フレア (兵器)

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フレアを放出しながら飛行するAC-130ガンシップ

フレア: Flare)は、赤外線センサを欺瞞するために用いるデコイの一種。光波帯域(主として赤外線、近年では紫外線も)を目標とし、誘惑と飽和を任務とした、使い捨て型アクティブ・デコイであり、主として赤外線ホーミング誘導ミサイルを回避するために用いられる。

戦闘用途ではないが、ロシア空軍の曲芸飛行隊ルースキエ・ヴィーチャズィ(ロシアン・ナイツ)は、演技中に大量のフレアを使用することで有名である。

概要[編集]

フレアを放出するF-15E
フレアを放出するCH-46
C-17のフレア放出によって発生した雲

フレアは、マグネシウムなど酸化しやすい金属粉末をベースに、航空機エンジン排気口から放射されるのと同じ周波数帯の赤外線を出しながら燃焼するように作られている。そのため、燃焼させる金属以外にテフロンアンモニウムなどと言った添加剤が加えられている。

なお、フレアは主として赤外線ホーミング誘導ミサイルからの回避行動の一環として散布されるが、フレアは電波ホーミング誘導などレーダーによる誘導方式を採用したミサイルに対しては効果が無いため、このような場合には、チャフも同時に使用される。

初期のフレア[編集]

赤外線誘導ミサイルは、母機となる対空兵器戦闘機、あるいはミサイル自身から電波を発するレーダー誘導式ミサイルと違い、標的の放出する赤外線を探知してその方向に飛んでいくという仕組みのため、接近するミサイルを探知するのが難しい。

昔は仲間のパイロットから無線でミサイル接近を知らされたが、レーダー技術の向上に従って戦闘機の後部に後部警戒レーダーが取り付けられると、このレーダーによってミサイル接近を知ることができるようになった。これに呼応して自動でフレアが放出され、航空機は急旋回をする。すると赤外線誘導ミサイルは航空機よりも強い赤外線を放出するフレアに目標を変更し、飛んで行くようになる。

晴れた日に太陽に向かって飛び急旋回をすると、赤外線誘導ミサイルが太陽に向かって飛んで行くのと同じく、一昔前の赤外線誘導ミサイルには非常に効果的なものであった。

現在[編集]

赤外線のより強い部分を「点」と捉えて、そこに向かっていくと言う旧式のミサイルだと、前述の方法で比較的容易に回避されてしまうようになったため、フレアに欺かれにくい赤外線誘導ミサイルを開発する必要に迫られた。そこで、赤外線カメラをミサイルの先端に搭載し、赤外線の「点」ではなく、大量の赤外線を放出していて飛行機のような形をしたものを追尾するように改良が加えられた。このような方式は、一般に赤外線画像(IIR)誘導式と呼ばれる。

このIIR方式のAAMだと、非常に小さな点光源であるフレアに欺かれず、ある程度の大きさのある航空機に正確に飛んで行くため、次はこのIIR方式のAAMも欺けるようにフレアを改良する必要が出てきた。

そして考え出されたのが、フレアをただ放出するだけではなく、フレアを広範囲に面を形成するように放出するシステムである。これによって放出されるフレアの集団を「面」として捉えさせることができ、IIR方式のAAMにも対応できるようになった。また、フレア内部の物質が燃焼する際に出す光の波長も、航空機燃料であるケロシンの出す波長に近付ける工夫もされている。これは、赤外線でもケロシンの燃焼する際に発する波長を選んで追尾するタイプのミサイルに対応するためである。

フレアの種類[編集]

M-203赤外線フレア(アメリカ空軍
全長:20.3cm
重量:190g
燃焼時間:3.5-5秒

参考文献[編集]

  • B・ガンストン、M・スピック 「電子戦」『図解 現代の航空戦―エア・パワー最前戦』 原書房、1985年、47-93頁。ISBN 978-4562016273

関連項目[編集]