきあみ)漁船 魚群の周りに網を入れて囲い込んで魚を獲る船
  • 敷網(しきあみ)漁船 魚群の下に網を入れて魚をすくい取る船
  • 突棒(つきんぼう)漁船 カジキやマグロを突いて獲る船
  • 曳網(ひきあみ)漁船 網を海中で曳いて魚を獲る船
  • トロール漁船 底引き網を引いて魚を獲る船
  • 白蝶貝採取漁船
  • 海獣猟船 アシカやアザラシを捕獲する船

母船・工船[編集]

遠洋漁業には、漁獲を直接水揚げ港に運んだのでは非効率であることから、直接漁猟には携らず専ら漁獲をとりまとめ洋上基地として各種支援をおこなう少数の母船と、漁猟をおこなう多数の漁船からなる、船団によって漁業をおこなうものがある。母船の船内に獲った魚の加工設備を備える場合があり、「○○工船」と呼ぶ。

  • 北洋漁業 おもに北洋漁業で、母船に付随する多数の漁猟専門の小型船を「独航船」(どっこうせん)と呼ぶ。
    • 鮭鱒(さけます)母船 母船式北洋鮭鱒漁の母船 1隻の母船に約40隻の独航船が従う。
    • かに工船 蟹工船も参照。
  • 捕鯨母船 母船式捕鯨に携わる母船。母船式捕鯨において漁猟をおこなう船はキャッチャーボートと呼ぶ。詳しくは捕鯨船を参照。現在の日本の調査捕鯨(日本の捕鯨も参照)では、1隻の母船に4隻のキャッチャーボートと3隻の調査船が従う。
  • ミール母船
  • すりみ母船
  • 冷凍工船

運搬船[編集]

  • 冷凍運搬船
  • 活魚運搬船
  • ミール運搬船

その他[編集]

ギャラリー[編集]

船体[編集]

船体設計の特徴[編集]

旅客船貨物船との大きな違いとして、漁船は一定した航路を走らず複雑な航跡を示すことから、複雑な動きに適した構造で設計される。また、揚網作業などでバランスを崩しやすいことから、復原性が重視される傾向にあり、台風多発海域での操業を前提とした船は船体が特に強靭に作られている。各漁業の形態によりその最適とされる構造は異なるため、漁船であれば全ての漁業に用いられるものではなく、例えば定置漁業であれば、揚網を行い易いように平たくブルワークの低い形態の船体を、かつお釣漁業では大きな船体を用いる傾向にある。しかし一隻で複数の漁業を兼業することも多い。

内水面漁業の場合、海面漁業における3級船相当の漁船を用いることが多いが、広い湖では5トン級の漁船も用いられている。

材質[編集]

かつての船体は木船が中心を占めていたが、昭和40年代からFRP(強化プラスチック)船が登場した。現在、20トン以下の漁船はFRPと軽合金(アルミニウム)が中心を占めている。なお、1級船は現在も鋼船がほとんどである。

FRP
5トン未満の、とくに船外機を用いる小さな漁船の大部分はFRP製である。FRPは1つの型から大量に製作できるため低価格であり同一形状の小型船では経済的に製造できる。船体が軽いなどの利点がある。多少の穴や傷もプラスチックで埋めることで修復が容易である。一方、プラスチック製であるため火災に非常に弱く、一体設計であるため製造後の加工にもあまり向かない。廃船時には船体を大型破砕機などで機械的に解体処理する必要があるが費用が掛かり、再資源化が可能な部材もほとんど生じない。
軽合金
アルミのような軽合金船は鋼船に比べて軽く、FRP船よりも剛健であることが特長である。造船技術、設計方法は金属であるため鋼船に近く、過去の技術資産が生かせる。また金属であることから、廃船時にはリサイクル可能であるため、近年はFRPから移行する漁業者も増加している。
鋼船は重量が重く価格も高くなるため、現在は小型漁船ではあまり用いられない。しかし鋼の剛性を超えるFRPや軽合金はないことから、大型の底びき網漁船や遠洋漁業にはもっぱら鋼船が用いられる。また、漁業取締船などもその業務上、鋼船が用いられる。

推進機関[編集]

漁船の機関は主に以下の3種類に分類される。

船外機の例(2基掛け)
船外機
漁船の外側に付ける、舵と一体化した簡易な小型機関で、電気点火式ガソリン機関がその主流である。低価格であることや保守の簡易さ、乗せ替えが簡単なことなどから、3トン以下のFRP船で多く見られる。以前は2ストローク機関が主流だったが、最近は環境や燃費を考慮した4ストローク機関が主流となりつつある。
船内機
船内に設置された大型機関。主流はディーゼル機関である。プロペラシャフトによりプロペラを回転させ、舵は別に付けられる。5トン以上はほとんどが船内機を使用している。
ドライブユニット
船内外機
船内機、船外機の折衷型。機関は船内機関室にあるが、舵が機関と一体になっており、ドライブユニットと呼ばれる装置を船外に出すことで動力をプロペラに伝達する。3~5トン程度の漁船で使用されている。ディーゼルが主流である。

戦後直後の近海は焼玉機関が中心を占めていたが、現在は存在しない。漁船は旅客船貨物船と異なり細かい動作が多く、網を引いたりするため負荷に強い機関でなければならない。近年は一部で電気推進機関の利用も試みられている。

漁船機関の出力(馬力数、キロワット)は漁船法に基づく性能の基準によってトン数毎に上限が定められており、漁船用機関として認められた機関以外は用いることが出来ない。

機関が故障して修理不能の場合、漁船では多くが機関を換装して継続して使用する。

日本の法制[編集]

太平洋戦争大東亜戦争)後の食糧難解決のため、戦後大量の漁船が建造された。しかし、それらの急造漁船はその機能性および安全性などに劣るものが多く見られた。こういった背景から、漁業の振興及び漁船の適正化を図るため、1950年(昭和25年)、議員立法により漁船法が制定された。

定義[編集]

漁船は漁船法で以下のように定義されている。

  • もつぱら漁業に従事する船舶
  • 漁業に従事する船舶で漁獲物の保蔵又は製造の設備を有するもの
  • もつぱら漁場から漁獲物又はその製品を運搬する船舶
  • もつぱら漁業に関する試験、調査、指導若しくは練習に従事する船舶又は漁業の取締に従事する船舶であつて漁ろう設備を有するもの

上記の定義から、漁船法上の漁業種類は刺網漁業、定置漁業といった一般的なもののほか、漁獲物運搬船、真珠養殖船なども含まれる。また、水産系の大学および試験研究機関の有する調査船や漁業取締船官公庁船として分類されている。

上記の分類から遊漁船は漁船に含まれず、一般には小型船舶登録を受けている。ただし漁船との兼用も可能である。

漁船登録[編集]

漁船は漁船登録を受けた上で船名と漁船登録番号を船体に標示しなければならない。

漁船法による分類[編集]

漁船登録は漁船法による以下の分類にしたがって漁船登録を行う。

  • 1級船(100トン以上の海水動力漁船)
  • 2級船(5トン以上100トン未満の海水動力漁船)
  • 3級船(5トン未満の海水動力漁船)
  • 4級船(5トン以上の海水無動力漁船)
  • 5級船(5トン未満の海水無動力漁船)
  • 6級船(淡水動力漁船)
  • 7級船(淡水無動力漁船)

上記の分類は重複することも可能である。例えば、海面と河川・湖沼などの内水面(ないすいめん)と両方で用いる5トン未満の漁船であれば、3級船と6級船の両方で登録する。

漁船登録番号[編集]

漁船登録番号は各都道府県が配布し、必ず船体に標示しなければならない。形式としては以下の例のように、都道府県の識別標(アルファベット)、漁船の等級標(1から7)、横線、漁船の番号を組み合わせる形式を採る(漁船法施行規則付録第二)。

例)HK2-10000

前2文字のアルファベットが所属都道府県を示す(識別標という)。例に掲げたHKは北海道である。次の1文字は1-7の数字が入り、1級船から7級船を示す(等級標という)。横線(ハイフン)の後は各都道府県の配布する登録順の番号である。この番号は漁船の所有者が変わっても県外に出ない限り保持される。

  • 都道府県の識別標一覧[2](*の内陸8県は要出典)
No. 識別標
1 北海道 HK Hokkaidō ほっ
2 青森 AM Aomori あお
3 岩手 IT Iwate いわ
4 宮城 MG Miyagi みやぎ
5 秋田 AT Akita あき
6 山形 YM Yamagata やまが
7 福島 FS Fukushima ふくし
8 茨城 IG Ibaraki いば
9 栃木 TG * Tochigi とち
10 群馬 GM * Gunma ぐん
11 埼玉 ST * Saitama さい
12 千葉 CB Chiba ちば
13 東京 TK TokyTōkyō とう
14 神奈川 KN Kanagawa かな
15 新潟 NG Niigata にい
16 富山 TY Toyama とや
17 石川 IK Ishikawa いし
18 福井 FK Fukui ふくい
19 山梨 YN * Yamanashi やまな
20 長野 NN * Nagano ながの
21 岐阜 GF * Gifu ぎふ
22 静岡 SO Shizuoka しず
23 愛知 AC Aichi あい
24 三重 ME Mie みえ
25 滋賀 SG * Shiga しが
26 京都 KT Kyōto きょ
27 大阪 OS OsŌsaka おおさ
28 兵庫 HG Hyōgo ひょ
29 奈良 NR * Nara なら
30 和歌山 WK Wakayama わか
31 鳥取 TT Tottori とっ
32 島根 SN Shimane しま
33 岡山 OY Okayama おか
34 広島 HS Hiroshima ひろ
35 山口 YG Yamaguchi やまぐ
36 徳島 TO Tokushima とく
37 香川 KA Kagawa かが
38 愛媛 EH Ehime えひ
39 高知 KO KoKōchi こう
40 福岡 FO Fukuoka ふくお
41 佐賀 SA Saga さが
42 長崎 NS Nagasaki ながさ
43 熊本 KM Kumamoto くま
44 大分 OT OiŌita おおい
45 宮崎 MZ Miyazaki みやざ
46 鹿児島 KG Kagoshima かご
47 沖縄 ON Okinawa おき
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  • 等級標の一覧
    • 海水面において使用する漁船
      • 総トン数100t以上の動力漁船 - 1
      • 総トン数100t未満5t以上の動力漁船 - 2
      • 総トン数5t未満の動力漁船 - 3
      • 総トン数5t以上の無動力漁船 - 4
      • 総トン数5t未満の無動力漁船 - 5
    • 淡水面において使用する漁船
      • 動力漁船 - 6
      • 無動力漁船 - 7

船名[編集]

船名は任意である。例えば「第八幸福丸」といった「第・・丸」という船名が多いが、「丸」を付けなくても良い。「丸」を付けるのは単なる伝統や慣習に過ぎない。また、「第・・」という番号も全くの任意であり、「第八」と言っても8隻同じ名称の船があるとは限らない。むしろ縁起を担いで第八、第八十八、といった形で命名している場合の方が多い。船名に使用できる文字は平仮名、片仮名、漢字およびアルファベットに限られ、屋号などを船名に用いることはできない。

トン数[編集]

漁船のトン数は通常の船舶と同様に「船舶の総トン数の測度に関する法律」に基づき算定(測度)されている。漁業許可の一部は使用する漁船についてトン数の制限が定められているため、必要以上の大きな漁船を建造することはない。一般の小型船舶は小型船舶検査機構が、大型船舶は国土交通省運輸局が測度するが、漁船については都道府県が測度している。

出典[編集]

  1. ^ 船と海の研究会編 『海洋船舶の科学』 日刊工業新聞社 2008年4月30日初版第1刷発行 ISBN 9784526060533
  2. ^ 第8表 都道府県別の海水動力漁船の勢力(平成22年12月31日現在)(PDF) - 愛媛県農林水産部

関連項目[編集]

外部リンク[編集]