スピード測定器
スピード測定器(スピードそくていき)は、運動する物体の速度の特定方向成分を測定する測定機器である。一般には、ディケイター・エレクトロニクスの商標であるスピードガンの名称で知られる。
目次 |
原理と構造 [編集]
測定する物体に向けて電磁波を照射し、物体による反射波を測定する。物体が運動している時はドップラー効果によって反射波の周波数が変化するため、これと発射波の周波数を比較することにより、運動の速さを算出する。電磁波を利用して測定するため、対象物の運動が光速を超えない限りは、機器の技術的問題はさておき、理論上においては計測が可能である[1]。
自動車の速度違反取締 [編集]
自動速度違反取締装置は、制限速度を超過して走行している自動車を検出するために用いられる。一般にはボーイングの商標であるオービスの名称で知られる[1]。 電波法令上の無線標定陸上局または無線標定移動局であり、警察用であるので、操作またはその監督に無線従事者を要する。 [2]
野球の球速測定 [編集]
概要 [編集]
野球において、投手が投げるボールの速さを測定するために用いられ、この用途に用いる場合は専らスピードガンと呼ばれる。英語ではレーダーガン(Radar gun)と呼ばれる。 空中線電力0.1W以下の適合表示無線設備である無線標定移動局(技適マークのあるもの)であれば、操作に無線従事者は不要 [3] で誰でも使用できる。
測定はバックネット方向から行う。電光掲示板に表示する球速の測定を行う測定器はバックネットやフェンスに固定して設置してあることが多い(主審の更に後ろにあるパラボラアンテナがそれである)。真後ろからの測定では審判や捕手に隠れて測定できないため、やや斜めから測定を行う。このため、全ての球場での殆どの計測において、真の球速を計測できていない。稀に球の進行方向がほぼ完全に測定器に正対する場合に、ほぼ正確な球速が測れる場合があるが、それ以外の場合においては全て、真の球速より遅く計測されていることになる。同じ原因により、測定器をバックネットの中心より左右どちらかにずれた位置に設置してある球場では、ボールの角度と測定器の位置により、統計的な視点で見ると、右投手か左投手の一方の球速が他方より相対的に遅く測定される。阪神甲子園球場は左投手の球速が遅く出るとされ、ボールに対して真正面から測定していたスカウトの携帯測定器の方が速い値を計測した例もある。しかし、実際より遅く測定されることを避ける為に、生の測定結果に一定の比率で値を加えるなどの結果を修正する機能を測定器に加えることは厳禁である。そのようなことをすれば、球の進行方向と測定器が正対した場合に著しく真の球速と異なる球速が計測されてしまう[要出典]。
日本プロ野球 [編集]
広島東洋カープの元オーナー・松田耕平が1976年秋の教育リーグの土産としてアメリカから持ち帰り、スカウトの木庭教に渡して、木庭が使用したのが最初である。初期の型は非常に大きな物で、バックネット裏で木庭が鞄から取り出して構えると、周りにいた他球団のスカウトが「何だ、あれは」と驚くほどの大きさだった。他球団もこれを採用し、智弁学園・山口哲治(元近鉄)との投げ合いで甲子園を沸かせた中日・小松辰雄が1979年、高卒新人ながら、剛速球を投げたため、各テレビ局がスピードガンによる球速をテレビ画面に表示した。小松が、150キロを連発したことで大きな話題を呼び一般的に定着した。もちろん球の速さだけが、好投手の条件では無いが、大きな要素であることは間違いない。登場当初は平均球速を表示する局もあればフジテレビ及び東海テレビのように球速でも投げ始めの初速、および捕手がキャッチする寸前の終速をそれぞれ表示していた時期もあったが、現在では全てのテレビ局が初速のみを表示している。プロ球団の本拠地球場にも備え付けのスピードガンが設置されており、これも初速が計測され、スコアボードに表示されるようになっている[要出典]。
高校野球 [編集]
高校野球の甲子園大会では毎日放送が第51回選抜高等学校野球大会のテレビ中継から導入しているが、同じく中継を行うNHKは「高校野球中継での球速表示はアマチュア精神の冒涜だ」という理由で長らく採用せず、2000年夏になってようやく採用した。また、高校野球における甲子園球場のスコアボードでの球速表示も2004年春になって採用された。これ以前は、スカウトがスピードガンを球場に持ち込むことが多く、甲子園大会の球速記録の多くは、テレビのものではなくスカウトのガンによるものであった。そのため、複数のスカウトのガンと球場のガンの中で最も球速を計測したものが記録として採用されることが多かった。しかし、スコアボードに表示されるようになるとスポーツ新聞などは球場のものを優先して報道するようになった。採用以前と採用以後の甲子園大会における球速記録はさほど変わりがないが、テレビの表示で145キロ以上を記録した投手は最近増えている傾向にある[要出典]。
メジャーリーグ [編集]
日本と同じく20世紀後半から球速の測定にはスピードガンが使われてきたが、スポートビジョン社の開発した「PITCHf/x」という投球解析装置が2006年のポストシーズンからメジャーリーグ各球場へ設置され始めた。「PITCHf/x」は現在メジャーリーグ全球場に共通の機種が設置されており、MLB公式ホームページの1球速報「Gameday」やアメリカの野球データサイト「FanGraphs」などでデータが一般公開されている。3方向から投球を解析するこの装置の導入により、球速に限らず投手のリリースポイントやボールの回転数、変化球の曲がり具合、落差などを解析することが可能となり、スピードガンの問題点であった機種や設置場所による精度の違いを克服した[4]。「PITCHf/x」の他にも、ドップラー・レーダーを利用して投手のリリースポイントと、そこからのボールの移動速度やボールの回転数、回転速度を計測して「ボールの伸び」を解析する装置がデンマークのトラックマン社によって開発されている[4]。
スピードガンの正確性と信憑性 [編集]
スピード測定機による球速記録については、正確性・信憑性を疑問視する指摘が存在する。その内容は主に、スピードガンの機器の正確さという技術的な問題と、野球関係者が球速を水増しするねつ造の問題の二つである。球速のねつ造については、プロ野球選手の立場からも「当然存在する」という指摘がある。立浪和義は、「神宮球場のスピードガンは9km増し、甲子園球場は6km増し」されていたことを引退後に挙げている。
脚注 [編集]
- ^ a b 日米スカウトマンも使用するスピード計測器の仕組みとは
- ^ 電波法施行規則第33条第6号(5)に基づく平成2年郵政省告示第240号第1項第3号および第4号により、警察用の無線標定陸上局と無線標定移動局の操作は、無線従事者を必要としない「簡易な操作」ではないため。
- ^ 同告示第1項第4号による。
- ^ a b 『月刊スラッガー』2011年8月号、日本スポーツ企画出版社、雑誌15509-8、44頁。