船外機

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船外機
3基掛けの例
船外機シリンダーヘッドニッサン120ps(2スト)

船外機(せんがいき)とは船舶推進システムである。

アウトボードドライブとも呼ばれる。

船内機のようなエンジンやドライブのスペースが不要となるほか、船体のゆがみに起因するプロペラシャフトのトラブルの心配も無い。

多くは単機での装着となるが、より速さを求める場合、船体重量が重い場合などは連装する場合もある。

概要[編集]

船外機は一般的に上部のエンジンとその補機、ギア、クラッチ、伝動シャフトなどの動力伝達系、スクリュー等が一体となった船舶の推進ユニットである。船舶の後部に取り付けることで推進器となるとともに、多くの場合船外機自体を水平方向に回動させることで舵の役目も担う。また、浅瀬等では障害物を避けるために跳ね上げられるようになっている。 多くはスクリュープロペラで推進力を得るが、一部にポンプユニットを装備したウォータージェット推進仕様のものがあり、日本より輸出されている。2009年12月現在で、日本国内仕様には存在していない。在来型のスクリュープロペラ仕様の船外機をウォータージェット推進仕様に改造する部品が株式会社石垣より販売されている。また、バス釣りなどで用いられるトローリングモーター(電動で小型のもの)も船外機の一種である。

エンジンはコンパクトで高出力な2ストローク ガソリンエンジンが用いられていたが、排出ガスに含まれるオイルによる水質汚濁が避けられず、炭化水素の排出も多いことから、排出ガスのよりきれいな4ストロークガソリンエンジンに転換しつつある。 (中小型用の船舶用エンジンの大半はインボード・アウトボード問わず冷却用に吸水した海水を排気管から排出するため排水に排出ガスの成分が混ざってしまう。生分解性のオイルを用いることで改善は可能。) 特殊な例としては、ヤンマーが製造している4ストロークディーゼルエンジン、ヤマト発動機が製造している競艇用2ストロークガソリンエンジンを使用しているものがある。

シリンダー配置は、単気筒をはじめ、直列型(インライン)は2から4気筒V型では、4気筒6気筒が一般的であるが、大型モデルの中にはV型8気筒のモデルも存在する。一般的にクランクシャフトを垂直に配したエンジン(バーチカルクランクシャフトエンジン)が用いられる。

冷却水は船舶が航行している場所の水を直接吸入し、冷却に使用後排出される。ポンプによって連続的に吸入・排出が行なわれ、閉域循環しない。このことはラジエターおよび冷却ファンを不要とし、重量とコストを陸上のエンジンよりも下げることに寄与する。

歴史と発展[編集]

最初の実用的な船外機は1909年にノルウェー系アメリカ人オーレ・エヴィンルード(Ole Evinrude)により開発された。

歴史的に大抵の船外機は2ストロークエンジンを使用していた。2ストロークエンジンは構造がシンプルで信頼性が高く、コストが低くそして高いパワーウェイトレシオを誇った。特に重量面は非常に重要で過大な重量は船の操縦性を妨げた。しかしながら高い排出ガスと環境基準に適合させるためのコストのために特にローエンド機種において4ストロークエンジンが次第に採用されるようになった。近年、ハイエンド機種では2ストロークのままでガソリン直噴エンジンにすることにより排ガス規制を満たし、燃費経済性との両立を目指したモデルや4ストロークエンジンにおいてはポート燃料噴射装置を使用した大排気量モデルが出現している。 中でも2004年に、マーキュリーマリーンから発表されたモデル「ベラード」は、4ストローク直列4気筒/6気筒DOHCエンジンに機械駆動式過給機(メカニカル・スーパーチャージャー)を組み合わせた、画期的な製品であった。

2000年代に入ってから、日本国内市場向けの2ストロークガソリンキャブレター仕様の船外機の製品数は減少してきている。

メーカー別に見てみると、ヤマハ発動機は、高圧気筒内直接噴射方式の2ストローク大排気量船外機を国内市場向けに投入するのを控え、4ストローク船外機に主力を移しつつある。 スズキは、国内市場向けには、2ストローク船外機を投入せず、4ストローク船外機のみに絞っている。本田技研工業は、船外機開発の当初から4ストロークのみであった。 トーハツは、大排気量は、2ストローク低圧気筒内直接噴射方式で小排気量は4ストロークで対応している。

推進手段としては、従来のプロペラの他に、ウォータージェットを使用した製品も出現している。

構造と概要[編集]

小排気量のものであれは単気筒、大排気量、若しくは出力の高いものは多気筒となるがすべてにおいて共通なことはレイアウトがクランクシャフトが垂直にセットされている。 一般的には1気筒、2気筒、3気筒、4気筒、6気筒まれに8気筒がある。 出力は2馬力程度のものから350馬力まで様々であるが、250馬力オーバークラスになると、成人男性よりも全長は大きい。

構造は自動車やオートバイのそれと何ら変わりはない。リコイルスターター又はスターターモーターを配備し、オルタネーター、イグニッションなど。 冷却についてはラジエーターは使わずプロペラ付近にある冷却水取り入れ口からインペラと呼ばれるいわゆるウォーターポンプで水を吸い上げ、エンジン本体のウォータージャケットを通し、プロペラ中心の排気口から排気ガスと一緒に排出される。 また、ジャケット内部に水が正常な循環がなされているか確認できるよう本体上部から冷却水の一部が排出される構造になっている。 排気についてはマフラーは存在せず、プロペラ中心の排気管から出てくるが、当然触媒などもない。従って排ガスの管理は非常に難しい。 通常、マフラーがなければその排気音は強烈なものになるが前述の通り船外機の構造上、排気管が水中に位置するため排気音は抑えられている。

船外機に要求される内容は、信頼性と耐久性であり材質の随所にアルミやチタンなどを多様し、錆びや腐食に対応している。 また、自動車用のエンジンと比べ生産数が少ないため船外機の価格は高額で過去は1馬力1万円というおおよその相場があったが、現在は1馬力1万5千円くらいに価格が上昇している。(マーキュリーベラード350馬力は1基あたり約450万円)

過去は2ストロークが圧倒的に主流だったが、現在は排ガスや燃費の問題から4ストロークに移行しつつある。 海外では、マーキュリーマリン、エビンルード(ボンバルディア)などが有名である。

船外機の燃費については波や風の影響を受ける関係から車やバイクと単純に比較することは困難である。 例えば2ストローク75馬力1400cc3気筒エンジンの場合、船の状態やその他走行状態で劇的に変わるが時間当たり20ℓ以上も必要とする場合もある。 さらに大型な船外機の場合は、時間燃費60ℓという事も珍しくなく全速力でエンジンを回せば100ℓくらい消費するエンジンも多くある。(艇の重量に大きく比例) 船外機は、経済回転数を越えると極端に燃費が悪くなる。 しかし、この燃費の悪さも4ストローク船外機が出回ってからは飛躍的に向上はしているものの、やはり時間当たりの燃費については車の比ではない。 新しいモデルの4ストローク船外機の中にはスーパーチャージャーを搭載し、小排気量で大出力の物も存在するが、重量面では過去の2ストローク船外機の方が軽量である。


エンジンノイズについては、4ストローク船外機ではアイドリングの音が分からないくらい静かで全開時のノイズも疲れるような音圧ではない。 しかし、2ストローク船外機は総じて大きくアイドリングの状態から音圧は大きい。さらに全開時のサウンドは非常にレーシーになる。 スーパーチャージャー搭載モデルは使用している圧縮機の影響でジェット機のような高域を発する。

ギアは通常前進と後退があり比較的、小馬力の船外機ではチラーハンドルといい、エンジン本体から操作棒が出ておりこれで操舵とスロットルコントロールが出来る。高馬力の船外機ではチラーハンドルによる操作が物理的に不可能(重量が重く操舵には相当な腕力が必要)なので、コンソールからワイヤーや油圧システムで操舵し、リモコンボックスでスロットルとギア操作を行う事になる。(概ね75馬力以上のエンジンではワイヤーや油圧操舵システム一般的であるが、一部の海外では200馬力程度まで対応可能なパワーアシスト付きのチラーハンドルも存在する)

メンテナンス[編集]

2ストローク船外機の場合は当然ながらオイルの補給は必須で過去は混合給油だったが現在では分離式がほとんどである(小型の物や特殊エンジンを除く) スパークプラグの劣化も激しいことからスパークプラグの管理にも注意が必要である。

4ストローク船外機の場合、各メーカーごとにエンジン稼働時間によってオイル交換時期を指定している。潤滑方式にドライサンプ式を採用しているので、交換に必要なオイル量は排気量の割に多い。 また、インペラの交換とギアオイルの交換も毎年行う事が理想である。 基本的にエアクリーナーはない事から、エンジンルーム内の清掃はまめに行う。

海水使用の場合には冷却水の流路を真水で洗う必要がある。冷却水流路にも海水が回っているので、そのまま放置すると錆びの原因となったり、甚だしい場合は塩が結晶化し流路に詰まってしまう。使用後は水洗キット(俗にヘッドフォン)を使用し、アイドリング運転で概ね10分程度の水洗を行う。これにより寿命は飛躍的に向上する。

製造者[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]