スタンダードミサイル

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イージスシステム搭載ミサイル巡洋艦CG-47 タイコンデロガの後部Mk.26連装ランチャーに装填されたスタンダードSM-2MRミサイル。
ランチャーには五つのキルマークが描かれている

スタンダードミサイル(英:Standard Missile)は、アメリカ海軍を始め西側諸国で運用されている艦対空ミサイルである。

概要[編集]

スタンダード艦対空ミサイルはアメリカ海軍によって開発された艦対空ミサイルであり、開発には複数の企業が関わったが、現在の主契約社はレイセオン。艦隊防空用のSM-1、SM-2と、弾道ミサイル迎撃用のSM-3がある。派生型として、対レーダーミサイルのスタンダードARMが存在する。また、空対空ミサイルのシークバットや、艦対地ミサイルのSM-4なども開発されていたが、これらは開発中止されている。

なお、「スタンダード(英:Standard)」とは「軍旗」の意味であるが、アメリカを始めとした西側諸国の海軍艦艇にとっての「基準」となるべき艦対空ミサイルとなることを目指して開発された、という意味が込められた命名である。

開発の経緯[編集]

強大な海軍力、こと多数の航空母艦を保有するアメリカ海軍にとって、艦隊防空は常に大きな課題であった。初期のミサイル艦は、ターターテリアタロスといった艦対空ミサイル群(通称3T)を装備して艦隊を守っていた。しかしこれらは射程が不足したり、長射程を備えるものにあっては大型化の傾向にあり、それらの質と量では年を追うごとに強大化する対艦ミサイルの脅威に対抗できなくなることは明白であった。ことソ連軍は多数の艦対艦ミサイル爆撃機などを保有し、米艦隊に対して飽和攻撃をおこなう戦術を前提に軍備を拡大していた。

3Tのうち巨大なタロスを廃し、ターターとテリアの後継となるタイフォン・システムが開発されたものの、高性能を目指したためコストが高騰し、試射段階で開発中止。かわりにターターを原型とした改良ミサイルを開発することとなった。これがスタンダードミサイルである。

SM-1シリーズ[編集]

SM-1ミサイルは、ミサイルや航空機を迎撃するために使用されるセミアクティブホーミング(発射母機が発したレーダーの反射波を受け取り誘導する方式)であり、発射後は目標に対して連続的にレーダーの照射が必要である。そのためイルミネーター(レーダーを照射する装置)の数しか誘導はできず、同時に2目標程度の攻撃しかできなかった。

しかし裏を返せば搭載艦にさほど高度な電子機器が必要ないということでもあり、後のSM-2やSM-3と異なり多くの国によって運用された。開発主契約企業はジェネラル・ダイナミクス

RIM-66 SM-1MRブロックI~VI[編集]

RIM-66 SM-1MR(Standard Missile Middle Range)は、ターターの後継となる中射程艦対空ミサイルで、ターターに似た外観を持つ。ターターと同様に、Mk.13、Mk.22、Mk.26発射機などにて運用される。射程は約40km。ブロックI~IV(RIM-66A)、ブロックV(RIM-66B)、ブロックVI(RIM-66E)がある。ブロックIIIまでが開発バージョンであり、ブロックIVから生産バージョンとなる。

RIM-67 SM-1ERブロックI[編集]

RIM-67 SM-1ER(Standard Missile Extended Range)は、テリアの後継となる射程延長型艦対空ミサイルで、SM-1MRにテリアと同様のロケットブースターを追加したものであった。テリアを運用していた艦にのみ搭載されていたミサイルであり、テリア艦のMk.10発射機からのみ発射できた。射程は約70km。

SM-2シリーズ[編集]

SM-2ミサイルは主にイージス艦で使用され、SM-1と同じようにミサイルや航空機に対して使われる。SM-1と基本的な構造は一緒だが慣性誘導装置とデータリンクを取り入れたことによりレーダーの照射は着弾前の数秒間だけでよくなった。そのため一度に対処できる目標の数が大幅に増え、最大で15目標程度の同時攻撃が可能となった。

また、目標まで最適な飛行コースを取るようになったため、射程もSM-1の倍程度になった。

RIM-66 SM-2MRブロックI~III[編集]

RIM-66 SM-2MRは、用途や外観はRIM-66 SM-1MRと同様だが、イージス艦やターター-D・システム艦でもNTU改修を受けた艦艇(キッド級ミサイル駆逐艦カリフォルニア級原子力ミサイル巡洋艦バージニア級原子力ミサイル巡洋艦)など対処能力の高い艦への配備が前提であるため、主としてMk.26発射機またはMk.41 VLSなどに装填される。射程は約70km。

ブロックIの他に、マイナーチェンジとしてECCM能力や高速度断片化弾頭に改良したブロックII、 低高度目標への対処能力を向上させたブロックIII、さらなる低高度目標への対処能力向上と粒爆薬の重量化を行ったブロックIIIA、終端赤外線誘導機能を加えたブロックIIIBがある。型番は、ターター艦向けの(RIM-66DブロックI,RIM-66JブロックII,RIM-66K-1ブロックIII, RIM-66K-2ブロックIIIA)、イージス艦向けの(RIM-66CブロックI,RIM-66GブロックII,RIM-66L-1ブロックIII, RIM-66L-2ブロックIIIA)、 MK41VLS搭載イージス艦向けの(RIM-66HブロックII,RIM-66M-1ブロックIII, RIM-66M-2ブロックIIIA, RIM-66M-5ブロックIIIB)がある。

RIM-67 SM-2ERブロックI~III[編集]

RIM-67 SM-2ERは、RIM-67 SM-1ERをSM-2規格で能力向上させたものであるが、テリア・システム搭載艦の中でもNTU改修を受けた艦艇(ベルナップ級ミサイル巡洋艦リーヒ級ミサイル巡洋艦)のみで運用可能なミサイルであったため、運用は制限された。射程は約120km。ブロックI(RIM-67B)の他に、マイナーチェンジのブロックII(RIM-67C)、ブロックIII(RIM-67D)があった。

RIM-156 SM-2ERブロックIV~IVA[編集]

テリア艦専用のRIM-67シリーズは、テリア艦の退役とともに存在意義を失った。そこでイージス艦のVLSからも発射可能なように、ブースターのコンパクトなRIM-156A SM-2ERブロックIVがスタンダードMCによって開発された。ブースターなどの改良により、小型ながら射程は約160kmに達した。

派生型として、ミサイル防衛にも使用可能なRIM-156B SM-2ERブロックIVAも計画された。これによって慣性飛行段階の弾道ミサイルを撃ち落とし、撃ち漏らしたものをパトリオットミサイル PAC-3で撃ち落とす計画であったが、航空機などの撃墜を前提とした破片効果弾頭で大気圏外を高速飛行するミサイルを破壊することは困難であり開発は中止された。

しかしSM-3との防空多層化と既存の100近いブロックIV型ミサイルを有効活用するために、新たに終末段階迎撃用ミサイルとしてブロックIV計画が復活した。2006年5月には、アローミサイルイスラエル)に似た弾頭を採用した改修型SM-2ブロックIVにてSRBM型標的弾の迎撃実験に成功した。

SM-3シリーズ[編集]

ミサイル巡洋艦レイク・エリーから発射されるRIM-161スタンダード・ミサイル(SM-3)

RIM-161 SM-3は、RIM-156B SM-2ERブロックIVAを基に開発が進められている弾道ミサイル防衛専用のスタンダードミサイルである。目標の終末段階での爆発破砕弾頭による破壊を計画していたRIM-156Bの設計を変更し、キネティック弾頭を用いて、直接標的に体当たりするhit-to-kill方式に変更された。

ブロックIシリーズ[編集]

アメリカ海軍は、RIM-161A SM-3ブロックIミサイル巡洋艦レイク・エリー」から試射して初めて弾道ミサイルの迎撃実験に成功した。ブロックI運用能力を付加するためにイージスシステムに改修が加えられたが、これをイージスBMD3.0と呼ぶ。

アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦に配備が進められているRIM-161B SM-3ブロックIAは、短距離弾道ミサイル(SRBM)-準中距離弾道ミサイル(MRBM)迎撃用であり、イージスBMD3.6と適合化されている。ブロックIAの構造は、1段ロケットが直径21インチ(53cm)、2段および3段目が直径13.5インチ(34cm)全長約7m、4段目がキネティック(運動エネルギー)弾頭と脱頭式ノーズコーンとなっている。性能は射程1200km、上昇限度500km程度とされている。

ブロックIAはイージス艦からの情報を元に3段のロケットを使い大気圏外まで上昇した後に、ノーズコーンを分離させてキネティック弾頭を露出させる。ロケットやノーズコーンから分離したキネティック弾頭は搭載されている長周波赤外線シーカーにより目標を精密に捕捉し、針路変更・姿勢制御システム(SDACS)用の4個のサイド・スラスターにより目標への飛行を微調整する。最終的には重量約23kgのキネティック弾頭が約125メガジュール[1]の運動エネルギーを伴って目標の弾道弾に衝突して破壊・迎撃することになっている。

日本海上自衛隊ではこんごう型護衛艦がブロックIAを運用するが、これに先立って「こんごう」が弾道ミサイルの迎撃実験で高度160kmを飛行する標的を迎撃し、米国以外で弾道ミサイル迎撃実験に初めて成功した。

さらにアメリカ海軍は人工衛星迎撃用に改造されたコンピュータープログラムを使って、太平洋上高度247kmを時速36700kmで飛行中のアメリカ国家偵察局偵察衛星USA-193に向けて発射し、人工衛星の迎撃に初めて成功した。

現在、アメリカで赤外線シーカーを2波長化し識別能力を向上させ、出力調整可能針な進路変更・姿勢制御システム(TDACS)により軌道変更範囲を拡大させたブロックIBが開発中である。ブロックIBは通常対空戦とBMDのプログラムが統合されたイージスBMD5.0に適合化される。ブロックIBは2013年11月現在までに6回の迎撃実験が行われており、1回目の実験では迎撃に失敗したもののそれ以降は5回連続で成功する成績をおさめている。

ブロックIIシリーズ[編集]

ブロックIIからは日米共同で開発されている。ブロックIIはブロックIBのキネティック弾頭とシーカーと同一のものを使用するが、2段および3段ロケットを1段と同じ直径21インチ(53センチ)に大型化し、射程を延伸させ高速化させて迎撃範囲を広げ、ノーズコーンも21インチ対応型に変更する。迎撃範囲が大幅に伸びることでイージス艦のレーダ探知範囲(185~370キロ程度)を超えるので、前方に展開する航空機や艦船からのレーダ情報とデータリンクさせて目標を探知し迎撃させる。日本防衛省技術研究本部(技本)と主契約者の三菱重工業により、主にノーズコーンと2段および2段ロケットのステアリング&コントロール・システム(SCS)と3段ロケットの開発をしている。日本製ノーズコーンを使用した機体は2006年3月9日に初飛行した。ブロックIIは技術実証用で実戦配備されることはない。

2006年6月23日にはブロックIIAの日米共同開発に合意した。ブロックIIAはイージスBMD5.1と適合化され、キネティック弾頭とこれに搭載する赤外線シーカーを大型化させて破壊力と識別能力を向上させ、ロケットもさらに改良して速度を向上させるなどして高性能化をさせる。キネティック弾頭はアメリカ主導で試作し、赤外線シーカーは日米で別々の方式で試作し選考する。研究開発総費用は21~27億ドル、日本側負担は10~12億ドルである(配備費用は除く)2011年に地上試験、2014年に飛行試験、2018年から実戦配備を始めるスケジュールになっている。このブロックIIAが現在配備されているブロックIAを更新する予定である。この配備により中距離弾道ミサイル(IRBM)にも対処可能となる予定である。

さらに2008年5月3日付けの読売新聞によると、ブロックIIBの日米共同開発に合意したことが報道された。ブロックIIBは多弾頭型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を迎撃することを目指して自らも多弾頭化する迎撃ミサイルである。しかし2009年に就任したバラク・オバマ大統領の軍事予算の調整により迎撃ミサイル搭載型多弾頭の開発が凍結されたため、現状では多弾頭型SM-3装備化の目処は立っていない。

SM-5[編集]

開発中止となったRIM-156B SM-2ERブロックIVAの代替として提案されたもので、ブロックIVにESSMのシーカーを搭載したものといわれる。

SM-6[編集]

RIM-174 Standard ERAM(Extended Range Active MissileSM-6は、SM-2 BlockIV(4)にAMRAAM(先進中距離空対空ミサイル)の終端誘導装置を搭載した2段式対空ミサイルである。開発は2004年に始まり、2009年より低率量産を開始した。

現在開発中のものはSM-6 BlockI(1)と呼ばれ、さらに迎撃能力を向上させ大気圏内での弾道ミサイル迎撃への使用も検討されている。

構造[編集]

SM-6はモジュラー構造で構成されており、大きく5つに区分される。

先端はレドームとなっており、AMRAAMの送信装置などを利用したアクティブ・レーダー・シーカおよび、INS(慣性航法装置)などを内蔵する誘導部分である。

この後方は弾頭部分となっており、目標方向に破片を集中できるMk 125指向性爆風破片弾頭を装備する。信管は半導体の全面採用により信頼性を向上したMk 125 Mod45を使用し、近接または着発モードを選択可能である。

弾頭部分後方はMk 104デュアル・スラスト・ロケット・モーターで、短時間に大きな推力を発生する加速用と、速度を維持する巡航用の2種類の固体推進剤を内蔵する。外部には機軸に沿って縦長の安定翼が取り付けられる。

ロケット・モーター後方は飛行制御部分となっており、外側に操舵翼4枚を装着する。

最後部はMk 72ブースターで、推力偏向方式を採用している。

運用[編集]

SM-6は、発射装置・輸送コンテナー兼用のキャニスターに格納され、イージス艦のVLS(垂直発射装置)にセットされる。発射直前に飛行経路をプログラムして発射され、ブースターは約6秒間燃焼後、投棄される。その後ロケットモーターに点火、およそ15秒間燃焼し、音速の4倍以上(推定)に加速して飛行する。発射後は必要に応じてイージス艦からのデータリンクにより最も効率の良い飛行経路を指示され目標に向かう。ミサイルからは自身の現在位置・高度などがイージス艦に送信される。また、目標情報は発射したイージス艦だけでなく、CEC(共同交戦機能)を利用して、他のイージス艦や早期警戒機などからの情報も利用可能である。

目標に接近するとアクティブ・レーダー・シーカを作動させて目標を追尾し、近接もしくは着発モードにより目標を破壊する。 アクティブ・レーダー(AR)誘導方式のため、SM-2のように発射母艦によるSPG-62 イルミネーターによるレーダー波照射を必要とせず、更に多数の複数目標に同時対処可能である。また、レーダーの視界外となる遠距離を低空飛行する対艦・巡航ミサイルにも対処可能である。

なお、従来のセミ・アクティブ誘導方式の交戦も可能である。

開発された派生型ミサイル[編集]

AGM-78[編集]

AGM-78 Standard ARMは、SM-1MRの弾体を流用した対レーダーミサイルである。ベトナム戦争ではF-105F-4Gといった、いわゆるワイルド・ウィーゼル機に装備され、敵防空網制圧任務に就いた。

それまでのAGM-45 シュライクは射程が12kmほどしかなかったが、スタンダードARMはその大きな弾体を活かし、100km近い射程を誇った。

後に、より小型で長射程のAGM-88 HARMへと交替している。

RGM-66[編集]

RGM-66 Standard ARMはAGM-78の艦載型で、Mk 13Mk 26などのSAMランチャー用のRGM-66Dと、ASROCランチャー用のRGM-66Eが存在した。

RGM-66Dはアクティブ・レーダーホーミングで飛行して来る敵性対艦ミサイル及び自艦もしくは自艦隊にレーダー波を照射している敵性航空機、特に対艦ミサイル誘導機を迎撃するためのミサイルであり、RGM-66Eは完全パッシブ誘導型の対艦ミサイルとしての運用を想定していた。

開発が中止されたミサイル[編集]

艦対地ミサイル型 SM-4[編集]

RGM-165 Standard IVSM-4は、SM-3までとは違い、VLSより発射される艦対地ミサイルである。

弾頭は対地目標用の着発/延期信管もしくは近接信管を装備したHE(高性能炸薬)、ないしは対硬目標用徹甲弾頭が用いられ、発射母艦より垂直に発射された後にGPS誘導によって目標に誘導され、弾道飛行によって目標へと飛翔する。

ズムウォルト級ミサイル駆逐艦への搭載を前提に開発が進められていたが、これは事実上の弾道ミサイルであり、動揺の大きい水上艦からの発射では必要な命中精度を確保することは困難であった。特に移動目標への命中が期待できず、開発は中止された。

ズムウォルト級には当面トマホークが配備される予定である。

空対空ミサイル型 XAIM-97[編集]

XAIM-97 Seekbat

XAIM-97 シークバット(Seekbat)は、SM-1MRの弾体を流用した空対空ミサイルであったが、実用化されなかった。

艦対艦ミサイル型 RGM-66F[編集]

RGM-66Fはアクティブ・レーダーシーカーを搭載した艦対艦ミサイルであったが、1975年にキャンセルされ実用化されなかった。

尚、これらに加えてSM-1はMIM-23 HAWK地対空ミサイルに替わるものとしての地上発射型が構想されたことがあったが、構想のみであり地上発射型の試作やテスト等は行われていない。

脚注[編集]

  1. ^ 護衛艦「きりしま」BMDミサイル発射試験 JMSDF DDG"KIRISHIMA" JFTM4 Mission Success

関連項目[編集]